03 三
過ぎて行く時間はいらいらとするくらいゆっくりだった。ようやく、昼休みのチャイムが鳴り、匡行は一人で弁当を食べようと、教室を出た。
匡行は普通に歩いていたら、後ろから待ってよという声がしたので、つい後ろを向くと、純太がいた。
「何、金森」
と、そっけなく声をかけると、
「純太で良いのに……だって、僕達、友達じゃないか。一緒にお昼食べようよ」
「は? 何勝手に友達って決めつけているんだよ」
匡行はイライラとしながら、そう言い放った。だが、純太は匡行のきつい態度でも気にせず、にこにことしていた。
匡行はその笑顔に憎めなくなり、勝手にしろと言う風にそっぽを向くと、グラウンドに出た。
そして、匡行はその辺に座ると、純太も匡行の隣に座った。何だか食べづらかったが、我慢をして純太と一緒に食べ始めた。
「ねえ、匡行、どっか遠くを見ているんだけれど、何故なの?」
匡行は純太の質問にイラついた。そして、匡行は純太を睨みつけると、風車と一緒に弁当を残してその場から去ろうとしたら、
「……僕はさ、人の心が読めるおかしな能力を持っているんだ」
「だから、何だよ。それに、俺の名を気軽に呼ぶなよ」
匡行は振り返って純太を再度睨みつけた。純太はふっと笑うと、
「君も何か能力を持っているんだろ?」
純太はその能力を言おうとしたら、
「言うんじゃねぇよ!」
匡行は大声でそれを遮った。匡行はずかずかと歩き、風車と一緒にその場を去って行った。
匡行は歩きながら、純太にきつく言い放ってしまったことに反省をしていた。
(後で純太に謝ろう……)
匡行はそう思っていたら、風車が不安げな顔をしていた。
匡行は『平気だ』と言いながら、風車の頭を撫でた。
匡行はとぼとぼと教室へ行き着くと、匡行の席の隣にぽつんと純太がいた。匡行は普通に自分の席に座ると、
「あのさ、さっきはきつく言い過ぎた。ごめん」
と、言うと、純太は何も気にしていない顔をすると、
「別に。慣れているから平気だよ」
匡行は純太の『慣れている』という言葉に少し心が揺らいだ。自分もそのような心情だったこともあったからだ。
「あのさ、金森、その……友達になっても良いよ」
「もう、純太で良いよ。それにもう僕達、すでに友達じゃないか」
純太はそう言いながら、苦笑をした。匡行は笑う事なく、
「何だよ、それ……」
と言いながら、目を逸らした。純太はにこりと微笑み、右手を差し出してきた。匡行は小首を傾げていたら
「握手しようぜ」
と、無邪気に微笑みながら、そう言った。匡行は渋々左手を差しだし、純太と握手をした。