悪の帝国の章
『イーヴィル・エンパイアT』

「まぁ、君が覚えていようといまいとどうでもいいが、ここに言っておくとすれば、まずはわたしの名前、というのが正しい判断だろう。自己紹介としてもね。わたしの名前はカルマ。精神体の殺し屋だ」
 そう口火を切って煙草に火を点ける。実体の煙草ではない。煙草の精神体に火を点けて、肺の中に吸い込んだのだ。
 胸の中が悪循環の気流でいっぱいになった事で話しやすくなったのを感じる。
「君は、どうしてここに来たのか、不思議がっているだろうね。なに、分かりやすい説明を求める気持ちは分かるよ。わたしだってそうだった。何年か、もう数えてもいないが、わたしの身元……いや、この言い方には語弊がある。身体が存在しないのに、身元、とは」
 心底可笑しくなって笑ってしまう。彼は怪訝そうだったので佇まいを正した。
 自分の姿はさぞ滑稽だろう。
 紫色のジャケットに、毒々しい黄色と黒のストライプネクタイ。ネクタイピンには髑髏があしらわれている。
「この格好を奇抜だと、思うかもしれないがわたしのセレクトじゃないよ。わたしの身元、いや言い方が悪いね。わたしの今の身体を預かっている相手からの要求でこの格好での職務を命じられているんだ。だからわたしは決して紫色なんて好きじゃないし、もっと言えばこんな悪趣味なネクタイなんて。さすがにセンスを疑うよ」
 ネクタイを捲ってやると裏側の刺繍は表とは正反対の色身になっており、それが余計に冗談めいていた。
「話を戻そう。わたしは精神体の殺しを主に仕事にしている。……何だって? 精神体、という言葉の意味が分からない? 無理もない。わたしも、取引をした時に初めて聞かされた。この世界には、実は幽霊なんていないんだ。実体と精神体。この二つに大別される。三つのルールを話しておこう。わたしが仕事を請け負った時に話されたのと同じ、三つのルールだ。一つ、実体に精神体は干渉できない。厳密に言えば実体に触れる事は出来るが、触れれば実体側に引っ張られる。磁石みたいなものかな。だから精神体は実体に干渉しようなんて思わない。有り体に言えば、精神体――幽霊は人を呪い殺せない、という事だよ。呪い殺す、というのがどのようなものなのか、わたしも知らないがね。二つ目、精神体は精神体でしか殺せないし壊せない。これは驚きのルールだった。つまり、判りやすく言えば幽霊同士は殺し合えるが、物理世界の人々、つまり実体の人間達に幽霊であるところの精神体は滅ぼせないんだ。だから祈祷師だとかああいうのは全部インチキだって事さ。わたしもこれを聞いた時には驚いたし、ユーモアのセンスも死んだら失われるのだな、と思ってしまった。さて、三つ目だが、これが実は最も大事だ。精神体は常に目的意識がなければ消滅してしまう。わたしが聞かされて、戦慄した事の一つだよ。つまり、常に何かをやろうと思わないと、精神体を維持できないんだ。わたしの場合は、常に標的……つまるところ殺しの相手をイメージしておかなくては、半日で消えてしまう。そう、半日だ。精神体の何も考えなくていい時間は半日だけ。十二時間ぴったり。だから、わたしはその半日の内のさらに半分、六時間だけ休める、つまり自由な時間だと考えている。これを聞いた後からは時計が手放せなくなった。なにせ時間を一秒でも過ぎれば消えてしまうんだ。そりゃ必死にもなるだろう? さて、この三つのルールを聞いた上で、君は問うだろう。どうして自分は精神体になってしまったのか。まぁ、もっとぶっちゃければ死んでしまったのか。生憎だが、わたしも分からないんだ。いや、誤解がないように言っておくが、精神体になった人間の行き着く先は大きく二つさ。常に目的を持って、つまり使命を課せられて、取引する。何と、なんて聞かないでくれよ。君はこれからそいつと取引するのか、あるいは緩やかに消滅するのかを迫られる。わたしほど切迫した状況ではないだろうがね。だって君は真っ当な死に方をして、ここに来たんだろう? わたしはちょっと特殊でね。何が特殊なのかは、ああ、よしておこう。これも言ってはいけない事だった」
