ポケットモンスターHEXA BRAVE












小説トップ
あとがき
あとがき

 拙作、『ポケットモンスターHEXA BRAVE』を読んでくださり、ありがとうございます。

 このあとがきではHEXAサーが第二部と言えるこの作品が生まれた経緯と、この作品に込めたもの、いわばメッセージを紐解こうと思います。作品世界だけで完結したい方はブラウザバックしても大丈夫です。

 そもそも制作経緯から。前作、『ポケットモンスターHEXA』がパソコンの上では完結したのは二年前(2012年7月頃)でした。それからネット上にアップし名実共に作品として完成したのは昨年です(2013年7月)。実はBRAVE(これから便宜上第二部と呼びます)は2012年の末には第一章を書き出していました。つまり第一部の完結を待たずして既に第二部に取り掛かっていたのです。第一部がどれだけの評価を得られるのか分からない混迷の時に第二部を書き始めた私はまず考えたのは「キャラクター重視のエンターテイメント」でした。

 というのも前作はとても内向的で、読んでいただいたのならば分かるのですが自分さえ楽しめればいいという出来でした。せっかくネットにアップするのだから皆さんが面白く読めるものを目指そう。普通なら最初に思いつくところをようやく目指せたのはこの第二部からです。

 前作が展開的に無理のある部分も散見されたので今回テーマとして掲げたのは「ポケモン本来の能力による頭脳戦」、いわばチェスや将棋のようなバトルでした。しかし、私自身さほどバトル方面には明るくないので前作で課題であった特性を活かしたバトルというのをまず標榜したわけです。その上で主人公、ユウキのポケモンを「全く主人公らしくない」手持ちにしました。そのほうが意外性をつけると感じたからです。

 ご存知の通りそれはテッカニンとヌケニンでした。テッカニンは(BW時点で)全ポケモン中、二番目に速いポケモンです。それを活かした戦法として「見えないポケモン」という一見小説としては無理な戦闘シーンを描きました。実際にテッカニンの図鑑説明に「ある時代までは見えないと思われていた」という説明書きがあったのでぴったりだと感じたのです。このように図鑑説明と実際のポケモンの性能に根ざしたバトルをまず展開していこうと思いました。

 それと欠かしてはいけないのは「主人公の目的」です。前作では目的の見えづらい主人公ばかりで読者の方々にストレスを与えたかと思います。第二部では主人公の目的を一本化して明確にしようという動きがありました。ぶれない一本の芯がある主人公って格好いいですからね。

 そしてポケモン二次創作で恐らく触れられていないであろう「ディテールを極限まで高めた悪の組織」を描きました。極限まで、というのは私の尺度であって皆さんからしてみればお粗末であったかもしれませんが、ありそうな悪の組織という点でリヴァイヴ団を作り、なおかつ前作からの時代背景を残しているというのを見せるためコウエツシティF地区などの配慮を行いました。

 多分、この作品が稀有なのは悪の組織に入りながら正義の心を忘れない主人公、ユウキでしょう。さらにリーダー格のランポを含めチームブレイブヘキサの面々は徹底して「格好いい男」を目指しました。一本木通っている大人の男。それっていいじゃありませんか。

 主人公の動機が「悪の組織でのし上がり世界を変える」というのは少し変わっているかもしれません。特にポケモン二次創作ではほぼオリジナルキャラクターばかりの作品なので余計に浮いていたかもしれません。

 最初、この設定に実は悪戦苦闘しました。自分の頭の中ではユウキの行動付けは出来ているのですが彼をどういうスタンスのタイプに置くのかが迷いました。悪の組織に入るのは決定事項として、じゃあそれまでの入団試験は? そもそもどういう構造の組織なのか? メインとなる彼らの行動は? など、難しい要素が山積していました。

 個人的に一番苦労したのは第三章と第四章です。

 第三章ではカジノの様子などを克明に描かなければならず、さらにオチ(エレキブルとの戦闘)は決まっているもののそこに至るまでの動きが全く出来ておらずまさしく一寸先は闇の状態で手探りでした。

