第10章 3話『紅い伝説 VSレッド そして……』
ユキナリの出すポケモンは決まっていた。バトルフィールドにボールを投げ、エビワラーを出現させる。
カビゴンがノーマルタイプであるのだから、賢明な判断だと言えた。だがレッドの方は全く焦りを感じていない。
(2倍にされた所で、不利になったと思うなよ。ノーマルタイプの攻撃は格闘タイプのポケモンに当てても普通に効く……戦い方さえ工夫すればカビゴンの敵じゃ無い)
『マスター、コレが……一応の終点になりますかね。勝っても負けても俺達の戦いは続きますが、この戦いが今までやってきた中で最高の試合になる事だけは確かでしょう。
前のマスターの所にいたら、生まれ変わっても戦えない相手が目の前にいる……あのレッドさんのポケモンと戦えるとはね……』
エビワラーもまた、最強のトレーナーと謳われるレッドのポケモンと勝負出来る事に、この上ない喜びを感じている様だった。
だがそんな周りの空気に関係無く、カビゴンは暢気に欠伸を繰り返している。食べるか眠るかの二択しか無いカビゴンに真剣にやれと言う方が酷な話ではあるのだが……
「まずは小手調べと言った所だな。カビゴン、のしかかりで相手の動きを封じろ!」
『ふあーあ……サッサと終わらせてまた眠るぞぉ……』
いきなりカビゴンはその巨体からは想像出来ない程の高い跳躍を見せ、エビワラーに向かって落ちてきた。潰されてしまえば大ダメージは免れない。
『隙が多過ぎるぜ!』
エビワラーは横っ跳びでカビゴンの押し潰しを回避すると、腹に強烈なパンチを打ち込もうとした。しかし巨体のカビゴンが地面に落ちた際の揺れで足がもつれ、そのダメージを軽減させてしまう。
『ハイもう1回……』
全く怯む事無くカビゴンはその場で倒れ込みエビワラーを押し潰そうとしてくる。エビワラーはカウンターでばくれつパンチを放った。カビゴンは逆の方向に倒れ込んでしまう。
「良いぞエビワラー、そのまま追い討ちをかけて一気に勝負を決めるんだ!」
だがエビワラーは耳を押さえて立ち止まってしまう。カビゴンの鼾が聞こえてきたからだ。
「そう簡単に俺のカビゴンが倒れると思ったら大間違いだぜユキナリ。眠るによる完全回復に鼾の連続コンボ。相手にダメージだけを与えて自分は無傷の勝利……コレが理想だろ?」
(やっぱり簡単には勝たせてくれないか……)
エビワラーには回復の手段が無い為、バトルが長引けば長引く程ユキナリの方が不利になる。
「エビワラー、相手は眠っていて動けない。大技を繰り出して起きる前に決着を付けるんだ!」
『永遠に眠っていてもらおうか!』
エビワラーは怒涛の連続攻撃を行い、鼾を中断させレッドゾーンまでダメージを与えた。その素早い蹴りと正拳は美しささえ感じさせる。もう少しで倒れると言った所でカビゴンが起き上がってきた。
『うーん、もう1回寝るかぁ……』
『寝る前に一撃当てて終わらせてやる!』
レッドはその時まで意味深な笑い顔をしていたが、好機とばかりに叫んだ。
「今だ、お前の力を全て引き出したギガインパクトを放て!」
(ギガインパクト!?)
『その言葉を待ってたぞぉ……』
今度はエビワラーがカウンターを決められた形になった。殴ってきたエビワラーに対して全力での体当たりを敢行する。
強烈なスピードがさらに重さを生みだし、それが凄まじいダメージとなってエビワラーを壁に叩き付けた。
(レッドさんは読んでいた……隙を作り出して防御から攻撃に転じる……タイプ一致のギガインパクトじゃエビワラーも……)
「トレーナーに必要なのは流れを掴む事だ。何時攻めに行くか。そのポイントを理解出来ない奴は伸びない。まずは一勝……!?」
レッドは息を呑んだ。あれだけの攻撃をまともに受けながらエビワラーはまだHPを残していたのだ。そのタフさは彼でも予想出来なかった。
「ギリギリ耐えたぜ……お前もしぶといが俺だってしぶとくならなきゃいけないんだ。マスターがそういう風に俺を育ててくれた。2人分の意志を受け継いだ結果さ!」
走り出したエビワラーは攻撃の反動で身動きの取れないカビゴンを蹴り倒し、何とか勝利を手にした。血まみれのまま荒い息を吐き続けている。
(オイオイ、あの局面でギガインパクトを受け止めるなんてマジかよ……強さは認めていたがココまでポケモンを強く育てていたとはな)
レッドとユウスケは驚愕していたが、ユキナリは最早驚く事は無かった。互いの信頼と今まで培ってきた経験がこの強さを与えている事を知っていたからだ。
(まずは一勝……でも先が見えない。こんな薄氷を踏む様な戦いを何度経験してきたんだろうか。
それでも……恐れちゃいけない。負けるかもしれないなんて考えていたら、レッドさんに対して失礼だ。僕は必ず勝つ!)
