Re:F
Resonance Future
 ケイは夕刻に起こったポケモンによる暴走事故ではなく、サガラ弟の追跡に回されていた。と言うのも、ミシ・サガラについての消息が分かったからだ。彼は大企業シルフカンパニーに保護されている可能性が高まった。

「どうしてそんなところが」とケイが問いかけるとイシガキは、「恐らく」と憶測を交えた推理を展開した。

「サガラ兄弟は元々シルフの社員だった。しかし、その異常性から切り捨てられた。しばらくは企業が面子のために隠していたが、兄弟は暴走した。今になって企業へと助けを求めたって寸法だろう」

 そのような推測が当たれば世も末である、とケイが口にすると、イシガキは口元を斜めにして、「とっくに末だと思うがね」と答えた。

 二人はシルフカンパニーの地下駐車場で張っていた。数時間前に地下駐車場に下りたという目撃情報を手に入れたのだ。

 二人が張っているとミシ・サガラはSPらしき黒服を二人引き連れて歩いてきた。今だ、とイシガキが号令を発しようとする。その時、地下駐車場に車が走り込んできた。無関係に車に思えたが不意に急停車したかと思うと、何かの音が聞こえた。

「今はサガラ弟だ」

 イシガキの声にケイは我に帰ってミシへと猪突した。ミシはまさか張られているとは思わなかったのだろう。二人のSPを振り切って、今しがた停車してきた車へと走り込んでいった。車から一人、降りてくる。少女だった。黒い外套姿でほとんど放心したように目は虚ろである。何があったのだ、とケイが思っているとミシはその少女を人質に取った。首筋に腕を絡め、「近づくとこのガキを殺す!」と脅した。ケイとイシガキがお互いに動きを止める。SPも戸惑っているらしい。どうやらこのような状態になっても守れとは命令されていないようだ。ミシが少女を連れて後ずさろうとする。ケイは渇いた喉がひりつくを感じながら、「その子に手を出すな!」と叫んでいた。イシガキが、「馬鹿。刺激するな」と声を飛ばした時にはもう遅い。ミシは、「うるせー!」と興奮した様子だった。

 ケイが舌打ちを漏らしてホルスターにかけたボールへと手を伸ばそうとすると、「ポケモン出したら、この首へし折るぞ!」とミシは少女の首に絡めた腕に力を込めた。ケイとイシガキが慎重になって様子を見守る。そこでケイはある事に気づいた。少女が全く怯えた様子がないのである。それどころか、片手にはポケギアを持っており、視線はそちらに注がれていた。まるでミシには最初から興味も関心もないように。

 ケイが怪訝そうにしていると、ミシが口から泡を飛ばしながら、「近づくんじゃねー!」と叫んだ。その直後である。

「……そう。あんたやったのね」

 少女が初めて言葉を発した瞬間、ミシの頭部が燃え盛った。一瞬にして炭化したミシは口から煙を吐き出す。毛髪の一本すら残さぬ、完全な燃焼だった。その炎は消え去り、ミシはその場に倒れ込む。ケイとイシガキは目を奪われていた。目の前の少女がやったのか。それすら定かではない。しかし、ミシは今の一撃で瀕死の重傷を負った。ケイが少女を見つめる。少女は片目だけが赤く、髪を結っていた。

「まさか、君が熾天使……」

 ついて出た言葉に少女が駆け出す。思わず身を守ろうと後ずさった二人を振り切って少女は非常階段を駆け昇っていった。虚をつかれたようにケイは呆然としていたが、やがてイシガキが、「確保しろ! サガラ弟を」と叫んだのでようやく自分の職務を思い出し、ケイはミシに手錠をかけてから救急車を呼んだ。その時にはもう少女がどこに行ったのかは分からなくなっていた。一瞬だけ姿を見せた熾天使――。