 一拍置いてから彼がホルスターの辺りを探っているのに気づく。
「ポケモンかい? 言っておくが、精神体に手持ちは持てない。言っただろう? 物体に干渉は出来ないと。その代わり、と言っては何だが、我々にはこういう能力がある」
 指を立てると、蝋燭の形状をしたポケモンが寄ってきた。ヒトモシ、と呼ばれるポケモンだ。
「冥府と繋がっているポケモン、つまりゴーストタイプを使役出来る能力。数に制限はない。ただしゴーストタイプしか使えない。もう一つは、単純動作の命令しか出来ない。つまり、技の指示は無理なんだ。精密な指示にはやはり物体干渉能力が必要でね。だから大雑把に、相手を襲えだの、燃やせだの、一動作しか命じられない。だが、わたしの仕事には単純動作だけで充分でね。火炎放射だとか、ナイトヘッドだとかを命じる必要はなくって、ただ単に戦術の一つとして、彼らを操っているだけだ。実体の人間達からしてみれば、たまにゴーストタイプが暴れているようにしか見えないだろう。精神体は実体の人々には見えない。つまり相手側からしてみれば野性のように見えているんだ。このメリットは大きい。たとえば、相手の前にわざと出て、捕まえさせてから殺す、だとかね。おや、と認識するのは次にモンスターボールから出た時だから、ゴーストタイプの干渉能力を使えば内側からロックを開ける事が出来る。でもま、わたしはやらないよ。だってそれは取引の違反項目に抵触するからね。……ああ言っていなかったか。わたしは、実体を殺してはいけないんだ。虫一匹でもね。それが取引内容でもある」
 話し終えて、カルマは紫煙を漂わせる。煙い吐息を吹いて、「どうする?」と問いかけた。
「君がこの先、取引まで行くか、それともここで引き返すかは自由だが、君は真っ当に死んだんだ。なら、真っ当にこの先に進むといい。なに、後ろから襲ったりなんかしないよ。わたしには仕事があるからね」
 立ち上がって煙草を灰皿で揉み消す。彼は尋ねた。仕事内容について。
「細かくは話せないが、さっき言った通り、精神体の殺し屋だ。わたしは、悪人を殺し続けなければならない。悪人の定義がどうだとか、そういう議論はよそう。わたし自身は恐らく善人ではないだろうし、多分極悪人だ。だからこういう目的が課せられる。でも別段、悪い気もしないんだ。取引の内容には着実に近づいているからね。……だから取引内容に関しては言えないんだってば」
 笑いながらその場を後にする。
 彼はどうやらこの先に進む事に決めたようだ。
「それがいい。自分の道は自分で切り拓くものだ」
 カルマは目深に帽子を被る。帽子には紫色の羽根が付けられていた。
「趣味が悪いだろう? まぁ、精神体殺しにはちょうどいい格好さ」




「今日は彷徨っていた精神体の男と話し込んでしまった。わたしはいつもこうだ。お節介焼きなのかもしれない。あるいはお喋りか。どちらにせよ、真っ当に死んだ人間にわたしのような筋違いの人間がアドバイスするのはどうだろうか。彼の行く末を歪めなければいいが……」
 日記にそう綴って、カルマは息をついた。
 乗っているのは回送のタクシーである。
 運転手は自分が見えていないので鼻歌交じりだ。
 日記だけはカルマは欠かさずつけていた。それは自分の目的意識を明確にするのにちょうどいい作業だったからだ。
「半日も呆けていれば、消えてしまう。今の時刻はちょうど正午か。よし、ちょっと冷やかしてやろう」
