ポケットモンスターHEXA











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あとがき
あとがき
 拙作、『ポケットモンスターHEXA』を読んでくださり、ありがとうございます。このあとがきが余韻をぶち壊す結果になってしまわないように祈りながら書いております。

 そもそもの制作の経緯から、最終章に至るまでの流れをあとがきでは追っていきたいと思っています。作品世界だけで色々と完結させたい方はブラウザバックしても大丈夫です。というか、このHEXAという作品は色々と思い入れがあるのです。少しだけ、語る時間をください。

 そもそも、この作品、何故生まれたのか。全ての始まりは四年前の四月。妹が書いたある殴り書きが原因でした。そこには、『ハチャメチャ☆ポケモン学園』と書かれており、(当時の妹は小学生です)私はそれを見た時、「こりゃあ、難儀なもんだ」と思ってしまったわけです。しかし、すぐにそれを改稿、いえ、HEXA風に言うならば「改変」して自分のものにしてしまおうという気は起きませんでした。「まぁ、やりたいことがあるんだろう。好きにさせておくか」というぐらいの気持ちで見逃していたのですが、試しにちょっと冒頭部分書いてみようと思い立ちました。

 それがプロローグに当たる部分です。この時は特に何も考えず、ただ筆の赴くままに書きました。なので、ルイがどうだとかゲンガーがどうだとかは全て後付なのです。私は元々、二時創作というジャンルに明るくありませんでした。ほとんど何も知らず、ポケモンの知識も中の下。とりあえず頭の中のおぼろげなイメージを抽出してみようと、あのおどろおどろしいプロローグが出来上がったわけです。このプロローグ、兄弟間ではとても好印象でした。弟に至ってははまって何度も読み返してくれました。

「次の奴、いつ書くの?」と問われて、「ああ、じゃあ書くわ」とすぐに応じて一週間で一章を上げました。ポケモンリーグ制覇を目指すトレーナー、ナツキのお話。カメックスが黒かったりするのは単に見映えがいいからです。それ以上の意味は「この時には」ありませんでした。とりあえず夜中時間を使って一週間で上げた一章がさらに高評価。「すごい」と身内ながらに褒めてもらえて、私はすぐさま天狗になってしまいました。

「ならば、二章、三章と書けばさらに面白いと言ってもらえるに違いない」その考えが泥沼の始まりでした。そもそも私、ポケモンの特性に関する知識がまるでないばかりか、威力、ビジュアルに関してもおぼろげでほとんど脳内イメージで書き上げていきます。そのせいで、二章からは評価が芳しくなくなり、三章からは完全に趣味に走ったので兄弟間の評価はがくんと下がりました。しかし、私は書く事をやめられなかったのです。

「二次創作って面白!」そういう魅力に取りつかれた私は急くように四章を書き始めました。四章の読者はいるかどうかも分からない人です。つまり兄弟間の読者は既に存在せず、インターネットに公開するという手段をまだ理解していなかった私は読者不在のまま四章を書き上げました。そこからお話は一年のブランクを挟む事となります。四章である種の限界が訪れました。「もう書けん」と筆を折ろうとしましたが、「まぁ、折るほどのものでもないし、放置しておこう」という判断で、四章でまずは打ち切りました。その頃です。インターネット小説投稿サイトの存在を知ったのは。

 私に投稿のきっかけと言いますか、最大の影響を与えてくださったのは『ポケットモンスターメディター』の作者、karyuさんです。メディターの存在によってHEXAが完結に導かれたといっても過言ではありません。

 どうしてか? それはメディターの内容と言いますか、エッセンスが非常にHEXAに似通っていたからです。誰とも知らぬネットの海で同じ漂流者を見つけたような感覚に私は打ち震え、友人の勧めもあって今はなき二次創作小説投稿サイトに投稿しました。最初の一年は苦難の連続でした。私はまず、ネットというものを分かっていませんでした。何が必要で何が駄目なのか、そのルールすら曖昧のまま始めてしまったHEXAは長き低迷の時期を辿る事となります。お気に入り数三。一日に何度見ても三。何回更新ボタンを押しても三……。私はその時、「よくくじけなかったな」と自分でも思います。普通ならば消しているでしょう。しかし、「いつかは何かしら天啓のようなものが来るはずだ」と漠然とした自信とも予感ともつかないものに衝き動かされ、私はとりあえず四章まで更新しました。