「幻だったのか」

 呟いてケイは天井を仰いだ。



























 モカは非常階段を上りながら、ポケギアを握り締めた。やがて中腹の会議室に至った時、もう一度ポケギアを見やる。発信源は確かにここだった。モカは扉を開けて押し入った。飛び込んできた光景はガラス張りの壁の前に執務机のある簡素なものだった。その執務机の奥、椅子に座った影が振り返る。その顔は見知ったものだった。

「おじ様、いいえ、ゲンジロウ。何のつもりで、こんな事を」

 息を切らしてモカが問いかけるとゲンジロウは軽く首をひねりながら、「ここまで来いと命令した覚えはないが」と応じた。

「答えなさい! 何のつもりでこんな事をしたん! 何のつもりで、パパを……」

 モカはポケギアを握り潰した。苦渋の滲んだ声音で質問した言葉に、「そういう事がまかり通るんだ」とゲンジロウは応じた。

「もう三年も音沙汰がないのに今さら帰ってくると言い出した時に、私は肝を冷やした。君をもう一流の暗殺者にすると決めたし、その段階ももう過ぎていたからね。もうただの親子に戻すつもりはない。だから、開発部のデータに介入してあの三人を被験者にした。都合が良かった。それだけだよ」

「都合? そんなんで、パパはポケモンにされたって言うん?」

「納得出来ないかい」

「当たり前や! あんた、ヒトの命を何やと思ってるん!」

「では、逆に質問するが」とゲンジロウは右手を翳して拳に変えた。

「ヒトの命はそれほど価値のあるものか?」

「当然やろ! 誰だって命の価値は――」

「ならば、君が屠ってきた命もまた、同価値だという事になるが」

 モカは言葉を呑み込んだ。それは認めてはならない事だ。決して、自分が認めてはならない。認めた瞬間、もう自分ではいられなくなる。足場がぼろぼろと崩れ落ちる。

 閉口したモカの様子を見て、「やはり答えられないか」とゲンジロウは左手を翳した。

「その命、罪人の命までも等価だとするのなら、君が今までやってきた事はただの人殺しだ。しかも、思想も何もない。ただ命じられるがままに殺しただけ。ある意味、そこいらの人殺しよりも性質が悪い。私は、サガラ兄弟や他の異常者も見てきたが、モカ・アネモニー、気づいていたか? 君が最も異常である事に」

「うちが、異常やって……?」

「そうではないか。現に君は様々なる犠牲の上にここまで辿り着いた。私が命じれば躊躇なく殺した。とてもいい駒だった。だから重宝してきたのだ。だというのに、この段になってようやく命の価値に目覚めた? 片腹痛いな」

 ゲンジロウは椅子に座ったまま肩を揺らして笑った。モカは片手を繰って蜃気楼を呼び出す。ゲンジロウの眼がすぅと細められた。

「あんたを殺す」

 迷いなく放たれた声に、「出来るのか?」と問いかけられた。

「あんたが言ったんやろ。うちはそこいらの人殺しよりも性質が悪いって。なら、うちは殺せる」

 蜃気楼へとモカは命じようとした。炎熱でゲンジロウの命を潰せ、と。しかし、その直前に背後に気配を感じ取った。覚えず振り返る。

 そこにいた人影にモカは目を見開いた。

「ユカ……」

 ショートカットの髪を揺らして、ユカが、「せっかくの会話に悪いけど」といつもの口調で割り込んだ。

「ホントにあんたって馬鹿よね。一時の感情で雇い主さえも殺そうとするんだから」

「何、言っとるん……? ユカは、だって……」

 夕刻の電車の中にいたはずだ。ビルと衝突して弾け飛んだ。あの中にいたのを確かに見た。

 モカの心境を読んだかのようにユカは髪をかき上げて、「あんたはあの時、死んだと思ったんでしょうけど」と口を開いた。

「あんただって、あの程度の事故なら抜け出せるぐらいの技量はつけてもらったでしょ? お父さんに」

 その言葉にモカは目を戦慄かせた。ユカが片手を繰ると、空間から見知った気配と同じものが引き出された。陽炎のように歪んだ場所から紅紫色のバクフーンが顔を覗かせる。口をかぁっと開き、同じく紅紫に染まった襟巻きの炎を滾らせた。蜃気楼はその姿にたじろいだようだった。モカも言葉をなくしている。