「流石トーホクリーグチャンピオン。実力は折り紙付きってワケだ。初戦の結果としてはかなり良いスタートを切ったってやつか?まぁ最終的には俺が勝つけどな」
レッドも同じ様にユキナリに対して無礼を働かない様自分の勝利を確信していた。2人は同じ道を進んできた同志であり強大な敵でもある。それはそれぞれにとって、なのだ。
「次はコイツを使わせてもらうぜ!」
レッドはカビゴンをボールに戻すと、新たなボールをフィールドに投げ入れた。閃光と共にポケモンが出現する。そのポケモンも見覚えのある姿をしていた。
『貴方が経験してきた事の全てを、私に見せてもらいましょうか……』
(ピジョット!アオイさんの切り札だったポケモンか……)
アオイとのジムバトル最終戦もギリギリの攻防だった。実力と知識を総動員しやっとの思いで勝てた相手……あのアオイの悔しそうな表情は忘れられない。
「特殊能力の確認だな……」
ユキナリはポケギアで相手のピジョットの特殊能力を調べた。
『特殊能力・そらをまうはね……『そらをとぶ』を使った時にかみなりを使われても無効化する』
(そらをとぶ→かみなりの2倍ダメージが通用しないって事か……リスクのない技になったと言う事は勿論ピジョットの覚えている技の中にそらをとぶがあるって事にもなる)
ユキナリは今の6匹の中でピジョットに勝てそうな相手を考えた。コセイリンはふぶきを覚えているが大技で命中率も低い。
素早い動きを旨とするピジョット相手にコセイリンは分が悪い。さらに一番の実力があるポケモンを次鋒として出して良いのかとも思った。
(となると、受ける側でも問題の無いポケモンにすべきか……)
ユキナリは結論を出し、エビワラーを戻しボールを投げポケモンを出現させる。
『ほほォ、ワシの相手はピジョット殿か。コイツは楽しみじゃのう!』
(ルンパッパか……迎撃を狙っての選択だな。はなからスピード勝負は考えていないらしい……)
ユキナリも悩んだが命中率の高いれいとうビームとかみなりパンチを覚えているルンパッパに決めた。しかしルンパッパもまたひこうタイプの攻撃に弱い。凄まじいHPの削り合いは覚悟の上だ。
(ユキナリ君のルンパッパはHPと防御力が高いけれど、素早さは低い……対してピジョットの素早さは非常に高い。受けながらも耐えて攻撃を当てる戦いになるのか……)
「リスクを恐れず真っ向から戦いを仕掛けるその勇気は認めてやるぜ。だが、圧倒的な素早さを持つピジョットに攻撃を当てる事が出来るのか?戦闘開始だ!」
合図と共にピジョットは天井近くまで一気に舞い上がった。そらをとぶを使ったのだろう。
対して空中と言うピジョットにとってアドバンテージのある場所に行かれてしまった側のルンパッパは精神を統一させ、反撃のチャンスを伺う為に構えを決して崩さなかった。
「そらをとぶの弱点を挙げるとするならば必ず相手に近付いて嘴を突き刺さなければならないと言う事だ。その代わり比較的安全に攻撃を行う事が出来る……さらにスピードが加われば無敵の技になる!」
舞い上がり方は緩やかだったが降下するスピードは目視確認出来ない程の素早さだった。だが待ち受けていたルンパッパのかみなりパンチはピジョットにヒットする。
ヒットした後嘴が当たりルンパッパは壁まで弾き飛ばされた。ピジョットもまた電撃を浴び苦しんでいる。
(相討ち!)
