鳴らない鐘が響く時
19 【19時12分】
「面目ねえなあ、みすみす女王たちをどこかへ連れて行かれちまって」
 心の底から落ち込んでいるような絶望的な表情でアルジャーノンは深くため息を付いた。がっくりと顔を伏せてしまってそのままソファの上にうつ伏せに倒れこんでしまいそうな勢いだ。普段はなんとも胡散臭いくせに、喜怒哀楽の表現は妙に大袈裟な奴だとロビンはつくづく思う。
「まあ仕方ないだろ。引っ張っていた馬はゼブライカだったそうじゃないか。たとえすぐ追いかけていたとしてもすぐ見失ってただろうよ。おまけに今日は前夜式典、万一見失わなかったとしても大通りに逃げ込まれてみろ。同型の馬車がいくら紛れているか分かったもんじゃない」
「しっかしやっぱり悔しいよなあ。せっかくお前さんの言いつけであの準備はほとんど出来てたってのに。これじゃ無駄になっちまう」
「そのことだが、一応まだあいつらに待機してもらっててくれないか? ま、念には念をってことだ」
 ロビンがそう言うと、アルジャーノンは露骨に表情を歪ませた。まるで持つように頼まれた大荷物をそのままさらに数時間持ち続けてくれと頼まれたかのようだ。しかしアルジャーノンはそのことで反駁することはせず、別の話題でロビンに噛み付いた。
「だいたいお前さんもお前さんだぜ。兵隊を動かすとかなんであの侯爵さんを挑発するような真似をしたんだ」
「まあ、王師を動かそうと思った時点ではテレーゼまで奴の手に落ちるとは思ってなかったから、そこは返す言葉もない」
 ロビンは苦笑しながら手に持っている丸いものを適当に弄んだ。
「ただ奴の目的が王国を支配することじゃなくて壊すことだと分かった時から性格がなんとなく読み取れたな。奴は自分の運命を常に試し、危機に陥ることをかえって楽しんでいるように思える。他の貴族たちに根回しをしなかったり、露骨な人員異動をさせたり。王国を乗っ取って、そのあとどうするか明確な展望を持ってる人間にはそんなこと出来ない。だいたい、入れ替えた女王を今まで生かしておくという時点でおかしい。チェスに例えるならあと一手でチェックメイトに持ち込めるところでわざとあさってな駒を動かすような真似さ。だが奴にはそれは必要なことだった。この国が名実ともに乗っ取られたと理解させてから殺すつもりだった」
「チェスとかそんなゲームに例えられても俺にゃ理解できんが、まあ言いたいことは伝わったよ」
 そのときふと二人の目があい、それが無性におかしくてお互い馬鹿馬鹿しく思いながら笑い声を上げた。
 尤も、女王を生かしておくのにはもうひとつ切迫した理由があったみたいだがな……。
 そう、女王はどうしても今日まで生きておいてくれなければならなかった。そうしなければ計画そのものが頓挫してしまうから。しかし……とロビンは思考を続ける。今やそのもう一つの理由は必要なくなった。そのことによってセルゲイがどういう手を打ってくるかが問題だったのだが……。
 つとアルジャーノンが上体を起こした。そしてソファを降りると生えている歯が全部見えそうなほど大口を開けてあくびをするとヒゲに手を当てながら言った。
「ま、とりあえずだ。お前さんが兵隊を動かした結果がその妙ななぞなぞってことか?」
「そういうことになるな」
「どうすんだよ。侯爵さんが言うには宮殿で舞踏会が始まる頃にはその場所に隠されてる女王さんだか王女さんだかのどっちかが死ぬってことじゃねえか。もう七時過ぎだぜ? あと二時間で見つけられんのか?」
「そのために今考えてる」
 ロビンはテーブルの上にセルゲイから受け取った紙面を広げている。その横にはテーブルの半分の大きさを占める大判の地図を広げていた。その地図は王都のものであるが、王都全体の地図ではなく王宮やセントラル大教会などのある中央エリアからアルゴス侯爵の邸宅が在する東エリアだけに限られていた。