 カルマは運転手の傍に歩み出る。運転手には見えないが、横合いからブレーキを踏んでやった。
 突如としてタクシーが横滑りし、運転手が必死の形相でハンドルを取って辛うじて対向車線には出ずに済んだ。
 カルマはその慌てように笑う。笑いながら、ああ自分はこういう人間だったのだろうな、と考える。
 他人の不幸を喜ぶ人間。もっと言えば破滅を願っている人間。
 ――やれやれ、自分で分析して嫌になる。
 このタクシー運転手が死ねば、つい先刻のように自分が冥界への手引きをする事になるのだろうか。そう考えると少し気が重くてカルマは今の軽率な行動を反省した。
 精神体になってよかったと思えるのは反省が素直に出来る事だ。
 実体の人間達はプライドだとか、あるいは身勝手な思惑だとかに雁字搦めになって反省がなかなか出来ない。だが精神体は気楽なもので、どうせしくじっても、ミスっても、死ぬだけだ。
 それが明確に見えている。だから落ち着いていられる。
 どうせ死ぬだけなのだから。
「悪いね、運転手さん。お金は置いておくから」
 ただし生きているうちには使えない。死んだ時に川を渡るための六文銭だ。文字通り、幽霊の金銭をタクシー運転手の懐に入れる。
 当然の事ながら彼は気づかない。
 カルマは目的の場所に辿り着いた事を察知して、タクシーが止まるタイミングでコンコンと、扉をノックしてやった。
 すると運転手は客だと思い込んで扉を開ける。
 移動にはもっぱらタクシーだった。
 何故かと言えば、タクシーの運転手がまかり間違って自分を見たとしても、それはよくある怪談話として消化されるからだ。精神体の居所だとか、そういう事は絶対に出回らない。
 逆に人がいるところだと駄目なのは、実体が多過ぎる点だ。
 精神体は実体に触れればそちら側に引っ張り込まれる。
 実体は物理存在としての主格が高ければ高いほど引っ張る力は強い。つまり、ポケモンや、人間というものが多いと自分の仕事に支障が出るのだ。
 ポケモンに関してはたまに精神体が見えているのではないかと思う時がある。だが、こちらもポケモンの力を借りるのだ。その場合、精神体の存在が漏れてもその時々だろう。自分の上役がどれだけ火消しに躍起になるのかは分からないが、ポケモン相手ならばそれほど苦労はしないのかもしれない。
「道案内どうも」
 開いたドアをノックして感謝を伝える。運転手からしてみれば空ノック二回なので意味が分からないだろうが。
「さて、地図の通りならばここなんだが……」
 田舎町の一角にある平屋であった。
 草がぼうぼうに生えており、そこいらからミミロルと呼ばれるポケモンが覗いている。
 ゴーストタイプは、と言えば居なかったのでカルマは予めここに来るまでに牽引しておいたポケモンを使う事にした。
「ゴース、だったかな。南方の町で彷徨っているところを引き寄せてきたが」
 どうせ任務が終われば引き離す。そうでなくともポケモンを引き連れる、という事はそれだけ存在の密度が濃くなるという事。ゴーストタイプは実体ではないとはいえ、ポケモンはポケモンを引き寄せる。つまり、野生同士でも引き合う引力のようなものは存在するのだ。
「頼むよ、ゴース。この平屋にいる精神体を殺す。それだけだ」
 それ以外は出来ればしてくれるなよ、という念を押したつもりだった。
 無論、ポケモンに人間の言葉など分かるわけがない。
 精神体になってから分かった事だが、ポケモンは人間の命令をしっかり聞いているわけではなく、ある一定の周波数と自分の脳の処理能力を駆使してそれに沿った技を繰り出しているだけなのだ。だから絆だとか、友情だとか、そういうのを期待しているトレーナーを見ると少しだけ憐憫の情が湧いてくる。