「ユカには生まれた時から仕込んでおいた。しかし、出来る事ならば実の娘に殺しはさせたくないのが親心だろう? ユカには巧妙に隠れてもらった。決してモカ、君にだけはばれないように」

 紅紫のバクフーンが咆哮すると、炎熱の呼気がモカの髪を煽った。結っていた髪が解け、僅かに垂れ下がる。

「うちの蜃気楼と、同じ……」

「同じだなんて、そんなレベルが低いのと一緒にされちゃ敵わないわね。あたしは数段育てている。あんたの薄ら間抜けな蜃気楼モドキとは格が違う」

 モカはその言葉に奥歯を噛み締めて、ゲンジロウへと振り向いた。その眼には殺意の光が宿っている。

「ゲンジロウ! あんた……!」

「父親ももうすぐガス室に送られて死ぬ。後を追うといい。親子揃って役に立ってくれた事だけは褒めてやろう」

「蜃気楼、火炎放――」

「させない。蜃気楼」

 ユカの声に弾かれたように紅紫のバクフーンが動き、火炎放射の射線上に立った。火炎放射が弾き出された瞬間、その炎がバクフーンの手前で尻込みするように弱まったかと思うと、ねじれてバクフーンの襟巻きの中へと炎が収束していくではないか。火炎放射の炎を全て吸い込んだバクフーンはさらに勢いよく吼えた。その咆哮にモカと蜃気楼はたじろいだ。

「どうして、炎が……」

「蜃気楼、いいえ、バクフーンの特性も知らないの?」

 背後にいるユカが小ばかにした声を振り向ける。モカは肩越しに見やって、「何を……」と呻いた。

「バクフーンの特性には体力が低下した時に能力が上がる猛火と、もう一つ、炎の技全てを無効化する貰い火がある。あたしのバクフーンは貰い火特性。お父さんがあんたへのカウンターの意味も込めてあたしに与えてくれたのよ」

「その通り。最初から熾天使は二人、従えるつもりだった」

 その告白にモカはユカのバクフーンへと目を向ける。紅紫のバクフーンは炎の勢いを上げて後ろにいる執務机のゲンジロウへの道を通すように半身になった。ゲンジロウの姿をバクフーンから拡散した火の粉が彩る。

「当初の計画では、名も持たぬ孤児を引き取って熾天使に仕立て上げるつもりだったが、ユーリのおかげでその手間が省けた。モカ、君には昔から素養があると感じていた。その目論見通り、君は素晴らしい暗殺者、熾天使へと上り詰めた。全ては私の計画の上にあった。一人の熾天使だけでは何の力にもならない。かつて、炎魔と呼ばれる暗殺者がいたのは知っているな」

 ゲンジロウの言葉にいつか教えられたバクフーンを従える少女の暗殺者の事を思い出す。まるで自分のようだと感じていたが、炎魔は名前すら持たぬという。シャクエン、という記号としてほとんどの者は一生を過ごすという話を聞いて背筋が寒くなったのを覚えている。

「炎魔は八年前を最後に、消息を立った。裏の世界からだ。それが不可能な事であるのは君もよく分かっているだろう。だから恐らく炎魔は雇い主を殺した。飼い主の手を噛んだというわけだ。その後、どのような方法を使ったのか分からないが、裏の世界から完全に足を洗った。炎魔を誰も追跡出来なかった。追跡した者を何人か知っているが、ことごとく返り討ちにされた。炎魔はもう駄目だ。私は考えた。ならば、炎魔に代わる、炎魔と同じ戦力を保持すればいい」

