INSANIA











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原罪の灯
第百四十三話「王殺し」

 命中はしなかった。

 だが、何よりも自尊心を傷つけられていた。

 絶対に、出来損ないのDシリーズが届くはずがないと思っていたのだ。獣はただ、湖面に映った月を見て吼えるだけ。その爪が月に届く事がないように、Dシリーズが自分に比肩する事もない、と。

 だがメガシンカが果たされ、最後の一撃は直撃こそしなかったものの、自分の頬を掠めた。それは初代にとって屈辱そのものだ。

「……ふざけるな」 

 初代は歩み出てオサムを踏みつける。砂嵐のフィールドから出たからだろう。ギリーが慌てて声にする。

「危ないですぜ!」

「危ない? ぼくにとって、Dシリーズなんて道具なんだ。道具に、一撃でも与えられた気持ちが、君に分かるか? こんな屈辱は、生まれて初めてだよ、オサムとやら!」

 その頭部を蹴り上げる。肩を荒立たせて、新たなポケモンを繰り出そうとした。このDシリーズだけは許せない。目の前で血祭りに上げてやる。

「落ち着いてくだせぇ! 左足は手に入りました。これを接合すれば」

 ギリーの声に初代はようやく左足が手に入った事を認識した。ボスゴドラはギリーのメガバンギラスを前に完全に無力化されている。今しかない、と感じていた。

「……そうだね。完全体になるのは、今こそ相応しい」

 割って入った殺気に初代は右手からポケモンを繰り出す。ジバコイルがその攻撃を防御した。攻撃してきたのはエンペルトだ。この戦場で唯一、まだ致命的なダメージを受けていないポケモンであった。

「再生させるわけにはいかない」

「邪魔立てするか。ヒグチ・サキ。だが君にさえも頓着している暇はない。既に完全体への布石は打ってある」

 初代はジバコイルに命じる。ジバコイルの放った電撃が左足の義足を機能不全にする。自動的に切り外され、初代は膝をついてギリーに手を差し出す。

「さぁ、左足をぼくに。後は、ぼくがやる」

 これで完全体になれる。二十三年もの間「死んでいた」意味もようやく出てくるというもの。初代はその訪れに口元を綻ばせた。

 瞬間、背筋へと殺気の渦が突き刺さる。咄嗟にジバコイルを出させて防御した。岩の刃が自分に向けて降りかかっている。

「ギリー……。どういうつもりだ」

 攻撃してきたのはギリーのメガバンギラスだ。当のギリーは黙りこくっている。

「権力が欲しくなったか? それとも力に溺れたか? この場でぼくを殺そうなど」

「どっちも要りやしませんよ、初代。やっぱり、あんたに付くのは止めだ。少しばかりなら、完全体を見たいって言う、欲はありました。初代ツワブキ・ダイゴの完成を見たいっていう、ね。でもこの状態で、足も立たず、なおかつオレの手にあんたの全ての権限があるって言うんなら、そりゃあんたを引き摺り下ろしたほうがいいような気もしてくる」

「裏切るのか」

 その言葉にギリーは笑い声を上げた。

「おかしな事を言うんですな、初代。あんた、今まで幾度となく裏切ってきた人間でしょう? 今度はあんたが裏切られる番です」

 左足へとギリーが攻撃を加えようとするが左足はどのような物理攻撃も受けなかった。ギリーは口にする。

「やっぱり、心臓部位と同じか。物理法則に則っていない」

「……それが分かっていながら、貴様、裏切るのか」

 自分の肉体は破壊出来ない。しかしギリーは動じなかった。

「破壊出来ないから、八つに分けて封印したんでしょう? まぁ、あんたの天下はここまでです。左足一本でも封印しちまえば、あんたは絶対に完成しない」

 砂嵐が激しくなる。ギリーはその中に自分を隠して逃げ切るつもりなのだろう。初代としては逃がすわけにはいかなかった。

「逃がすか! ジバコイル!」

「電気は、地面・悪タイプのメガバンギラスには効きませんって。それでは、オレはここでお暇します。完全体に成り切れない初代なら、あんたでも倒せるだろう? ヒグチ・サキ」

