第四章
第十九話:水のフロートを取り戻せ!
「……眠れない」

数時間前に空を見た時はまだ茜色だった空も今では漆黒に染まっている。夜の帳が降り、ギルドのポケモン達が寝静まった真夜中になっても私は眠ることができないでいた。
ずっと妙な胸騒ぎがして止まない。このまま放っておいたら取り返しがつかなくなるような不自然な危機感。照明もなく、窓から差し込んでくる月明りだけが光源の簡素な部屋の中、藁敷きのベッドの上で何度寝返りを打ってもそれは消えることがなかった。

「うーん……」

胸騒ぎの正体に心当たりがあるとすれば、夕食の時にペラップが言っていた時の歯車が盗まれたという事件。弟子達みんなが思っていることだろうが、もしも事件の犯人が霧の湖の時の歯車を盗むようなことがあったら……。
不安なのはみんな同じ。しかし、あの場所に時の歯車があることを知っているのはプクリンのギルドのポケモンだけ。誰もが優しく、情に熱い弟子達がユクシーとの約束を破るとは思えない。だから、霧の湖の時の歯車が見つかる心配はない。――はずなのに。

「……………」

でも、どうしても安心しきることができない。ギルドの誰かが情報を漏らすだなんて微塵も思っていないはずなのに不安が消えない。
時の歯車を初めて見た時、胸の中がうずいた。それと今の気持ちが関係しているとは到底考えられないけど、記憶がない以上断言することはできない。
もしかしたら私は、時の歯車を――

「まさか、ね」

突拍子もない仮説を立てようとして、ありえないことだとその考えを打ち消す。
結局答えを見つけられないまま、時は静かに過ぎていった。





迎えた次の日。寝不足でボーっとする頭を押さえながら朝礼を終えると、お呼びがかかった。いつもならばペラップから頼みごとをされることが多いが、今回は珍しくドゴームからの呼び出し。いったいどうしたのだろう?

「ドゴーム先輩、どうしました?」

「お前達にお客さんだそうだ。入り口で待ってるから、早く行ってやれ」

お客さん?それはまた珍しい。
急を要する依頼の場合は依頼書を通さずに依頼者が自らギルドを訪問し、探検家に助けを求めることはあるが、私達にお呼びがかかったのは初めてだ。
誰かは知らないけど、私達でいいのかしら?もちろん、依頼とあらば達成するべく全力を注ぐが。

「わかりました。行ってきます」

「頼んだぞ」

ともかく待たせているのならば早く行かなくては。ドゴームに一礼して入口へと向かう。そもそも依頼かどうかもわからないし。
それにしても眠い。早く眠気を取らないと仕事に支障が出てしまいそうだ。
梯子を上る途中で足を踏み外して落ちそうになったのをカズキに心配されつつお客さんとご対面することになる。

「あっ、ヒナタさん!カズキさん!」

「あれ、マリル君にルリリちゃん?お客さんって君達だったんだ」

ふらふらとした足取りながらも入り口にたどり着くと、そこにいたのは仲良し兄妹。昨日も会ったが、あの時の嬉しそうな笑顔とは打って変わって不安そうな表情を浮かべている。
確か、落とし物が見つかって喜んでいたはずだけど、この様子だとなにかあったのかしら?

「はい。実は、頼みたいことがあって……」

「なぁに?」

「水のフロートを取ってきてほしいんです!」

水のフロートと言えば、昨日言っていた落とし物の名前だ。海岸にあるって言ってたし、わざわざ私達が取りに行かなくても安全にとることができるはずなのだが。
意外な依頼にカズキも目を丸くしている。パッと見ではわかりづらいが。

「海岸に行ったんですが、こんなものがあって……」

「これは、手紙?」

マリルが差し出してきたのは一枚の紙切れだった。差出人などは書かれておらず、文字も殴り書きのような汚い字だったが、誰かに宛てて書いた文章ということはわかる。
紙を受け取ったカズキは読みづらそうに目を細めながらも内容を追っていく。その紙にはこう書かれていた。

