ANNIHILATOR













小説トップ
鎧龍篇
EPISODE49 龍剣

 思わぬ宣言に相手もたじろいだのが分かったが、すぐに持ち直す。

『馬鹿な事を言うなよ、ガキが。クリムガンは我がフレア団の礎となるのだ』

「そんな事こそ、間違っている! 僕は、クリムガンをこのミアレから逃がすつもりだ」

 言い放った声に震えが混じっている。ヨハネとて怖いのだ。しかし、それでも撤回する様子はない。

『少年、もう少し賢いかと思っていたが、ハズレか?』

「そちらこそ、もう少し紳士かと思っていたが存外に粗暴だな」

 一歩も退かぬヨハネの声音にオクタン使いが舌打ちしたのが分かった。

『いいか? 大局的に考えろ。フレア団が保持すればミアレの安全は保障される。その上、ともすればカロスの民草の、人々の希望になるかもしれないんだ。それを一人のエゴで歪めるのか?』

 組織が管理したほうがよりクリムガンにいい方向に転がる、とでも言いたげな口調だ。エスプリが言い返す前にヨハネが手で制した。

「エスプリ、僕が言う。間違っているだとか、そんなご大層な話をするつもりはない。僕は、ただ単純に、目の前のポケモンを見て見ぬ振りなんて、出来ないだけだ」

『それこそエゴだ。お前の眼に映っている程度の現実なんて、すぐに歪められてしまう。個々人の持っている価値観など大きなうねりの前には些事なんだ』

「些事でも、僕はお前らの前に立つ。立ちはだかってみせる。その時、お前らはどうする? 僕を羽虫だと思って払うか? でも僕は往生際が悪いほうだ」

 オクタン使いがテッポウオをヨハネの頭部へと照準した。危険だ。今にも飛び出そうとしたが、ヨハネはまだ、と制する。

「エスプリに、いつまでも守ってもらうんじゃね、僕も、男になれない」

 歩み出たヨハネはオクタンの射線に入る。ゴルバットがいるとは言え、このままでは蜂の巣である。

『無謀と、勇気は違うのだと、教えてやるのはどうだ、エスプリ。今、彼が行っているのはどちらなのか』

「……ヨハネ君。あたし、このまま見ていられるほど、賢くはない」

「それは僕も同じだ。エスプリが両方を相手取っているのに、僕だけ後方で見ているだけなんて、耐えられないよ」

 ヨハネの気持ちも分かる。だが、今は落ち着け、と言うべきだ。前回、自分を逃がすためにレパルダスに手傷を負わされたのを忘れたのか。

 そのような不手際を、またも演じろというのか。

「……ゴメン、ヨハネ君」

 言ってすぐにエスプリは割って入った。テッポウオの照準が自分に向けられる。オクタンの射線上に立ち、クリムガンを見据えてヒトカゲのボールを手繰った。

 バックルに埋め込んだ瞬間、手首から放出される炎を意識する。拡張された炎が瞬時に壁を作り上げた。

『コンプリート。ファイアユニゾン』の音声と共に火の壁がテッポウオ二体とオクタンの攻撃を防御する。しかし、それだけだ。もう二体は――。意識を飛ばした時には既に、テッポウオの攻撃がヨハネを襲っていた。

「ヨハネ君……!」

 間に合え、と身体を弾けさせようとする。しかし、それを阻んだのは放出されたオクタンの墨だった。僅かに身体がぶれる感触。

 その分だけ反応が遅れ、ヨハネを電気の銃弾が貫いたかに思われた。しかし、ヨハネは健在である。

 エスプリは仮面の下で目を見開いていた。彼を守ったのは他でもない――。

「クリムガン……?」

 どうして、と自分とオクタン使いが感じている中、ヨハネは確信を得たように呟いた。

「お前が、ずっと守っていたもの、焦がれていたものを見せたんだ。気づいてくれたか」

 ヨハネの手にあったのはホロキャスターだ。そこから小さく投影されていたのはクリムガンの群れであった。掌ほどの大きさしかないが、その映像をしかと目にしたのだろう。その群れが自分の守っていた群れであると、クリムガンは判じたに違いない。だからこそ、ヨハネを守った。

