ポケットモンスタースノウホワイト −吹雪の帝王ゴウセツ−

小説トップ
ポケットモンスタースノウホワイト −吹雪の帝王ゴウセツ−
第1章 4話 『白の街コヤマタウン』
「ユキナリ君、一体どうすれば?」
「全力で体当たりをしてくるジグザグマと並行に走る。そして奴が方向転換しようとした瞬間に鬼火を放つんだ。
 方向を変えるのが難しいジグザグマなら命取りになる攻撃しか方法は無い!」
『ええ?あんなスピードについていくんですか?』
「それしか無いんだコエン。出来るだけでいい。なんとか走ってくれ!」
『わ、解りました。出来るだけ全力で走ります!』
「大丈夫かな……」
 ユウスケは緑色のモンスターボールを取り出していた。
「コエンがピンチになったら、僕すぐにカレッキーを出すからね!」
「ユウスケ……」
 ユキナリは前を見据えた。ここで引いたらきっと自分はポケモンと仲間になれないだろう。彼は何故か、そう感じたのだ。

『それ!』
 再度頭突きをくらわそうと猛スピードで走ってきたジグザグマをギリギリのラインで避けると、
 その瞬間コエンはジグザグマとキッチリ並行に並んでダッシュしていた。
 ジグザグマは驚いたが、走っている間に攻撃を仕掛ける事など不可能。
 そのまますぐに諦めるだろうと思い、走り続けた。コエンも止まるまで技を出せるワケが無い。
「精一杯走るんだ、頑張ってくれ!」
 ユキナリはコエンを応援した。ポケギアを見るとコエンの体力は先程の頭突きで半分減ってしまっている。
 このまま走らせても無傷のジグザグマとは差があり、倒れてしまうかも知れないと言う危惧はあった。
「ユキナリ君、無謀過ぎるよ!コエン、かなり体力を消費してるじゃないか!」
「これしか方法が無いんだ。これしか……」
 ユキナリは目を背ける事無く、真剣に前を見ていた。

 コエンの走行も限界だった。もともと先程の頭突きで体力を大幅に削られており、体が痛む。
 (でも、ここで走るのを止めたらジグザグマの格好の餌食だ。食い下がるんだ……なんとしても!)
 ジグザグマは内心恐れを感じていた。全く速度を落とさずに自分の速さについてきている。
 しかもさっき自分が頭突きをくらわせたのにも関わらずだ。さらにスピードを出し相手を振り切ろうとする。
 ジグザグマは視界が悪くなっていた。懸命に前だけを見つめていたのだ。
「!危ないコエン、前に大木があるぞ!」
 コエンは頭の中が真っ白になっていた。それでもその言葉は耳の中に入ってくる。
『クッ!』
 コエンは走るのをやめ、大木の手前で何とか踏み止まった。あと数秒走っていたら激突し、
 瀕死は免れなかった所だろう。一方ジグザグマはコエンが走るのを止めたのを機会に、ここで一気に勝負をつけてしまおうと直角に方向転換した。
 その方向に枯れ木があるのにも気付かずに。

 鈍い音がして、変種ジグザグマは無様に枯れ木の洗礼を受けていた。スピードの関係上ダメージも大き過ぎる。
 枯れ木が根元から折れ、ジグザグマはそのまま倒れてしまった。
「ユキナリ君、モンスターボールを投げて!」
 ユキナリは頷くとすぐに気絶したジグザグマに向けて買っておいたモンスターボールを投げつけた。
 軽くジグザグマに当たると、ジグザグマを吸い込み、振動する。
「頼むぞ、逃げないでくれ……」
 ユキナリが願う中、青いスーパーボールの中央に位置している赤ランプが光り……そして唐突に消えた。
 ユキナリはこの日、生まれて初めてモンスターを捕まえる事に成功したのだ。
「やった……」
 ユキナリは地面にへたりこんだ。ユウスケはその間にコエンの方に向かうと、コエンにリュックの中に入っていた『傷薬』を使用する。
 傷に塗りつけると、すぐにその傷が消えていった。
「結構傷が浅かったから、簡単に治ったよ」
 ユウスケはモンスターボールを拾い上げるユキナリに呼びかけた。
「良かった……初めて捕まえたんだ。僕達の手で……」
 ユキナリは何故か凄く疲れた。緊張が解けたせいだろうか。コエンも無事で、ジグザグマを捕獲した。大成功だ……
 ユキナリの踏み出した1歩は非常に大きかった。