『海岸にあった水のフロートは我々が預かった。返してほしければ“エレキ平原”の奥地まで来い。――しかし、力の弱いお前達が果たして辿り着けるかな?ククククッ。無理なら探検隊にでも頼むこったな。ククククッ』

明らかな脅迫文だった。水のフロートのことをどこで聞いたのかは知らないが、こんな幼い子を脅すなんて犯人は腐ってるわね。
あまりの内容に激昂するカズキの隣でふつふつと怒りが湧きあがってくる。眠気などとうに覚めていた。

「ぼくもすぐにエレキ平原に行ったんですが、あそこは電気タイプのポケモンが多くて、ぼくじゃ、歯が立たなくて……何度行ってもすぐに倒されちゃうんです」

困惑しながらも勇気を出して取り返しに向かった兄は苦手な電気ポケモン達に翻弄され手が出せないでいる。
犯人はそんなマリルの様子を見て笑っているのだろうか?だとしたら絶対に許せるものではない。自分は無力だと泣き出してしまうマリルを見て私も堪忍袋の緒が切れた。

「……任せて。私達が取り返してくるから」

「本当ですか!?」

「もちろんだよ!だからもう泣かないで?」

絶対に取り戻して見せる。そして、こんなことをした犯人を懲らしめてやる。
私はカズキに目配せをすると勢いよく駆け出した。





犯人の目星は大体ついている。というのも、手紙の内容からあらかた推測することができた。我々ということは複数犯で、語尾についている笑い声は書いたポケモンの口癖だろう。だとするならば、答えは決まっている。
――ドクローズ。探検隊と名乗ってはいるが、やっていることはコソ泥の類。カズキの宝物である遺跡のカケラを盗もうとしたり、ギルドの遠征に紛れ込んで宝を盗もうとしたり、なにかと邪魔をしてくる嫌な奴ら。

「見つけたらただじゃおかないわ」

「ほんとだよ!」

おそらくここ――エレキ平原の奥地にいるであろう三匹に怒りを露わにしながら歩き続ける。
エレキ平原という名の通り、空には雷雲が立ち込めており、頻繁に雷鳴が響いている。落ちた雷が抉ったのか大地は荒れており、時たま見る木々は皆枯れ果てている。殺風景なところだが、電気エネルギーに満ちているこの場所は電気ポケモンにとっては快適な場所なのだろう。

「ツルのムチ!」

土地柄のせいか敵の放つ電気技が心なしか強力な気がする。襲って来たラクライを倒すと触れた部分にびりっとした痺れを感じた。
ダメージは少ないとはいえ、早めに抜けた方が得策だろう。逸る気持ちも手伝って自然と歩幅も大きくなる。

「ん?あれは」

しばらく進んでいると遠くにきらりと光るものが見えた。遠目ではわかりづらいが、銀色のリングのようなものに見える。
あれが水のフロートだろうか?とにかく近づいてみよう。

「待て!ここへなにをしに来た!」

「ッ!?」

近づこうとした瞬間、一筋の雷光と共に威嚇の声が響き渡った――





その頃、トレジャータウンでは――

「なるほど、水のフロートがねぇ」

マリルとルリリの話を聞いてうんうんと頷くカクレオン。リリーフに依頼を託し、戻るまで家で待機していようと店の前を通りかかった時、カクレオンに引き止められて事のあらましを話していたところだ。

「わたし達の代わりに取ってきてくれるって!」

「それはよかった!リリーフなら安心できるだろうしね」

はしゃぐルリリにカクレオンも安心したように笑みを見せる。さっきまで泣きそうになっていた表情も今ではすっかり笑顔だ。
思えばあの二匹には助けられてばかりだ。ルリリが攫われた時にもいち早く助けてくれたし、マリルの中ではリリーフという探検隊は正義のヒーローとなっている。感謝してもしきれないくらい。

「おや?皆さんどうかしたのですか?」

話が盛り上がってきたところに一匹のポケモンが通りかかった。巨大な手にお腹にある大きな口、赤く光る一つ目。黒を基調とした幽霊のような相貌のポケモン――ヨノワールだ。