 自身の意思に準じるために。

 あるいは、その映像を見せてくれたヨハネの心に応じるために。

「ルイが調べてくれたんだ。お前の守っていた群れは、今も健在だよ。お前の、家族は」

 家族、という言葉にエスプリは思い返す。

 そういえば、ヨハネは一度として家族の話をした事がない。その彼が語る家族の声音はどこか温かであった。希望にすがるかのように、その一言に重みが宿る。

「ヨハネ君……君は」

『戯れは、ここまでにしてもらおうか、少年』

 オクタンとテッポウオの照準が全て、ヨハネを中心軸に据えた。テッポウオの機動性ならばヨハネのゴルバットを凌ぐ速度で攻撃が可能であろう。自分とて間に合う自信がない。

 一触即発の空気の中、一体のテッポウオが躍り出た。その銃口から光が棚引く。

 電気の銃弾は果たして、先に出ようとしたゴルバットを遮り――クリムガンの赤と青の表皮に吸い込まれた。

 ヨハネも呆然としている。クリムガンは爪を払いテッポウオを退けた。その爪の輝きには既に守るべき者を決めた存在だけが持つ勇姿が宿っている。

「クリムガン……お前」

 ヨハネも信じられない心地のようだった。クリムガンは跳躍しテッポウオを叩き落す。そのまま返す刀で払われた龍の尻尾の追撃が他のテッポウオの照準を鈍らせた。

 不可視の岩石を払ってクリムガンが射程を広める。

 テッポウオがそれぞれ動き出そうとするが、瞬間、クリムガンの瞳が赤くぎらついた。その輝きに射竦められたかのようにテッポウオが機動性を緩める。

『どうした……? テッポウオ?』

 困惑するオクタン使いへと、クリムガンが肉迫していた。全身を使った躍動で爪を払い上げる。オクタンが退こうとしたが、その爪の射程は思っていたよりも広い。

 瞬時にオクタンの足を切り裂いた。血潮が舞う中、クリムガンが見据える。そのぎらつく赤いまなこを、オクタンは防御しようと飛び退った。その時には、照準補正のためのバイザーが異常を来たし煙を棚引かせている。

『これは、蛇睨みか……。おのれ、忌々しい。フレア団のために、使ってやろうと言っているのだぞ!』

「お前らに、そんな資格はない」

 踏み出たヨハネへとテッポウオが攻撃を絞ろうとする。その射程に割って入ったゴルバットとクリムガンがそれぞれ守るべき主君を守り通した。

 ゴルバットは空気の皮膜で、クリムガンは自らの堅牢な皮膚で。

『フレア団のためにならぬのなら、ここで消えろ、野生畜生が!』

 オクタンが矢継ぎ早に墨を吐く。オクタン砲だ。その砲撃をクリムガンは爪による一閃で切り裂いた。しかしオクタン砲の真価は貫く事ではなく命中させる事。

 着弾点で凝り、鋭い爪にこびりつく。さらにテッポウオが追撃の銃撃を放とうとする。

 ヨハネが手を開き、ゴルバットに命じた。

「エアスラッシュ! クリムガンを!」

 真空の刃がテッポウオの射線を遮るが、それでも退けられたのは二体だけ。もう二体は既に回り込んでクリムガンの背後に位置している。

「クリムガン!」

 咄嗟の行動であったのだろう。ヨハネは駆け出していた。馬鹿な、とエスプリは震撼する。ポケモン同士の戦闘に介入するなど。

 感じたのと、駆け出したのは同時。

『エレメントトラッシュ』の音声が響き、赤いエスプリに最大機動をもたらした。

 弾き出された炎熱が滾り、エスプリが跳躍する。一足飛びにヨハネとテッポウオの間に入り、渾身の拳を振るい上げる。

 炎を纏い、棚引かせた一撃は壁の役割を果たした。

 テッポウオから放たれた銃撃が炎の前に霧散する。ヨハネはクリムガンを慮っていた。

「無茶を……無茶をしてきたんだな」

 目を凝らすとクリムガンには無数の傷痕がある。歴戦を潜り抜けてきた証拠だった。その間、クリムガンは幾度となく仲間の、群れの事を思ったのであろう。その傷の分だけ、クリムガンは戦ってきたのだ。自分のため以上に、見果てぬ場所へと赴いてしまったかもしれない、仲間のために。

