一章
04 四
 匡行は放課後、純太に誘われて一緒に帰った。
「な、匡行、俺の家へ遊びに行かないか?」
 匡行は悩んだ末、『良いよ』と承諾した。純太は嬉しそうにこっちだと言って匡行の誘導をし始めた。

 純太の家は匡行の家よりも豪勢な雰囲気だった。純太は『こっち』と言って入口へ匡行を引っ張って中に入れさせた。
「おや、純太。おかえり」
 と言ったのは、老人だった。年は七十後半かと思われるが、元気そうな老人だった。
「ただいま、おじいさん」
 純太はおじいさんと言った老人にただいまと返した。すると、純太のおじいさんは驚きながら、匡行を見始めた。
「純太、その子は?」
「? 僕の友達だよ。名前は東儀匡行君」
 純太は首を傾げながら、僕の事を紹介した。
「おじいさん、お母さんは買い物?」
「ああ、そうだよ……」
 純太はおじいさんと会話しながら、歩き始めた。匡行は『おじゃまします』と言いながら、家の中に入った。
 中は驚くほど広く、時代劇に出てくる武士の家みたいな感じだった。匡行は純太にここにいてと言われ、大きな部屋に入れられた。
 純太は何か持ってくると言ってどこかへ行ってしまった。残ったのは純太のおじいさんと匡行だけだった。
 気まずい雰囲気の中、おじいさんはニコニコとしながら、
「純太が友達を連れてくるなんて滑稽だの。それより、お前さん、少し異形の者の血が混ざっているの」
 匡行は異形の者と言われ、首を傾げた。おじいさんはからからと笑い、
「異形の者とは身近にいる見えぬものだ。まあ、幽霊という者もいれば、お前さんについているその獣の事でも言える」
 匡行はおじいさんの言葉を聞きながら、どういう事なのかさっぱり分からなかった。おじいさんは『いつか分かるさ』と呟きながら、ニコニコとしていた。
 匡行はおじいさんの言葉を聞いていたら、純太が現れた。ふと、気づくと、もう夕方五時近くだった。
「ごめん、純太。僕帰らなきゃ。また明日」
 匡行は腕時計を見ながらそう言った。純太は『ああ』と言いながら、その場に茶菓子を置くと、玄関まで匡行を見送った。
 匡行は申し訳なさそうな顔をしていたら、純太が気にしないでというふうな顔をして手を振った。
 匡行は手を振り返して、純太の家を去った。

 匡行は帰り道、純太のおじいさんの言葉が気になった。
 匡行の両親は普通の人間だ。でも、異形の者の血が混ざっているというのはどういう事なのだろう。
 匡行はそんなことを思いながら、あんまり深く考えないでおこうと思い、風車に
「急いで帰ろう」
 と言いながら、足早に歩いた。

久斗 ( 2014/09/07(日) 21:06 )