あとがき
どうも、オンドゥル大使です。
二百話……。長きに渡った戦いもようやく終わりを迎え、この物語にケリをつけられました。『NEMESIS』という物語について、ここではちょっと私の事情も含めてお話したいと思います。
そもそもこの物語のきっかけはとあるスレでした。「赤緑より前のポケモンをそろそろ出すべき」というスレタイでそこで取り上げられていたのが「ポケットモンスターセピア・モノクロ」のネタ画像でした。私は当時、これより前のポケットモンスター二次創作の三部作を終わらせ、もうポケモンはいいかな、と思っていた頃だったので四部に当たるこの作品を書くつもりはあまりなく、どちらかと言うと消極的だったのですが、このネタ画像を見て、さらに言えばスレの人々が膨らませる妄想の数々で刺激を受けて「そうだ、次はオーキド・ユキナリを主人公にしよう」と思えました。
「誰もやっていないぞ。やっていたとしても前任者は少ないからオリジナリティ出せるこれ!」と。しかしやってみると、ユキナリが主人公の場合、難しい問題が山積している事に気付きました。
一番の問題点。技術面。モンスターボールに関しては映画「セレビィ、時を越えた遭遇」を参考にするとしてもリザードを手持ちにするか? と言えばそうでもなくもっと相応しい手持ちがあるのではないかと考えました。それといずれオーキド博士になる、と分かっている状態からのお話、というのはそれだけで難しく、主人公がオーキド博士ならば何人かかかわっていなければならない人物がいることも判明し「これは一筋縄では行かないぞ」というのがよく分かりました。技術面に関しては私がやった三部作の設定をある種流用する形となりました。
第三部「NOAH」でポケモンが現実世界に持ち込まれたため前後の歴史が歪んでしまい、技術面、あるいは登場する人物が時代に則していないのも全ては時空の歪みのせいなのである、としたこの英断は自分でも間違っていないと思います。そうしなければ最初から、技術面で立ち止まっていた事でしょう。
技術面の次に立ちはだかったのが人物相関図。ヤナギ、フジ、ゲンジ、キクコ、ガンテツ、アデク……、出さなければならない人物が結構多かったです。そいつらの見せ場をきっちり作りつつこれまでの二次創作とは一線を画したものにする。そのために思いついたのが「いきなりヤナギが敵対している」という図でした。
ヤナギはユキナリの理解者、という二次創作や設定が多い中でこれはそれら全てに背を向けた結果の設定になったと思います。ですがこれを設定した瞬間、この『NEMESIS』の道が拓けました。「どうしてヤナギはユキナリと敵対する図になるのか」、「そもそもヤナギの立場はどうなのか」、「キクコとの関係は?」とヤナギに関して考えていくうちに元ネタである「セピア・モノクロ」では背負いきれなくなった部分があり、その点はばっさりと変えさせてもらいました。
ヤナギはユキナリの最大のライバルであり敵対者。この二人は戦う事でしか分かり合えない。
そういった設定を持ってくるとこの物語に締まりが生まれたのです。ヤナギとユキナリは常時何らかを奪い合って敵対している。ならばその奪い合う対象は? そこでキクコという少女がどの立ち居地にいるべきかが決まりました。
他の二次創作ではキクコはユキナリの幼馴染、という設定がありますがそれだと似たり寄ったりになってしまいますので決定的に違う点が「キクコは気弱で赤緑時点のような強さは全くない」という設定です。キクコという少女を巡っての三角関係をユキナリとヤナギで構築する事で二人は常に敵対するようになり、これで物語に一種の緊張状態が常に生まれる事になりました。
ヤナギとユキナリ、キクコの関係性は出来た。ではあとはどうする? 最大の難関として立ち塞がったのはリーグシステムです。第一回ポケモンリーグを標榜するのならばこれからのリーグの基礎を作らなければならない。その場合、どうやって競わせるか。
