番外編:クリスマススペシャル
番外編です。できればクリスマスの日に読んでください。
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!!」
サーナイトの一言で、ルカリオの家は一気にうるさくなり、もはやどんちゃん騒ぎだ。
「何故こうなった…」
ルカリオは途方に暮れていた。なぜこうなったかというと、それは1時間前にさかのぼる。
2時間前
「なんだこれ」
ルカリオが手にしているのは、サーナイトからの手紙だった。
『ルカリオへ
手紙なんか出したの初めて!っていうのはおいといて…
元気?風邪なんか引いてないといいけれど。
私が今日手紙を出した理由は、今日がクリスマスだからよ!
だからね、一緒にクリスマスパーティしない?ってかしよう!
だから、場所はルカリオの家でよろしくー!あと料理も用意しといてね!!
サーナイトより』
ルカリオはしばらく直立不動のまま、動くことができなかった。まさにわが目を疑うとはこのことだ。
「…どうしようか。これはもう拒否権というものがないんだな。しかもなんでオレの家なんだ!?」
「…とりあえず料理を作んないとだめだな…。あー、家でもっと母さんに教わっとくんだった…。一生の不覚…」
彼は料理が得意な方ではあったが、やはり女子にはかなわなかった。しかもこんかい来るのはおそらくあの4人だろう。ゾロアークはともかく、サーナイトは味にうるさそうだ。なにしろ勝手に人の家に決めることをするほどなのだから。
1時間後
「はあ…なんとかできた…「。しかし足りるのかこれ?」
ルカリオはなんとか4人分を作り上げた。もちろんケーキも忘れない。足りなければまた作り直せばいいだろうと彼は思った。
ピンポーン
「おっ、来た来た。ったく、勝手にオレの家に決めやがって…」
ルカリオが文句を言いながら、ドアを開けると、予想通りの4人が立っていた。ゾロアークはよっ、と言い人の家にどかどかと入る。ウィンディは、ぼそっと「きたねえ家だな…」と言い、グレイシアは礼儀正しく「失礼します」と言って部屋に入る。サーナイトは…
「ルカリオー!」
「てめえ、勝手にオレの家に決めやがって!こっちは準備で大変だったんだぞ!」
「ごめんってー。それより、ちゃんと手料理作ってある?」
と、サーナイトは悪びれる様子もなく尋ねる。これにはルカリオも、怒る気をそがれてしまう。
「当たり前だ。ってかお前が作らせたんだろ?」
「確かにね…」
サーナイトは少し笑いながら、部屋へ走っていく。ルカリオは少しイライラしながら、部屋へ向かおうとしたが、あることを思い出し足をとめた。
「…そういやさっき、ウィンディが汚いって言ったような?…気のせいか」
「メリークリスマース!!」
ここでやっと、冒頭のセリフが出てくるのだ。今はルカリオのいえのなかにあるリビングである。けっこう広い。
「お前の家ってこんなでかかったんだなー」
ゾロアークは素直に驚いている。
「まあな。けど一人じゃ結構さみしいもんだぜ」
ウィンディが隣でぼそっと呟く。
「あそこに埃が…。あんなとこにも…」
「なんか言ったか?」
ルカリオが尋ねると、彼は笑顔で振り向いて言った。
「い、いや?なんにも?」
ルカリオが何か言おうとすると、グレイシアが大声で言った。
「ルカリオー、もっと料理もってきてえー」
「おいおい、グレイシア…。お前、まさか酔ってんのか?」
彼女の顔は、かなり赤くなっている。
「そんなことないわよおー!!それよりご飯ー!」
サーナイトが呆れたように言う。
「お酒は20歳過ぎてからなのに…。あんた大丈夫なの?」
ルカリオは後ろのやりとりを聞きながら、机を見ると、ゾロアークがいなくなっていることに気がついた。
「あれ、ゾロアークは?」
気分転換も兼ねて、ルカリオは外へ出た。彼の家は森の中にるため、昼前でも暗い。今は夜だからもっと暗い。ルカリオは少し道を歩き、上を見ると森で一番背が高い木の上に、ゾロアークがいるのを発見した。
「あいつ、あんなところに…。ちょっと驚かしてやるか」
ルカリオは音をたてないように、気をつけながら木を登ると、ゾロアークの後ろに忍び寄り声をかけた。
「なにしてんだよ、こんなところで?」
「!!ゴボッッルカリオ!?」
「なんかごめん…」
「…いや大丈夫だ」
ゾロアークはゆっくりと空に目をやると、丸い大きな満月を見つめた。その表情はいつもの陽気な彼からは、程遠い表情で、何か思いを馳せているようにも見えた。ルカリオも満月を見上げる。その月はいつもより大きく、ルカリオのもといた時代よりも、より壮観に見えた。
ルカリオはふとあるものに気がついた。
「なに飲んでるんだ?お酒じゃないだろう?」
こういうと、ゾロアークは急に飲んでいるものを隠した。とてつもなくあせっている。
「これはー…その…」
「それって…ぷっ」
ルカリオは少し噴き出してしまった。ゾロアークは顔を赤らめながら怒って言う。
「なっなんだよ」
「だって…それジュースじゃん」
「笑うんじゃねえよ!」
ゾロアークは少し向きになっていう。ルカリオは呼吸がやっと落ち着いた。
「ごめんごめん。ってか、なんでお前ジュースなんか飲んでんだ?」
「…ウィンディが持ってきた…」
「…それっていじめじゃん」
ゾロアークは恥ずかしそうにしながら、ぐぐっとジュースを一気に飲んだ。ルカリオもゾロアークのとなりに座って、一緒に月を眺める。
「こうやって過ごすのもいいもんだな」
ルカリオが言うと、ゾロアークはどこか遠い目をして言う。
「…ああ。オレはこの森が好きだ。おもいだすんだ、故郷の森を…」
ルカリオはこのとき、故郷の森というのは、家の近くにあったもりなんだろうなあというくらいにしか思っていなかった。この本当の意味をのちに知ることになるのは、また別の機会に話そう。
こうして、ルカリオのクリスマスは終わった。いつもより騒がしかったが、こんなに楽しいのは久しぶりだ、と彼は思った。そしてルカリオはしっかりとこのことを日記に書きとめた。
窓からも満月が見える。ルカリオは遠い未来へ思いをはせた。今頃両親はどうしてるだろうか。自分は…この時代にいていいのか…。問が浮かんでは消えていく。夜の闇が次第に彼の元に迫っていく。