 数分後、ユキナリとユウスケは枯れ木の林の中を何事も無かったかの様に歩いていた。
 ユキナリの腰についているボール。紅蓮のボールの中ではコエンが休息している。
 ジグザグマは赤いボールの中で気絶したままだ。
「ユキナリ君。コエンは凄いね……君のアイディアも。僕、感動した……ジムリーダーのゲンタに挑めるかもしれないよ!」
「うん……僕だって勝ちたい。でも、まだ3匹じゃ無いんだよね。ポケモン……」
 ユキナリにとって、それは悩みの種だった。ユウスケもジムに挑む。その為のポケモン3匹はカレッキー、マッド、ボタッコとすでに揃っていた。
 しかしユキナリは違う。この森であと1匹ポケモンを捕まえさえすれば、状況も変わって来るのだが……

 ユキナリとユウスケは枯れ木の林の中を進んでいた。先程からずっと『ヒットチャート』の音楽が流れており、出現率86%を保っているのだが……
 ポケモンが現れない。ユキナリは現在2匹しかポケモンを持っておらず、ジムリーダーに挑めない状態だった。
「ねえ、ユキナリ君。47番道路に出現するポケモンをチェックしておいた方がいいんじゃないかな……」
「え、ポケギアで解るの?」
「うん。セカイさんの『トーホクぶらり旅』の過去記録の中には、47番道路のポケモンデータがあるハズだよ」
「やってみようか」
 ユキナリは音楽を一旦止め、ポケギアを操作しポケギアが記録している過去のデータを探っていった。
「あった。『始まりの森・出現データ』だね……」

『――始祖がいた所にしちゃ、随分ポケモンが少ないね。あと、ホウエンやカントーで発見されているポケモンが変種になっただけって所も面白いな……
 まあカントーやジョウト、ホウエンはトーホクと陸続きだし、おかしくもなんとも無いんだけどね。
 紹介に行こう、まずは変種ジグザグマ、変種スバメ、変種ポッポ、変種ハネッコ、変種……』
「ユキナリ君、あれ!」
「ユウスケ、聞いてるんだから静かにしてくれない?」
「そうじゃ無くて、いるよ。いるんだよポケモン!」
「!?何処、何処?」
「ホラ、あそこの枯れ木によっかかって寝てる……」

 白い体色のハスボーが、枯れ木に寄りかかり寝入っていた。

「うわ、随分気持ち良さそうに寝てるなあ……」
「うん。なんか眠たくなってくる位」
 ハスボーはジグザグマと同じくホウエン地方で確認されているポケモンだ。しかし変種ハスボーは頭が茶色い。
 枯れたハスの花の様になっていて、体色がやはり真っ白だった。
「変種ハスボーは……『くさ・こおり』だよ!みず系の技も一応使えるみたいだけど、威力は強くないね」
「そっか、さっきのジグザグマも『ノーマル・こおり』だったんだよね……トーホクはこおりが多いからかな」
「で、ユキナリ君……ボール、投げる?」
「起こしてからにしようよ。僕、正々堂々の戦いがしたいんだ」
「えー?チャンスなのに!傷薬で一応コエンの体力は回復してるけど、精神力が……」
「ううん。僕はポケモンを自分のパートナーにする為には戦いで勝たなきゃ資格を得れないと思う。
 コエンだってきっと解ってくれるハズだよ」
 ユキナリは紅蓮に輝くモンスターボールを握った。
 (ゴメン、もう少し頑張ってくれ。コエン!)
 解放ボタンを押すと、コエンが出てきた。
『また僕の仲間を見つけたんですか?ユキナリさん』
「あそこで寝てる奴なんだけど……ハスボーだよ」
『ううん……あのポケモン、みずタイプの技も使えるんですよ。戦いに移るとこっちが不利になる可能性が……』
「頼む、僕は君と一緒に正々堂々の戦いを経て、仲間を増やしたいんだ!」
『……解りました。僕にもユキナリさんの気持ち、よく解ります。起こしましょう。ただし……
 逃げ出してしまったらどうしようもありませんよ?』
「それでも構わない。卑怯な事をするのは好きじゃないから」
「ユキナリ君……」
 ユウスケは確固たる意志を持って話しているユキナリが一段と眩しく見えた。

