06 六
匡行と純太は不気味な屋敷の中を歩いていた。
「なんか、不気味だね。この屋敷」
純太はそう言いながら、歩いていた。匡行は『ああ』とそっけなく返した。
長い廊下を歩き、付き辺りまでついたが、何もなかった。
「何も無いな」
「そうだね。戻る?」
純太の問いに匡行はうなずき、元の道へ戻った。
結局、屋敷へ行ったはいいが、何もなく終わった。
「なんもなかったな。ガセだったじゃないか?」
小野田がそう田村にそういうと、田村はさあという顔をしていた。
「なあ、東儀、金森お前らどう思う?」
小野田がいきなり自分達に質問をしてきた。匡行は無視していたが、金森は慌てて
「いや、分からない……」
と答えると、小野田はそうかと呟いた。
「あのさ、俺、家あっちだから」
匡行は半分興味なさげにそれを聞き、ふと話をそらして言い始めた。小野田は突然話をそらされ、少し戸惑っていたが、腕時計を見ながら
「もうこんな時間か。帰った方がいいな……じゃあ、また明日な」
と小野田はいうと、田村と一緒に先に帰り始めた。
小野田と田村が去った後、匡行は純太と一緒に家路を歩いていた。
「匡行って勇気があるね。羨ましいな……」
純太はそう羨ましそうに匡行を見ていた。肩に乗っているエモンガもこくりとうなずいていた。
匡行は『そうか?』というような目で純太を見ていた。
裏山を抜け、住宅街の一角に出れば、純太は右の方向へ行き、また明日ねと言いながら手を振っていた。
匡行はただ手を挙げ、また明日といえば、自分は左の方向へ歩き始めた。
しばらく歩いていたら、鈴の音が聞こえた。傍らにいた風車は突然の音の響きに警戒をし始めた。
ふと、後ろを振り返っても誰もいなかった。
「どこを見ているのかな?」
野太い声にふと、匡行はすぐに前を向けば、見知らぬ青年と赤と青の鈴をつけた二匹のグラエナがいた。
青年の背丈は高く、二十代後半に見えた。服装はだらしなく着たゆとりのあるワイシャツにズボンをはいていた。
「誰ですか?」
匡行は冷静を保ちつつ、青年を見ていた。
「私を覚えていないのかな? まあそれは仕方ないかな……東儀匡行君」
青年はにこりと微笑みながらそう言った。匡行は青年が自分の名前を知っていたので、一瞬戸惑った。
「では改めて自己紹介をしますか。私は佐直晴人。君の父と知り合いでね。君が小さな頃から知っているから、君の名前を知っているのさ」
青年はそういうと、ボールからピジョットを出した。そして、ワイシャツのポケットから白色の鈴を取り出せば振った。
音は鳴らなかったが、ピジョットの姿が変わった。
頭の毛はより逆立ち、長い赤い毛が真ん中に生え、尾と翼の先端が鮮やかに色づいていた。
「東儀君、自分の事が知りたいのなら僕とバトルしないか? 君の親には許可を得ている」
佐直という青年はにこりと微笑みながら、そうバトルを申し込んだ。匡行は両親がいいと言っているなら仕方ないと思いながら、
「手毬……」
と言えば、一匹のフライゴンを出した。
月明かりの夜、とある広い空き地で匡行と佐直のバトルが開始されようとした。