 ヨハネのホルスターからクリムガンは手繰り寄せた。それは一個のモンスターボールである。

 覚えず、と言った様子でヨハネは問いかけていた。

「……いいのか? だって、お前の旅は」

 まだ続くかもしれないのに。そこから先を飲み込ませるように、クリムガンは頷く。

 もう戦い終えたのだと。これから先の戦いは、別のもののために――。

 クリムガンがボールの射出ボタンを押し込んだ。赤い粒子が放出され、クリムガンの捕獲をヨハネの承認待ちにする。

 しかし、ヨハネは首を縦に振らなかった。出来ない、と呻く。

「だって、お前は一人で戦ってきた。たった一人で、仲間のために、家族のために……」

 そんなクリムガンの自由を縛る事がヨハネには出来かねたのだろう。クリムガンは、ボールに手を伸ばした。

 自らボールの呪縛を受け入れようと言うのである。ヨハネが瞠目し、それを止めに入ろうとした瞬間であった。

 赤い粒子となり、クリムガンはボールに収まった。

 ヨハネの手が何もない空を掻く。

 拳を握り締めたヨハネは何を思ったのだろうか。何かを歪めてしまったのかもしれないという悔恨。あるいは、自己のエゴで結局動いてしまった自分への失望……。

 ヨハネはクリムガンのボールを手にしてそっと呟いた。

「……お前は僕の鏡だ」

 何を思っての言葉だったのか、エスプリには分からない。しかし、ヨハネがそれだけクリムガンの生き様に感じ入っているのだけは確かだった。

 オクタン砲が襲いかかり、白のエスプリは手を薙ぎ払う。それでも拭えぬ吸着力がこちらの攻撃力を確実に削いだ。

『茶番は終わりかな?』

 オクタン使いの声にエスプリは歯噛みする。

「お前には一生、分からないだろうさ」

 駆け出したエスプリがオクタンへと距離を縮めようとする。それを阻んだのは無数のテッポウオだ。

 テッポウオはもう麻痺が切れたのか機動性を取り戻し、エスプリへと多面的に攻撃を仕掛ける。

『無駄だ! テッポウオの砲撃網から逃れる術はない。そして、エスプリの少女! お前は死ぬ事になるのだ。この地獄の包囲陣に抱かれて!』

 テッポウオが磁石のように一斉に動き、電気の銃弾を撃ち込んでくる。幾何学的な動きに白の状態ではついていけなかった。

 背面に受けたかと思えば、今度は真正面から来る。側面を攻めようとすれば先んじて攻められ、退いた空間でさえも銃弾が引き裂いた。

 粉塵が舞う中、エスプリは満身創痍であった。

 攻める手段が見当たらない。このままでは、と息を次ぐ間もなく、眼前にテッポウオが立ち現れる。

 仰け反って回避したのがやっとだ。もう一発の、三体のテッポウオによる追撃は免れない。

 ――やられる。

 その諦観が胸を占めようとしたその時であった。

「エスプリ!」

 叫んだ声に目を向ける。ヨハネが何かを放り投げた。

 それを咄嗟に受け止める。

 クリムガンの入ったボールであった。

 エスプリはハッとする。

 ヨハネは身体の底から叫んでいた。

「そいつを、ぶっ飛ばしてくれ! エスプリ!」

 その声を受けるのと、バックルにボールを埋め込んだのは同時だった。

 テッポウオの口腔へとオレンジ色のエネルギーが充填されていく。破壊光線の予感に空間が震えていた。

 分子でさえも吸い込み、エネルギーと化すその向こう側で、埋め込まれたボールが回転し、紫色の光を生じさせる。

 エスプリの身体が脈動に包まれた。

 紫色の磁場が発生し、光が拡張した瞬間、声が張り上げられる。