 それはこういうわけだった。セルゲイはキースで王師が動き始めたという報告を受け取った直後、王宮から一旦屋敷に戻ろうとした。しかしその途上で考えを改め、今回の“宝探し”を思いつき一部の部下たちのみをその計画の実行のために屋敷に帰し、自分はそのままここへ来たという。彼のその言葉を信じるならば、今回の“宝探し”は突発的に考えだしたもの。そして侯爵の性格を踏まえると、それほど遠くの地点まで二人を移動させたわけではないという結論へと至った。侯爵の屋敷は東エリアにある小高い丘に位置している。ロビンはその地点を中心にしてコンパスで半径十センチほどの円を描いていた。アルジャーノンによれば女王たちの移動が開始された時間は具体的には分からないがおそらく十六時を五分から十分ほど過ぎた頃。そして侯爵が「そろそろ準備が出来た頃合いだ」とロビンに宣言したのは十七時ちょうど。準備時間を五十分だと仮定してゼブライカの引く馬車の速度や今日の交通事情を踏まえた上で移動が可能であろうとおおよその範囲を示したのがこの地図上の円だった。
 とはいえ、エリアをその円内に限ったとしてもその広さは気が遠くなりそうなものだった。東はほぼ王都の郊外まで、南はこの王都を守護するように横たわる山脈の麓地帯、西は王宮のあるこの近辺のエリア、北は海にまで達していた。
 ロビンは隠し場所を示すヒントの紙面をつまみ上げ、改めて文章に目を通した。

  【私はたくさんの仲間とともに生まれ
   生まれた時からずっと道を進み続けている
   ところが私は不幸にも道を間違えてしまった 
   いつしか仲間たちは別別の道へと別れ
   別れ道に差し掛かるたびに仲間は姿を消していく
   広くなるはずの道はどんどん狭くなる 
   時々広場で休むこともあるけれど
   元きた道には決して戻れない 
   身を汚しながらも私は進み
   最後に宮殿を通りぬけつつ女王の頭を真っ二つに割ると   
   私はついにかつて別れたはずの仲間とともに自由に身を委ねた】


 ここに書かれている文章以外にも侯爵はわざとなのかそれとも不意になのかヒントを残していった。「さっさと見つけてやらんとその場所にいる奴は今夜の舞踏会が始まる頃にはあの世逝きだろうよ。私が手を下すまでもなくな」という言葉だ。
 王宮では建国記念日の前夜祭ならびに前夜式典としてまず二十時に王宮の門が開かれ、貴族も一般市民も別け隔てなく入れる。その一時間後の二十一時に舞踏会が催される。セルゲイの言葉を信用するならばその時間にそこに居る人物は死に至る。
 外面的な態度では極力抑えていたが、ロビンは内心焦りを感じ始めていた。残り時間は時計の長針二周分。もしヒントが示す場所がここから真反対の東側だとしたら移動時間は少なく見積もっても一時間半、あと三十分で出発しなければならない。
 そのときアルジャーノンが地図を覗きこむロビンの前にひょいと立ち、まるで初めてテストで百点を取った子供のように得意そうな顔をにじませた。
「おお、俺分かったかも?」
「言ってみろよ」
「隠し場所はズバリ、セントラル大教会時計塔だよ。侯爵さんは時間になったら手を下さずとも死ぬって言ったんだろ? あの時計塔の内部はすげえ入り組んだ歯車じかけになってるんだから、きっと二十一時になったら鐘に連動して何かの仕掛けが発動してそこにいる奴を殺してしまうんだ」
 得意満面有頂天といった風のアルジャーノン。ロビンより先に答えを言い当ててやったんだざまあみろ、と言わんばかりだ。しばらく黙っていたが、ロビンはおもむろにため息をつくと一言。
