序『Ki―SS OF LIFE』
15thkiss

「私は……どうしてこんなところに」

 後部座席で未だに拘束具に留められたカシワギ博士にカムイは嘆息をついた。

「もう……偽るのはやめにしませんか」

「……何を言って」

「カシワギ博士じゃないんでしょう? あなた」

 息を呑んだカシワギ博士にカムイは畳み掛けた。

「だって……本物のカシワギ博士なら俺の事は知らないはずです。この姿にはジョウトに入ってからなったもの。俺の本当の人間態を、カシワギ博士は絶対に知らないんです。だからあんたはカシワギ博士じゃない。どういうつもりでキッスに近づいた?」

 その問いかけにカシワギ博士を偽装していた相手はフッと笑みを吊り上げた。

「まさか気づかれるなんて」

「体臭も、身のこなしも、何もかも完璧でしたよ。その偽装。――いいえ、幻影は。でもだからこそ俺だけは偽れない。俺達ならば、幻影を見極める術は心得ているはずだ。ねぇ、ボス」

 その答えのようにカシワギ博士の腕が引き裂け、黒い爪が運転席の自分を割ろうと迫る。

 カムイは高級車を横滑りさせてその一撃を回避せしめた。後部座席で無様に転がったカシワギ博士――自分達のボスが唸り声を上げて高級車の天井を掻っ切る。

 カムイは寸前で車から飛び出していた。

 ボスが次に変位したのは青い皮膚を持つ硬質なドラゴンポケモンであった。

 ガブリアス――、操っていたその姿に己がなるのはまさしく滑稽。

「ボス。俺とあんたの本当の決着において、誰の邪魔も入らないのは僥倖としか言いようがない」

 ガブリアスの咆哮を返したボスにカムイは冷静な返答として片腕を突き上げていた。

 腕が変位し、刃の様相を帯びる。

「本物のカシワギ博士はどうしたんです? ここにいないという事は死んだんですか」

 ガブリアスに変身したボスがヒレを折り畳み、一気に突っ込んできた。空気の皮膜を突き破ったその一撃をカムイは跳躍して背後に回る。

 一閃が背筋を引き裂かんと迫ったが、ガブリアスの反応速度を持つボスがすぐさま対応する。

 お互いに攻撃が叩き込まれ、後退した形となった。

 鋼タイプポケモンの幻影を帯びた腕に亀裂が走っている。相当な攻撃力だろう。

 ガブリアスに完全変位したボスが地を割るように吼え立てる。カムイはこきりと首を鳴らした。

「……死んだんですね、カシワギ博士は。残念だな。俺、結構好きだったんですよ。あなたに化けてあの人を抱くのは」

 ガブリアスに変身したボスが口腔内に紫色のエネルギー波を充填させる。カムイは右腕を鋼タイプ――キリキザンの腕に、もう片方の腕を自分本来の黒い爪に戻して構える。

 直後、放射された「はかいこうせん」の掃射が道路を陥没させる。幻影を帯びたゾロアークならば本来の半分程度でも威力は出せるはずだ。

 爆発の光と炎が押し広がるのを眼下にカムイは飛び退っていた。

 C地区の表通りが火の赤に染まる中、周囲の車が次々と急停車する。

 何が起こっているんだ、という怒声が響く。それさえも自分とボスとの決着に華を添える形だ。

 こういった形でしか、自分は決着を望めなかっただろう。

「残念です。ボス」

 カムイが疾走する。ボスの射程に一気に入り、鋼の腕を振るい落とした。ガブリアスのヒレがその一撃を防御する。カムイは瞬時にもう片方の腕を地面につけた。

「ナイトバースト」

 黒い瘴気の爆弾がボスの足元を突き崩す。姿勢を崩したボスの腹腔へとカムイはキリキザンの腕で刃を突き込もうとした。

 しかしガブリアスの反応速度は凄まじい。何とその牙で鋼の腕を噛み砕いてみせたのだ。

「さすが――」

 口にするまでもない。最強の幻影の使い手であるボスに賞賛の言葉を浴びせる暇があれば一つでも勝ちに行くべきだ。

 ガブリアスの頭部形状が変化し、その額が割れて頭蓋から飛び出したのはポリゴンの頭部だ。

 刹那、三つの属性を帯びた光線がカムイに向けて掃射される。

 瞬時に先ほどまでいた空間を切り裂いていく光線は無慈悲なまでにいくつかの車体を割っていく。

 炎に包まれた往来をカムイは看板や電柱を蹴って、水鳥のように軽やかにビルの屋上に降り立った。

 ガブリアスの変異体が片腕を変位させる。レアコイルの腕に変身させた直後、周囲のビルを「ソニックブーム」が襲った。

 ビルの窓が次々と破砕され、共鳴波が機械製品を麻痺させる。

 信号機が目まぐるしく赤と青に点滅し、ビルに埋め込まれたオーロラビジョンが砂嵐を映し出した。

 カムイはこちらへと襲い来る相手の辻風を避けつつ、ビルの陰に隠れて次の手を見張る。

「厄介だな。幻影の制限を越えている。戻れなくなってもいい、という使い方だ。ボス、聞こえていますか? 幻影は、酷使すれば憑依対象に引っ張られる。あなたは無機物ポケモンと有機物ポケモンを今、同時進行で使用している。これがどれほど危険なのか、分からないわけじゃないでしょう?」