 完全にマシンインターフェイスだとまでは言わないが、ポケモン側もどこか人間を利用している節がある。それは自分の上役から聞かされていた「ポケモンの存在理由」に関しているのだろう。
 曰く、ポケモンはその棲息領域を広げるために、人間の認識を操っているだとか。
 完全に眉唾なので、カルマは信じていなかったがこれだけ広大な地方がありながら、ポケモンの一体もいない土地、というのがないのはそういう理由かもしれないと思っていた。
「わたしは別に、ポケモンに特別な信仰心があるわけでもなければ、何かを期待しているわけでもない」
 平屋に入るのには幾つかの手順がある。
 最も手っ取り早いのはドアに手を触れてしまう事だが、それは実体への干渉になる。
 先ほどのタクシーだって扉を直接開けたわけではない。あくまで実体の人間に開けさせたのだ。これが弱点である。
 許可のない場所に立ち入るのに、実体の人間の力添えを必要とする。
 精神体の弱い側面であり、なおかつどこへでもすいすい入れるわけではないという事実であった。
 幽霊と言えばどこでも入れるイメージがあるが、実際は実体の人間を少しだけ利用して行く先々を変えるしかない。
 もし変えられなかった場合、徒歩か、あるいは半日のリミットを守れずに消えてなくなるまでだ。
 もし任務を遂行出来なくとも死ぬだけ。
 なので生きている頃よりも気楽と言えば気楽である。
 どうせ死ぬしかないのだから。
 だがカルマは殺し屋だ。
 精神体専門の殺し屋であるからには、殺しを遂行せねばならない。
 これは困ったぞ、と周囲を見渡す。
 それらしい人影もなく、この平屋に立ち入るのには人間の力では無理だ。
 ならば、とカルマはポケモンを利用する事にした。
 先ほどからこちらを気にしているミミロル。特別な技の指示は出来ないが、ゴースにミミロルを追いかけろ、と命じる事は出来る。
 ゴースは舌を出してミミロルを追いかけ始めた。
 草むらを周回して、最終的に追い込んだ先である扉へとミミロルが突進する。
 予想通り、脆くなっていた扉はミミロルの弱々しい力でも破砕出来た。
 扉の脇から内部を窺う。
 中は埃っぽく、暗がりであった。
 ミミロルは慌てて逃げ帰ろうとする。それを絡め取ったのは自分ではない。
 中にいる標的だった。
「誰なのぉ?」
 カルマは心臓が停止していてよかったと感じる。
 身の毛もよだつ声でやけに反響して聞こえた。もし心臓が動いていたらその鼓動でばれていた事だろう。
 ミミロルがその青白い手で絡め取られる。しかし標的の精神体はミミロルに触れた途端、片腕が消失した。どうやら標的は自分が精神体になった事を知らないか、あるいはルールを知らないかのどちらかだ。つけ込むチャンスはあった。
「動くな」
 カルマは思い切って踏み込む。
 平屋の中は思っていたよりも手狭で、奥の壁はモルタルで固められていた。
 壁を背にする形で人影が佇んでいる。
 長い黒髪を垂らした女であった。カルマは確信する。
 あれが標的だ。
 自分の殺すべき、精神体なのだ。
「誰なのぉ? ここは暗い、苦しい」
 続ける声にカルマは簡素に応じた。
「名はカルマ。職業は精神体専門の殺し屋」
 わざわざ標的に語って聞かせるわけではなかったが相手は恐らく、自分の死んだ事さえも理解していないクチだろう。
「誰なのぉ? 精神体なんて知らない」
「数十年前かな。この町、ハナダシティで事件があった。ロケット団、という集団が起こした事件らしい」
 カルマは日記帳を開く。そこには標的に関する事が綴られている。
「押し込み強盗だったそうだな。その時、一人の女が殺されている。だが、警察には届けられず、夫も口を固く閉ざした。そのほうが都合がよかった。夫はすぐさま家を替えて高飛びした。夫は多分、その女とあんまりうまくいっていなかった。だから、死んでもらったほうが助かったし、警察に届け出でもして、自分が疑われれば世話はない。夫はロケット団の殺した妻を、庭先に植えた。そのモルタルの壁の先だな? 君の肉体があるのは」