 その言葉にエンペルトが砂嵐の中から出現する。いつの間に、と感じていたがエンペルトは水・鋼タイプ。砂嵐の干渉を受けないのだ。

「ああ。縫い止めてくれた事、感謝する」

 エンペルトが迫る。ジバコイルを前に出そうとするとメガバンギラスが引き寄せた。

「やらせはしませんぜ。ここであんたは死ぬんだ。二十三年間死んでいたんだから、死は慣れているでしょう?」

 エンペルトが螺旋を描き、攻撃を自分に突き刺そうとする。

「エンペルト! 一気に決めろ!」

 その声に初代は口元に笑みを浮かべた。ギリーが訝しげな声を投げる。

「何がおかしい?」

「いや、こういう事もあるものだと思ってね。一手、遅かったな。今、地下に潜ませていたコープスコーズがぼくの心臓部と、ディアルガを手に入れた」

 初代の声にエンペルトを操るサキに迷いが生じる。ギリーが声を張り上げる。

「ハッタリだ! ヒグチ・サキ、迷うな!」

「いいや、事実だよ。本当のところね。ぼくも無理だと思っていた。もう殺されるしかないんだと思っていたが――、ぼくの分身達はとてもよく働いてくれたよ。そして我が息子であり最大の反逆者、イッシン。ありがとう、ぼくの心臓とディアルガを守ってくれたのは他ならぬお前だった」

「何なんだ……。ディアルガとは何だ!」

 サキの狼狽する声にギリーが舌打ちする。

「メガバンギラス! とどめを!」

 岩の刃が打ち下ろされようとする。その瞬間、初代は右手を掲げた。そこには紫色のモンスターボールがあった。その形状にギリーは絶句する。

「マスター、ボール……」

「王のポケモンだ。百四番目のボックスが今! 開かれた! 行け!」

 射出されたマスターボールが開かれ、出現したポケモンは今までにない威容を伴っていた。銀と藍色で構成された身体。四足のポケモンであるが、胸に埋め込まれたダイヤモンドの意匠に、赤い瞳が戦場を睥睨する。その姿は尋常ではない。ポケモンの枠を外れていた。

「何だ、このポケモンは……」

 サキが困惑を露にする。ギリーはメガバンギラスを呼びつけた。

「メガバンギラス! 相手が攻撃行動に移る前に、カタをつける! 地震!」

 メガバンギラスを中心にして茶色の波紋が浮かび上がる。初代はディアルガと同時に運び込まれてきた心臓部のカプセルを手にしていた。

「これが、最後のパーツか」

 カプセルを叩き割ると、心臓部が初代の胸に埋め込まれていく。メガバンギラスの攻撃が至ったかに思われた瞬間、初代は告げた。

「ディアルガ、時間停止」

 その言葉が放たれた瞬間、全ての時間が静止する。「じしん」の波紋攻撃がディアルガを傷つけようとしていたが今、この場にある全ての時間が止まっている。等しくディアルガの支配範囲だった。

「時間停止は、出来て五秒か。まだ完全に馴染みきっていないからね。ジバコイル」

 呼びつけるとジバコイルだけ時間停止の枠から外れる。前に出して「じしん」をいなした。

「時間停止、終了」

 再び動き出した時に「じしん」がジバコイルを盾にして防がれる。

 ギリーが目を見開いていた。

「いつの間に……」

「ギリー・ザ・ロック。今ならばまだ間に合おう。ぼくに従え」

 左足のない状態では立ち上がる事も出来ない。しかし、超越者の声音を滲ませた。ギリーは歯噛みして、「冗談じゃねぇや」と応じる。

「悪魔を蘇らせるなら、このまま死んだほうが、ってね!」

「残念だよ。君も悪魔の下僕だったのに」

 メガバンギラスがディアルガへと接近しようとする。ディアルガはまだ万全ではない。しかし、単純な時間操作ならば可能だった。

「時間逆行」

 一瞬、時間が停止してから、メガバンギラスが逆戻しのように後ろへと下がっていく。ギリーも口をぱくぱくさせて声を発したようだった。

「冗談じゃねぇや。悪魔を蘇らせ――」

 そこでハッとしたのだろう。自分が同じ言葉を口走っている事に。

「ディアルガは、時間を司るポケモンだ。究極の鋼タイプでもある。ちょっと齧った程度のメガシンカでは、このポケモンを止める事など出来ない。大人しく左足を渡すんだ、さぁ」