ユキナリの額に冷や汗が滲んでいた。速さに対応出来たのは良かったがやはり迎撃では相手の攻撃もヒットしてしまう。2匹のHPは同じ程減った。ピジョットの耐久力もなかなかのものだ。
「チャンスを逃すな、れいとうビームでさらに追撃をかけるんだ!」
「こっちも容赦するな、エアロブラストで遠距離からの追撃をかけろ!」
壁に叩きつけられた衝撃から何とか態勢を立て直そうとするルンパッパと、電撃のショックから回復しようとするピジョット。どちらが早く技を出せるかで勝敗の行方は大きく変わる。
そして互いに技を放ったがそれが同時であった為、またダメージを受け合う事になった。
『また、相討ちかッ……!』
『やってくれますね……私をココまで追い詰める等完全に予想外です……』
レッドゾーン状態のまま睨み合う両者。互いにボロボロでありながらその瞳は決して諦めぬ闘志の炎が燃え盛っている。次の一撃で勝負が決まりそうだった。
「ゴッドバードだ」
レッドの一言にユキナリは耳を疑った。ターン消費の技を今ココで使おうと言うのは自殺行為である。ユキナリは構わずルンパッパの攻撃を見守った。
ルンパッパは近付いてかみなりパンチをヒットさせる。にも拘わらずピジョットは耐えきりその身体に黄金色の炎を纏わせた。
『私の最高の技を見せてあげましょう!』
その凄まじい体当たりに成す術も無くルンパッパは敗れ去った。再び壁に叩き付けられ倒れ込む。
(な、なんて事だ……素早さだけでなく防御力もまた……)
だがピジョットがレッドゾーンである事には変わりが無い。ユキナリは怯まず再びエビワラーを出現させた。レッドゾーンではあるが若干ピジョットよりもHPが残っている。
「相討ちを狙ってきたか。ピジョット、そいつも落としてやれ!」
レッドもまたすぐに対応策を考えピジョットに命令を下した。ピジョットはエアロブラストを放つ。だがエビワラーはその時点で射程距離へと迫っていた。
『俺の一撃で道が開かれるのなら、どんなに苦しい状況でも勝ちを目指してやる!』
『馬鹿なッ、ルンパッパと違いこのスピードは……』
一瞬そのスピードに驚いたピジョットは、エアロブラストをくらいながらもメガトンパンチを当ててきたエビワラーに敗れ去った。両者は相討ちとなり同時に床に落下する。
「ハハ、参っちまったな……」
レッドは片手で髪を掻き上げながら溜息をついた。
(一級品の力と技を持っている俺のポケモンと全く互角の勝負を繰り広げている……嬉しい誤算かもしれないな。この高揚感は何度も味わったが、今回ばかりは特別だ!)
「僕は旅の中で様々な体験をしてきました……時には命が危険に晒される様な出来事も……それでも前だけを向いて進んできたんです。全ては貴方と同じゴールを目指す為に!」
2人が戦う理由はまさにそれだった。たった1つの椅子をエリア中の人間で奪い合う。日本だけでは無い、世界中で同じ椅子取りゲームは永遠に続いていくのだ。
2人は今、その椅子に座る権利を得ようと躍起になっているに等しい。
「ルンパッパの矜持見させてもらったが、生憎こっちもそう簡単に時代を明け渡すワケにはいかないんでな。次で大きく引き離させてもらうぜ!」
レッドはピジョットをボールに戻し、今度は美しい藍色のボールをフィールドに投げ入れた。
閃光と共にポケモンが姿を現す。その姿はまたも見た事のあるものだ。
「ニョロボン……!」
「水の美しさと格闘の逞しさを併せ持つ上級者御用達のポケモンってトコだな。コイツの場合は特殊攻撃と素早さが充実してて扱い易いぜ」
ミズキと戦った時はその圧倒的なタフぶりに驚いたものだった。勝負の決着を彼の土俵で付けようとし、そして勝利した事は忘れられない。
(今までずっとそうだった……沢山の人達その1人1人が懸命に戦い、僕に何かを残してくれている。良い事も悪い事も全部含めて……)
ユキナリは記憶に思いを馳せながらポケギアの項目を押した。
『特殊能力・熱血闘志……攻撃が相手に命中する度に、攻撃力が上昇する』
(連続で当てていくのが信条か……素早さが高く相性の良いポケモンが求められるな。ミズキさんのニョロボンとも戦った彼女ならきっと……)
そう思い、ユキナリはフィールドに選んだボールを投げ入れた。出現させたのは相手を翻弄するバトルスタイルが自慢のヤナギレイだ。
『マスター、とうとう私の出番ですか……精一杯頑張らせてもらいますね♪』
ヤナギレイならば格闘技を完全に封じる事が出来尚且つエスパー・ひこう技を習得している。ニョロボンにぶつけるにはまさにうってつけの相手だ。
(タイプ一致きあいだまを封じられたか……サイコキネシスも大して効かないし……水一本でやるしかないな。面白いタイプのポケモンを出されたモンだ)
劣勢の状態から何度も勝敗を引っ繰り返してきたレッドにとって背水こそ望むものであった。窮地に立たされても諦めないその強い精神こそ彼が最強者と言われてきた所以である。
「お前がどんな手段を講じても俺のポケモンの力の前では意味が無い事を見せてやろう、ニョロボン、まずはマリンスラッシュで相手の出方を伺え!」
『了解致しました、マスター』
試合が始まると同時にニョロボンの掌底から鋭い刃の良いな鉄砲水が飛び出した。挨拶代りの一撃はヤナギレイの腕を掠める。
彼女の素早さを持ってしても簡単に回避出来る様な攻撃では無い。ヤナギレイの頬に冷や汗が伝う。
『威力はそこまで強くは無いですけど、なんて速い攻撃……』
『驚いている暇があるのか?動ける前にダメージを与えてみせろ』
そう言いながらニョロボンはマリンスラッシュを連発した。連発でも狙いは正確無比で、このまま逃げ続けるのは何も出来ずに負けてしまう事に等しい。
『この攻撃を受けてください!』
ヤナギレイも手から紫色のオーラを作り出しニョロボンにそれを命中させた。だが相手は思っていた程のダメージを受けていない。
(特殊防御も優秀と言う事なのか……なら、別の技で攻めさせる!)