「あ、ヨノワールさん!いやね?実はこんなことがありまして――」

優秀な探検家としてみんなの憧れの的であるヨノワールはマリルとルリリが話しているのを見て興味を惹かれた様子。そんなヨノワールを見て、饒舌なカクレオンは話題となっていた水のフロートのこと。そして、リリーフの話をした。

「なるほど、そんなことが。誰がどういう理由でそんなことをするのかわかりませんが、悪質な輩ですね」

「でしょう?こんな幼い子に悪戯するなんて、ワタシ達絶対許さないですよ!」

手紙の内容に怒り心頭なのはカクレオンも同じようだ。同意するヨノワールに興奮気味に愚痴っている。
常連客として大事に思っている部分もあるが、カクレオンにとってこの兄妹は自分の子供同然の存在であり、大切な存在。リンゴを買いに来る度に一個多めに渡しているのは少しでも力になれればと思っているから。マリルもそれを薄々ながら感じていた。

「それで、リリーフは今どこに?」

「“エレキ平原”です」

「え、エレキ平原ですって!?」

興奮冷めやらぬまま、尋ねられた質問に答えると、冷静沈着なヨノワールが声を荒げた。
なにか変なことを言っただろうか?エレキ平原という地名を聞き、焦ったように表情が歪んでいく。

「この時期のエレキ平原は、確か……」

「よ、ヨノワールさん?」

「このままではリリーフが危ない!私、これからエレキ平原に行ってきます!」

「えっ、ちょっ、ヨノワールさん!?」

引き止める間もなく去って行ってしまったヨノワール。
いきなりどうしたんだろう?まさか、エレキ平原という場所はかなり危険な場所だったのだろうか?
脳裏にリリーフの二匹の姿が浮かぶ。無事でいてくれればいいんだけど……。
心配だが、マリル達には去って行くヨノワールの背中をただ見ていることしかできなかった。





「ここへなにをしに来た?ここは、我々の縄張りだ!」

轟く稲妻、そして威嚇する怒声。明らかな敵意を持ったその声はどこからともなく聞こえてくる。右、左。どこを見渡しても姿が見えない。
リンゴの森の時と同じように下品な笑みを浮かべながらドクローズの三匹が待ち構えているであろうと思っていたが、この声は奴らじゃない。

「誰なの!?姿を見せなさい!」

「よかろう。私の名はレントラー、ルクシオ一族のリーダーだ!」

その瞬間、周囲をまばゆい光が包み込んだ。雷とは違う、真っ白な光のカーテン。身体が本能的に反応し、思わず目を閉じてしまう。

「なっ、これは!?」

次に目を開けた時、目の前には一匹のポケモンが立っていた。
虎のようなたくましい体躯にピンと跳ねた黒い体毛、尻尾の先には進化前の名残である黄色い星形。相手を射抜くような金色の鋭い眼光は見た者を委縮させるだけでなく、物を透視することもできる能力を持つ。先程の声の主――レントラーだ。
しかし、現れたのはレントラーだけではない。

「か、囲まれた……!」

私達を中心に囲むようにして配下と思われるルクシオ達が構えている。
先程の強い光は目くらましだったようだ。目を閉じたほんの数秒の間にここまで完璧に陣形を完成させるとは、敵ながら感心する。
いや、感心なんてしている場合ではない。これはピンチだ。
ざっと見回してみると目の前にレントラー。そして周りにルクシオが八匹。合計九匹。ただでさえ圧倒的に数で負けているのに囲まれてしまってはかなり不利だ。さて、一体どうしたものだろうか。

「覚悟ッ!」

「くっ、とにかく応戦するわよ!」

「う、うん!」

レントラーの掛け声と同時にルクシオ達が一斉に襲い掛かってくる。
電撃を交えながらも適度に近接攻撃。一匹が放ったチャージビームを避けると、他の一匹がすかさずスパークでラッシュをかけてくる。避けたり相殺したりを繰り返しても完全に防ぎきることは難しく、次第に体力を削られていくのがわかった。

「カズキ、大丈夫!?」

「な、なんとか!」

少しでもダメージを減らすためにカズキと背中合わせになる。後ろの敵を味方に任せ、自分は前の敵に集中するのだ。
しかし、状況が変わるわけではない。このままではジリ貧だ。何とかこの状況を打破する策を考えなければならない。