「この、左足さえ砕けば、完全体には成れないって寸法だろう。オレは、裏家業の人間だが、分かる事は分かる。あんたを蘇らせる事を、ただ静観しちゃいけないってのはな!」

「……本当に、残念だ。もっとビジネスライクに、物事を見られると思っていたのに」

「オレもな。あんたが蘇ろうが、他の人間がどうなろうが知ったこっちゃないと思っていた。だがいざこの段になるとよ、どうして他の連中があんたの復活一つでてんやわんやしていたのかが分かったよ。左足をあのDシリーズから奪っておいて何だが、やっぱりこれは、あんたには渡せない」

「そうか、渡せない、か」

 初代はギリーを見やり、口にする。

「ならば無理やり手に入れるしかないな」

 再び時が止まる。時間停止は五秒間。ジバコイルとエアームドが初代を運び上げ、ギリーの眼前へと降り立った。

「ギリー・ザ・ロック。ぼくは時間を操れるんだ。もう、怖いものなんてない」

 左足をその手から奪い取った瞬間、時間が動き出した。

「何を……」

 無防備な身体へとエアームドの放った風の刃が突き刺さる。ギリーの左腕が付け根から断ち切られた。

「運がいいね。左腕だけで済んだ」

 初代は左足を断面へと接合する。ディアルガに命じた。

「ディアルガ。断面の時間を操るくらいは造作もないだろう? やってくれ」

 ディアルガの身体に青い血脈が宿り、たちまち初代の左足を縫い目すらつけずに接合する。ギリーは目を瞠っていた。

「そんな事が……」

「出来るから、ぼくは王になれた。さて」

 繋がった左足の感覚を確かめる。もうジバコイルやエアームドの補助もいらないだろう。両足で佇む初代にギリーはまだ抵抗の意思があるらしい。

「今のぼくに勝てるとでも?」

「……初代。オレはメモリークローンを約束されている。死なない暗殺者、それもいいかな、とちょっと思っていた。だが、ツワブキ・イッシンの考え方や、ツワブキ・リョウ。それにこいつらを見ているとね、やっぱり死者を蘇らせるなんてやってはならない事なんだと思っちまった。だからよ!」

 メガバンギラスが吼えて初代へと岩の爪を立てようとする。初代は嘆息と共に声にした。

「残念だ。そしてさよなら、ギリー・ザ・ロック。ディアルガ」

 ディアルガの全身を駆け巡った青い血脈が頭部に集中する。赤い眼光を滾らせ、ディアルガがその口腔を開く。

「――時の咆哮」

 青い磁場を持つ光条が放たれる。それがギリーとメガバンギラスを押し包んだ瞬間、奇妙な現象が巻き起こった。

 メガバンギラスが瞬時にメガシンカを解かれ、バンギラスに戻る。それだけではない。その進化前であるサナギラスへと姿が変じ、遂にはさらに進化前であるヨーギラスになった。それだけで退化は止まらない。ヨーギラスの状態からさらに小さくなり、身体も透けてくる。遂にはタマゴ以前の状態へと還元された。この世に存在する前の姿。細胞レベルの退化が巻き起こったのだ。

 それはポケモンだけではない。ギリーも最初は光の放射に身体が縮み上がったのだと思われたがそれは精神面だけではなく肉体面でもであった。瞬く間に子供になり、赤子を経て胎児になった末に細胞の一つになった。