 それでも自分の目的は変わらないが。

 カムイはキリキザンの右腕を再び構え、ビルの壁面に足をつけた。

 瞬時にゲル状の足へと変身させ、ビルの壁を重力に逆らって登っていく。

 ボスがもう片方の腕をギギギアルに変身させる。

 両腕から放たれたのはこの一帯を完全に火の海に変えてしまうほどの熱量であった。

「でんじほう」が周囲に掃射され、ビルに風穴を開けていく。

 それほどの威力。それほどの使い手。

 急停止した車から人々が悲鳴を上げて逃げていくのが視界に入った。だが、今はどうでもいい。

 誰が生き残り、誰が死のうとも。

 自分とボスの決着を邪魔さえしなければ。

 カムイはベトベトンの足に変身させていたのを解き、ビルの屋上から変異体のボスを見下ろしていた。

 ビル風が逆巻き、カムイはコガネシティという混沌を肺の中に入れる。

 ここも同じだ。

 どこに行っても同じ。どこに行っても自分達は兵器でしかない。殺し殺されの世界以外では生きていく術を知らない、ただの獣。ただの――ポケモンでしかない。

 だから殺す。殺すのに何の躊躇いもない。

 両腕をキリキザンに変位させ、カムイは街の中にダイブする。

 足をメガヤンマに変え、背筋から翅を生じさせた。

 風を受け止めた翅が高速振動し、直下の地面を巻き上がらせる。

 膨れ上がった暴風域に変異体のボスがレアコイルの片腕を突き出した。

 一発一発が必殺の勢いを伴わせる電磁の砲弾が連射される。

 カムイは翅を用いて巧みにそれを回避し、ボスの射程へと潜り込んだ。

 鋼の腕を交錯させたのも一瞬。

 ボスの胴体を割るはずであった一撃は同じく鋼タイプの感触に阻まれた。

 ボスの腹部から下がまるで重戦車のように変位していく。

「ボスゴドラか。厄介な防御を手に入れたな」

 最早、何のポケモンでもない。ボスの変異体がギギギアルの片腕を軋ませ、無数のギアを周囲にばら撒いた。

 展開されたギアそれぞれがこちらを狙い澄まし、緑色の光線が地表を焼き払っていく。

 追尾する光線をカムイは避けつつ、腹部より下をこちらも変身させる。

 紫色の脚部を有した身体が接地し、背面より尻尾を突き出させた。

 特性「スナイパー」の精密狙撃がギギギアルのギアを一つ、また一つと打ち落としていく。

 脚部を戻し、カムイは再び空中に舞い上がる。

 ボスの額から飛び出したポリゴンが虹色に明滅し、こちらを必死に解析しているのが窺えた。

「どれだけ探ったって無駄ですよ、ボス。俺の幻影のほうが、あんたより強い」

 ガブリアスに変位した喉からボスが呻り声を上げる。カムイはビルを蹴りつけ、瞬時に身体を幻影に浸した。

 スピアーの針へと両脚が変位する。

 その針の先端は真っ直ぐにボスへと突き刺さるかに思われた。だが、ボスはガブリアスの素早さを持って後ずさる。

「遅いですよ、ボス。ボスゴドラの下半身が尾を引いている」

 当たらないのならばそれでいい。

 着地したカムイは両腕をハガネールの頭部へと変身させる。