 第四章は「この書き方をすると読者が離れるかもな」という不安がありました。というのも最初は第三章と同じく、ミッションがありそのミッション中にミツヤと信頼関係を築くイベントがある、というシンプル構造だったのですがこれだと第三章と読み味が被ってしまいます。

 マンネリ化、これだけは避けねばなりませんでした。

 そういうわけで、まずどんどんとミツヤの過去へと埋没していく書き方になりました。あの演出は実は好きなアニメの演出と同じなのですがマイナーな作品なので多分分からないと思います。

 レナの存在についても触れねばなりません。この作品、レナとキーリ、Kとサヤカ、ミヨコ姉さんを除くとまず女性がほぼ出ません。これはマンネリ以前に潤いがないと思い、レナを出しましたが、レナの出番もあってないようなものなので多分男臭い話になってしまったと思います。また研究者で高飛車な女性、というのも意識して作りました。前作の女性陣に大変好評をいただいて、「オンドゥル大使さんは女性を描くのがお上手」という異例の評価を得てしまったので(実際は書きやすい女の人のステレオタイプをポンポン置いただけです……。すいません)、「でも女性だけじゃないのです」という風に男ばかり置くと今度は男まみれになってしまったので、救済措置としての女性でもありました。

 レナを気に入ってくださる方がいないのはまぁ当然と言えば当然で(そういうキャラクターなので)、どうしよう、と思ったら第七章でキーリという幼女を描く機会が得られました。ただしこの幼女、キャラクター的には全くレナと同じなのでほとんど同族です。もしかしたら人によっては同じようなキャラが二体いるように見えたかもしれません。

 ちなみにキーリという名前の由来は好きだったライトノベルから。プロット段階では存在しておらず、レナとユウキとFだけの反逆では面白みがないので付け加えた人物です。

 今回の第二部で最も転機となったのは文字通りストーリー上の転である第七章からでしょう。

 主人公が悪の組織でのし上がるかと思ったらそんなに簡単にはいかず反逆者にされてしまう、というのは自分でも驚いた展開です。

 この第七章で実はかなり狙った部分があったのですがあまり好評は得られませんでした……。主人公が反逆者になる展開は受け容れられないのでしょうかね……。

 こういう物語のお約束を破る、というのは私の好きなマンガ作品からの引用で(そのマンガでは悪の組織による世界征服が達成されてしまいます)、前作もそうですが色々な作品からの引用とかで出来ています。

 しかしHEXAなのだから全六章で締めろよ、と言いたいのですが今回は全八章になりました。別に「六」に特別な思い入れはないのでいいのですが……。

 あとFとKについて。前作のキャラクターを出すのは早期から決めていたのですが誰になるかは分かりませんでした。最初はナツキにしようかと思っていたのですがナツキが前作であまりに人間離れした進化をしたのでこいつを出したら主役を食いかねないと断念しました。次に思いついたのが読者人気の高いサキとマコで、「でもこいつら出したらこいつらの視点をまた書かなきゃいけないのか」と恐らく視点が偏ってしまうので出しませんでした。

 その末に出しても恐らくは問題のない脇役として出たのがFとKです。どうしてあとがきなのに伏せているのかと言うとあとがきから読む方もいるからです。私がそうです。

 FとKの正体についてはかなり推測が入り乱れた様子で(まさかその正体を知るために前作を読んでくださる方まで出てくるとは思いませんでした)自分でもいい人選だったと思います。

 Kの手持ちがドラゴンタイプの時点である程度の察しは付いたかなと思いましたが。

 あと今作から入ってくださった読者さんがとても多くて自分でも驚いています。「読みやすさ、エンターテイメント性」を重視したので当たり前と言えば当たり前なのですが前作よりも読みやすいとのお声が多数あり、よかったと思っています。前作を読まなくても読めますの表記が意外に役立ちました。

 それと今作から入った方から多数質問のあった第八章の涅槃の光ですがあれは前作のナツキが手に入れた「累乗の先」の光と同じです。ただ修行で物にする過程を描く事であれはやり方によっては誰でも手に入れられるという要素を描けたかと思います。今作の老師が空中要塞で手に入れたと言っていたのはナツキの放った光が作用した結果ですね。