「問題文の説明は?」
「ええっと、こうだよ。『私』ってのはきっと『時間』なんだ。時間は過去から現在、未来へと一方向にしか進まない。『元きた道には決して戻れない』とはそのことなんだよ」
「確かにその点では同意だが、他の文章の説明はどうだ? 『仲間たち』とか『広場で休む』とか、そして『女王の頭を真っ二つに割る』とか、他にも色々あるぞ」
 そこまで問い詰められると、かわいそうにアルジャーノンは天敵から狙われているが如くしどろもどろになり、最後にはテーブルにほとんど寝転ぶように突っ伏してしまった。そんなアルジャーノンにロビンは無情にも毒牙を急所に突き刺すが如くとどめを刺す。
「それに鐘に連動して仕掛けを発動させるなら、十七時か十八時にはそいつはもう死んでるだろ」
「あー、そうだよな、そうだよな。いい考えだと思ったんだけどなあ」
「ま、お前にしちゃ上出来だよ」
「フォローのつもりかよ」
 過ぎ去ってしまえば熱さを忘れてしまう喉のようにアルジャーノンは気持ちを立ち直らせて笑った。
 実際ロビンはセルゲイから問題が提示された時、まっさきに時計塔という考えを思い浮かべた。しかしそれだとアルジャーノンにも言ったように他の文章の説明が出来ない。それによくよくセルゲイの言った言葉を思い浮かべると気になる言い回しがあった。「舞踏会が始まる頃」というのがそれだった。どうして侯爵はこんな曖昧な言い方をしたのか。二十一時ぴったりに発動するような仕掛けがあるとすれば「舞踏会が始まると同時に」と言いそうなものだった。そう言わなかったのは、ひょっとすると確実に発動はするがその時間には多少の前後があるのかもしれない。しかしそれがミスリードという可能性も否めない。
 いかん、とロビンは頭をぶるっと振る。このような堂々巡りの思考は明確な根拠が無い内にはいくら考えたところで答えは出ない。ロビンは椅子から立ち、窓を開けた。師匠もこういう風に考えに行き詰まるような時は窓を開けて空気を入れ替えていた。どんなに時間が差し迫っていても決して焦ってはいけない。
 プレスコ通りに面した窓からは王宮へ向かう多く人間や馬車がまるで全体が一つの目的を持った生き物のように決まった方向へと進んでいた。しかしロビンは目下の光景には目もくれず真反対、つまり空を見上げた。すっかり夜になっている。しかし浮かぶ星の数は少なく、夜空にまばらに散っている。街角のガス灯がいつもにも増して夜道を強く照らしているせいもあるが、それ以上にまるでいつも見える星々の光をすべて吸収したかのように煌々と輝いている存在のせいだった。満月が西の空から登り、今もまたまるで世界の頂点に君臨しようとしているかのように徐々に徐々にその高さを増して……。
 そのときロビンの頭の中で何かが走り去った。なんだ今のは? 今何かを思いつきそうになった。こういうことは稀にある。明確にはっきりした考えにはならないが、そこに至るための予感めいた思考の蠢動き。腹の底がストンと抜けたような感覚。ここから一つの思考を導き出すのはバラバラに散らばった真珠のネックレスの珠を集めるようなものだ。焦って拾おうとするとさらに転がしてしまって棚の下へと潜り込ませてしまうように、まとまりかけた思考が雲散霧消してしまう。
 落ち着いて考えろ。月を見てたった今何に気づきかけた? 月……月……。こういう時は連想だ。月……満ち欠け……満月……三日月……新月……衛星……太陽光を反射……違うこういうことじゃない。もっと地上に関係するような……。月食……日食……夜……。
 その時出し抜けに水場で水の流れる音が聞こえてきた。アルジャーノンが勝手に水でも飲んでるのだろう。ん……? 水?