 放たれた岩石の刃がボスへと突き刺さった。間髪入れず、ハガネールの両腕の顎が開閉する。

 内部に充填されたのは紫色の輝き。

「終わりにしましょう、ボス」

 干渉波のスパークが散る中、カムイはボスを照準に入れる。

 ボスは尻尾を膨らませた。カビゴンの躯体に変位した尻尾の重量がボスを地面へと縫い止める。

 直後、照射された破壊光線が空間を穿った。

 中空の回避不可能の間に始末しようと思ったのだが、相手もそれなりに幻影は使いこなしている様子。

 だが、肝心の幻影はもう閾値に達しているはずだ。

 何匹のポケモンに変位していると思っている。ボスは数えられるだけでも六体。こちらはたったの二体か三体止まり。当然の判断だ。

 幻影は使い過ぎれば自らを侵す毒になる。

 それは他でもないボスから教わった事なのだから。

「ボス。俺が頭は人間態のまま、変位している理由はお分かりですよね? 脳が他のポケモンの位相に変わってしまうと戻すのに一苦労する。……あなたが教えてくださった事の一つです。俺はせいぜい、三体程度のポケモンにしか変わっていない。この理由はまだあなたと戦えるという、客観的な見方になる。比して、あなたはどうだ?」

 ボスは明らかに疲弊している。頭蓋を引き裂いたポリゴンが忙しく色を変え、両腕を侵したギギギアルとレアコイルの無機質な身体がボスの本体へと侵食を始めていた。

 ボスゴドラの下半身が今にも解けかけている。

 それでも幻影を解かないのは、もう洗脳処置が終わっているからなのだろう。

「残念です、ボス。あなたを正気のまま、殺すつもりだったんですが、もう正気は失われたようだ。……でもそっちのほうがよかったのかもしれない。ボス、あなたは全力を出した。全力を出して俺に負けるんです。カシワギ博士を……あの人を知らぬ間に俺に取られていたように。あなたはここで潰える。それも運命として」

 カムイが両腕を元に戻す。メガヤンマの変位も解き、地面に降り立った。

 ボスの形象崩壊が始まっていた。

 あらゆるポケモンの色が混じり、その内容物が交差していく。どぶの色に染まった幻影がボスの身体を蝕んでいる。

「幻影は、完全なるポケモンの模倣ではない。それは幻影の覇者である俺達でも例外じゃないんです。あらゆるポケモンの能力を知り尽くし、あらゆるポケモンに成れたとしても、それは模倣の域を出ない。記録上の変位は、我々の脆く崩れる記憶の領域をすぐさま侵す。カシワギ博士が何度も言っていたでしょう? 幻影は、記録によるもの。ゆえに記憶に依拠する生物であるポケモンでも、人間でも制御は難しいと。完全制御なんて出来ないんですよ。俺だってあと一体が限界でしょう。でもその最後の切り札を残している俺と、もう侵食が始まっているあなたとでは、結果は見えている」

 歩み出た自分にポリゴンの頭部が光線を打ち込もうとしてその躯体が裏返った。どろどろと溶け出したボスの身体が内側から次々と裏返り、あらゆる形状のポケモンの姿が現れては消えていく。

