第四話 ギルドライフ
レイの体は一直線にヤヤコマの方へ向かう。
先ほどまでとは勢いが違う。レイはこの一回に賭けていた。
(疾い...!!)
今まで余裕を見せていたヤヤコマだが、反応が一瞬遅れる。
レイの拳がヤヤコマに襲い掛かる。
そして、その拳は電気を纏っていた。
こうかはばつぐんだ!
パンチそのものはかすっただけだが、感電したヤヤコマは墜落する。
レイは着地すると、すかさずヤヤコマがくわえていた証明書を取る。
そして、観戦していた会長の方へ振り返る。
会長は笑顔で拍手していた。
「合格!...時間はだいたい9分くらいだったかのう。」
合格を告げられ、試験中ずっと強張っていたレイの顔が綻ぶ。
「やったね!レイ!凄かったよ!」
ブイがレイの下へ一目散に駆け寄ると、嬉しそうに飛び跳ねる。
そのあと、トニと会長もゆっくりと歩いてレイの下へ寄る。
「やったな。」
「おう。」
トニの言葉にレイが短く答えると、会長が口を開く。
「証明書は自分で保管しておけ。これでお主も晴れてギルドメンバーだ。」
空は快晴だ。
そしてこれから、レイと仲間のギルドライフが始まるのであった。
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「ここが食堂だよ。朝と夜、ほとんどの団員がここでご飯をたべるよ。」
レイはブイとトニにいろいろ紹介してもらいながら一日かけてギルドの建物内をまわっていた。
外から見た通りの相当な広さである。
天井が高く少し落ち着かないがそのうち慣れるだろうか、そんなことも
レイは考えていた。
「新入りさん?私はこのギルドのコック、カトリーヌよ。お名前は?」
食堂で、ギルドのコック、ペロリームのカトリーヌに声をかけられる。
行く先々で名前を聞かれるのが、レイには少々恥ずかしかった。
「レイと言います。」
「そう。レイ君ね。これからよろしく。」
挨拶を済ませると、ブイが言う。
「さあ、最後に僕たちの部屋だよ。来て!」
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一行はギルドの宿舎に向かった。
長い廊下にいくつも扉と部屋があり、ホテルのような造りだ。
その廊下を歩いていると、向かいから4人組のグループが歩いて来た。
「あれ?ブイ、トニ!その人は?」
4人の中の一人のリオルがブイとトニに尋ねる。やはり見慣れないピカチュウの方に関心があるようだ。
レイが自己紹介しようとすると、が先に口を開いた。
「レイだ。今日から『ホープ』のメンバーだ。」
リオルはそっか、と言うと、4人は順に自己紹介を始めた。
「俺はレオ!よろしく!」
「俺はハング。これからよろしくな。」
「うちはミラー!お互い頑張ろうね!」
「私はヘレナです、よろしくお願いします。」
リオル、ガーディ、チラーミィ、ピカチュウ♀の順に話した。
レイもよろしく、と返す。
そしてブイとレオがお互いに「じゃあね」と言ってすれ違い、レイ達も再び歩き出す。
「さあ着いたよ!ここが『ホープ』の部屋だ!」
部屋に着き扉を開けると、ブイが自慢げに言った。
部屋を見渡すと、昨日見たブイの部屋と同じくらいの広さだった。
とはいえブイの部屋も広い方なので、3人で使っても不便のないくらいである。
いつ用意されたのか分からないが、藁のベッドが3つ、L字に並べてあった。
「疲れたーーー!」
ブイが叫びながらベッドに飛び込んだ。
そしてレイとトニもベッドに座り込んだ。
部屋には丸窓があって、外を見ると空はオレンジ色に染まっていた。
腰を落ち着けると、今日一日の疲れが一気に込み上げてきた。
忙しさで、自分が人間だったということを忘れかけてすらいた。
レイがー物思いにふけっていると、ブイがベッドに寝そべったまま声をかける。
「一応一通りまわったけど...どうだった?」
「同年代のやつも居たし...なかなか楽しそうだった。」
それなら良かった、とトニが安心して言った。
「はぁ〜、晩御飯まで寝て良いかな?」
ブイが言う。
「ちゃんと起きれるなら別にいいぞ、レイも休んだらどうだ?」
トニが答えると、ブイは眼を閉じ、レイもベッドに寝転がった。
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「ふあ〜あ、まだ眠いや...」
「だからって食事抜く訳にもいかんだろ。」
夕食の時間になり、一行は食堂へ来た。
ブイが起きるまで時間がかかり、食堂はほとんど満席だった。
「あ! ブイ達!ここきなよ!」
席を探していると、宿舎の廊下で出会ったレオがこちらを呼んだ。
ちょうどレオら4人の前に席が4つ空いていたので、レイ達は並んでそこに座った。
「いっただっきまーす!」
席に着くや否や、ブイが夕食に手をつける。
それを見て、残りのメンバーも食べ始める。
「うっまぁ!」
「やっぱカトリーヌさんの飯はうまいなあ!」
ブイとレオは食事中終始テンションが高かった。
ハングやミラーは談笑しながら、残りは静かにご飯ほ口に運んでいた。
すると、ヘレナがレイに話しかけた。
「どう?おいしい?」
「ああ。」
彼女は良かった、と言うと再び下を向き食事を進めた。
「ごちそうさまでしたー!」
「「「「「「ブイ、早っ!」」」」」」
全員が声を合わせた。