「ヤナギレイ、エアロブラストを使うんだ!」
既にヤナギレイはマリンスラッシュの連続攻撃を受け続け体力を減らしている。大技を決めなければ苦しい展開になるだろう。ヤナギレイも覚悟を決め準備に入った。
『マスターと一緒に培ってきたものを、成果を見せる時ですね!』
『面白い。見せてもらおうかその成果とやらを……』
「ニョロボン、サイコキネシスより回避可能性の高いエアロブラストならサッサと避けてしまえ。体力を充分に残しておくんだ!」
『残念だがマスターの命令だ。その成果は見れないな』
ニョロボンの攻撃は苛烈さを増し、ヤナギレイのHPはレッドゾーンに入った。だがその時にはヤナギレイも技を出す準備が整う。
『恐れない……貴方がどんなに強くても私は先に進みます!』
凄まじい風の渦が唸りをあげてニョロボン目掛けて飛んでいく。ニョロボンはバックステップでの回避を試みたが、軌道をずらしたヤナギレイの作戦により渦の中に入ってしまった。
『まだこんな力が残っていたと言うのか!』
大きなダメージを受けながらも何とかそこから逃れ出たニョロボン。レッドゾーン状態でギリギリ立っているのがやっとの状態だった。
ヤナギレイはさらなる追い討ちをかけようとサイコキネシスを再び繰り出す。しかしニョロボンにも秘策があったのだ。
『まだ私も全ての力をお前に見せてはいない……見せよう、私の真の力を!』
ニョロボンの両手から決壊したダムレベルの水流が出現した。それが先程のマリンスラッシュと同じ様に凄まじい勢いでヤナギレイ目掛けて飛んでいく。
ヤナギレイの放ったサイコキネシスがまず最初にニョロボンにダメージを与え、それからヤナギレイにその攻撃が当たった。
「水タイプ最高クラスの技、ハイドロカノンだ!」
両者はHPがゼロになりその場に倒れ込む。勝負は壮絶な引き分けに終わった。
(水タイプの攻撃だけであれだけ攻められるなんて……もっと有利に勝負が進むと思っていたらこの結果か。流石レッドさんと言った所だな……)
ユウスケはレッドとユキナリの試合を眺めつつも、その内容が今までのものと全く異なったものである事を感じていた。
今までの試合はユキナリが気負いを感じていたと言える。相手の力量に対しての恐れを抱いていた……だがこの戦いにはそれが無い。
「貴方と戦っているとそれだけで、とてもワクワクしてくるんですよ……こんな事初めてです」
「ユキナリ、それはお前が成長して俺のレベル近くに達しているからだ。今までのお前にはそうなるだけの心の余裕が無かったってだけの話だろ」
レッドの言葉は核心を突いていた。実力が無いからこそ、相手に圧倒され怯える事しか出来なかった。だが今は違う。余裕と実力を確実に兼ね備えてきている。
「だが、そうやって楽しんでいられるのも今の内だぜ。次に俺が出すポケモンは俺がお前と同じ年の頃から愛着を持って育ててきた最高のパートナーだからな」
(最高の、パートナー……)
ユキナリにとっての最高のパートナーは恐らくコセイリンであろう。旅が始まった時から側にいて、ユキナリを助けてくれた。
ポケモンとしてはユウスケと同じ様に共に泣き笑った相手である。彼はレッドのパートナーに興味がわいた。
「出てこいよ、派手に暴れようぜ!」
レッドはニョロボンをボールに戻すと、少々薄汚れている通常のモンスターボールを取り出した。それをフィールドに投げ入れる。閃光と共に金色の毛を逆立てた立派な体格のポケモンが姿を現した。
『レッド、俺の対戦相手は何処にいる?早く戦わせろよ!』
「まぁまぁ落ち着けって。何時もお前はそうやって事を急ぎたがるよなぁ……」
(ライチュウ・・・!電気タイプポケモンの中では屈指の素早さを誇るポケモンだ!)
