ポケットモンスターHEXA - リョウ編
第四章 七節「夜、胎動するもの」
 結局、その日フシギダネは見つからなかった。

 出来れば一日目に探し出すのがベストであったが、このロクベ樹海においてはそういうわけにもいかない。

 普段から木が生い茂り、一分の光も通さない樹海は、日が暮れるとさらに黒く沈んだ世界となる。懐中電灯の光さえ飲み込んでしまう、完全な闇だ。その中を進むのは無謀であり、さらに夜のみ活動する凶暴なポケモンもいるためあまり動き回るのは賢明ではない。時間が経つにつれて周囲の人の胴ほどの太さのある根や蔦も暗闇に乗じて昼間以上に気味の悪い化け物じみた様相を呈してくる。それはこのロクベ樹海に人が入りたがらない一つの要因とも言えた。

 その中をリョウとルイは所々根の張り出した道路を、唯一の道しるべとして頼りにして歩いていたが、さすがに真っ暗でこれ以上進めなくなったと見ると、リョウはその場で荷物を下ろした。

「ここらで野営しよう。幸いここはコンクリートの地面だからケツもそれほど痛くない。テントを張って、適当に火でも焚くぞ」

 リョウが後ろに呼びかけると、暗闇の中から気の抜けたような声が返ってくる。

「……ふぇ? なんか言った? リョウ」

 その声とともに暗闇からルイの姿がまるで幽霊のようにゆっくりと出てきた。目がうつろである。大分疲労しているらしく足を引きずっている。

「……体力追いつかねぇならホテルで待ってりゃよかったのに」

 リョウがそう呟くと、ルイが「なんか言った?」と言って睨んできた。どうやら先ほどの言葉は聞こえてなくてもこちらは聞こえたらしい。

 それに手を振って「なんでもない」と答えると、リョウはカバンの中から野営に必要な荷物を取り出し始めた。

 まず円筒状に折りたたまれた状態のテントを取り出す。そして携帯用のコンロや食器を取り出し、持ってきていた食材をルイに持たせた。

「……ねぇ、リョウ。これ食べていいの?」

「バカ。そのまま食うんじゃねぇぞ。ちゃんと調理してやるから、ちょっと待っていろ」

 そう言ってリョウはテントを張り始めた。手馴れたもので、次々に骨格が組みあがっていき、その上に緑色のテント本体のカバーと雨をしのぐための大き目の青いカバーをかぶせて、端を金具で地面に固定し、あっという間に完成させた。

 それを見てルイが拍手をした。

「すごいね、リョウ! まるで魔法みたい」

「これぐらいなら誰でも出来るよ。ポケモントレーナーなら金持ってないときは野宿っていうのが定番だしな。野営ぐらい出来ねぇと。俺は男だからいいけど、女はその辺で寝るわけにはいかねぇから大変じゃねぇか」

「どうして女の子はその辺で寝るわけにはいかないの?」

 ルイが首をかしげながら尋ねると、リョウは一瞬手を止めた。だが、すぐに作業を続行しながらそ知らぬ顔で、「さぁな」と言った。

「そういえばお前はもし俺に会わなかったら、寝るときとかどうするつもりだったんだ? 荷物らしきものなんて持ってなかっただろうが」

「ああ、それはね――」

 言ってルイは足元を見つめた。その様子を見て、リョウはその視線の先を追った。しかし、ただの地面しかない。あるとしても影ぐらいだ。怪訝そうに見ていると、ルイが俯いたまま答えた。