「これが、幻影の末路です。記録であるポケモンの姿と、記憶でしかない生物である俺達は何度も交われるものじゃない。――形象崩壊。それこそが俺達、幻影の覇者の最期」

 カムイは呼気を放ち、片腕をキリキザンに変位させる。最後の刃だ。せめて心臓を一息に射抜いてやろう。

 最早、形を失い、ゲル状の何かに成り果てたボスへととどめを。自分達の因縁に決着を。

 カムイは姿勢を沈め、一撃へと己を研ぎ澄ます。

「長かった……長かったですよ、ボス。ここまで来るのには随分と。だからこそ、ケリはつけさせてもらいます。あなたと俺、どちらが優れていたのかを」

 キリキザンの腕を突き出し、カムイは駆けていた。これまでの苦難が脳裏に呼び起こされる。

 最初の出会いはそれこそ自我も何もなかった。ただのポケモンでしかない自分とゼクに教えを叩き込んでくれたのは遥かに頭脳が勝るボスだ。だが、ボスの教えにどこかで限界点を感じ始めたのはそう遠くなかった。彼がカシワギ博士と密通しているのを看破し、自分はボスを模倣する事によって何もかもを手に入れた。

 カシワギ博士の心も。その真実も。

 一度でも他人を欺く事に慣れてしまえばそこから先は容易い。幻影の覇者は他人の模倣を超え、何もかもを解析する。

 それまで「騙す」という構造を知らなかったゾロアークというポケモンであっても、誰かを陥れ、その末路を辿らせるのは恍惚が勝った。

 これが、何もかもを掌握するという感覚。これが、幻影の覇者であるという実感。

 最早、自分はポケモンではない。人間でもない。それらを超えた何かだ。

 そして、全てが終わるとすれば、それはボスを殺し、カシワギ博士を亡き者にした時のみ。

 自分は何者でもない「カムイ」という名前の楔すら超えて飛び立てる。

 別種の領域へと踏み込めるのだ。

 だからこの刃は心臓に打ち込んでやるのが正しい。その息の根を止め、ボスの今までの経歴を抹消し、自分をも殺す。

 その時、支配は成る。

 ジョウトで盗賊団などという生易しい野心は消え、ここから先は本物の「自分の人生」だ。

 ポケモンとして使役されるわけでもない。人間として社会規範の中にあるわけでもない。

 全てを飛び越えた何かに成れる。何かを成せる。

 跳躍したカムイはその頭蓋に向けて刃を振り上げた。

 鋼の刃が必殺の予感に熱を帯びる。

 そのまま頭頂部を割ろうとした、その時であった。

 鋼の躯体が軋みを上げ、内奥から氷結される。

 その速度にカムイは視線を投じていた。

 ルージュラを繰り出したキッスがこちらを睥睨している。

 その双眸に浮かんだ戦意に、カムイは、ああ、と声を発していた。

「騙していたのは謝ろう。だが、この世は騙し騙され、殺し殺され、それが鉄則のはずだろう? 怪盗キッス」

「黙りなさい。あなたは、何もかもを捨てて、どうするつもりなの? ジョウトPMCトラストの支配を甘んじて受けるつもり?」

「ジョウトPMC? そんなもの、どうだっていい」

 そう、自分にとっては些事だ。人間の興した組織など、しがらみに過ぎない。

「……ボスを殺すのね」

「それが一番の安息だろう。ここで殺してやらなければ、ボスは形象崩壊するのみ。もう、手遅れだ」

 その通り。ボスは何もかも崩れ落ち、このまま消え去るだけ。

 ただの生態兵器に成り果てたポケモンの末路などたかが知れている。

「それでも! あなたが咎を下すのは間違っている……! カシワギ博士が死んだわ」

「そう、か。やはり死んでいたか。……だが、俺には関係がないだろう。どうせカシワギ博士の死も織り込み済みだ」

 余計な感慨もない。余分な感情もない。