「真打もいるにはいるが、ライチュウと俺の付き合いはかなり長いんでな。ツーカーの仲みたいなモンは形成してるぜ。コイツ相手にどう戦うのか、お手並み拝見と言った所か……」
ユキナリはヤナギレイをボールに戻すと、ポケギアの画面を見た。
『特殊能力・スパークコール……同じ技を続けて出せば出す程素早さが上がる』
(メトロノームみたいなものか……技が当たったかどうかは関係無く上がるのは厄介だ。その素早さについていけるポケモンを選択しないと……)
ユキナリは慎重にボールを取り出すと、フィールドに勢い良く投げ入れた。こちらも閃光と共に下卑た笑いを浮かべたポケモンが出現する。
『シャ、シャ、シャ……まさか伝説と呼ばれるトレーナーのポケモンと手合わせする事になろうとはな。マスター、アンタも気分が高揚してんだろ?最初から全力でやらせてもらうぜ!』
ガシャークは毒と悪タイプの技を持っている。どちらも効果抜群と言うワケにはいかない。対するライチュウはノーマルタイプと電気タイプの技を持っていた。互いに相手の弱点は付けない状態だ。
「思いだすぜ、マチスに勝つ為にお前に雷の石を使った時の事を……あの時から長い時間が経ったが、あの時の熱さは俺と同じでまだ持ってるんだろう。絶対に手加減はするなよ!」
『ああ、解ってるぜレッド。俺も遠慮なんてしねェよ!』
ライチュウはそう言うが早いか残像を残しながら凄まじい勢いでの体当たりを敢行した。ガシャークもまた鋭い歯を覗かせ噛みつこうとする。
一瞬2匹の姿がユキナリの視界から消え、再び姿を現した時には互いにダメージを負っていた。
(全く目視確認出来なかった。どっちも凄い速さだ!)
『おいおい俺のしんそくについてくるなんてなかなかやるじゃねェか。面白ェ……どっちがより優れた力を持っているのか、純粋な力試しといこうぜ!』
『望む所よ、シャーシャッシャッシャッシャッ!』
ライチュウは横っ跳びで回り込むと手から電撃を放った。ガシャークは跳躍でそれを避けるとライチュウに毒液を浴びせかける。
ライチュウは毒液を浴びてしまったが態勢を立て直すと電撃をヒットさせた。2匹の実力は完全に拮抗している。
『俺のスピードについてこれる奴なんてそうそういねェってのによ……レッド、どうやらくらっちまったみてェだ。かなり身体がだりぃ……』
(不味いな、どく状態か!今日は運も悪いみたいだぜ……)
ライチュウの顔色が変化していた。今の所体力は同じだが長引けば長引くほど毒のダメージを受けるライチュウの方が不利になる。ガシャークはそれを察知していた。
『だが俺は逃げには徹しねェ。臆病者と蔑まれるのはゴメンなんでなぁ!』
ガシャークは走り、飛び上がって再び噛みつこうとした。ライチュウは意識が朦朧とする中で条件反射的に電撃を放つ。だがその攻撃は当たらず、鋭い牙が身体に食い込んだ。
『さらに毒を牙から注入される気分はどうだァ!?』
「ライチュウ、こうなったら仕方が無い……でんじほうを使え!」
『へへ、俺をなめんなよ……誰のポケモンだと思ってやがるんだ……』
頬袋に電気を溜め、牙から電気を通すライチュウ。ガシャークの方はそのダメージを受け続けない様飛び退ったが、それが不味かった。ガシャークは相手の攻撃の射程距離にいたのだから。
『くらいやがれェ!!』
雄叫びと共にライチュウは身体に溜めこんでいた全ての電気を解放した。それはビーム砲の様な形となりガシャークに襲い掛かる。ビームはガシャークに当たり、壁に勢い良く叩き付けた。
『どうだ……やってやった……ぜ……』
ライチュウはどくのダメージでHPがゼロになり気力を失って倒れ込んだ。一方ガシャークの方は大ダメージはくらったものの辛うじて立てている。レッドは驚きを隠せなかった。
「俺のライチュウの最高の技を受けながらHPを残しているとはな……タフ過ぎる。凄いぜユキナリ……お前みたいなトレーナーにずっと会いたかったんだ!!」
「僕もですよ。今の僕の全力を受け止めてくれるトレーナー……貴方に会えて本当に良かった。勝ちたい……心からそう思わせてくれる最強者である貴方に!」
(一歩も引いてない……ユキナリ君もレッドさんもだ。攻防のレベルが違う。沢山の戦いを見てこれたけど、別格だよレッドさんは……そして成長したユキナリ君も)
バトルフィールドはこれだけの戦いが展開されていながらも傷1つついていない。レッドがリーグチャンピオンの稼ぎを投じて作らせた特注の部屋だからだ。
その莫大な財産を得る事が出来る職業から離れていったのも、全てはユキナリの様なまだ見ぬ強きトレーナーと戦う為だった。
「お前の実力は重々承知してる。それでも言おう。次のポケモンにはそう簡単には勝てない。鍛え上げたお前のポケモンでもな。それ程の強さがコイツにはある」
レッドはライチュウをボールに戻すと、エメラルドの光を放つボールを投げ入れた。閃光と共に姿を現したそのポケモンはかなりの巨体だ。
だがその巨体の威圧感よりももっと凄まじいある種の気品の様なものが感じられる。
『マスターからある程度の話は聞いていたが、随分小さい子供だのう。わらわが初めてマスターと出会うた時の事を思い出すわ……』
(カイリュー……!ドラゴンタイプの重鎮、ポケモンの歴史の中で最も早くに発見された伝説級の力を持つポケモンか!)