 そこにメガバンギラスとギリーの証明は一つもない。二つの小さな卵細胞があるだけだ。初代は歩み出て、その二つの細胞を踏み潰した。

「ぼくの前に立つ人間は皆、この力の前に恐怖する他ない。時の咆哮は相手を無条件にこの世に生まれる前の姿にまで還元する。今のは四十年のブランクを経ての一撃だったから少し時間がかかったが、いずれこの攻撃で瞬時に相手を存在以前の姿へと戻す事が出来るだろう」

 初代は視線を振り向ける。この場においてポケモンが使えるのは最早サキだけだった。

「君に戦えるだけの力があるとは思えないが。ヒグチ・サキ」

 初代の言葉にサキは応じていた。

「やってみなければ分からない」

「嘘をつけ。膝が笑っているぞ。怖いのなら怖いと言えばいい。素直なほうがいい」

「お断りだな。悪の前に、素直になる道理はない」

 鼻を鳴らすがそれが虚勢ある事は何よりも明らかだ。初代はここに来て交渉を試みる事にした。

「そうだな。君はずっと追っていたんだったか。ぼくを殺したのは誰なのか。その謎を、今ならば答えられる」

 初代の言葉にサキとリョウが目を見開く。

「誰だって言うんだ……」

「そのような甘言で惑わそうなど」

「嘘じゃないよ。本当に、今なら分かるんだ。全てのパーツが揃ったお陰か。あの時の事も鮮明に思い出せる。ぼくを殺した犯人は――」

 そこでデボンの壁が叩き壊された。エントランスに広がったのは巨大な破壊の爪痕である。即座に殺気を感じ取り、初代は声にする。

「時間停止」

 止まった時間の中で赤い刃が降りかかってくるのが視界に入った。見やればデボンへと突っ込んできたのはメガシンカしたボーマンダだ。

「ボーマンダ。龍の使い手となれば限られてくるな。この攻撃、逆鱗か。ディアルガ、少し下がろう。あまり攻撃をもらうのも面白くない」

 ディアルガと初代が三歩下がる。時間停止が解除され、先ほどまで初代のいた空間を赤い刃が引き裂いた。粉塵が舞い上がり、一瞬だけ視界を遮る。

 その一瞬の間に展開していた二人のトレーナーがそれぞれ分散したのが感覚で分かった。

「当たろうと当たるまいと、咄嗟の攻撃手段に転じる、か。油断出来ない敵だな。ネオロケット団。いいや、ホウエン四天王」

 初代の影が伸びて縫い止められる。青い衣を身に纏った少女が小型のポケモンを携えて声にしていた。

「影踏み! 逃げられない!」

 反対側から飛び出してきたのは紫色の衣服を身に纏った金髪の貴婦人だ。彼女の操る鬼の首のようなポケモンが冷凍ビームを発射する。

「ドラゴンだから氷が有効だと? 甘いな」

 冷凍ビームが表皮で弾かれ、霧散した。

「鋼タイプ……!」

 彼女の声に初代が鼻を鳴らしているとデボンの壁に食い込んでいたメガボーマンダが動き出した。急降下してディアルガへと特攻しようとする。

「まったく、四十年前と何ら変わらないな。自分の身を捨ててでも戦うか。ドラゴン使いのゲンジ」

 再び時間停止が襲う。メガボーマンダの特攻をディアルガと初代は避けた。

 解除するとメガボーマンダが地面を強靭な顎で食いかかる。初代はその姿を見やっていた。

「無駄だよ、ぼくに勝とうなんて――」

 その声音を遮るように雄叫びが奔る。初代は咄嗟に手を掲げていた。

 飛びかかってきたのは全身をドレスのような服飾に身を包んだ淡いピンク色のポケモンだった。宝石の剣を突き出している。それと同時に先ほどメガボーマンダが降ろしたのだろう。クチートのメガシンカ形態が背後から襲いかかっていた。