「ボクは、大丈夫なんだよ。そんな危ない目に遭うことは絶対にありえないから」

 そう言ったルイの顔は言葉とは裏腹にふざけた感じは一切なかった。リョウはそんなルイの様子が気になったが、あえて作業に忙しいふりをしてそれ以上は聞かなかった。

「そうか。まぁ、こうしてテントを張るのも結構大変だからな。荷物も多くなるし。そういう点では寝袋一丁持っているだけでちょうどいいかも知れねぇな」

「あ、ボク寝袋大好きー!」

 リョウの言った寝袋という言葉にルイはすかさず反応して、挙手しながら嬉しそうに顔を上げた。

「へー。そりゃまた何で?」

 リョウが肩越しに尋ねると、ルイは、えへへと笑いながら答えた。

「だって暖かいんだもん。寒い夜でも冷たくないし」

 そんな簡単なことを、ルイは特別なことのように言った。

「そいつはまた。分かりやすい理由だな」

 リョウがそう言うと、ルイはまた、照れたように笑った。





















 月光が山脈に深い陰影を作り出していた。

 連なる山の谷間に流れる河の水面に揺れる今宵の月は満月である。その満月が照らす山はこのカイヘン地方でももっとも高いとされるリツ山であった。その頂点はまるで剱のように尖っており、夜空を突き刺すかのように鋭く上を向いている。

 その山の中腹、満月の明かりが届かず暗い影となっている部分に人影がちらりと見えた。その人影は黒い衣服をまとっているために、陰影との境がはっきりとせず、一人で普通に歩いているならば誰にも見つけられることはないだろう。しかし今宵、その人影は数人の連なりであった。そして先頭の人物が懐中電灯を持っているために、僅かながら景色との違いが分かったのである。だが、それでもその黒服の連なりは細心の注意を払って歩いているようで、まったく足音というものがしなかった。まるで影と一体となるかのように、息遣いさえ殺して、その集団は岩肌に手をつき身体を支えながら慎重に山頂付近を目指していた。

 その集団の一人が憚るように声を出した。

「シリュウ様。本当に我々は逃げ帰ってきてよかったんでしょうか?」

 その言葉に先頭の懐中電灯を持ったシリュウと呼ばれた黒服が振り返って、懐中電灯で先ほど声を出した黒服の男を照らしながら口を開いた。

「それは、どういう意味だ?」

 低い、不機嫌そうな声であった。照らされた男は眩しそうに手をかざしながら言う。

「む、無理してでも確保すべきではなかったのではないでしょうか? ロケット団は現在散開状態にあります。そんな状況で何度もミスするのを、上は許してくれるでしょうか?」

 不安そうなその言葉に、シリュウは鼻を鳴らして答えた。

「案ずるな。これでも私はロケット団の幹部だぞ。組織もそう簡単に切り捨てまい」

「し、しかし、カトウ殿は――」

「カトウは調子に乗り過ぎたんだ。アイツの戦い方は私も好きではなかった。切り捨てられて当然の存在だ」

 カトウ、という名をシリュウは吐き捨てるように言った。カトウはシリュウと同じくロケット団の幹部として君臨していたが、目標を喰らいつくす低俗な戦い方だとロケット団の中では非難を浴びる存在だった。ディルファンス襲撃をカトウ一人に任せられたのも、半ば厄介払いの意味合いが強かったといえる。そのためシリュウはカトウが襲撃作戦の後に帰ってこなかったことを、組織が切り捨てたと見なしていた。恐らく、成功しようがしなかろうが、途中で消される筋書きだったのだろう。

「戦いとは崇高なものだ。ゆえに、自爆などという技を多用する輩は組織には必要ない。我々の品位を貶めることにも繋がるからな」

 そう言ってシリュウはまた前に向き直って、歩き出した。そこから先は誰一人口を利くものはいなかった。

 しばらく歩くと、山頂に続く岩肌の中に妙な色の岩が見え始めた。それは他の岩に比べて灰色がかっており、表面もつやつやとしすぎて自然物とは思えない。シリュウはその岩に手を触れて、何かを探るように表面を撫で始めた。すると、岩の表面に指が引っかかった。そのままその指を引くと、その部分が外れ中から十個の数字を割り振られた文字盤が現れた。文字盤の上には細長い緑色のディスプレイがある。シリュウは懐から、名刺サイズのカードを取り出し、そこに書かれている通りにその文字盤に触れると、緑色のディスプレイに押した数字が表示された。そのまま全ての数字を入力すると、『認証しました』というアナウンスが響き、岩肌が唐突に機械音を立てながら開き始めた。

