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消去区画(ココ)はね・・・・・・元々、「世界」 と記録(レポート)の間に存在してた、小さな小さな空間だったんだ。勿論ボクだってココには居なかった。
調べた話なんだけど、昔の初期化って簡単だったらしくてね。「さいしょから」 始めた後は今迄使っていた記録に上から書き加えるだけで、それ迄の記録は消去区画に移って、消去(デリート)されて、お終い。
それから「世界」 の『容れ物』 が少し変わって・・・・・・此処もちょっとだけ大きくなった。消去の仕方は変わらなかったけどね。そこまでならボクみたいのも必要無かったんだけど・・・・・・・・・・・・。変わらないモノは存在しない。それと同じでもう一度『容れ物』が 変わったんだ。一回目なんて比じゃないくらいにね、小さくなった。
それでも「世界」の大きさが変わらないと思ってたのは、ボクの認識が甘かった。『容れ物』が極端に変わったってことは、その中身を動かすための『キカイ』も今迄のモノじゃ使えないから、変わる。
色々なモノが圧縮されて、小さくなって・・・・・・・・・それでも動かせるようになったんだろうね。「世界」は格段に綺麗になって、大きくなって、それに伴って消去区画も広がって、今迄の「世界」とも繋がれるようになった。・・・・・・それだけで良かったんだよ・・・。ボクなんて必要無かったのに。
・・・その「世界」が完成した直後、消去区画には管理者が必要だと言い出した奴が現れた。全く有難迷惑な話だよ、こいつがボクの発端かな。それで「造った」のか「作った」のか「創った」のか知らないけど・・・・・・まぁ取り敢えず、ボクが出来上がった訳だ。それで済ませておけば良かったものを、まーたお節介な奴が居てさ。「可哀想だ」とか何とか言ってボクに「知能」と「言語」と「感情」を入れたんだ。最後のが一番邪魔で余計だな思った勘?はバッチリ当たって・・・・・・あ、ちょっと泣かないでよ、何でキミが泣くのさ・・・。「哀しいこと言わないで」、ってそうかな、悲しい?・・・・・・うん、そうだね、哀しいかもね。でも今はそれ程思ってないから、大丈夫だよ。ちょっと嬉しいって感じる時もあるしね。
・・・あぁ、話を戻そうか。で・・・・・・そうそう、それからボクが生まれた理由と、「使命」を聞かされた。その「使命」ってのがまた酷くって・・・・・・ん、気になる?確か・・・・・・「一日一人、どの「世界」の誰でも良いから、連れて来て 消去(バニシング)しろ」ってゆーやつ。理由も酷いんだよ、「大きくなり過ぎた」とか何とかって。ボクは憤慨したよ。望んでも無いのに消去されるのは流石にやり過ぎだと思った。で、抵抗したんだ。やりたくないってね。そしたら・・・・・・ひとり、消去させられたんだ。ボクの意志と関係なく。ふたつめの「世界」の「ゴールド」って男の子だった。四天王もチャンピオンも倒して、また新しい冒険の旅に出る筈だったのに・・・・・・。
消去させられるのはもうイヤだった。だから最初こそ「使命」に従っていたけど・・・・・・入れられた感情の所為かな、えーっと・・・、・・・良心の呵責?に段々耐えられなくなって・・・・・・それでまた反抗した。今度は絶対に従わないって。・・・・・・で、言い合いのケンカになった時一人にさ、つい「消去(きえ)ろ」って言っちゃったんだ。勿論心の底からそうなれって思って言った訳じゃないけど、・・・・・・でもね。出来ちゃったんだ、消去。
それから、さ。「使命」の通りに働かなく良くなって、こっちから「世界」への干渉が出来なくなって。
此処が、ボクだけの空間になったのは。

嵐虚 珀桐 ( 2012/03/21(水) 22:14 )