「なるほど、二重の策か。それにフェアリータイプ。攻め方は悪くない」

 しかし、と時間停止を解除する。

 二体のフェアリータイプがちょうどかち合った。

「クオっち? 予定通りに前から攻めたんじゃ」

「ディズィーさんこそ、後ろから攻めるって……」

 二人のトレーナーが狼狽する。初代が笑みを浮かべていると明確な殺意が背後から襲いかかってきた。空間を割るような勢いと雄叫びに振り返った瞬間、その姿が大写しになる。

 自分と同じ、銀色の髪に赤い瞳を持っている似姿。ディアルガへと振るい落とされようとした爪の一撃に時間停止をかける。

「来ると思ったよ。十五番目のぼく!」

 視界の中に入っているツワブキ・ダイゴに対して初代はエアームドに命じる。エアームドが時間停止の中、ダイゴへと襲いかかった。風の刃が完全に不意をつくタイミングで放たれる。時間停止の解除。これで無効化した、と初代は感じたがダイゴは咄嗟の判断でメタグロスを回転させ、反対側の爪で弾き落とした。

「半年前と同じだと思うな」

 ダイゴの声にメタグロスがディアルガへと爪を突き出す。初代は舌打ちと共に口にしていた。

「時間逆行」

 逆行出来るのは僅か三秒程度だ。相手もすぐに時間が巻き戻された事に気付くだろう。初代はその間に呼吸を整える。ディアルガと、まだ本調子ではない自分の肉体。この状態からメガシンカを扱う連中六人との戦闘は客観的にも厳しい。

「だが、ここは逃げてはならない。乗り越えなければいずれ禍根を残す。ぼくは半年前に、十五番目のぼくを完全に制したつもりだったが、甘かったか」

 巻き戻ったメタグロスとダイゴが声にする。

「半年前と同じだと思うな」

 そこでハッとしたのだろう。周囲を見渡し、自分の攻撃が成されていない事に気付いたらしい。

「時間を……!」

「どうやらそうみたいだ。初代とディアルガは、時間を自在に操れる」

 ディズィーと名乗った女は、見た目は全く違うがあれもDシリーズだ。どこか感覚的に分かっている部分があるのだろう。

「時間を自在に操るって……」

 クオンが言葉を詰まらせる。

「それでも」

 青い衣の少女が指輪を掲げる。貴婦人も同じように虹色に輝く石を爪につけていた。

「オニゴーリ、メガシンカ!」

「ヤミラミ、メガシンカだよ!」

 オニゴーリとヤミラミがエネルギーの皮膜を身に纏い、瞬時に咆哮で叩き割った。

 メガシンカを遂げた二体のポケモン、この場ではダイゴ以外、全員がメガシンカしている。

「圧倒的不利、って奴かな」

 それでも初代は余裕を浮かべる。ディアルガを手にして、負ける気はしない。

「ダイゴ? お前、生きて……」

 サキがダイゴに気づいて声を上げる。ダイゴも意外そうだった。

「サキさん……。何でここに……」

「……聞きたい事は山ほどあるが」

 ダイゴもそれを悟ったらしい。

「ええ。ここは初代を倒す事。それしかなさそうですね」

 了承の目線を交し合った二人に初代は嘲笑を上げた。

「馬鹿馬鹿しい、とはこの事か」

「何がだ。この状況、お前の不利に違いないんだぞ」

「ヒグチ・サキ。君はぼくを殺した人間が誰なのか、興味があるはずだ。その点では十五番目のぼくも同じかな?」

 その言葉に二人とも目を瞠ったのが分かった。初代は口にする。

「この場にいるよ。ぼくを二十三年前に殺しておいて、今ものうのうと生きている人間が」

 全員が震撼したのが伝わった。一体誰が、とダイゴが視線を巡らせる。

「ここで証明してみせよう。二十三年前の王殺し。それは一体何者の考えによるものだったのか」

 その諸悪の根源が、今まさに語られようとしていた。





 第九章 了


■筆者メッセージ
次回、最終章「青い栞」。この狂気の物語は祈りと願いに包まれる。
オンドゥル大使 ( 2016/03/20(日) 22:37 )