03
そこは普通の家だった。
くすんだ赤と薄黄色のレンガでできていて、特に目立つ所はない。
能力者達のシェアハウスと知らなかったら、そのまま素通りしているところだ。
ブースターによると、ここはボクと同じ能力者が、共に時間を共有している場所だそうだ。
このブースターにも能力があることを知り、
それは『存在を消す』能力で、
それがあると一時だけはまわりの能力と存在感をかき消すことができる、
という話を聞いたあとだった。
その話をした時にした自己紹介によると、ブースターの名前はリードさんというらしい。
まあ怪しいので本名かはわからないのだが。
「おじゃましまー・・・うわ!」
「・・・エン・・・」
び、び、びっくりした!
なにしろ、玄関でサンダースが寝ていたのだから。
リードさんが頭を押さえながらつぶやいたのは、このサンダースの名前だろうか。
「起きろ、エン!客がきてるんだぞ。」
うん、これが小説じゃなくてよかった。
リードさんがエンさんを蹴り飛ばしている描写なんて書けるはずない。
「う・・・おあ?ああ、ゆっくりして・・・ひゃ!」
本当に小説家じゃなくてよかった。
リードさんがエンさんの腕をあり得ない方向へ曲げる描写なんて(以下略
「うーん、痛いよリード。で、なに話せばいいの?」
あれだけの攻撃を受けながら平然とした顔を保てるとは・・・。
この人大物かもしれない。
リードさんがエンさんを見下ろす。
エンさんはそれから視線を外しながら、話し始めた。
・・・のではなく、その前にエンさんは蹴飛ばされながら室内に案内してくれた。