 次の五章を書き始めたのはちょうどその頃になります。一年のブランクを経て書いた五章は一から四章とは違い、正義と悪を問いかける重苦しい物語となりました。今までも重苦しさはあったのですがさらに輪をかけて、です。「五章が評価されなかったらもう駄目だ。HEXAは早々に畳む準備を始めるべきだ」普通ならそう考えて然るべきですが、私は懲りずに第六章の準備を着々と始めていました。

 そう、この時、HEXAは既に私の制御下を離れ、独自に進化を始めました。土木作業員が後々重要キャラになる。サキマココンビが死に掛ける。ナツキがロケット団の現実を知る。ロケット団もまたただの悪ではないという事を書く――。思えばものすごい事が起こったような気がします。戦闘シーンも進化に進化を加え、「この戦闘シーンが受け入れられなかったら駄目だろうな」と思いながら書きました。ロケット団基地強襲シーンやカメックス対バシャーモはその際たるものです。

 この時、少しばかり読者様から反応がありました。私はしかし、この後に待ち受ける残虐シーンを受け入れてもらえるかどうかが分からず、褒められ慣れてもいない私は右往左往しました。投稿して一年半、ようやくHEXAは人並みの評価が得られるスタートラインに立ちました。五章は終盤になればなるほど評価が増え、お気に入り三件の呪縛から十倍の三十件まで増えました。ポイントも入れてもらえ、順風満帆のうちに最終章、六章を投稿しようとした矢先、そのサイトは二次創作に付き物の著作権問題で閉鎖しました。行き場をなくした私が辿り着いたのがポケノベ様とポケノベル様です。いわゆる、「なろう難民」である私はメディターに追いつきたいが一心で奮闘しましたが結果は振るわず、今のところ惨敗を喫しています。

 しかし、それでも、と諦めが悪いのが私で、五日に一回の更新ペースを守り、堅実に書き続けてきました。すると、いつの間にかHEXAを取り巻く周囲の状況が変わってきました。私の名前を出すと、「ああHEXAの」と言ってくれる方がありがたい事に増えましたし、良くも悪くも受け入れてもらえました。その事に関しては謝辞の言葉を星の数ほどに並べてもまだ足りないほどです。私はあらゆる人達に支えてもらって立っているのだという事が自覚できました。六章は一年前に書いたものです(2013年7月現在)。至らぬ点やこうしたほうがよかった点はたくさんありますが、「その時にはその時にできる精一杯を行う」という私の目標はとりあえず果たされました。一年前の私にはあの六章は完成形に見えたのです。

「とりあえず全力投球、サボりや手抜きは一切せず全てを描くつもりで書け!」

 私の書く時のスタンスはこれです。これを破った事は今のところ一度もありません。HEXAという作品はあらゆる逆風を受けました。某クイズ番組の名前だったり(終わってくれてホッとしています)、または「ポケットモンスター」とついているがためにオリジナリティのない作品だと捉えられたり、さらにオリジナル地方なので最初から敷居が高かったりとどうして自分でもここまで大変な道を選んでしまったのか、と思うほどです。しかし、後悔はしていません。できる事はすべてつぎ込みました。

 私、オンドゥル大使の今できる精一杯がこれです。笑っていただいても構いません。でも、私は満足しているのです。この作品を無事終わらせられた事に。
「こんなオチ納得できるか」だとか、「もっといい終らせ方があったのでは?」という疑問、ご意見はどしどし募集しております。何せ至らぬ書き手なもので、皆さんの激励や叱咤は大変助けになっております。

 HEXAは最初、妹が構想していたものとは全く別物になりました。ファンタジーと言いながら全くファンタジーではありません。せめて、「現実的な事が起こるけれど、ファンタジーを見るように優しく見守ってください」という私の勝手な意見は届いたのかどうか……。

 次に気になる事を羅列します。

 カイヘン地方について。物語、つまり原作を「改変」するという意味と、「海辺」という意味を混ぜました。この地方に伝説のポケモンがいないのは御する自信がなかったからです。

 何故、ポケモンは喋らないのか。思考体系が違う彼らと、人間では相容れない。相容れたと思うのならば、それは平行線の始まりだ、という事を描き出しました。

 ディルファンス、ロケット団について。私なりの解釈で臨みました。ロケット団はもちろん弾圧は受けただろうし、自警団の組織というものが存在する発展途上の地方という不安定な感じは出したくて出たものではなく、「何か出ていた」ものです。ディルファンスって綴りも分かりませんしね……。一応、ディフェンス+ディアルガ+ポケモン世界にあってもおかしくない組織名、という基準で作りました。なので、「原型どこやねん」って感じです。ちなみにロケット団員達の思想について。某ロボットアニメの敵役の思想を下にしています。