 それと絶対に外せない要素としてプロローグから出ている今作の元凶、カルマです。

 カルマの存在は徹底的に伏せながらもなおかつところどころでにおわせると言う割と面倒くさいやり方を採用しました。このやり方がどうやら功を奏したようでよかったです。

 カルマの目指した理想郷、ヘキサ。前作でキシベについていけなかった人は何を思って生きているのだろう、という疑問から生まれました。プロローグの名前がシャングリラなのはそういう意図も込めています。カルマはどんどんと悪めいていきましたが実際のところ実は空虚な自分を埋めるためにヘキサという理想郷を求めたちょっと見方によればかわいそうな存在です。カルマの求めたヘキサがキシベの求めたヘキサとは全く違ったのも前作を読んだ方ならば分かったと思います。

 カルマの名前の元ネタは言うまでもなく「業」の名前です。カルマ自身、とても業にまみれた人間なのでちょうどいいと思いました。あとラスボスっぽさがとても出たと思います。

 地味に困ったのはユウキの名前で、今作の副題をBRAVEにすると決めた時点で主人公の名前はユウキだったのですがユウキってありふれているのですよね……。色んな作品でユウキという名前の主人公がいて没個性しないかな、と若干不安でした。

 カルマのデオキシスと対抗するにはテッカニンを超えるしかない、と引っ張り出した設定、δ種。これは昔ポケモンカードで出てきた本来と違うタイプに目覚めたポケモンを総じてδ種と呼んでいたのが元ネタです。ちなみに最終的にテッカニンは何タイプに目覚めたのか、というクエスチョンには電気タイプだと答えておきます。なのでデンチュラと同じタイプ構成になったのですよね、弱点多い……。

 あと今作も筆を置く前に死したキャラクターに黙祷を。私はまた話の都合とはいえキャラクターを殺し過ぎました。深く反省しております。

 あと心残りと言えば未だに目標であるKaryuさんの『ポケットモンスター メディター』に追いつけていないところです。まだKaryuさんは本気を出していないのに……。

 さて、HEXAサーガ第二部完ですが、既に第三部が出来ています。前回は八割方、と言いましたが今回はもう出来ています。

 タイトルは『ポケットモンスターHEXA NOAH』です。性懲りもなくまたカイヘン地方か、と思われたかもしれませんが次はカントーのお話です。なので少しばかりは分かりやすいかと。

 内容に関してはここでは伏せさせてもらいますが、今作で取り組んだエンターテイメント性と前作にあったダイナミックさを兼ね備えた作品です、とだけ言っておきましょう。

 しかし第三部を書くと冗談で言っていたらまさか本当に書いてしまえるとは思いませんでした。多分、このHEXAサーガの持つパワーと皆様の応援に支えられた結果だと思います。ありがとうございます。

 あと、次の作品も前作、及び今作を読んでいなくとも読める作品になっております。新規さんはいつでも大歓迎です。

 今回も言い表せないほどの感謝を捧げる方々がいます。まず前回からびっくりするほど長期間この作品を見つめてくださったFOREVER HEROESさんにはもう土下座しかないほどです。毎回、よく褒めるポイントを見つけてくださった……。それと最初に感想をくださったとらとさんはこの作品がこの方向性でいいのだという確証をくださいました。竜王さんは二回も感想を投下してくださり、さらに毎回ツィッター上で更新報告を見届けてくださった鈴志木さんを含め様々な方々には感謝の言葉を星の数ほど並べ立てても足りません。

 自分は色んな方々に応援されつつこの作品を終えられる事がとても嬉しいです。

 さてHEXAという物語は大きな枠を飛び越え、次の世代へ。

 魂の輝きが消えぬうちに。

『ポケットモンスターHEXA BRAVE』。

 男達の黄金の夢は終わりました。

 2014年6月27日 オンドゥル大使より

BACK | INDEX | NEXT

オンドゥル大使 ( 2014/06/27(金) 21:03 )