 女の怨嗟の声がより凝って響く。
「誰なのぉ? 私は知らない。あなたなんて知らない」
「それはそうだろう。わたしは今しがた君に自己紹介したんだ。ハナダシティに巣食う悪しき精神体。ここで滅殺する」
 カルマは手を払った。
 精神体に有効な攻撃は実体による貫通。だが、その前にミミロルが驚いてこちらに突進してきた。カルマは咄嗟に避ける。
 ミミロルの攻撃がまずいのではない。実体に触れる事がまずいのだ。相手は、今の今までポケモンを使った攻撃はしてこなかったはずなのだが、ここに来て学習し始めている。
「誰なのぉ? 私は死んでなんかいない。殺されてなんかいない」
「……半分は分かっているんじゃないのか? 自分の居場所はもうここにはない事を。行くべき場所がある事を」
「誰なのぉ?」
 平屋全体をその声が振動させた。カルマは放たれた瘴気の混じった声に身体を煽られる。
 精神体を殺せるのは同じ精神体だけ。
 もし、相手の精神体がこちらを害するつもりで攻撃してきているのならば、それは確実にカルマを苦しめる攻撃となる。
 だがカルマは精神体特有の攻撃は出来ない。
 それは取引で禁じられている。
 その代わり、カルマはある事をゴースに命じた。その一言だけでこの状況を変えるつもりだった。
「ゴース、ミミロルをこの平屋から逃がすな」
 ゴースはミミロルの行く手を塞ぎ、その進行方向を変える。
 するとミミロルは驚いて女のほうへと飛びかかった。
 意図してミミロルがそうしたわけではない。ミミロルには恐らく精神体同士のいざこざは見えていないのだ。だがゴースは目に映る。
 ゴースがミミロルの進行方向を塞げば自ずと行く場所は一つだった。
 ミミロルが女の胴体を貫通する。
 女の腹部から下が消えてなくなった。
 突然の事に女が狼狽する。
「痛くないだろう? 不思議とね。精神体の消滅ってのは痛くないもんなんだ」
 女が手を伸ばす。しかし、その手がカルマにかかる前に、壁を蹴ったミミロルがこちらに向けて駆けてきた。その前足が女の頭部を粉砕する。
 別段、力の篭った一撃というわけではない。
 ただ触れただけだ。実体のあるポケモンが。
「誰、なのぉ……。私を、殺したのは……」
 女の断末魔はその疑問に集約されていた。カルマは応じる。
「恐らく、最も愛した人だろうさ」
 消え去った女の精神体の一片でも残っていないか確認して、カルマは平屋を出た。
 時計に目を留めると十分ほど、殺しにかかっていたらしい。
 死んだ精神体の行く末は決まっている。
 死ぬのだ。今度こそ、完全に。
 そこから先は言うも野暮だろう。死んだ後の人間の精神がどうなるかなど、語っても仕方あるまい。
「さて、わたしが何も考えずに過ごせるのは残り六時間か」
 次の標的が命じられるのを待つまでせいぜい、この町を満喫しよう。
 自分に与えられた数少ない自由な時間だ。
 そう思っていたが、視界の端に精神体らしき男が映った。
 カルマは額に手をやる。
 まさか、と確認してため息をついた。
 救急車とパトカーが駆けつけている。十字路にはタクシーとトラックが追突事故を起こしていた。
 先ほどのタクシー運転手が事故を起こしたのだ。
 まだ自分が死んだ事を分かっていないタクシー運転手はハンドルを握った手のままで事故現場を彷徨っている。
 放置してもよかったが、こういうのを放っておけない性質なのだ。
 カルマは歩み寄って、「もし」と声をかけた。
「あなた死んでいますよ。よろしければわたしが案内します」


オンドゥル大使 ( 2015/10/05(月) 21:23 )