 避けては通れない問題、同調現象。これは五章を描く際、第一章のナツキの進化が間違った方向に行ってしまったら? という構想で練ったものです。この時のナツキは最後のような超然とした立ち居地ではなく、ごく普通の、少し強い程度のトレーナーでした。それが現実を知り、自らの才能に目覚めていく。同調に関しては、これも某ロボットアニメの着想を得ています。

 この世界観における敵役だった存在、キシベ。彼もまた、悲しき存在であるという事を当初から決めていました。ルナであったり、全てのきっかけであったり全ての終わりである事を決めたのは随分と後でしたが。キシベのテーマは「鏡」です。鏡の前で問答しても意味のない事。掴みどころのないキャラクターとして完成していればこれに勝る幸せはありません。

 次に出てくるポケモンについて。最初の妹の構想ではもちろん、ピカチュウ共々メジャーポケモンばかりでした。「それではつまらん」と私は大幅に改変し、主人公の名前である「ナツキ」だけを残し、あとの手持ち、キャラクターの配置は全て変えました。

 最初、ナツキは部長でどうやら天文学部的な活動をするそうだったようです。

 また、ここで明かしますが、最初はルイが全ての元凶、ロケット団ディルファンス共通の敵という設定でしたが、「それではルイがあまりにも可哀想だ」という事でリョウという救済を作りました。リョウとルイは本当に自然に惹かれ合って書いている自分でも、「こんな風な王道って何かすごいな」と思っていました。ちなみに初期段階のルイの手持ちは、ゲンガー、バンギラス、アンノーンという悪の極みのような手持ちでした。バンギラスは後にカリヤの手持ちになりました。アンノーンは使いどころが分からなかったので使いませんでした。

 キャラクターが滅茶苦茶に膨れ上がり、脇キャラがほとんどいるのかいないのか分からないような内容になりました。私自身は分からないのですが、きっとこれが、物語が独り立ちしたということなのでしょう。

 終わりになりましたが、最大の謎と言いますか、ナツキが見た累乗の先の光。これはいわゆる魂の世界です。ポケモンと人間の垣根を越えた瞬間、それは現われるのではないかと考えていました。死後の世界、というにはあまりに眩しく、かといってそこに導かれる事が全て正しいとも思えない。そういう感じを出したかったみたいです。これも某ロボットアニメの某キャラの台詞、「刻が見える」という台詞に触発されました。

 身内からネットの海で拾い上げてくださった読者様の方々に深く御礼を申し上げます。

 どうして『ポケットモンスターHEXA』だったのか。初期段階の構想では、確かHGSSが出る前だったので初代から合わせてちょうど五作なので、「じゃあ六作目で」という気持ちでした。HEXA――六角形が平面充填形であり、自然界において強固な形を持っている事を知ったのは完全に後付けです。

 なぞっていくと、全てが後付けと偶然でできている作品です。しかし、その偶然がパズルのピースのようにはまり、こうして作品として提供できるようになったというわけです。

 筆を置く前に、HEXAという物語で死した人々に黙祷を。私は作品の都合とはいえ、キャラクターを殺しすぎました。反省しております。

 私の中でHEXAという物語は広がりを見せました。これだけでは終わらない感じになったのです。いわばこのHEXAは「第一部完」でありまして、既に第二部は八割方できております。勝手に「HEXAサーガ」と読んでいるのですが伝説と呼ぶにはお粗末な作品だと思っております。

 次回作は『ポケットモンスターHEXA BRAVE』という名前です。果たしてどのような作品になるのか、ここでは控えさせていただきます。しかし、「全力投球」のスタンスは崩れていませんよ。

 最後に、この物語がインターネット上に公開されるきっかけを作ってくださったkaryuさんには言い表せないほどの感謝を。時折厳しいチェックをしてくださり、真摯に作品と向き合う機会を下さったリングさんには頭が上がりません。毎回陰ながら応援してくださったなろうでの繋がりを続けてくださって毎回感想を下さった最大の読者様であるFOREVER HEROESさんにはこの両手では抱えきれないほどの感謝の言葉があります。

 そして、HEXAという物語を支えてくださった皆さんにも最大限の花束を。

 物語は一区切りがつき、次の世代へ。

 受け継がれる魂。

 その魂の輝きが消えぬうちに。

『ポケットモンスターHEXA』

 物語は終わりました。


2013年7月19日 オンドゥル大使より
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オンドゥル大使 ( 2013/07/19(金) 23:06 )