「なにか、使えそうなものは……」

迎撃しながらも必死に考える。なにか使えそうなアイテムは持っているか。使えそうな物が落ちていないか。敵の弱点はないか。
しかし、感情に任せて急いで来てしまったおかげで所持しているアイテムはせいぜい食料と応急のオレンの実程度。地形は荒れた大地にたまに転がっている岩くらい。敵はレントラーによって統率されているせいか動きに迷いがなく隙が少ない。
完全に手詰まり。さすがにこの状況は辛すぎる。

「こうなったら、一か八か!」

「えっ、うわぁ!?」

私はカズキにツルを巻きつけると、勢いよく空に向かって投げ飛ばした。
敵に攻撃するならいざ知らず、味方を投げ飛ばすなんて奇行にさしものレントラーも目を見張り、ルクシオ達も宙を舞ったカズキの姿にわずかながら目を奪われた。
実際には投げ飛ばしたわけではなく、投げ飛ばしたように見せてしっかりツルで支えていたのだが、素で驚いているカズキの反応もあってなんとか注意を引けたようだ。

「葉っぱカッター!!」

「ぐあっ!?」

ここしかない。渾身の力を込めて放った攻撃はレントラーに直撃した。
もしも敵に弱点があるとすれば、それはレントラーの指示が的確すぎること。ルクシオ達もリーダーのことを信頼し、指示通りに動く。ならば、その司令塔を倒すことができれば活路を見いだせるかもしれない。

「ぐっ、貴様ぁ!」

「カズキ、お願いッ!」

「え、う、うん!スピードスター!」

しかし、リーダー格のレントラーがただの一撃で倒れるはずもない。意表を突かれてよろめいたもののすぐに体勢を立て直す。
だが、それも読み通り。私がカズキを空に投げたのは隙を作るためだけじゃない。空なら、とっさに攻撃される心配もなく、確実に攻撃できるから。

「ぐぅッ!?」

『レントラー様!』

空から放たれた星形の弾丸はまるで流れ星のよう。きらきらと光の粉を振りまきながら直撃した星は花火のように美しい軌跡を残して消えていった。
さすがに堪えたのかレントラーがガクリと前脚を折る。苦しげに息を荒くする姿にルクシオ達が駆け寄っていった。

「やった、かしら?」

「もう、ヒナタ!いきなりなにするのさ!?」

おそらく脅威は去ったと見てツルを戻してカズキを地上に下ろす。途端に騒ぎ立てるカズキだったが、完全に勝ったとは言えないため悪いが無視させてもらう。
レントラーを見据えたまま黙りこくっている私にカズキは戦いの場ということも忘れて膨れっ面だ。さすがにかわいそうだったかしら?少し釈明しておこう。

「あー、カズキ?ごめ――」

「よくもレントラー様を!チャージビーム!!」

本当に一瞬の油断だった。私がふとカズキに目線をそらした途端、一匹のルクシオが怒りに任せて攻撃してきた。
まずい!と思った時にはもう遅い。気づいた頃にはすぐ目の前まで迫ってしまっていた。

「待て!!」

バチィ!!完全に直撃コースだったはずの攻撃はなにかに阻まれたような音と共に四散した。もちろん、当たったのは私ではなく、カズキでもない。別の誰か。
当たるのを覚悟して思わずつぶった目を開いてみると、目の前には大きな背中が。

「この者達はここを荒らしに来たのではない!!」

「よ、ヨノワールさん!?」

その巨大な手で攻撃を防いだのだろうか?両手を突き出すように前に広げながら叫んでいるのは探検家ヨノワールだった。
突然の乱入者。しかも、その乱入者はかなりの実力者だということが雰囲気でわかる。私達が与えていたダメージが残るものの、応戦するべくレントラーが立ち上がった。

