時を超えた出会い編
乙女心は秋の空

ルカリオが待ってましたとばかりに声を張り上げた。
「それでは感謝をこめて…いただきます!」

「いただきます!」
三人は揃えて言った。
ウィンディがカレーを食べながら言った。
「学校のカレーってほんと美味しいよな!うちの母さんが作るより美味しいぜ」

ゾロアークが感心したように言った。
「確かにそうだな。この前、お前ん家に遊びに行ったときお前の母さんにご飯作ってもらってたけど、食べたときすごい味したもんなぁ。」

その言葉を聞いてウィンディはあきれ顔でゾロアークの顔を見やる。
「お前さ、もうちょっと他人を思いやる気持ちねぇの?いくらまずかったからって、息子の前でいう事はねぇだろ…」

ゾロアークはぽかんとして言った。
「あれ、オレなんかやばい事言ったのか?」

「あー、もう!なんでもねぇよ!」
ウィンディはやり取りが面倒になり、半ばやけくそに叫ぶ。
ゾロアークはどうしてウィンディがそんなに苛立っているのか全くわからないといった表情だった。

そういえばサ、とゾロアークがカレーを食べながらルカリオに聞いた。
「お前、なんか聞きたいことあるって言ってなかったけ?」

「そうだった。いや、別にたいしたことじゃないんだけど…。満月の夜っていつかわかるか?」

2人は、は?といった顔で、顔を見合わせた。
「そんなこと聞いてどうすんだ?お前、一人で月見でもするのかよ?」とウィンディが笑いながら言った。

「そんなんじゃないよ。ただいつかなって気になっただけだ」

「たしか満月の日は…今日だったハズだ」
ゾロアークが思案顔で呟く。その言葉を聞き、ルカリオは思わず立ち上がる。
「今日だって!?」

ウィンディもそのルカリオの声に驚き、危うく飲もうとして持っていたコップを落とすところだった。
「おい、急に大声出すなよ!危うくこぼすところだったじゃないか !」

ウィンディをスルーして、ルカリオがゾロアークに尋ねる。
「それ、ほんとうなのか?」

「本当に決まってんだろ。嘘ついてどうすんだよ」
たしかにそうである。満月の日にちを嘘ついても、なんの得もない。
コップにお茶を次ぎながら、ルカリオは思った。だとしたら行くのは今日か。しかし、エムリットが話さなければならないこととは一体なんだろう…。そもそもあのポケモンは、自分がいた時代、つまりここから数えると100年後の世界にいても姿は変わっていなかった。彼ら伝説ポケモンは年をとらないのだろうか?それになぜサーナイトはエムリットのことを知っていたのだろうか?まるで泉のように、疑問がでてくる。

「ルカリオ、お茶溢れてんぞ」
ゾロアークの声にルカリオは我に返った。見てみるとお茶がコップから溢れていた。どうやらルカリオはヤカンを持っていたまま考えていたようだ。
ルカリオは慌てて布巾で机の上をふくと、カレーを急いでかきこんだ。



昼ご飯を食べたあと、授業を受ける生徒たちが睡魔と闘う時間帯の授業は不幸なことに数学だった。やはりいつの時代にも、授業風景というものは変わらないのかもしれない。すでに何人かが夢の中だ。数学の教師、アルフォード先生は思わず眠くなるような声で、サングラスを上にやり薄板に文字を書く。先生はまるで紅の豚のような外見で異様におなかが太っている。つまりメタボだ。
「えー、この式はこうだからこう解いて…」
先生が黒板に式を書きながら生徒たちに説明している間、ルカリオは昨日の夜のことを考えていた。
(湖に行ってエムリットに会うには、どうしたらいいんだろう?たしかサーナイトの奴がなんかして、そしたら湖のそこから洞窟が現れた。それならサーナイトの助けが必要だってことになる…。でも声が聞こえたなんて信じてくれるだろうか?)

ルカリオは考えに考えた結果、サーナイトに授業中手紙を回すことにした。
サーナイトの席はルカリオの2つ後ろの席だった。彼女はちょうど、となりの席で居眠りしているゾロアークを起こしているところだった。
「ちょっと!あんた、起きなさいよ。いま授業中でしょ?」

そう言ってサーナイトはゾロアークの頭をバシっと叩いた。
「いってぇー!何すんだよサーナイト!せっかくいい夢見てたのに…。」
サーナイトはふんっと鼻を鳴らした。
「授業中に寝てるあんたが悪いんでしょ。」

ゾロアークはふてくされて一言ぼそっと言った。
「この暴力女め…」

この言葉を聞いた瞬間、サーナイトの手がぴたっと止まった。
「あんた、今なんて言った…?」
ゾロアークがしまったと思ったときには遅かった。サーナイトの怒りは頂点に達し、彼女は誰にも気づかれずにサイコキネシスでゾロアークを瞬時に気絶させた。周りからみれば、ゾロアークはただ眠っているだけにしか見えない。

サーナイトが授業のノートを書こうとしたとき、トントンと斜めの席から肩を叩かれた。見てみるとキュウコンが一枚の折りたたまれたメモ用紙を渡してきた。
「ルカリオからだってさ。」

サーナイトはメモ用紙を受け取ると、中を開いてみた。中にはこう書かれてあった。
『今日の放課後、時間空いてるか?』
彼女はドキッとした。もしかして…と思ったが、首をぶんぶんと横に振った。まさかそんなこと、あるわけがない。だってルカリオは私のこと、たんなる友達としか思ってないんだから。サーナイトはルカリオのことを自分でも気づかぬうちに好きになっていた。彼が来てからまだ二週間しかたっていないが、時間の距離を感じさせないほど、その思いは大きかった。
でも…でも…もしかしたら?
いや、考えるのはよそう。変に期待しても、前と同じようにショックを受けるだけなんだから…。
彼女は実は小さい頃、ある人に告白をしたことがあった。あの時は小さかったが、その恋も小さいながらに本気だったのだ。その人物が誰かは、物語が進むにつれて明らかになるだろう。


