時を超えた出会い編
八咫烏が告げし天啓
ブラック団サイド


ここはブラック団の基地。深い深い森の中にあるため、誰にも見つかることはないのだ。
奥の部屋では、表のボスであるミュウツーと、幹部のアブソルが話していた。

「アブソル、話とはなんだ?」

「ミュウツー様、私はあなたに命をかけてついてまいります」
アブソルは真剣な顔で、ミュウツーに言った。

「おいおい、突然どうした。話とはそれか?」
ミュウツーは笑いながら聞いた。が、アブソルは真剣な表情を崩さない。

「いいえ、それだけではございません。実は聞きたいことがありまして…」

アブソルの様子を見て、ミュウツーの顔から笑みが消える。

「…なんだ?」

「ミュウツー様はギラティナ様のことをどう思われていますか?」

意外な質問に、ミュウツーは不意をつかれたように感じた。
「ギラティナ様か?私はあの方のことは尊敬しているし、命をかけてついていくつもりだ」
ミュウツーは答えながら思った。今のはたしかに思っている。だが…本心ではない…。

「そうでございますか。ミュウツー様、忙しいところを失礼いたしました」
そう言って部屋から出ていこうとするアブソルをミュウツーは引き止めて言った。

「待て!」
大声に驚いたアブソルは思わず振り返る。
「…なんでしょうか?」

「なぜそのことを聞いた?」

アブソルの瞳にかすかに迷いが浮かび上がるが、ためらいがちに切り出した。
「失礼かもしれませんが…私の思い違いかもしれませんが、ギラティナ様は我々を利用しようとしているように思えてならないのです」

「ギラティナ様は我々を利用しようとしているだと?」
ミュウツーは驚いた。まさか、アブソルまでそのことを思っていたとは。
ミュウツーも最近は少し不信感を抱いていた。昔は、すごく寛大な方だったが、今は部下に対して厳しく暴力的になった。失敗でもしたら大変な事になる。前にヘルガーが2人殺されていた。昔のギラティナ様は命を奪うようなことは決してしなかったが、今は違う。瞳も前より一層禍々しくなった感じがする。
黙ったままのミュウツーを見て、アブソルは思い切って尋ねる。
「ミュウツー様もそう思われたことはあるのでは?」

本当はそう思っていたが、口から出たのは違う言葉だった。
「何を言う!私はギラティナ様に命を救っていただいたのだ。そう思ったことなど、一度もない!」

そう言うミュウツーに対して、アブソルは感情をあらわにして叫ぶ。
「ミュウツー様もご覧になられたでしょう?ギラティナ様がヘルガー2人を、ただの憂さ晴らしに殺したところを!何の罪もない彼らの命を奪ったのです。彼らだけではありません。今までに何十匹の命が奪われてきたのです。簡単に人の命を奪うような方なのですよ!そうとなれば、私たちもいつか殺されるに決まってーー」

「黙れ!」
ミュウツーがたまらず叫んだ。アブソルはビクッとして我に返った。
「申し訳ありません…、つい取り乱してしまいました…。」

ミュウツーは荒い息をつきながらアブソルに言った。
「すまない、私も冷静ではなかった…。もう戻れ、部屋でゆっくり休むといい。私もお前も疲れているようだからな」

「……では失礼いたします」

アブソルはミュウツーに一礼して部屋から出ていこうとしたが、振り返ってミュウツーに言った。
「ミュウツー様、できればこのことは内密にしていただけませんか?」

「ああ、わかっているよ。誰にも言わない」

「ありがとうございます。では、失礼いたします」

アブソルが部屋から出て行った後、ミュウツーも自分の部屋へ戻ろうとした。
そのとき、モニターの電源が付き、マニューラが映った。
「至急、奥の右のへやに集まれ。繰り返す。至急集まれ、緊急ミッションだ。」



マニューラは全員が集まったのを確認すると、ギラティナに声をかけた。
「ギラティナ様、全員揃いました。」

ギラティナはマニューラの声に反応して、頭をあげて話し始めた。
「今から緊急ミッションについて話す。単刀直入に言う。七賢人が動き出した。どうやら例の予言の者が現れたようだ。」

「予言の者…?」

「そうだ、波動の勇者が現れたのだ。ルカリオという若者だ。このまま奴がおれば、予言の通り、我らの目的は果たされなくなる。そこでだ。お前達にルカリオを捕まえてきてほしいのだ」

「捕まえる?殺さないのですか?」

「殺してはダメだ。やつは魔獣の餌にするのだからな。魔獣は生きた獲物しか食べぬ」

疑問に思ったミュウツーは聞いた。
「餌なら誰でもいいのでは?」

「やつは波動の勇者しか喰わぬのだ。魔獣がいなければ、我らの目的は達成されぬ。それに苦しみを与えた方が良かろう」
ギラティナの瞳がギラリと不気味に光る。
ミュウツーはギラティナの様子を見て思った。この人は一体何を考えておられるのか……。

「それと七賢人とポケモン警察には見つからぬように。もし見つかった者がいたら、敵味方関係なく排除せよ!」

「はっ‼」
ブラック団のポケモン達は、一斉に声をあげ、ギラティナに敬礼をした。そしてそれぞれの場所へ戻って行った。
後に残ったのは、アブソルとユキメノコだった。
ギラティナは彼らに命令を下した。
「お前達は奴らと接触を計れ。攻撃はするな。様子を見ろ」

「了解。」
部下たちはそれぞれの仕事へととりかかるため、部屋を出て行った。

部屋に一人残ったギラティナは窓からのぞく月を見上げては、不敵な笑みを浮かべる。かつては反転世界の王との異名を持ち、七賢人の一員として世界の秩序を守るため世界中をかけまわっていた自分も今ではこのざまだ。ここまで来て、今更来た道を振り返るつもりはない。断ち切った友との絆も、あの日の約束も。あのときから自分の志は変わらない。たとえ道中に誰の屍が横たわろうとも関係ない。ただオレは、自分が理想とする世界を作るだけだ。そして後悔させてやる。自分をここまで突き落としたことを。オレを見捨てたことを。

戦の前夜、八咫烏は天啓を告げる。



リア ( 2015/04/17(金) 20:58 )