「コエン、ハスボーを起こしてくれ!」
『大声でも出しましょうか……オーーーーイ!』
 ポケギアとは別に、コエンの口から甲高い鳴き声が響き渡った。林全体に広がっていく程のデカイ声だ。
「うわ、耳がキーンとするよ……」
 ユウスケは慌てて耳を塞いだ。ハスボーは嫌でも目が覚めるだろう。当然、ハスボーは飛び起きる。
 いきなり大声が聞こえて目を覚ますと近くにポケモンがいる。人間2人がいる。変種ハスボーはパニック状態に陥った。

 逃げる事も考えられず、近付くなとでも言わんばかりにハスボーは水を放射した。
「『みずげい』だね……通常の攻撃判定とは別に、『つまり』も時々起こるみたい」
「みずげい?つまり?」
 ユキナリはポケギアで技を確認した。
『みずげい(水芸)、水を四方八方に噴射して敵を攻撃する技、命中率は100%。『つまり』状態になると水がポケモンの体の中に入り、
 むせてダメージを受ける。効果はしばらく続く』
 コエンは『こおり・ほのお』。ほのおの特性が特に出てきているので、この攻撃は効いた。
『うわああっ!』
 コエンは一気に体力の半分以上を失ってしまう。
「どうしよう、このままじゃ……」
「化かすで相手を混乱させるしか無いよ!相手の攻撃を封じるんだ!」
 今だ変種ハスボーはムキになって『みずげい』を連発している。コエンが『ひんし』になってしまう前に、何としても『化かす』を使わなければならなかった。
「コエン、化かすを使うんだ!」
『わ、解りました……』
 コエンはヨロヨロと立ち上がり、煙を出した。ハスボーを包み込み、幻覚を見せる。

 煙の中でハスボーは父と母の顔を見ていた。林の中ではぐれてしまった両親に会いたくて、
 必死に探していたのに……疲れて寝ていたのだ。そこをユキナリ達に発見され、ハスボーは捕獲されようとしていたのだった。

「コエン、鬼火を使うんだ!」
『ハイ、ユキナリさん!』
 コエンの周りに炎が出現し、煙の中で混乱状態になっているハスボーに命中する。『くさ・こおり』の変種ハスボーにとっては、致命的な打撃だった。
 炎の熱さと恐怖の寒さに苦しむ変種ハスボー。その瞬間に今日2回目のモンスターボールが投げられた。ハスボーを捕まえ、ボールは振動する。
 (お願い、出ないで……!)
 ユキナリは懇願していた。ボールから出てしまったらみずげいをされ、コエンが瀕死状態になってしまう。
 それだけは御免だった。大切な仲間を瀕死状態にされてしまうのは……
「ユキナリ君、ボールが止まったよ!」
 ユウスケはランプが青く光った事を確認した。
「2匹目、捕獲成功……」
 ユキナリは腰が抜けた。まさかこんなに早くポケモンを3匹にする事が出来るとは思っていなかったのだ……

 ユキナリとユウスケは林を抜けた。
「あれが、コヤマタウンか……」
 気がつけばもう夕方。街の灯りが遠くに見える。
「今日はジム挑戦は無理だね。何処かで休んで、明日ジムリーダーに会って勝負を挑んだ方が良いよ」
 ユキナリはコエンに感謝していた。
 (無理させちゃってゴメンね……コエン)
 しかしユキナリはまだ気付いていなかった。自分が大変な事をしてしまったと言う真実に……

