男のお客さん用
俺は嘘つき。
俺はそれが嫌い。
ばあさんは「そんなことない。それもあんたのいいところだ」などといっていたが、俺はそうは思えない。
俺は嘘つき。でも、ポケモンは大好きだ。
ゲームの中のポケモンだけの前では正直でいられた。だから、ポケモンになったら正直になれるかな、と思う。
〜*〜
「ポケモンになれるって聞いたけど・・・本当だったのか。」
俺は自分の体を眺めた。
手は翼に、足の爪はかぎ爪に、唇は硬いくちばしに。
俺はペラップになっていた。
・・・飛べるかな。
そう思ったとたんわくわくしてきた。
飛べる。俺はペラップなんだから!
翼を広げ、木の枝を蹴る。
・・・まではよかった。
いってえ。・・・落ちたのか。
まぁそんな都合よく行かないか。
そんな事を思った直後の事だった。
「ねえ、ねえ、君、だあれ?」
そう、声をかけてきたのは、プラスルとマイナン。
お、俺以外のポケモンだと!
「あ、ええと、俺は・・・ペラ。」
実名は避けた方がいいかと思った。
ほら、ポケモンって外国名が多いだろ? 俺は純日本な名前だから。
でもさすがにへんだっただろうか。
「へぇー。えっとね、僕はイナ。」
「あたしはラスだよー!」
いいんかい。
・・・イナもラスも中央の文字取っただけだしいいのか、ペラでも。
「そうだ! あのね、僕たち『ほら話』を聞きたいの。」
「そうだよ! みんなに、『ほら話』を聞いてまわってるんだ。」
『ほら話』?
理由を聞くと、
「ほら話がどういう物かわからないから、わかるまで『ほら話』を聞いてまわっている」
らしい。
俺は意味聞けばいいと思うんだが。
ポケモンってほのぼのしてるんだなぁー。俺は思わず笑ってしまった。
ほら話って・・・嘘の話だろ?
嘘を話せばいいんだよな?
だったら得意だ。
俺はにやりと笑った(不気味に見えなかったことを祈る)。
〜*〜
それから俺は話をした。
二匹のウサギポケモンに向かって、一生懸命嘘を言った。
二匹はそれはそれは楽しんでくれ・・・結局ほら話がどういうものなのかはわからなかったみたいだが。
あっというまに時間が過ぎた。
気づけばもう夕暮れだ。
なんとなく、なんとなくだが、お店のおばあさんのいったことが、すこしだけわかった気がした。
それと同時に、イナとラスのことにも気がついた。
意味だけじゃだめなんだ。
『嘘』っていう意味を知っていても、それだけじゃだめなんだ。
ああ、俺、人間として、もうちょっとだけがんばれそうだ。