「それが、熾天使やって言うの……」

 モカが放った言葉にゲンジロウは口角を吊り上げた。肯定の笑みだと分かった瞬間、モカは蜃気楼へと指示を飛ばそうとした。その直前に、紅紫のバクフーンが襲いかかる。蜃気楼を取り押さえ、攻撃の力を緩めようとした。組み付かれて蜃気楼はほとんど身動きが取れないようだ。バクフーンが首根っこを押さえ込み、襟巻き部分の炎を手で引っ掴む。貰い火の特性を持つ紅紫のバクフーンは蜃気楼のエネルギーが凝縮して溢れ出した部分に手を触れて、そこから直接力を奪い取っているようであった。バクフーンの腕がどくんどくんと脈打つ。対して蜃気楼は目に見えて疲弊していった。

「蜃気楼! 勝てへんの?」

「無駄よ。その蜃気楼モドキじゃ、あたしのには到底及ばない。そのまま力を吸い尽くしてやるわ」

 ユカの言葉にモカは頭を振って、「何でなん!」と叫んだ。

「何で、ユカはこっち側に……。うち、ユカだけはこっち側に来て欲しくなかったのに」

 モカの言葉に、「お互い様よ」と小さく声が放たれた。目を見開いてユカへと視線を向ける。ユカの眼には何の感情も浮かんでいなかった。ただ奈落だけを見つめ続ける暗殺者の眼がそこにある。

「熾天使は二人もいらない。余計な心配だったわ、お父さん。いえ、我が主」

 ユカが跪いて頭を垂れる。ゲンジロウが椅子から立ち上がり、「そうかしこまるな、ユカ」と言った。

「私は戦い方を教えたに過ぎない。ユカ、お前には戦い方を、モカ、君には生き方を教えた」

 歩み寄ってくるゲンジロウに対して、モカは、「来んといて!」と喚き散らした。蜃気楼が呼応して襟巻きから炎を迸らせようとするが、紅紫のバクフーンが押さえる力のほうが強い。戦意はたちまち折られ、蜃気楼は憔悴した様子で額づいた。

「来たら、蜃気楼の炎で――」

「どうすると言うのだ? 既に蜃気楼は無力化されている。ユカの蜃気楼にも勝てないのでは、最早熾天使を名乗る資格もない」

 絡み合う炎のポケモンを物ともせずにゲンジロウはモカの眼前へと歩み寄った。モカは逆に気圧されたように後ずさる。その背後にも凛とした気配がある。ユカが暗殺者の眼をぎらつかせて立っている。

「うち、は……」

 モカが機械仕掛けの人形のようにぎこちなく振り向いた。ユカが一歩、踏み出す。モカは下がる事も、踏み出す事も出来ずにたたらを踏んだ。

「どうすれば……」

 その場に膝をつく。わなわなと震える眼差しが足元を見つめる。頭上から声が降りかけられた。まるで神託のように響き渡る。

「裏の世界で名を奪われた者が辿る道は、一つしかない」

 モカが顔を上げる。ゲンジロウが冷酷に宣言した。

「ここで死ね、モカ・アネモニー」

 その言葉が響き渡った瞬間、モカは頭を抱えて叫んだ。顔を覆って、「蜃気楼!」と呼びかける。モカの精神に呼応したのか、蜃気楼の全身から赤い波動が広がり、同心円状に炎の膜を張った。しかし、貰い火特性のバクフーンの前では無力だ。全ての炎の攻撃はバクフーンへと注ぎ込まれる。

 蜃気楼が足を踏み鳴らす。そこでユカとゲンジロウが気づいた。

「まさか――」

「噴火!」

 蜃気楼は鋭く足元を蹴りつけた。槍の穂のような鋭さを伴った一撃がビルを融解させ、地下まで続く道を作り出す。蜃気楼は最後の力でバクフーンの手を振り払い、モカを抱えた。蜃気楼に抱えられてモカは一直線に空いた穴へと身を躍らせる。地下には先ほどの刑事達はいなかった。もう出払っているのだろう。モカは安堵の息をついて、蜃気楼と共に逃げ出そうとした。しかし、蜃気楼は既に精根尽き果てたかのように動きが鈍い。このままでは足枷になる、と感じたモカは空間の中に隠れて身体を休めるように命じた。