 刹那、体が丹田から突き上がるような衝撃を受けた。バラバラになっていたパズルのピースが電撃の如き早さで組み合わせ合っていく。
「これだ!」
 突然の大声による不意打ちにひっくり返りそうになるアルジャーノン。
「どうしたんだよ!?」
 驚かされたことによる怒りのこもったアルジャーノンの問いかけを無視してロビンは口の中でブツブツと譫言のようなものを繰り返し、そして侯爵の残していった文章に何度も目を通す。その動作を終えると、瞑想するように目を閉じる。そして数秒の内黙考するとゆっくりと瞼を開け、口元には悦楽のようなものを湛えた笑みを滲ませた。
「水だ」
「水がどうしたんだ?」
「この『私』ってのは『水』を指してるんだ。最初の一文『私はたくさんの仲間とともに生まれ』というのは雨が降る様子で、『生まれた時からずっと道を進み続けている』これは川のことだ。続いて『ところが私は不幸にも道を間違えてしまった』これはつまり川から水路へと入ったことを表してる。次の三行は水路が分流によって次々と枝分かれしている様子だな」
 ロビンは説明しながら地図上に描かれている街をほぼに裂く川の上流に指を当て、そして水路への分流地点へと走らせる。
「おお、確かにこの街の地下は水路だらけだしな」
「『広場で休む』の意味だが水が『休む』『広場』ってのは地下の水路のあちこちに設置されてる制水池か、あるいは噴水なんかだろうな。水なわけだから当然『元きた道』つまり上流には遡れないし、家・工場その他もろもろの用水として『身を汚しながら』下水を進む。そして最後に行き着く『かつて別れたはずの仲間とともに』手にする『自由』とは」
 ロビンの平手が地図の一点へと振り下ろされた。重い音とともにその場所が示される。
「海だよ」
 王都を貫く河川や張り巡らせる水路は最後にはすべて収斂する。
「じゃあ時間になったら勝手に死ぬってのは」
「あれだよ」
 ロビンは窓に身を乗り出し、天空の一点を指差す。そこに浮かぶは夜を支配する王のように地上へと青白い光を投げかける満月。
「月の引力などの要因で海面が上下する現象、潮汐だ。おそらく一人目が居る場所は水路の中でも満潮の時刻に海や河口への出口が沈む場所。手足でも縛っておけば確実に殺せるが、時間については多少の前後がある。だから侯爵の野郎ははっきりした時刻ではなく、『舞踏会が始まる頃』という幾分曖昧な表現を使ったんだ」
 アルジャーノンがはあっとため息をつきながら感心する。その声をよそにロビンは椅子から調度品棚などの置かれた壁に飛びついた。そして壁にかかっている電話の受話器を持ち上げる。数度のコール音の後に交換台へと接続された。そこでロビンは港湾局へと繋いでくれるよう頼んだ。そしておそらく繋がったであろう人間と幾つかの会話を交わした後、受話器を置きため息を付いた。
「決まりだ。今日の満潮の時刻は二十一時三分ごろだそうだ」
 しかしそこでアルジャーノンは一つの懸念を口にする。
「でもよお、一口海や河口に出口がある水路といってもこの街で当てはまる場所を総当りで調べてたら、例え今から始めたとしても日を越しちまうぜ」
「そのとおり。その謎を解き明かすのがおそらく最後から二行目『最後に宮殿を通りぬけつつ女王の頭を真っ二つに割ると』。この『宮殿』というのがどこを刺すのかが……」
「そんなの、サン・シュモール宮殿のことじゃねえのか?」
「いや、いくらなんでも安直すぎる。それだと『女王の頭を真っ二つに割る』の説明ができない」
 ロビンは本棚へと向かい、そこにあるファイルの一つを開いた。そのファイルにはこの王都の各種地図が収められており、今ロビンが手にとったのは王都レマルクに張り巡らされた水路の通り道が描かれているものだった。
ロビンはテーブルの上に元からあったのと二つの地図を並べ、水路地図の中でアルゴス侯爵の邸宅の位置を確認するとそこから元の地図と同じ円を縮尺の変化を調整しながら手早く描いた。そして円に含まれる範囲で条件に該当する水路出口に丸印をつけていく。結果、潮汐の影響を受ける河口から港湾部にかけて印のついた水路の数は実に三十にも昇った。その数にロビンは思わず閉口した。この数では一つ一つ虱潰しに探しているようではとても時間に間に合わない。やはり宮殿の行の謎を解く必要があった。