『破壊光線! 三機、連動!』

 オクタン使いの声に呼応し、テッポウオの口腔からエネルギーの瀑布が放たれる。

 路面を焼き、空気を焦がし、全てを炎熱の彼方へと追いやる一撃が、三つ同時に発射された。その威力は推し量るべきである。

 十メートル近くの噴煙が舞う中、オクタン使いは哄笑を発する。

『勝った! 完全勝利だ!』

 その宣言が響く中で、ヨハネは声にしていた。静かに、しかし確かな口調で。

「……いいや。エスプリは負けないさ」

『負け惜しみを……。少年もすぐに送ってやろう。あの世へ!』

 テッポウオが機動し、ヨハネへと突進しようとする。その身を、突然に割って入った手が掴んだ。

 オクタン使いがうろたえる。だが、ヨハネの眼には迷いがなかった。

 砂煙の中で屹立したのは、紫色の磁場を全身から発する、黒い疾駆。そして――。

『――コンプリート。ドラゴンユニゾン』

 電子音声が響く中、エスプリは全身に走った紫色のラインから輝きを放出する。

 光に混じって紫のエネルギーラインを茨が揺らめいた。

『まさか……、まさか、エスプリの少女!』

「うるさいな。まだ、慣れていないんだ。このユニゾンには」

 振り返ったバイザーが紫色に染められ、「D」の意匠が浮かび上がる。

『テッポウオ! 全速機動!』

 周囲を漂っていたテッポウオが一斉に動き出し、エスプリを包囲する。電気の銃弾を矢継ぎ早に掃射した。

 ほとんど雷雨のような激しさ。それにもかかわらず、エスプリは動きさえしない。

 その身体を叩きつける銃弾に、全く頓着さえもしていないようだった。

「これは……、ドラゴンの堅牢な表皮が、あたしを守ってくれている……」

 浮かび上がる紫色のオーラが全身から茨を顕現させた。

 オクタン使いが気づく前に、エスプリは手を払う。その手から紫の茨が鞭のように放出された。

 茨はテッポウオを捕らえ、そのまま薙ぎ払う。

 威力はテッポウオがもう動き出さない事で察する事が出来た。

「なんて、威力……」

 自分でも驚いている。今までのユニゾンにないほどに、力が溢れてくる。

『まやかしだ! 全砲門、一斉射撃準備!』

 オクタンが砲口を照準し、テッポウオ残り二体も破壊光線の準備に入った。

 エスプリは即座に両腕を払う。その手から弾き出されたのは紫色の茨の鞭。

 鞭を払ったエスプリはまず一体目のテッポウオを叩き落した。弾き出されたテッポウオが意識する前にその身体を捕まえる。

 もう一体へと払い除ける。一撃がテッポウオ二体を即座に戦闘不能にした。

 口元から破壊光線の残滓が僅かに漏れている。

 痙攣する砲台に気が付いたオクタン使いは瞬時に行われた戦闘にようやくついて来たようだった。

『……何をした』

「何も。ただ、思っていたよりもこれ、使いやすい」

『何をしたと言っているんだ! 小娘がァ!』

 オクタンの砲撃を茨の鞭は容易く弾いた。

 その攻撃力はオクタン砲を遥かに凌いでいる。

「ファイアユニゾンより、上か。いや、これは使い方が違うんだ」

『ならば、弾幕を張る!』

 オクタン砲が連射され、周囲が墨の霧で包まれた。しかし、霧そのものでさえも攻撃性能を持つ恐るべき防衛術である。

 ――しかし、今のエスプリの装甲を貫くには至らなかった。黒い霧の中を、エスプリは進む。

 全身を走る茨が墨の霧から身を守ってくれている。

『馬鹿な……、馬鹿な!』

