第一章 〜Story of Unova〜
#002 緋色の子猿
【Side ミコト】

「「ええぇぇぇぇぇっ!?」」

 綺麗にハモったミオとハヤトの大声が、木立の中にこだまする。全く、こいつらテレパシーでも使っているのか?
 主達の大声に驚き、キルリア二体もビクッとする。……そういやキルリアは、頭の赤い角で人の気持ちを感じ取るんだっけか。

 二人が見事にタイミングを合わせて叫んだのには、勿論理由がある。遡る事数分前……



〜少年回想中〜

 あの後おれは、ミオとハヤトに何故こんな人気の無い……それこそ猫の子一匹見当たらないような(恐らくここでは何かしらのポケモンに置き換えるのだろう)林の中にいたのか聞いてみた。

「ひこ、ひここー♪」
「きるるぅ♪」
「るーりゃっ!」
 ちなみにヒコザルは意識を取り戻して、今はキルリア二体と追いかけっこやら何やらして遊んでいる。

「分かった。まず、ここに人気が無い理由ね。ここは『誓いの林』って呼ばれてて、町の人達は滅多に来ないの」
「何でも、かつて人間と激しく争った三体のポケモンに関係があるらしくて、大人達はここを『禁断の場所』と考えているんです」

 成る程、第5世代の凖伝説三体+αに縁がある場所におれは落っこちてきたのか。……とすると、現在地はイッシュ地方のサンギタウンか。まあ確かに、彼らと関係あるとなれば簡単に足を踏み入れられる所ではないな。ゲー○リはそんな設定つけてなかった気もするが。

「なら何故、ミオとハヤトはここにいたんだ?それとハヤト、敬語は無しで頼む。……何か、落ち着かない」
「わ、分かった。じゃあ話すよ、ボクらがここにいる理由を」

「……ここが、アタシ達の思い出の場所だから」
 少しの沈黙の後、口を開いたのはミオだった。その時、二人の顔が暗く曇ったのは……きっとおれの見間違いだろう。

「さっきミオが『町の人達は滅多に来ない』って言ったけれど、ボクらにとってそれは好都合だったんだ」
「……なんとなくだが、読めた」
「「!」」

 二人が、同時に息を飲むのが分かった。恐らく、初対面の相手に過去を見透かされて驚いたのだろう。

「だが、何があったのか当てたりするつもりはない。初対面の相手の事にずけずけ踏み込むわけにはいかないからな」
「そうよ、ミコトは部外者なんだからアタシ達の事に首突っ込まないでよ!」

 突然ミオの当たりがきつくなった。こりゃ、触れたら相当ヤバかったな。言わないでおいて正解だ。

「……(ごにょにょ)」
「ん?ミオ、何か言ったか?」
「べ、別にっ//」

 ミオの頬が、少し赤くなっていた。
 ……何を言ったのか聞こえなかったが、この反応。さてはミオ、俗に言う「ツンデレ」か?それも結構テンプレなパターンの。
 ロリでツンデレとか、いわゆる「萌えツボ」を結構突いてる奴だな。おれは知ってるだけで、そういうのとは無縁だ。ああ無塩……じゃなくて無縁だ。「無塩」じゃバターだろ、バカ作者め。


「こんな場所といえば、ミコトがここに降ってきたというか落ちてきたというか、それだって不自然過ぎる気がするんだけど……」

 ハヤトが先程のおれのスカイダイビングに疑問を持ち直す。……ん?「ハヤト」で「スカイ」……あ。
 ある意味ダジャレ化したな今。

「……ミコト、最初に言ったよね。『ジムリーダーとは関係ない』って」

 そう言いながら、ハヤトは中性的な顔に微笑を浮かべてこっちを向いた。……その蒼い目は全く笑ってないが。なまじ口調が穏やかな分、余計に怖い。それに、今回も強調してたし。どんだけ嫌なんだよ、同じ名前のジムリ持ち出されるの。
 ……というか今、おれの心を読んだのか!?

