第一話
入学式―。
桜散るなかでの写真撮影が定番だが、そう散っていないのが現実である。
そもそも卒業式も桜散る雰囲気があるのに、入学式まで散っているとはいささかおかしい。
そんな冷めた思考をもつイーブイ、レアは一匹で校門をくぐった。
もうすぐ入学式がはじまる。
なのに、レアは校庭をゆっくりと横切った。
向かった先は屋上へ続く道。
いまごろ体育館にあつまっているのだろうか―。それとも、レアがポケモンを避けて通っているのか―。
真相はわからないが、ともかくレアは一匹のポケモンにも合わずに屋上へとたどり着いた。
「進化推薦―、か。くだらない。」
進化推薦。それは、この高校の一番のうりだった。
しかし、この高校を受かったレアは、進化になど興味はない。
ふと、足音がしたきがして、レアは顔を上げた。
「あっちゃー、気がつかれちゃった!君もさぼり?」
そこにいたのは一匹のイーブイ。まあイーブイ専用学校なのだから当然だろうが。
赤い帽子を前後逆でかぶっているせいで、耳がよこにだらんとたれていた。
「あ、僕はエンっていうの。よろ!」
どうやらとても軽い性格のようだ。
その言葉遣いに、レアは顔をしかめた。
「一人でいたいんだけど。」
「君はなんてゆーの?」
「・・・レア。」
いろいろ冷めたレアに対して、エンは楽しそうに話を続ける。
と―――。そのときだった。
「「!!」」
どんっとなにかが爆発した音に、二匹は飛び上がった。
レアはキーンと耳鳴りがなり始め、うろたえて立ち上がった。
意外にも、エンは冷静に状況確認。
「体育館のほうから・・・。発砲音だ!」
なぜか帽子の上から耳をおさえていた。
ぐい、と手を引っ張られ、レアは驚いて声を上げる。
「な、なにすんのさ!」
「なにって・・・決まってるだろ!愉快犯の不審者が発砲したんだから!」
愉快犯の不審者!?
驚くレアを引っ張って、エンは体育館のほうへ走り出した。