 死んだらそこまでだ。それ以上は何もない。

「……残酷なのね」

「それが世の常だろう。怪盗キッス」

 お互いに世界の裏側に触れ過ぎた。何もかもを敵に回している。だからこそ、ここで対峙するのは間違っていない。

 何も、間違っていないのだ。

 カムイはキリキザンの腕を掲げ、姿勢を沈める。

 キッスが道を譲った。

 同行していたのはゼクだ。

「……ゼク。俺を止めるか」

「いや……止めたって無駄なのは、もう分かり切っている。ボスも手遅れだ。……だがだからこそ、おれはお前を殺さなければならない。おれはボスについていくと誓った。だから、ここでボスを殺そうとするのなら、お前を」

「殺す、か。だが、お前に出来るか? ゼク。幻影の覇者は俺の称号だ。忘れたわけじゃないだろう? 俺達三人の中で、最も優れた幻影の使い手は、俺である事を」

 ゼクが瞬時に姿を変位させる。ゴウカザルに変身したゼクは拳を固めた。

「戦うのは、おれ達だけで充分だ。因果はおれ達がつけるべきだろう」

 その言葉のあまりの甘さにカムイはフッと嘲笑する。

「ゼク。紳士を気取りたいのは分かる。だがお前は所詮、ジョウトPMCに捕獲されたレベルのゾロアーク。俺とは――レベルが違う」

 カムイは瞬時にこちらへと肉迫してきたゼクの一撃を直上に跳んで回避する。

 キリキザンの鋼の腕を片腕に何本も生成し、それらを弓に番えて射出した。

 直上からの鋼の散弾にゼクがうろたえる。

 その隙を逃さず、メガヤンマの翅を背筋から形作った。

 爆音と暴風域がゼクを煽る。捲り上がったアスファルトの断片を全身に受けたゼクが膝を折った。

 ここまで来れば後は容易い。

 降り立ち様に鋼の一閃を腹腔にくれてやるだけだ。

 カムイはキリキザンの腕を瞬間硬化させ、ゼクの胴体を割らんと迫る。

 たったの一撃。それだけでケリはつく。

 しかし、想定していなかったのは、まだボスに自我が残っていた点であった。

 掃射された破壊光線がカムイの背筋を焼いた。

 激痛に歯噛みした刹那の隙。ゴウカザル形態のゼクが片腕を思い切り引いていた。

 今の自分は鋼タイプメイン。ここで炎を受ければ敗北する。

 ゾロアークに脚だけでも戻そうとして氷結の鎖が邪魔をする。

 ルージュラが氷を紡いでいた。

 忌々しく名を発する前に、ゼクの拳が胸元を叩く。

 貫いた一撃にカムイは瞠目していた。

 ゼクが必殺の感触に拳を固める。血のこびりついた腕を引こうとして、その手を植物の蔦が絡め取っているのに気づいたらしい。

「これは……!」

「――遅い。ソーラービーム」

 頭部をフシギバナの花弁へと変位させ、太陽光線の照射でゼクを引き剥がす。

 それでもさすがに胸元を貫かれたのは効いていた。

 荒く息をつきつつ、血潮の滴る身体を制御しようとする。

「……これ以上の戦闘行為には旨味がないな」

 全身を虫タイプに変位させ、カムイは離脱挙動を取ろうとする。

 メガヤンマの翅で暴風を起こし、飛翔するカムイにキッスが言葉を投げていた。

「カムイ……! あなたは……!」

「俺の目的は済んだ。ジョウト、コガネシティ、か。しばらく居座るのも悪くはない」

 メガヤンマの翅を拡張させ、カムイは戦闘領域を離脱する。

 この悪徳に塗れた街ならば自分はまだどうとでも行動出来るだろう。

 なにせ、怪盗キッスの正体を自分は知っている。

 彼女とてそう逃がすつもりもないはず。

 いずれはぶつかり合う運命だ。

「それまでせいぜい、道化を気取らせてもらう。怪盗キッス……いいや、モナカ」



オンドゥル大使 ( 2018/05/02(水) 21:15 )