第二話
ひっぱられるままに体育館へつくと、エンはあいかわらず右耳をおさえたまま中へ入っていった。
「え・・・ちょ、待てよ!」
もしもかりに、本当に愉快犯の不審者がいるのなら。
「ダイジョブだよ〜、光のかべでおおってるから。」
つまり、エンはこういいたいらしい。
光のかべという技で僕たちを囲い、周りのポケモンから見えなくする。
「名付けて幻光の境界!」
中2キターーーーー。
は、おいといて。
「ひかりのかべ・・・? そんなのイーブイは覚えないだろ!」
「頭いいみたいだね。じゃあさ、この状況はなんでしょー?」
エンのあとに続いて中に入ると、僕はそこに広がる光景に目を見開いた。
「本当だったんだ・・・。」
ステージに陣取る数匹の仮面ポケモン。
後ろで腕を縛られたイーブイ達を、仮面ポケモンの仲間であろうポケモンが見張っていた。
照明は消され、カーテンは締め切られている。故に、体育館は真っ暗だった。
エンは右耳からおもむろに手を下ろし、小さく
「了解。」
と、つぶやいた。
するとエンは、タタタ、と駆け足で、あるイーブイにかけよった。
どうしていいかわからないのであとに続く。
「・・・エン・・・?」
「メテオ、なにつかまってんのー?メテオなら倒せるだろうに。」
「うっさい。それよりはやく外せ! キャン達も作戦にうつってるだろうから・・・て、誰だ?」
薄くむらさきがかった綺麗なイーブイだった。
目は漆黒で、強い光が宿っている。
メテオ、というのだろう。エンと知り合いのようだ。
そいつが、僕のほうを向いた。
「さっき知り合ったの。レアっていうんだって。」
「ああ、よろしく・・・。それより、お前もさっきの・・・えーと、幻光のなんとかってやつ、つかえんのか?」
「!!」
メテアは顔を真っ赤にしてエンをにらんだ。
「おま・・・言ったのか!?」
「く・・・くく・・・」
おいヤメロ、エン。笑いをこらえるな。逆にかわいそうだ。
どうやら幻光のなんちゃらはメテオが考えたらしい。
メテオの縄をときおわったエンは、まだ漏れる笑いをこれながら、右耳に手をやった。
「くふ・・・キャンん?あ、リランとエレセンも一緒か。」
「なあ、それさっきから思ってたんだが、なんなんだ?」
メテオがエンをにらむ力をさらに強くした。
「エン・・・通信機もばらしたんだな! チームの秘密をバラバラと・・・!」
通信機。
え、通信機?チーム? なんかこいつらの謎がふかくなって・・・・。
と、思ううちにメテオも耳に手をやった。
「メテオだ。ああ、ステージ裏か?だったら、こう・・・」
エンは手を下ろし、俺をひきよせるように手招く。
僕が近づくとエンはなにも言わずにステージのほうへ歩いて行った。
メテオもついてくる。
+++
ステージについた。不審者たちはすぐそこにいる。
とん、と肩になにかがあたり、僕は驚いてそちらを向いた。
「ひゃあ!やっぱりこのヒト仕組みわかってるよお・・・。」
「ひえええええ!ごめんなさいごめんなさい!ぼくは食べてもおいしくないよおおおおおお!!!」
「・・・リラン、うるさい・・・。」
そこにいたのは新しい三匹のイーブイ。
ステージ裏にいることと、メテオが
「大丈夫、こいつは安全だ。」
と説明していることから、エンが話していたキャンとリランとエレセンだとわかった。
キャンは色違いの赤目で、
リランは普通より薄い色の毛の深緑目で、
エレセンは黒に近い焦げ茶色の青目。
それが、三匹のそれぞれの特徴だった。
「・・・ああ、さっきエンが言ってた、レアっていう新チームメイトか。」
おや?
「あっ、そうかぁ〜!よろしくね、わたしはキャンっていうの!」
おやおや?
「リーダーが決めたならしょうがないか・・・はぁ・・・」
おやおやおや?
「待て!僕、勝手にチームメイトにされてないか!?」
「がんばれ、新人。」
「待ってーーー!!??」
そのときだった。
「おい、てめェらなに勝手に騒いでんだよ!」
首筋をつかまれ、足が中に投げ出される。
息が一瞬止まった。
不審者だった。