一章
05 五
 次の日の朝、匡行はいつものように朝の六時半にセットした目覚ましの音で起き上がった。
 匡行は渋々起き上がると、ふと、昨日の純太のおじいさんの言葉を思い出した。
(異形の者の血……)
 と思っていたら、ばんという大きな音に驚いた。匡行はびっくりしていたら、ベランダにピジョンの幽霊が倒れていた。
「うう……」
 匡行は仕方ないと思い、窓を開け、ピジョンに『おい』と声をかけた。ピジョンは目を開け、匡行を見ると、
「おお。私が窓如きにぶつかるとは……匡行様ですか?」
 ピジョンはかしこまった口調でそう言った。匡行は面倒くさそうにうなずいた。
「今、お時間は良いでしょうか?」
「いや、無理だ。これから学校……」
 匡行は口に手を当ててあくびをしながら、そっけなく返した。ピジョンはしょんぼりとしていたが、仕方なさそうな顔をして
「では、学校が終わる頃、また来ます」
 ピジョンはそう言い残すや飛び去ってしまった。

 教室へ入り、席に着くと二人の男子達がいそいそと近づいた。小田野と田村だった。
「なあ、東儀。今日の夜、肝試しやらないか? 良い肝試し場所があるんだ。金森も行くだろ?」
 にやにやと笑いながら、小野田はそう言うと、金森はぎこちなく笑った。
「決まりだな……東儀も行くだろ?」
 男子の言葉に逆らえず、匡行は渋々うなずいた。
「でさ、古いお屋敷に行くんだろ」
 田村はそう言うと、小野田はうなずき、
「そう。とある古いお屋敷があってさ、そこに夜な夜な鳥の羽ばたく音がするんだってさ」
 と、小野田は肝試しする場所を教えた。 匡行は鳥の羽ばたく音という言葉にどきりとした。
(鳥の羽ばたく音……まさかな)
 匡行はそう思いながら、生唾を飲み込んだ。

 昼休み、匡行は純太に
「なあ匡行。心当たりあるのか、その今日行く屋敷のこと」
「また、俺の心読んだのか?」
「う、そ、そうだよ……」
 匡行はため息を吐き、『何でもないよ』と、そっけなく返した。純太に自分の能力なんて言えるわけない。
 学校が終わり、あのピジョンが来ると思ったが、なぜか来なかった。

 その夜。匡行は親に承諾して夜の学校の校門前にいた。そこにはもう小野田と田村と金森がいた。
「さ、行こうぜ」
 小野田は匡行が遅れてきたことは何も言わず、そのお屋敷の所へ行った。行先は草が生い茂っていた。
 やっと、お屋敷について来た所は山に近い場所だった。お屋敷は古びていて、昔話に出てきそうな茅葺屋根の家だった。
 匡行達は懐中電灯を持ってお屋敷の中へ入った。
「俺達は右へ行くよ」
 小野田と田村はそう言うと、右の方へ去って行った。匡行と純太は左へお屋敷の探索をしに行った。

久斗 ( 2014/09/07(日) 22:06 )