 それは瞬く間に人一人が通れるか通れないかの低い入り口となった。

 中をのぞくと入り口の向こうは音すら飲み込みかねない暗闇が口を開けており、足元を照らすと階段が下に向かって伸びていた。

「降りるぞ」シリュウがそう言って踏み出すと、後もそれに続いた。

 階段を降りる中、先ほど声を発したのと同じ男がシリュウに話しかけた。

「いつのまに組織はこんな場所に施設を造ったんでしょうか? カイヘン地方に進出してからはずっとシルフビルに陣取っていると思っていたのに」

「貴様ら下っ端は知ることはなかっただろうが、ロケット団はもともとカイヘンの事業に早期から潜り込んでいた」

 男の質問にシリュウは前を向きながら答えた。

「カイヘンは当時、資源はあるが施設なんてものはないも同然だった。とんだド田舎だった。そこにカントーから進出した我々が介入し、産業活性化を理由に様々な場所に施設を造ろうとした。カイヘンの企業の運動を活性化させ、資源や物資を本部のあるカントーへ送り込む。……ロケット団総帥、サカキ様が解散を宣言され行方を晦まされる前の話だ。その中にはもしものための保険として、アジトとして利用できるような仕掛けを施したものも多い。ここはその中の一つというわけだ」

 シリュウはそう言いながら懐かしむように目線を遠くへやった。思えば、あれから八年経ったのだということをシリュウは階段を一歩一歩降りながら考えた。

 ロケット団最盛期のころはこんな陰湿な場所の階段を降りることも少なかった。ロケット団が堂々と往来を歩けた時代が確かにあったのだ。しかし、それも過ぎ去った昔の話だ。ロケット団総帥、サカキが築き上げた黄金時代。ロケット団が法になることもそう遠くないと言われるほどに、ロケット団はカントーの企業を支配していた。その要因としては、シルフカンパニーを裏で操れていたことが大きい。

 シルフカンパニーはポケモン関係の産業において圧倒的優位を占める企業だ。

 それはロケット団と早期から提携関係を結んでいたことが大きい。シルフカンパニーのトップは、企業当初からサカキとの関係が深く、資金面でも提供を受けたことがあった。また、ロケット団はシルフカンパニーの障害となりうる企業を次々と潰すのにも一役買っている。これは全てシルフカンパニーがポケモン産業というこれからの時代において主力となりえるジャンルを独占するために行ったひとつの違法行為である。

 シルフカンパニーはいわば忠実な番犬として、ロケット団という存在を飼いならしているつもりであった。しかし、全てはサカキによるシルフカンパニーを牛耳るための罠であった。シルフカンパニーが巨大になると、サカキは勝手に企業や街を潰し、そして高額な報酬を要求し始める。そんなことは頼んでいない、とシルフカンパニーのトップは要求を跳ね除けようとするが、拒めば今まで協力してきた事実を表に出すと脅され、後に引けなくなってくる。大企業シルフカンパニーのスキャンダルは事実上、現在のポケモン社会の崩壊といっても過言ではないからだ。そのために、シルフカンパニーはサカキにそれ相応のポストを用意し、タマムシシティにあるカジノの経営権を与え、さらにシルフカンパニーが管理する子会社の権限をもサカキに与えてしまった。それによってロケット団の活動は活性化し、カントーではある一人のトレーナーがロケット団を壊滅させるまで事実上全ての企業はロケット団に支配されていたことになる。

