第一章 嘘つきペラップ
女のお客さん用
私は嘘つき。
私はそれが嫌い。

おばあさんは「そんなことない。それもあんたのいいところだ」などといっていたが、私はそうは思えない。

私は嘘つき。でも、ポケモンは大好きだ。
ゲームの中のポケモンだけの前では正直でいられた。だから、ポケモンになったら正直になれるかな、と思ったんだ。

     〜*〜

「ポケモンになれるって聞いたけど・・・本当だったんだ。」
私は自分の体を眺めた。

手は翼に、足の爪はかぎ爪に、唇は硬いくちばしに。
私はペラップになっていた。

・・・飛べるかな。

そう思ったとたんわくわくしてきた。
飛べる。私はペラップだから!

翼を広げ、木の枝を蹴る。

・・・まではよかった。

いったい・・・落ちちゃった。
まぁそんな都合よく行かないか。

そんな事を思った直後の事だった。

「ねえ、ねえ、君、だあれ?」

そう、声をかけてきたのは、プラスルとマイナン。
わ、私以外のポケモン!

「あ、ええと、私は・・・ペラ。」

実名は避けた方がいいかと思った。
ほら、ポケモンって外国名が多いでしょ。私は純日本な名前だから。
でもさすがにへんだったかな。

「へぇー。えっとね、僕はイナ。」
「あたしはラスだよー!」

いいんかい。
・・・イナもラスも中央の文字取っただけだしいいのか、ペラでも。

「そうだ! あのね、僕たち『ほら話』を聞きたいの。」
「そうだよ! みんなに、『ほら話』を聞いてまわってるんだ。」

『ほら話』?
理由を聞くと、
「ほら話がどういう物かわからないから、わかるまで『ほら話』を聞いてまわっている」
らしい。
私は意味聞けばいいと思うんだけど。
ポケモンってほのぼのしてるなぁー。私は思わず笑ってしまった。

ほら話って・・・嘘の話だよね?
嘘を話せばいいのかな?

だったら得意だ。

私はにやりと笑った(不気味に見えなかったことを祈る)。

     〜*〜

それから私は話をした。
二匹のウサギポケモンに向かって、一生懸命嘘を言った。

二匹はそれはそれは楽しんでくれ・・・結局ほら話がどういうものなのかはわからなかったみたいだけど。

あっというまに時間が過ぎた。
気づけばもう夕暮れ。

なんとなく、なんとなくだけど、お店のおばあさんのいったことが、すこしだけわかった気がした。
それと同時に、イナとラスのことにも気がついた。

意味だけじゃだめなんだ。
『嘘』っていう意味を知っていても、それだけじゃだめなんだ。


ああ、私、人間として、もうちょっとだけがんばれそうだ。


■筆者メッセージ
ここまで読んでくれたかたに感謝です!

=拍手返信=
レイコさん、はじめまして。
拍手もありがとうございます!
( 2014/06/26(木) 16:46 )