 しかし、どうすると言うのだ。モカは駆け出しながら考える。

 信じていたものに裏切られた。

 全ては偽りだった。

 自分は演じさせられていたに過ぎない。

 では、これからどう生きる。

 どうやって終わりにすればいい。

 モカは迷いを振り切るように首を振って、地下駐車場から外に出た。逃げ出した暗殺者の末路などとうに知れているではないか。

 モカは雑踏の中、走り出した。野次馬達が崩落したビルとレールへと交互に目を向けており、自分に気づく様子はなかった。モカは本能的に先ほど戦った場所へと向かっていた。まだ処理されず横たわっている鋼の身体を見やる。ハガネール――否、自分の父親ユーリ・アネモニー。モカは父親へと近づこうとして、シルフカンパニーの社員らしき人間によって阻まれた。モカは声を荒らげる。

「パパ! うちはここやから!」



























 感情の一滴がその声に鳴動した。

 本能的な反応だったのかもしれない。あるいはまだ理性というものが残っていたのかもしれない。混濁した意識の中、彼は顔を上げた。その一つの動作がいちいち空気を震わせる。自分の周囲に取り付いていた人々を振り払い、彼は声の主を見やった。

 最早、理性的な部分で身体を動かしているのではない。突き抜ける本能だけが身体を動かしているはずだが、彼にはまだ感じるだけの理性が一滴だけ残っていた。白紙に落とした墨のように広がった感情が波打ち、彼に声の主を探させた。眼下に一人の少女の姿が映る。彼は喉を震わせた。知っている名前を呼ぼうとしたが、既に人間の声帯の震わせ方は忘却の彼方にあった。

 轟、と空気が振動する。ただ一言の呟きが、突風の如く夜の街を吹き抜けた。少女は胸の前で手を握り締め、もう一度、彼の立場であるらしきものを呼んだ。

 彼は咆哮する。こんな声は出したくない。ただ一言だけでいい。

 ――ただいま、モカ。

 それだけの言葉のために、彼は尻尾で瓦礫を薙ぎ払い、少女へと近づこうとした。自分に取り付いていた人々から球体の何かが投げ放たれる。モンスターボールだ。自分の身体がそれに吸い込まれていく。少女は手を伸ばした。すがる当ての他にないように。彼にとっても、少女にとっても、どちらも替え難い存在だった。

 少女の声が聞こえる。

 ――おかえり、パパ。

 その声が鼓膜に残響した瞬間、視界が暗く閉ざされた。






















 モカは反射的に片手を薙いでいた。

「蜃気楼!」

 怒りを滲ませた声に反応した蜃気楼が空間を飛び越えて、父親を捕まえた人間の手を焼き切った。炎の腕が取り落とされたモンスターボールを優しく握り締め、モカの側へと引き寄せる。モカはそのモンスターボールを握って走り出した。後ろから静止の声がかかる。投光機の円形の光が幾重もモカを追ってくる。どこにも逃げられないかもしれない。このまま囚われて今生の別れを味わう事になるかもしれない。

 ――それでも。

 モカは胸に抱いた命一つの灯火を離さなかった。この世の果てまでも、命が尽き果てても、決して離さない。

 あらゆる種類のポケモンが放たれ、モカの行く手を遮ろうとする。モカは蜃気楼の炎を操って、現れる障壁である敵を焼いていった。恐れも、迷いもない。このためならば命を賭けられる。

 モンスターボールの中から声が聞こえたような気がした。モカはその声に応じる。

「……ずっと、一緒だよ、パパ」

 ――もう離れないで。

 ――離さないで。

 孤独を埋めあうように二つの魂が共鳴した。















Re:F 完

オンドゥル大使 ( 2013/07/16(火) 22:12 )