「着いたね……」
 夕暮れの街……既に街灯がついており、降る雪も暖かく照らされていた。
 2人はとりあえず、ポケモンセンターでコエンと捕まえたポケモンを回復しようと中に入る。
「あの、ポケモン回復を頼みたいんですけど……」
 (大丈夫だよユキナリ君、すぐ終わるから!)
 ユキナリはまだ自分の手でポケモン回復を頼んだ事は無かった。
「解りました、すぐに回復用ポッドにボールを入れますからね」
 受付の男性はにこやかに微笑むと回復用ポッドにボールを入れる。
「10分位で回復しますから、待っていてください。」
「ユキナリ君、ちょっと休もうよ……朝から何も食べずに夕方まで歩きっぱなしなんて……」
 2人はロビーの椅子に座って、回復が完了するまで待つ事にした。

「お、アンタ達ポケモントレーナー?」
 椅子に座ってボーっとしているユキナリとユウスケに話し掛けてきたのは帽子を被った少年だった。
 短パン姿で、腰には白いボールを携えている。
「そのボール、見た事無いけど何て言うの?」
「サークルボール。ノーマルポケモンが捕まりやすくなるコヤマタウンの名物なんだ。
 後でベータショップに寄ってみるといいよ。オイラも買い足さなきゃならないかもしれないなあ……」
「ノーマルポケモン……」
「タイプとしてはレベルは低いかもね。効果が抜群になる事も無いし、かくとうにはボロ負けしちゃうし」
「!聞き捨てならないな!!ちょっと待った。オイラを馬鹿にしてるのと一緒だよ!トレーナーだろ、勝負しろよ!!」
 急にその少年は怒り出した。ユキナリ達より歳は下だと思うのだが、性格がキツイ。
「ちょ、ちょっと待って、穏便に話し合おうよ……」
「僕はタイプなら全部知ってる。ノーマルタイプが他のタイプに比べてマイナーなのは事実なんだ!」
「……まあ、そうなんだけどさ……」
 少年は言葉に詰まった。
「だけどさ、オイラは好きなんだ。ノーマルポケモンがさ……
 今までずっと戦ってきて、ここまで評価されてるのも結局はジムリーダーのオイラじゃ無くて、仲間であるポケモンのおかげなんだし……」
「ジムリーダー!?」
 2人は一斉に聞き返した。
「え?……あ、そうか。まだオイラ自分の事もアンタ達の事も聞いてないや。オイラはゲンタ。コヤマタウンでジムリーダーをやってるんだ!」
「ゲンタって、君の事だったの?もっと僕より歳が上の人かなって、思っていたんだけど……」
「フフン、才能は年齢を選ばないよ。オイラとポケモンのコンビネーションは、その辺りにいる大人達なんて目じゃ無い位なんだぜ!」
 ゲンタはそう笑うと、ボールを指でクルクル回した。
「で、アンタ達は?」
「僕はユキナリ、こっちは友達のユウスケ……僕達、ゲンタ君に挑戦しようとこの街に来たんだ」
「へえ、駆け出しのトレーナーか……オイラにもそんな時があったっけ。いや、オイラはアンタ達より長く生きちゃいないか。ハハハ……」
 ゲンタはケラケラと笑い、ユキナリの腕を引っ張った。
「ちょ、何処へ行くの?」
「旅の途中は宿が必要だろ?リーグからの支給金でジム挑戦トレーナーの為の施設が用意されてるんだ」
「寝泊りする所……ですか?」
「その通り。寝泊り以外にもオプションがあったりするけど……とにかくオイラについてきなって!」
 ユキナリはゲンタに引っ張られて引き摺られた。
 後ろではユウスケが回復したコエンと他のポケモンが入っているボールをセンターの男性から受け取り、走り出している所だ。
「待ってよ、ユキナリ君、これ!」
「わ、忘れてた!」
 1個ずつボールをキャッチすると、ユキナリは3個全てを腰につけた。
「お、ポケモンは3匹揃えたんだね。もしかして、突貫?」
「う……」
「それならある程度鍛えてもらわないとオイラには挑戦出来ないね。施設は寝泊りと訓練も兼ねてるから、暫く鍛えた方が良いと思うよ」
 3人はジムに向かって走っていった。