ポイント制とジムバッジ制度はそのために生まれました。ポイント制にする事で実力が拮抗するためには戦うしかない、という状況になりジムバッジをシンボルポイントにすればジムバッジを巡っての攻防も書ける。さらに言えば今作のジムバッジには特別な意味を持たせ、最終的にはジムバッジを得るものこそがこの地を治める資格を持つ……という風にジムバッジを集める事が必要不可欠にするための条件付けに苦労しました。ポイント制に関してはどう足掻いてもこの時代の技術ではどうにもならずポケギアを出しましたがこれも前述の「時空が歪んでいる」という設定を多いに利用しマサキをこの時代に呼び寄せました。
問題点と言えば、ユキナリ含む原典キャラのメイキング。彼らの若い頃は想像するしかないのですがあまりにかけ離れているとどうしようもないので色々と調べものをしました。正直、調べても答えは全然出てこないので(というかポケモン自体そういう伏線は張っておいて放置しているジャンルなので)もう自分色でやるしかありませんでした。気に入っていただければ幸い、気に入ってもらえなければ自分の力不足です。
なかなかに苦労する部分はこれでクリアしたかに思われましたが今度は思いつきで書いた部分の補完でした。
ロケット団とキシベ・サトシ。特異点オーキド・ユキナリとサカキ。ネメシスの最終目的と他の組織との対立。
実のところ全て思いつきで書いているので整合性を持たせるのに苦労しました。特にフジ博士はこの時代にいながらにしてこの時代にいてはならないものを生み出さなければならないのでロケット団にいるのは当然として、ではユキナリ少年とどう関係を持たせる? という答えが狂言回し的な役割になった、という意味です。
ロケット団に関して言えばシルフビル倒壊時点で既に勝負は決していたのですがその後、キシベは何故ロケット団とサカキにこだわったのか。その部分は考えるより他なく、結果的に「特異点サカキは向こう側(ポケモン時空)のサカキと繋がっており、キシベの最終目的は向こう側のサカキを王にする事であった」というのは本当に最後の最後に考えついた悪足掻きでした。
それまでこの最強トレーナーサカキを倒す手段が全く思いつかず、どこで戦わせるのかも曖昧だったのでユキナリと戦わせるには因縁がヤナギと違って全くないので苦労した点です。
ただ最後の最後にニドキングを伴って現れたサカキは結構いい感じに書けたのではないかと思っている部分でもあります。
サカキは「悪の帝王」というイメージが強かったので絶対に分かり合えない存在、として描きました。まぁ、まずサカキがこの時空に存在している時点でちょっと無理はあるのですがそこは便利な「歪んでいる次元」を使っての事で……。
あと地味に苦労したのはナツキです。ナツキは前三部作の第一部に登場する主人公ですが、あちらでは強過ぎたのでこっちでは大分ヒロインらしく設定し直しています。
ある意味「キクコとナツキでどっちとユキナリはキスをする?」という命題だけでこの物語は突き進めた感じもあるのでナツキを気の強い幼馴染に設定したのは正解でした。
メガシンカを出したのはやはり別の次元ならば出てもおかしくないだろうという事と自分の作品を突き詰めた時に発生する「同調現象」の結果点としてとても便利だからです。「ポケモンを超えたポケモン」というアオリもつけられましたし、ナタネが最初使うのもある種面白いかな、と。
ちなみにタイトル『NEMESIS』の意味はこの作品に登場する組織「ネメシス」であることと辞書の意訳の一つに「手強い者達」という意味があったからです。手強い者達、つまり立ち塞がるライバル達。まさしくこの第一回ポケモンリーグに相応しいタイトルだと感じました。
最後にこの小説で死した者達に黙祷を。
またしても私は話の都合とはいえ人を殺し過ぎました。深く反省しております。
物語は第一回ポケモンリーグを経ての時代となり、次世代へと受け継がれます。
次はHEXA第五部『INSANIA』でお会いしましょう。この戦いで出てきたあの人が意外な形で登場しますよ。
それではこれで。
2015年10月30日 オンドゥル大使より