サーナイトは『空いてるよ』と紙に書き、ルカリオの席へと回した。

そのとき、アルフォード先生が振り返ったとき寝ているゾロアークを見つけた。
「まーた寝とるのかね、ゾロアークくん。ったく…何度言ったらわかるんだ…。」
そういって先生はチョークを手にとった。

それをみたザングースは周りの席に囁いた。
「出たぞ、先生のチョーク投げ。みんな、当たらねえように伏せとけよ。」

ルカリオはなんのことか分からなかったが、とりあえず低めに体制をとった。
アルフォード先生はチョークを構えた。
(教師生活20年!今やダーツの達人さ!)
投げられたチョークは勢いよくゾロアークの方へと飛んでいき、ゾロアークの頭に直撃した。

「痛っ!」
彼はあまりの痛さに目を覚ました。あたりを見渡すとみんながクスクス笑っていて、先生がこっちをしかめっ面で見ていた。ということは…と思い、ゾロアークが足元を見るとチョークが落ちていた。
「またやられた…」

先生は自慢のチョーク投げが命中したことにより、満足げに言った。
「授業中は居眠り禁止だよ!」





「ったく、あの先生チョーク投げやがって…」
ゾロアークが不満げに呟くと、フタチマルが笑いながら言った。
「そりゃあ、あの先生の授業で寝てたらチョークも投げられるよ。なにせあの先生は、教師生活をチョーク投げにかけてるんだからね。」

するとバシャーモも言った。
「チョークなだけまだいいぜ。俺なんか前に、黒板消し投げられたからな!おかげで真っ白だ。」

「たしかにお前よりはましかもな…」
ゾロアークは苦笑いを浮かべながら、たまたま通りかかった教室に目をやる。するとその中にルカリオを見つけた。

「おーいルカリオ、今日は一緒にサッカーしねえのか?」
ゾロアークが声をかけると、ルカリオは教科書をカバンの中にしまいながら言った。
「ごめん、今日は用事があって早く帰らなくちゃいけないんだ。」

「そうか、わかった。じゃあまた明日、学校でな」

「うん、またあした」
ルカリオは、グラウンドに向かう彼らの姿を見送りながら言った。
さてと、サーナイトと約束したベルズ図書館の前に行かないと。ルカリオはベルズ図書館に向かった。



ルカリオが着くと、そこにはすでにサーナイトが待っていた。彼女はルカリオに気づくと駆け寄った。
「ごめん、待たせちゃったな。」

「ううん、いいの。私も今来たところだったから。」

「そうか、ならよかった。」
しばし沈黙が続いた。二人きりでいることなど今までなかったからだ。サーナイトはルカリオと2人きりでいると思うと、口から心臓が飛び出そうだった。ルカリオにバレないようにと、必死で平静を保った。彼は2週間前、突然やってきた。しかも記憶をなくしているという。最初は怪しい人かと思ったが、今ではすっかり学校にもなじんでいるし、自分も信頼している。それは一体誰として?えっと、それは友達としても、好きな人としても。今はまだ片思いだけれども…。

そんなサーナイトは、とうとう沈黙に耐えられなくなり口を開いた。
「ねえルカリオ、話って何?」

ドキドキして聞くサーナイトに対して、ルカリオはそんな思いに気づくはずもなく平坦に答えた。
「ああ、話っていうのはな。こんなこと突然いってもびっくりすだろうけど、エムリットを湖から呼び出してほしいんだ。」

え、とサーナイトは動きを止めた。やっぱりそうだ。ルカリオが自分に告白なんかするわけがなかった。ああ、やっぱり私、心の奥では期待してたんだ。こんなこと思うなんて、バカみたい。彼は結構モテてるし、ルカリオのことを好きな子も結構いると聞いたことがある。ルカリオはやっぱり私のことは、ただの友達としか思っていないんだ…。

サーナイトの様子を見て、ルカリオは自分が言った言葉に彼女は驚いているのだと思った。むろん、サーナイトがルカリオに思いを寄せていることに、彼が気づくはずもなかった。
「突然こんなこといって悪かった。でも…やらなきゃならないんだ。」

サーナイトはルカリオの言葉に顔を上げた。そうだ、こんなこと考えてる場合じゃない。
彼女は気を取り直して、ルカリオに聞いた。
「やらなきゃいけないことって…どういうこと?」

ルカリオは言いにくそうな顔をしたが、サーナイトに話した。昨日の夜、声が聞こえてきたこと。エムリットにあわなければならないこと。

「信じてくれないかもしれないかもしれないけど…」
ルカリオは心配をして、サーナイトを見たが彼女はあっさりと言った。
「それはきっとテレパシーね。エムリットがあなたを呼んだのよ。」

「テレパシー?そんなものが実在するのか?」

「ええ、ちゃんと実在するわ。ただ、使えるポケモンは限られてるけど。」
ところで、とサーナイトは話を続けた。
「エムリットはあなただけを呼んだのね?」

「ああ、そうだ。」

「なら、おそらくあなただけに言うことがあるってことだわ。つまりあなたは一人で行かなきゃならないってことじゃないの?」

そうか、とルカリオは思った。自分はここまで気付かなかった。
「私は湖まで一緒に行くから、そこから先はあなた一人で行かないとね」
サーナイトはそう言った。
もうすぐ夜になる。夕日が沈もうとする中、2人は湖へと向かった。




リア ( 2015/04/17(金) 21:36 )