神々しいばかりの存在感を放つカイリューは、ボロボロになったガシャークを見つめていた。
『どうやらかなり体力を消耗しているみたいだのう。その体ではわらわには指一本触れられぬぞ』
『チィ……体調が万全なら叩きのめしてやる所だぜ……』
(今まで以上に慎重にいかなくちゃ……ドラゴンタイプのポケモンはリュウジさんやナキリさんも使ってきた。それだけ総合力が高いポケモンなんだ。油断していたら負ける……)
ユキナリはポケギアの項目を開いた。
『特殊能力・神風聖凛……あらゆる状態異常が無効となる』
(どく状態とかにもならないって事か……力押しで攻めるしか無いって事だな)
「随分神妙な顔してるじゃないかユキナリ。何故か解らんが俺もカイリューを見るとそうなる……天に近いポケモンだからなのか……詳しい事は解らないけどな」
『マスターの為にも出来る限り足掻いてやるぜェェェェ!!』
ガシャークはありったけの力を振り絞り飛び込んでいったが、カイリューには軌道を見切られていた。
『無粋な奴じゃのう。わらわはお前の様な下品な輩は嫌いじゃ……』
カイリューはエメラルド色の吐息をぶつける。溜息の様なその一撃だけでガシャークは力尽きてしまった。体力の少なさもあったが圧倒的な攻撃力をユキナリに見せ付けた形だ。
(息をするだけで相手を倒す。その余裕もドラゴンタイプならではのものか……リュウジさんのポケモンも強かったがそれより遥かに上……どちらを選ぶか……)
残っているのはコセイリンとフライゴン。どちらも相手の弱点を突けるがコセイリンを先に出すべきか最後の勝負に残しておくか暫く迷った。
「レッドさんのポケモンは、第一世代を象徴するものばかりですね」
「ユウスケ……だったっけか。俺は古いと思った事は無いぜ。確かに図鑑に載った151匹の中にいるっちゃいるがな。それでも新しく発見されたポケモンと互角以上に戦えるんだぜ」
(ユキナリ君の持っているポケモンは殆どが新しいものばかり……まさに新旧勝負と言った所なのか)
「決まりました。このポケモンで勝負させてもらいます」
ユキナリは覚悟を決めるとフィールドにボールを投げ入れた。
『ユキナリさん、とうとう僕を使う時がやってきましたか!』
出現したのはコセイリンだった。大将としてとってはおきたかったが、やはり吹雪での4倍ダメージ、確実な勝利を得る為の策を取るべきだと判断したのだ。
『ほほう、随分賢そうな童じゃのう。わらわの相手としては不足無し。全力でやらせてもらおうか……』
(コセイリンのスピード、攻撃力、そして精神力……僕のパートナーに任せる!)
「カイリュー、相手はほのお・こおりだ。恐らくこおり攻撃を使ってくる。最初から全力でいけ!」
『了解じゃ、さて……どう料理してやろうかのう』
カイリューは空へ舞い上がると、吐息を次々に放った。コセイリンは弾丸の如く繰り出されるその吐息を軽く避けてみせる。カイリューの顔色が変わった。
『そんな遠くからの攻撃じゃ僕には届きませんよ!』
『言うではないか。では、この攻撃は避けられるかのう……』
カイリューは大きく息を吸い込むと、エメラルド色の吐息をビーム状にして吐きだした。
「リカバリキャノン。HPを大きく削るが攻撃力は150。ドラゴンタイプの攻撃でタイプ一致。となればコセイリンでも不味いだろ……」
そのビームは何処までもコセイリンを追いかけてくる。コセイリンは大きくジャンプしてカイリューの眼前に迫った。そして目の前で吹雪を繰り出す。
『馬鹿な、わらわの放った攻撃と吹雪を合わせるつもりか!』
コセイリンは背中で攻撃を受けたが爆風はカイリューにも直撃し、吹雪のダメージも受けてあっと言う間に瀕死の状態になった。
一方コセイリンの方はリカバリキャノンで大ダメージを受けてレッドゾーンになったものの何とか立っている。勝負はあっと言う間に決まった。
(ハハ……参ったぜ。俺のカイリューまでもが蹴散らされるとはな。リカバリキャノンを耐えるなんて予想外過ぎた……あとは俺の切り札しか残ってないのか)
時間にして僅か20分。20分しか経過していない。にも拘わらずお互いの精神力をフルに使う戦いは続いていた。この勝負が最後の勝負となる。
「負けていった人達の為にも僕は負けられません。この戦い絶対に勝たせてもらいます!」
「嗚呼、セキエイリーグ決勝戦の再来と言った所か……ココまで追い詰められたのは。ゴールドと戦った時もそうだったがこういう局面での足掻きはなかなかのモンだぜ。
俺は決して最後まで諦めない。俺を信じて戦ってくれる奴等の為にもな」
レッドは意を決してカイリューをボールに戻しフィールドに最後のボールを投げ入れた。閃光と共に紅蓮色のモンスターが姿を現す。その目は鋭く光っていた。
『マスター、俺が出なきゃいけない所まで来ましたか。こりゃ大変だ……』
(御三家の代表格リザードンか!レッドさんの切り札はやっぱり炎ポケモンだったんだな……)
ユキナリにはある程度解っていた。それだからこそフライゴンを残しておいたのだ。焦る気持ちを抑えつつユキナリはリザードンの特殊能力をチェックする。
『特殊能力・咆哮……相手の防御力をターン初回のみ二段階下げる』
(なかなかきつい能力だな……でも、勝てない相手じゃ無い!)
