睡りて宙へ(1165字)
潜って、潜って、海の底が見えてきたと思ったら海淵があって、やっぱりまた潜った。そこは一層昏くて碧くて冷たくて、それでも潜りつづけていたら、かたい岩肌に辿りついた。
あちらこちらがざらついていて、成程海の中の岩はこんな感触なのだなと感心していると、何の前触れもなく岩肌が浮揚した。
そのままふわりと海淵から押し出されて、抗う間もなかったと落ち込んだ。
それは巨大なジーランスだった。
僕の体長の十倍はあろうかというジーランスはぱっくりとへりの鋭い口を開け、おびただしい量の水ごと餌を喰らうホエルオーさながらに僕を飲み込んだ。
そこは深海なんかよりもずっとずっと明るい、水の晴れた陸地だった。だが土の色は碧く、たしかにここはまだ海の中であるという跡を残している。盛り上がった岩の舌の上にびっしりと隙間なくはりついたリリーラたちが、ゆらゆらと揺れているのがそれだ。
空中ではアノプスたちが群れをなして泳ぎ、
大腔のむこうに消え行こうとしている。率先して胃袋の中を目指すとはなんと殊勝な心がけだろう。岩にへばりついて動こうとしないリリーラたちとは大違いだ。
大きく
足許が震動する。大量の水が開け放たれた彼の口から流れ込んだ。濁った黒い水はここの碧い空気に取り込まれ、泡沫となって消失した。
成程彼はホエルオーのように水を飲み込むわけではないのだなと二たび感心していると、失われずに残っているあぶくが浮かんでいるのを発見した。
赤く
仄かに点滅するそれはふよふよと漂いながらこちらに近づいてきて、ムカエニキタヨ、と云う。あぶくを取り払うと、正体を現したのはスターミーだった。
ムカエニキタヨ。嘘を云え、ここは遥か古代の海だ、スターミーなんかがいるはずがない。イヤ、キミトオナジダヨ。君もここへ
時空間移動してきたと云うのかい。ココヲデヨウ。どうやって。ツキヤブルノサ。
僕がスターミーに跨ると、それは勢いよく真上に飛び上がった。アノプスの大群を貫いて、かたい岩肌を内側から破らんと、スターミーは速度を上げた。
僕は頭を岩肌に打ちつけないないように屈めた。だがいざ突入すると、それは風船のようにあっけなく破れ散った。ジーランスがあった場所からぶわりと透明な水が溢れ出して――宇宙に溶けだした。
そう、そこは宇宙だった。果てしなく晴れ渡った、真っ暗な宇宙だった。
そう云えば、君は宇宙からやってきたのだと云われていたね。――ソウダヨ。
夢はそこで途切れた。起き上がると、掛布団の上にはでかい紫
海星。
嗚呼、また仕組まれたか。こいつと寝ると、どう足掻いても最後は宇宙に終結してしまう。重いし。
あの広漠な宇宙がそんなに落ち着くのかい。僕にはちっともわからない。僕にとってはこの昼下がりの六畳一間こそが真の
宇宙だと思うのだが――。
一緒に暮らしているのに、どうも相容れないね。
――ソウダネ。