 オクタン砲が真正面から放たれたが、その攻撃が装甲に至った瞬間、滑ったようにあらぬ方向を打ち抜いた。

「ドラゴンユニゾン。突破口となる攻撃力と、防御を誇る、新たなユニゾンだ。ちょっとばかし全身が重いのが、玉に瑕かな」

『おのれ、おのれ!』

 叫びと共にオクタン砲の連射がエスプリを襲う。しかし、どの一撃でもエスプリの装甲を射抜く事は出来なかった。

 滑るか、あるいは着弾しても霧のように消え行くだけ。

「今のあたしに、砲撃は無意味。そして、これが、ドラゴンユニゾンの真の使い方」

 ハンドルが引かれる。『エレメントトラッシュ』の音声と共に片腕に紫色のラインが集中する。エネルギーが凝縮し、鞭のようにしなっていた茨が瞬間的に直進となった。

 顕現させたその姿は、刀剣である。

 茨で出来た紫色の剣が右腕に握られていた。

 恐れを成したのだろう。オクタンが矢継ぎ早に攻撃を絞るが、今のエスプリには通用しない。眼前へと至ったエスプリが咆哮する。その身から溢れ出たオーラと共に、エスプリの刺突がEアームズの頭蓋を貫いた。

 頭部に据えられていたEアームズが火を吹く。

 そのまま握り返し、エスプリは上段へと薙ぎ払う。

 切り裂かれたEアームズが火花を血潮のように散らせつつ、その機能を停止させた。オクタンが仰け反った時には、両断されたEアームズが滑り落ちる。

『まさか……こんな事が、こんな事……』

 徐々に薄れていくオクタン使いの声は同調が切れた証であろう。オクタンが攻撃の過負荷に倒れる。それを背にしてエスプリが踵を返した。

 右手に宿した茨の剣が薄れ、クリムガンのボールが排出される。それを手に、エスプリは感じ入っていた。もし、ヨハネがいなかったら、自分は今頃どうなっていたか。

 当のヨハネへと視線を振り向ける。

 ヨハネはこちらへとサムズアップを寄越した。それに返し、エスプリはヘルメットのバイザーを上げる。

「ヨハネ君、これは、君のポケモンだ」

 エスプリはヨハネの手にクリムガンのボールを掴ませた。ヨハネは少しだけ戸惑う。

「でも、僕が使うよりエスプリの使ったほうがためになるんじゃ……」

「ためになるとか、ならないとかじゃない。クリムガンは君を選んだ。だから、力を貸してくれたんだ。その自負を、君が持っているといい」

 ヨハネは逡巡の間を浮かべたが、やがてホルスターに留めた。なかなか様になっている。

 お互いに視線を交し合おうとした、その矢先であった。

『まだ、まだだぁ……!』

 呻かれた声にエスプリは慌てて振り返る。オクタンが身体を持ち上げようとしていた。しかしダメージが超過しており、もう戦闘続行は不可能なはずだ。

「ヨハネ君、あたしが」

 とどめを、と口にしようとしたその時、天上から赤い光が放射された。

 オクタンが吸収され、赤い線に絡め取られる。ハッとして振り仰ぐと、所属不明のヘリが上空を裂いていった。

 またしてもフレア団に一手してやられた。オクタンは回収され、解析する事も出来ない。

「でも、今回は斬りおとしたEアームズの破片が残っている。今までよりかは、実践的な事が出来そうだ」

 ヨハネの前向きな言葉にエスプリは息をつく。

 両断したEアームズが火花を散らしている。今は、これだけを頼りに次の戦う術を講じる。それこそが自分達に出来る、唯一の抵抗。

「そうだね。あたし達は、一歩ずつでも進むんだ」

 そのためならば、とエスプリはEアームズの破片を手に取った。



オンドゥル大使 ( 2016/12/04(日) 23:08 )