「悔いを残さない戦いをしろよユキナリ。俺もそうするからな……」
レッドの姿が一瞬今の自分と重なって見えた。だがユキナリには解っていたのだ。その重なりが真実である事を……彼は自分の合わせ鏡の様な人物、
同じ正義を貫いてきた男なのだ。だからこそ絶対に負けるワケにはいかない。
(とうとう決まるのか……カントーの覇者とトーホクの覇者、どちらが強いのか……その結論が出る!)
「コセイリン、出来るだけ相手のHPを削れ!」
『ええ、解っていますよユキナリさん!』
コセイリンはかえんほうしゃを放った。リザードンにはあまり効果の無い攻撃だがそれでもダメージを与えておきたい。だがリザードンは甘いとばかりに同じ技を繰り出す。
『その技の本家が俺だって事を教えてやるぜ!』
かえんほうしゃはコセイリンの出したかえんほうしゃを完全に呑み込んでコセイリンを襲った。コセイリンのHPはゼロになる。ユキナリはコセイリンをボールに戻した。
(リザードンだったか……炎ポケモンだと言うのは解っていたけど計算が狂った。炎・飛行タイプのポケモンじゃあ地面タイプの技は当たらない!)
こうなれば相手からくらうダメージが少なくなる事を期待してフライゴンで勝負をかけるしか無い。幸いな事に特殊能力はコセイリンが受けてくれていたのでフライゴンの防御力は下がらないのだ。
「コレが僕の出す最後のポケモンです!」
ユキナリはコセイリンをボールに戻しフライゴンを出現させた。
『私に相応しい大舞台を用意してくれた事感謝しますよ、マスター』
「フライゴン……お前もドラゴンタイプのポケモンを持っていたのか。兵同士ってのはやはり扱うタイプが似通るモンなのかね……だが全力で行くのは同じ事だぜ!」
『まずは小手調べと行くか……俺の力を見せてやるぜ!』
リザードンは空中に飛び上がり、フライゴンも距離を取りつつ上空へ移動した。その瞬間リザードンは目視確認出来ない程のスピードでフライゴンに迫り爪で相手を引っ掻く。
『なッ……!!』
『お前の防御力、一段階下げてやったぜ。どんな手を使ってでも勝ってやる!』
『私も、負けられない事は解っているでしょう!』
フライゴンもドラゴンクローでリザードンの肩に傷を負わせた。勝負は自然に接近戦となる。
引っ掻き、噛みつき……組みついてさらに追撃したり……技の応酬は続き気付けば2匹のHPはレッドゾーン近くまで減っていた。
『ハァ……ハァ……まだだ、こんな所で終わるかよ……』
『ココで……勝たせてもらうぞ……絶対に!』
フライゴンは荒い息を吐いているリザードンから離れ距離を取るとりゅうのいぶきを繰り出した。カイリューが一発でガシャークを屠ったあの技と全く同じ威力……
いやそれ以上の攻撃がリザードンに襲い掛かる。白目をむきながらもリザードンは耐えた。
『終わらせられねぇ……何としても俺が勝つんだ。何としても……』
「リザードン、後ろだ!」
反射的に振り返ったその後ろにフライゴンがいた。フライゴンはりゅうのいぶきを放った後こっそり背後に回り込んでいたのだ。
すかさずリザードンはかえんほうしゃを放つ。その前にフライゴンのドラゴンクローがヒットしリザードンは地面に落ちていった。
そしてフライゴンは……属性有利とはいえかえんほうしゃをくらったにも関わらずまだ立っていたのだ。勝負は決まった。
「今となっては……一瞬で決まった様な気がするぜ、ユキナリ」
レッドは涙こそ流していなかったものの、悔しそうな……それでいて晴れやかな表情をしていた。自分が負けた事に対して文句を言う事は無い。そんな表情だった。
「レッドさん、貴方は本当に強かった……あっと言う間に勝負が決まってしまったのは僕と貴方の実力が同じ位あったからです。もう1回やって勝てる自信があるかと言われれば……」
「謙遜すんな。お前は充分強い。もう誰が相手でも負ける事は殆ど無いだろ。お前が次の時代を担うホープなんだよ……俺はそれを見守りながら、また戦いの中に戻るだけだ」
ユウスケはユキナリに駆け寄り彼を祝福した。
「凄いよ、本当に凄い!レッドさんに勝つなんて!!」
「うん……自分でも信じられないよ……」
「オイオイ泣くなっつの。お前が泣いてちゃ俺が勝ったと思われちまうぞ?」