 女王というのは一体何を指しているんだ。レオノーラ女王のことか? 『頭を真っ二つに割る』というのはおそらく喩えだ。頭を割る……王が頭に被るものは何だ、冠だ。冠を二つに? いや、違う。真っ二つに割る……割る……。
 ハッと息を呑んだ。瞬間、一つの言葉が口について漏れ出る。
「二分の一だ」
 二分の一。『頭を真っ二つに割る』というのは何かの数字を二分の一にすることの喩えだ。女王を表す数字。そのときロビンは再び腹の底に何かがストンと落ちる感触を覚えた。もし『女王』というのがレオノーラ女王だとすれば、一つ思い当たる数字がある。だがロビンは頭をもたげてしまう。その数字が今いくつなのかがどうしても思い出せない。もとより今回の依頼を受けるまでジオノ王家についてほとんど興味を持ってなかったせいだ。だがそれも問題じゃない、街ゆく人の誰でもいいから尋ねればすぐにでも分かるだろう。時計へと目をやる。午後七時三十分を回ったところだった。
 ロビンは鞄を用意するとそこにテーブルに置いた二枚の地図に筆記用具を詰めて閉じた。
「アルジャーノンは念のためあいつらのところに戻っておいてくれ」
「おう、分かった」
 そしてロビンは足早に事務所の戸へと近づき、歪んで傾いた扉を引いた。しかしそのとき行く手を阻む者が。その者もほぼ同じタイミングで扉を開けようとしたらしく、勢い余って前のめりに倒れかけたのをロビンが支える。
「……と。イレーヌか」
 イレーヌはロビンの支えから離れると少しばかり気まずそうに目を逸らした。イレーヌの後ろにはラフレシアのラッフルが立ち、何やら嬉しそうに頭を揺らしている。
「さっき、ラフトが目を覚ましたの」
 ロビンは身を震撼させた。
「本当か?!」
「ええ。でも、やっぱり傷は浅くなくてまだ動けないわ」
 ロビンは知らず知らずの内に背負っていた荷を降ろしてもらったかのように、あるいは胸に刺さっていてじくじくと深い痛痒をもたらしていた棘が抜けたように深く息をついた。まるで肺の空気を残らず出しきってしまうように。
「そうか……良かった」
「それで……、ひょっとして今からテレーゼたちを取り戻しに行くの?」
「そうだ。ただ言っておくがお前は連れ――」言い終わらぬ内にイレーヌは強引に割り込む。
「連れていきなさい」
 イレーヌの眼に青く静かに燃える炎が宿っているようだった。元からそのつもりでここに来たんだなとロビンは思った。ラッフルを連れてきたのもそのため。イレーヌ自身、昨夜ラフトが偽物であるということが見抜けずみすみすテレーゼの誘拐を許してしまったことに責任を感じているのだろう。
 そのまなざしを受けて、ロビンは逡巡する時間も持たずに言葉を返した。
「身の危険を感じたら遠慮なしに逃げろよ」
「馬鹿にしないでくれる?」
 そう、これでいい。
 胸の内でそんな言葉をつぶやくとロビンはイレーヌとラッフルを従えて戸をくぐった。外へと向かう階段の途中でロビンは一つ思いつき、イレーヌに振り返った。
「そうだ。ちょっと教えてほしいことがあるんだが」
「なあに?」
「レオノーラ女王って始祖王から数えて何代目の王なんだ?」
 イレーヌは「ええっと」と親指に顎を当て目を上げた。その仕草を三秒ばかり見せると、顎に当てていた指を離して身を乗り出した。
「確か五十四代目よ」
「よし!」
 小躍りでもしたい気分が沸き起こる。窓から月明かりの射す踊り場でロビンは水路の地図を取り出し、目的の場所を探る。『女王の頭を真っ二つに割る』。つまりレオノーラ女王の代数である五十四を二分の一にする。
「ビンゴ!」
 ロビンはついにそれを発見した。それはここから北東にあるちょうど河口と港湾部の境目に出る水路。移動範囲の円の中にもしっかりと収まっている。地図上にはその水路に番号が振られていた。「27」と。

■筆者メッセージ
きとかげ探偵に敬礼!
わたぬけ ( 2012/12/05(水) 20:25 )