「貴様、何者だ?」

「私の名はヨノワール、探検家だ!レントラーよ、あなた達の怒りはもっともだ!特に、以前あなた達が受けた仕打ちを考えれば、無断で侵入する者に対して攻撃的になるのは当然だ!そして、この地があなた達に安らぎをもたらしていることも、私は理解しているつもりだ!――この者達が縄張りに入ったことは詫びよう。しかし、それは決して危害を加えるためではない!用が済み次第、我々はここを立ち去る。信じてくれ、レントラーよ!」

声を張り上げて説得を試みるヨノワールにレントラーは驚いたような表情を見せた。こいつはなぜか、自分達のことをよく知っている。
鋭い眼光を向けてもヨノワールは怯むことなく赤い瞳で見つめ返す。その眼に悪意は案じられない。本当に、敵ではなかったのか?

「……よかろう。少し時間をやる、その間にここから立ち去れ」

しばしの沈黙の後、ルクシオを引き連れてレントラーはその場を立ち去った。
こちらに敵意がないのをわかってくれたようだ。ホッと一安心。
ヨノワールと違い、こちらはレントラーの鋭い眼光に委縮し、緊張しっぱなしだった。強張った体が痛い、ちょっと休憩とその場に座り込む。

「ありがとう、ヨノワールさん」

「おかげで助かりました」

レントラーが去ったのを見届けると、ヨノワールは私達に振り返った。
先程見せた凄味のある表情は消えうせ、トレジャータウンの時のように親しげな笑みを浮かべている。

「いえいえ、無事でなによりです」

「でも、彼らはなんだったの?」

「レントラーとルクシオの一族です。実は昔、こんなことがありまして――」

レントラーの一族はいつも過ごしやすい場所を求めて絶えず移動を繰り返している。そして、この時期のエレキ平原は雷が多発し、電気エネルギーに満ち溢れていることもあってこの時期は必ずここで生活をするらしい。
しかし、以前に彼らはここでいきなり襲われたことがあり、だいぶ痛手を負ったそうで、それ以来ここに侵入する者はやられる前にやる。それがいつしか彼らの掟になった。
レントラーとて闇雲に襲って来たのではなく、仲間を守るために必死だったということね。

「そんなことがあったんだ」

「ええ。ですから、早くこの場を離れなければなりませんよ」

そうとわかればさっさと用事を済ませてしまおう。私達の本来の目的は水のフロートを取り返すことだ。
戦闘前に見つけた銀色のリングを拾い上げる。十字を描くように四方向に水色の珠がついており、連なるように細い線で溝が掘られている。
これが水のフロートだよね?実物を知っているであろうヨノワールに見せてみたところ間違いないとのこと。

「やったぁ!これで届けられるね!」

「そうね」

はしゃぐカズキを横目に水のフロートをバッグにしまう。これで目的の“半分”は達成した。
あとの半分は、どうやらヨノワールも気づいている様子。後ろの岩場に目線を向けて険しい顔で睨みつけていた。

「これを仕掛けた者は、ここがレントラー達の縄張りだと知った上で水のフロートをここへ置き、レントラー達と衝突することを期待していたのでしょう」

「そして、戦いが終わって疲れ切っているであろう私達をさらに痛めつけて楽しもうとでも思っていたのかしら?」

そもそもこうして水のフロートを取り返さなければならなくなった発端は奴らにある。最初は幼い子供が泣いている姿を見て楽しんでいるだけかと思ってたけど、手紙にわざわざ探検隊に頼めなんて書いていたということは、マリルと面識のある私達が選ばれることを想定していたから。つまり、狙いは初めから私達だったというわけだ。

「そうですよね、そこにいる輩達!」

「そうよね、ドクローズ!」

ヨノワールと共に岩場に向かってぴしゃりと言い放つ。姿なんて見なくても、特有の臭いまでは隠せない。戦っている時は気づかなかったけど、今でははっきりと感じることができる。
確信に近いはっきりとした言葉に隠れているのは無駄だと判断したのか、岩陰から三匹のポケモンが姿を現した。

「ククククッ、まさかそこまでわかっていたとはな」

ドガース、ズバット、そしてスカタンク。予想通り、出てきたのは探検隊とは名ばかりのコソ泥三人衆だった。

ウィンデル ( 2014/12/30(火) 12:26 )