 ある一人のトレーナーがサカキを倒したことによって自分たちは運命を捻じ曲げられてしまった。シルフカンパニーの中でただの善良な市民として従事していた人間も、ロケット団に関わったということだけで解雇された人間も多い。シルフカンパニー本社はろくに調べもせずに当時、重要なポストにいた人間だけではなく普通の従業員をも次々と解雇し、中には警察に突き出された人間もいた。その後、シルフカンパニー本社は新たな代表取締役を立て、謝罪会見を行い、騒動は去ったかに見えた。しかし、切り捨てられた人々は、無実の罪で牢獄につながれ、出てきたときには帰るべき家も、友人も、家族も、何もかもを失っているのである。そういう経験をした人間たちが今のロケット団を形作っているのだ。いわば今のロケット団は怨恨で成り立っているといってもいい。そういった経緯から、カトウのような歪んだ存在がいるのも仕方のないことかもしれない。

 だがシリュウ自身が戦う目的は、怨恨などではなかった。シリュウは最初からロケット団にいた人間であるからである。下っ端の頃からカリスマであるサカキを見つめ、ロケット団崩壊時もいち早く動き、生き残った団員たちを指揮した。今、ロケット団がカイヘンで持ち直しかけているのはシリュウのおかげだといっても過言ではなかった。

 しかし、ある人物が指揮を執り始めてから状況は一変した。シリュウは幹部とは名ばかりの、小隊の部隊長に任命された。実質的な降格である。もちろんシリュウは納得できなかったが、その人物は現在のロケット団の総帥に上手く取り入っており、シリュウの意見は結局聞き入れられなかった。

 シリュウはそのことを思い出すと今でも脳が焼け爛れるような強烈な怒りを感じた。その怒りに拳を握り締める。

 するとその時、階段の真下に人影が立っているのが見えた。シリュウは一目でそれが誰か分かった。

「キシベか」

 そう言うと、人影は口角を吊り上げて笑った。

「これはこれは、シリュウ殿。任務ご苦労様です」

 人影――キシベはそう言って恭しく頭を下げた。それをシリュウは顔をしかめて、鼻を鳴らした。

「貴様は私の上官だろう。何故頭を下げる? それにその言葉遣いも。貴様、私を馬鹿にしているのか」

「滅相も無い。これは私の癖ですから。気にしないで下さい」

 キシベがそう言うと、シリュウは不機嫌そうにキシベの横を通り過ぎていった。その後ろにシリュウの部下が続き、キシベはその後ろについていった。

 しばらく歩くと、銀色の扉があり壁にカードキーを入れるための機械が埋め込まれていた。そこにシリュウがカードキーを通すとまたしても『認証しました』というアナウンスが響き、扉が開いた。

 扉の向こうの部屋は、簡素なつくりの部屋だった。オフィスのような白く飾り気の無い廊下の端に観葉植物が置かれ、突き当たりや曲がり角には黒い服を着たロケット団員たちが見張っている。シリュウやキシベが通ると、そのロケット団員たちは皆、頭を低く下げた。

 その廊下を所々曲がりながら、真っ直ぐ行くと突然広い部屋に出た。真正面に扉があり、左右にも扉があった。その部屋の中心には巨大な機械が陣取っていた。パイプが天井につながれ、台形のような形の機械自体の表面には、拳ぐらいの大きさの半円状の穴が全部で二十四個も開いていた。その機械の前にシリュウは立ち、ベルトにつけたモンスターボールを二つ、その穴の中にはめ込んだ。

 すると機械に電源が入り、駆動音がしたと思うと機械の表面が緑色に点滅し、それが三度瞬いたかと思うと、また機械は沈黙した。

「この機械はポケモンセンターとは少し勝手が違うな。これで本当に回復できているのか?」

 シリュウがモンスターボールを取りながら言ったその質問に、キシベが答えた。

「大丈夫だそうですよ。むしろこちらのほうがポケモンセンターよりも性能がいい。開発途中の新型を裏でまわしてもらった奴ですからね。それを我々が独自に改修し、ポケモンセンター以上の回復速度と同時回復を可能にしたわけです。開発には我々が資金提供したおかげで研究成果を発表できた研究者を使いました」