「ここが、コヤマジム……」
 夕闇はもう夜の暗闇に変わろうとしていた。夜になると一層降ってくる雪が冷たく感じられる。
「オイラもまさかここのジムリーダーになれるとは思って無かったけど……今はジムリーダーとしての強さと、誇りを持ちたいと思ってる。
 肩書きに恥じない戦いをしなくちゃね!」
 街灯に照らされた白いコンクリートの建物は、街の中では一番大きな建物らしかった。
「ここの裏手に宿舎があるんだ。旅をしてるトレーナー御用達のね」
 ついていくと、木造の小屋が何軒も立ち並んでいる。
「中にはベットと練習用具、あとヒーター。何か食べたいなと思ったら、向こうにある調理場で。シャワー室もこっちの方に1台だけ備え付けてあるよ!」
「ありがとう、ゲンタ君……」
「へへ、リーグの命令なんだから当たり前だよ。オイラの金なんて使ってないしね!」
 短パン姿のゲンタは寒さなど微塵も感じないのか、元気に笑っている。風邪などひかないのだろうか。
「ユキナリ君、とりあえず中に入ろうよ……結構寒くなってきたしさ」
「そうだね。じゃあ、僕達はここで寝泊りするから……」
「うん。オイラ、ジムにいるから何かあったら連絡してよ。確か小屋の中には内線電話もあったハズだから」
 ゲンタはジムに向かって走っていき、見えなくなってしまった。
「僕等も行こう、ユキナリ君」
「そうだね……」
 ユキナリは何時もは気が弱く言い出せないユウスケがゲンタに刃向かう所を見た。
 きっとポケモンを知っていると言う自信からきた言動だろう。いや、ゲンタが言っていた様に、あれは『誇り』なのかもしれない。
 (誇りを持って、戦いたい……)
 ユキナリはその意味がよく解った。勝つ為には、努力を惜しまない……兄の様に。

 宿舎の1つに2人は入った。中にはダブルベットと小さいヒーター。ベットの近くに内線電話と部屋の照明用のライトが置かれている。
「ふあああっ……!」
 ユキナリは疲れからかベットに倒れこんだ。
「食事でも作ろうか、調理場があるって言ってたよね」
 ユウスケは背負ってきたリュックを開け、中身を確認していく。ユキナリの分も見た。
「キャンプ食ばっかりだ・・・これなら2人で3ヶ月位もつかも」
「そんなに入ってたの?」
「レトルトカレーの袋と洗ってない米がいっぱい。レトルトシチューの袋、カップラーメンも……」
「道理で……」
 ユキナリは肩に感じていた痛みの原因を知った。いくらなんでも重過ぎるだろうと思っていたのだ。
「そりゃ、旅をするんだから必要なのは当然だけど……」
「ま、旅を続けるうちに中身が軽くなるって事かな。今日はカレーにしようか。僕は先に調理場に行ってるよ!」
 ユウスケは2人分の量を双方のリュックから取り、調理場へと向かった。
 ユキナリは相当疲れが出てきたのか、ベットからなかなか起き上がる事が出来ない。
「今日は、色んな事があったな……」
 初めてポケモンを捕まえ、いきなり3匹に増えた。ポケモンセンターではジムリーダーと偶然会い、ここで寝泊りしようとしている……
 (まずはゲンタ君に挑戦しなきゃ……)
 目蓋が重くなる……疲れ過ぎたせいなのか、ユキナリは深い眠りへと移行しつつあった。

「?」
 いきなりユキナリの腰に付いているモンスターボールの1個から、信号音が鳴り響いた。
 慌ててそのボールの解放スイッチを押し、ポケモンを出す。ポケギアのスイッチを押し、『コミニケーション』を選択した。
『うう……父さん、母さん……』
「ハスボー……」
 今日捕まえたばかりだった変種ハスボーが、いきなり現れた途端涙を流している。
「どうしたの?具合でも……」
『帰りたい、林に帰りたいよお!』
「ちょっと待って、急に言われても……」
『うわああああああん!』
 泣いてばかりいるハスボー。話が通じない。
「連絡しよう、僕にはどうすればいいのか解らない……」
 ユキナリは必死に泣きじゃくるハスボーをなだめながら、フタバ博士に電話をかけた。


夜月光介 ( 2011/04/10(日) 22:22 )