レッドの目にも少しだけ涙が滲んでいたのをユキナリは見逃さなかった。
(僕の為に涙を抑えてくれているんですね……レッドさん……)
「さてと、お前に渡したいモンがある。受けとって……」
「ちょーっと待った!!」
レッドの言葉を遮って部屋の中に踏み込んできたのはグリーンともう1人、綺麗な青色の髪をしたショートカットの女性だった。グリーンと同じかなりラフな格好をしている。
「駄目よアンタがバッチを渡しちゃ。第一線で活躍する事を諦めてないアンタと、それを諦めて研究者の道に入るグリーン……どっちがバッチを渡すべきか解るでしょ?」
「マリン……俺はユキナリに負けたらバッチを差し出すって決めてたんだ。今になって横からグチグチ言うな」
「いや、俺もそれが言いたかったんだ」
グリーンは少し俯くと、遠慮がちではあったがハッキリとした口調で話した。
「俺もユキナリに負けてる……マリンの言う通りトレーナーとしての道を諦めた。そんな俺がバッチを持っていて何になる?笑い者になるだけだ。
お前はバッチを持っていても問題無い。俺がユキナリにバッチを渡すのが筋なんだと思う」
「いや、しかし……」
「頼む、レッドの為にも……俺のバッチを貰ってくれ!俺の為にも……だ」
懇願するグリーンに困惑したものの、ユキナリは黄金に輝くそのバッチを受け取った。ユウスケもこんな間近で見るのは初めてらしく驚いている。
「コレが……最強者にしか与えられないと言われているマスターバッチ……」
「そうだ。お前が倒したゴールドもまたバッチの保持者……俺もセキエイリーグのチャンピオンパープルからバッチを受け取った。受け継がれていくモンなのさ……このバッチは。
リーグ運営が開始された時からずっと力の象徴として存在し続けている」
「ホラ、私も持ってるのよ!」
マリンと呼ばれていた女性はユキナリにレッドが持っていたバッチと同じデザインのそれをかざしてみせた。
「全エリアで保持出来るのはたったの5人……カントーにバッチが集中してるのは色々と昔事件があってな……長くなるから止めておくがともかくこいつも持ってるんだ」
レッドは大きく伸びをするとユキナリの方を見た。
「いやはや、疲れちまったなァ……真剣勝負をすると肩がこるわ。ちっと甲板に出て一息つきたい所だぜ……お前も来るか?」
「ええ、僕も貴方と同じ気持ちです。疲れました……」
高速船アクア号の甲板に5人の若者が立っていた。皆思惑こそ違ったが何かを考え、暫く全員が押し黙っていたが、マリンが最初に話し始める。
「……負けちゃったのよね、レッドが」
「どんな奴だって何時かは負ける日が来るさ。それが何時になるか解らないだけでな。ユキナリだって……何時かはその時が来るだろう。だが決してその時を恐れるなよ」
「はい……負けて涙を流す、僕の相手を数多く見てきました……でも必ず僕の相手になってくれた人は諦めずに次を目指しています。僕もそうありたいですからね」
(この戦いにユキナリ君が勝利してグリーンさんからマスターバッチを受け取った……コレは本当に歴史に残る戦いだよ……それを見れた僕は幸せ者だ)
ユウスケはまだ少し複雑な気持ちだった。追いつきたい、少しでも近くに。親友だから……しかしその願いはかないそうに無いのだ。
「ユウスケ、この旅が終わっても僕達……ずっと友達だよね」
笑顔を見せてそう言うユキナリの目は真剣そのものだった。
(……でも今は、こう言ってくれるユキナリ君がいてくれるだけで充分だな……)
ユキナリとレッドの戦いは裏から伝わり表に流れ、衝撃的なニュースとして全エリアに流れた。
単なる噂の為様々な憶測が乱れ飛んだが、ユキナリがマスターバッチを胸に付けていた為レッドに勝利した事実は明るみに出る事となる。
「アイツ……何処まで上に行くつもりなんだろうな」
新聞を読みながらトサカは溜息をついた。
「でもよ、越えられない壁は無いんだぜ。そうだろユキナリ……」
新聞をゴミ箱に捨てると彼は歩き出した。その高みに向かう為に……
1つの物語は終わり、新しい物語が紡がれる。
その物語は……この物語と繋がり本当の完成を迎えるのだ。『ユキナリの戦い』は……まだ終わらない。
ポケットモンスターホワイト 完