「……蛇の道は蛇、というわけか」

 言ってシリュウは苦笑した。と、その時、真正面の扉が開いてシリュウの苦笑を引き継ぐような笑い声が聞こえてきた。

「蛇の道は蛇とは。お前らが言うと滑稽だな」

 その笑い声の主はそう言って真正面の扉からゆっくりと歩いてきた。その場に居た全員の視線が優雅に歩いてくるその姿に集中した。

 それは着物姿の女性だった。黒い着物を纏っており、下駄を履いているのか、歩くたびに、カランという乾いた雅な音が響いた。長い髪を白い布で縛っており、凛とした様子で佇むその姿は優美な芸術を思わせた。それだけでも異様な姿だが、さらにこの女性を際立たせていたのは右手に掴んだ得物だった。一振りの刀を、この女性は持っていた。それがまるで身体の一部のようにこの女性のシルエットに一体となっており、鋭利な刃物と優雅な着物姿は妙な取り合わせであった。

「チアキ殿」

 キシベがそう呟くと、チアキと呼ばれた女性はシリュウたちを見回しながら言った。

「私はこれから麓の町まで降りる。ついでだからお前らの任務とやらに付き合ってやってもいい。いい運動になりそうだ」

 その言葉にキシベがシリュウを窺うような眼差しを向けると、シリュウは憮然とした態度で言った。

「断る。これは私の任務だ。勝手な真似をされてはかなわん」

 シリュウの言葉にチアキは「そうか」とつまらなさそうに言って、壁に体重を預けた。その姿をシリュウは横目に見ながら、先ほどのモンスターボールを両手に一個ずつ握った。そして、球体の中心にある緊急射出ボタンを押す。すると、中から光に包まれたポケモンが飛び出し、光を振り払いながらシリュウのほうに頭を向けた。

 それは二匹のイトマルであった。

「そんなポケモンで任務を達成できるのか?」

 チアキが尋ねると、シリュウは背中を向けたまま、「嘗めてもらっては困る」と言って不敵に笑いながら屈んだ。

 そして二匹のイトマルの目の前まで手を差し出したかと思うと、突然イトマルの口の中に手を突っ込んだ。目を見開いてチアキが見ていると、シリュウはイトマルの口からゆっくりと手を出していく。その手には何か拳大の物体が握られている。見ると、それは石のようであった。

 その石をイトマルから取り出すと、シリュウはそれを両手で強く握り、思い切り床に叩きつけた。すると、その石は簡単に砕けてしまった。

 それと同時に、イトマルの身体に変化が訪れた。身体の内側から筋肉の組織が音を立て、足や身体が長大になっていく。その変化を見つめながらシリュウは笑った。
やがて変化が終わるとシリュウはその二体をボールに戻し、背中を向けたまま言った。

「もう、化け物程度に遅れは取らない。――キシベ!」

 呼ばれてキシベが短く返事をする。

「ひとつ確認するが。全力で戦っても、構わないのだな?」

 暗い感情を腹に溜めたような低い声で、シリュウは尋ねた。キシベがそれに首肯すると、シリュウは口元に笑みを浮かべながら言った。

「そうか。それなら、いい。充分、愉しめそうだ」

 そしてシリュウは部下にケーシィを出させて、「テレポート」を指示した。すると、シリュウたちの姿が段々と景色の中に溶けるように消えていく。

 その姿が消える直前、チアキはキシベの顔を見た。

 キシベは嗤っていた。口角が裂けるほど吊り上げ、陰湿に嗤うそれはまるで妖怪のようだった。その顔に薄ら寒いものを覚えたチアキは、何も言わずにその部屋から出て行った。

 やがてシリュウの姿が完全に消えた後、キシベは聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

「――自信過剰。困ったものだな」

 言ってまた嗤った。

オンドゥル大使 ( 2012/08/26(日) 22:12 )