01 一
午前六時半にセットした目覚まし時計がけたたましく鳴り響いた。匡行は手探りで目覚まし時計を止めた。
匡行は寝ぐせがついた髪を掻きながら、気だるそうに起き上がった。また匡行はふかふかの暖かい掛け布団の中に潜りたい気分だった。
だが、今日は学校だ。匡行は仕方なく、布団から出て布団を押し入れに入れた。すると、とてとてと相棒のリーフィアの風車がやってきた。
「キュー!」
風車はそう言いながら、にこりと笑みを零した。匡行は『おはよう』と返した。そして、匡行はラフなTシャツとズボンのまま、風車と共に長い廊下を歩き下へ降りた。
「おはよう、匡行」
風車の朝の挨拶をした次に朝の挨拶するのは決まって母さんだ。父さんはその後に新聞越しで朝の挨拶をする。
「おはよう……」
匡行はそう挨拶をすると、食卓に正座をして座り、目の前の朝ご飯を食べた。匡行は小食だったので、朝ご飯を残すのがしばしばだった。
「また残したの?」
母さんに指摘されたが、匡行は気にせず、部屋へ戻った。匡行は制服に着替え、鞄を持とうとしたら、ごみ箱が揺れていることに気づいた。
匡行は訝しげに思いながら、ごみ箱をのぞこうとしたら、一匹のゾロアがひょっこりと顔を出した。
「す、すまぬ。化けようと思って跳んだら、君のゴミ箱へ……」
このゾロアは成仏できなかったポケモンの幽霊だ。父さんと母さんはポケモンの幽霊が見えるか知らないが、匡行だけ見えていた。
匡行は昔からそれが見えていて周りから変に思われて嫌われていた。理由のない罵倒にずっと苦しみ続けてきた匡行の心は傷だらけだった。
だが、もう匡行はそれに対して気にもしなくなった。そう思いながら、匡行は部屋の襖を開きゾロアをその辺に置き、鞄を持って去った。
「もう、俺の部屋で化けの練習は止めてくれ」
そう言い残して匡行は去って行った。風車はその後について行き、心配そうな目で匡行を見ていた。
匡行は何も言わず、歯を磨こうとしたら、風呂場で陽気な鼻歌が聞こえた。匡行は風呂場の戸を開いた。
そこにいたのは、一匹のフタチマルだった。匡行はため息をしながら、フタチマルを見ていたら、フタチマルがこちらを向いて驚いた顔をしていた。
「す、すまない。ちっと、風呂に入りたくなってのぉ……」
匡行は凄い形相で睨みつけた。フタチマルは『ひぃ』と言うと、脱兎のごとく、風呂の窓を開けて逃げて去った。匡行は舌打ちをしながら、湯船のお湯を流そうとしたら、
「あら、なぜお湯があるのかしら」
後ろから母さんがそう言ってきたので、匡行は冷静に知らない顔をして、歯を磨き終えると、台所にある自分の弁当を持つと、家を出た。