「キルリアが教えてくれたんだ、ミコトがボクと同じ名前のジムリーダーを連想したって」
「きるきぃ」

 いつの間にやら一体のキルリアがハヤトのすぐ傍にいた。そうでした、読まれる危険を忘れてました……。


「って!本題そこじゃないだろ!」
「あ。……すっかり脱線してたけど、結局のところなんでミコトは空から降ってきたの?」



〜少年回想終了〜


 ……で、話は冒頭の二人が大声でハモった場面に戻る。

「ミ、ミコトが……この世界の人じゃない!?それってどういう事!?」
「だから言ったままだっての……。ポケモンがお伽噺の上の存在である世界から、こっちの世界に放り込まれたんだ」
「な、なななnnnnなんで!?」
「それが分かってりゃ苦労はないさ」
「わ、わけがわからないよ……」

 パニック全開で質問マシンガンを浴びせてくるミオを適当にあしらう。わけがわからないのはおれの方だぞ、全く。
 ハヤトもまた、驚きを隠せていないようだった。が、ミオとは驚くポイントがちょっと違った。

「ポケモンが、お伽噺の上の存在……。そんな世界があるなんて……」

 そう、むしろハヤトは自分達にとって当たり前の「ポケモン」という存在がただのお伽噺でしかない、そういう世界があることに驚いていた。

「突拍子無さすぎる話だが、嘘は吐いてない。まあ、別に信じなくてもいいけどな」
「……いや、信じるよ」
「ボクも、同じく信じる」

 ……え?
 おれは二人の発言に唖然とした。
 今、確かに聴覚器官は「信じる」という言葉を捉えて、情報を脳に伝達した。
 正直言って、信用されない事前提で事実を話していた。が、こんなにあっさりと、揉めたりする事もなく話が通った。

「あれ?聞こえてないなら何度でも言うよ。『アタシ達は、ミコトの話を信じる』って!」
「驚く話だけど……でも、嘘を言ってる様には見えなかったし、そうする理由もないはずだよ」

 ミオ……。ハヤト……。
 助けてもらったり、初対面なのにありえない話を信じてくれたり。本当に、この二人には感謝してもしきれないな。

「……さっきといい今といい、本当にありがとな」
「ほえ?アタシ達、お礼言われる程の事したかなぁ?」
「ミコトからしたらそうだと思うよ」

 「ほえ?」って……ミオ、意外にあざといな。本人は意識してないだろうが。



「それにしても、なんでミコトは別の世界からわざわざ呼ばれたんだろうね?」
「ああ、それは……」

 再び飛んできたミオの質問に、おれは足元にいたヒコザルをひょいと抱え上げながら答える。

「……こいつと、『ヒイロ』と一緒に解き明かすつもりだ」
「ひいろ……ってもしかして、そのヒコザルのニックネーム?」
「もしかしなくても、だ」
「……そのネーミングセンス、ちょっとわけt」
「ミオ。……無理だから、ね?」
「うぐ〜」

 トリオ漫才はこのくらいにしておいて。そしてまたミオがあざとい件。「うぐ〜」って、可愛いな。まあ、おれは断じてロリコン等ではないが。

 あのショタ声曰く、「この世界でのパートナー」のヒコザルことヒイロと一緒に探し出す。おれを呼びつけた誰かを。必ず何のつもりか問い正すからな、首洗って待ってろよ!!

■筆者メッセージ
どうも、タチバナ スズカです。
何か、のっけからシリアスが暴れてしまいました。まあ、そこはちょくちょく入れた漫才や、例のヒコザル(NN「ヒイロ」)がミコト君の相棒になった事でチャラn
ミオ「なるわけないでしょバカ作者」

ぎゃ!ミオ!?えらく殺気立ってるけど……いくら君が空手の黒帯(abyssさんの「ポケットモンスター ディスティニーコネクト 〜マグナゲートと時空の繋がり〜」参照)だからって、いきなり鉄拳とかかんべn
ミオ「うおりゃああああああ!!」

ミオの ばくれつパンチ!
急所に あたった!
作者は たおれた! ピチューン

ミコト「今明らかに違うのが混じってたぞ!?」
ハヤト「ち、ちょっとミオってば……。えーっと、次回もお楽しみに!」
タチバナ スズカ ( 2015/09/30(水) 00:01 )