群青色のハロー・グッバイ
01 prologue
 初めは幻聴だと思っていた。なにしろ、聴覚はずっと閉じたままにしてあって、何も聞こえないはずだったのだ。
「やあ」
 だが確かに、それは誰かの声だった。顔見知りに対する気さくな挨拶のように、それは軽やかに響いた。
 無意識に開かれた聴覚と憶えのない声に、私は困惑した。と言うよりも、生き物がいたことに驚きを隠せなかった。
 ――ほとんど、いなくなってしまったはずで。
 やはり、幻聴なのだろうか。
「生きてる? 死んでる? まあこのご時世だし、死んでても気にしないけど」
 気さくを通り越して生意気にさえ感じるそれは、間違いなくこの死の世界に強く息づく生命だった。

朱烏 ( 2013/07/04(木) 00:28 )