新しい人生は新米ポケモントレーナー - 番外編
ジムリの日常:ナギサ編「高みを目指して」

 ハマビシティの浜辺でマコブシが流れ着いてくる。そんなよくある光景を朝の散歩をしながらナギサはぼんやりと考え事をしていた。
(やっぱり弱いなー、私)
 周りのジムリーダーと比較して、どうも見劣りしてしまうと眉尻を下げてしまう。
 元々、ランタの方が強いからと二人で受けたジムリーダー試験も、ランタが最初選ばれたことからどこかナギサの中で劣等感があった。ランタのことは双子の弟だし、それこそ双子ジムリーダーになりたいとずっと思っていたので嫌いではない。でも、双子なのに明らかに弟であるランタの方が優れている事実に、ナギサは自分の無力さを責める。
 他人より勉強をするのも、ランタと並んでも劣らないようにというのがきっかけだった。たしかにランタに劣らないものの、バトルの強さ、才能といったものはランタの方が相変わらず上を行く。
「はあ……」
 嫌な姉だなぁ、とナギサは嘆息する。あまり人前では言えない悩みなのもあって、波打ち際でばちゃばちゃと楽しそうにするトリトドンの背を見ながら軽く伸びをした。
「今日会議だし気持ち切り替えないと……」
 海の様子はあのレグルス団の一件以降、特に目立って荒れた形跡はない。油断は禁物だが、ひとまず海が元の落ち着きを取り戻して、安堵する。

 ふと、まだ人のいない砂浜にぽつんと何かが転がっていることに気づいてナギサはトリトドンと一緒に首を傾げた。
「なんだろ、これ」
 卵型の青いそれは中央に赤いコアがあり、触ってみると柔らかい。

「……卵?」



――――――――


 午前10時。ジムの会議室にてジムトレーナーたちが一同に会し、ナギサはそれを取りまとめるガンエと目を見合わせる。
「はい! 今日は月の一度の定例会議だけど――とりあえずみんな、ご苦労様です! ここ最近ずっとばたばたしてたけどとりあえずは落ち着いたのである程度元のシフトに戻せそうだよ」
 一時期、海でトラブルが発生していた際、ジムトレたちは何名か通常業務とは違う体勢で警備や見回りをしていた。それも今は解除し、元通りの業務に戻ることを告げてからナギサは先端がヒトデマン型になった支持棒を使ってホワイトボードを示した。
「と言っても、レグルス団そのものは捕まっていないので各自不審なものを発見したら報告すること! 特に、先日の事件に関わったこの二人は見つけ次第連絡! 腕に自信がない人もある人もまず連絡! 先走らないように」
 ホワイトボードに張られた男二人の似顔絵をこつこつ叩いてジムトレたちに再三言い聞かせると満足げに「よろしい!」と声を張って似顔絵を剥がした。
「じゃあさっそくジムに関しての会議はじめまーす。何か議題ある人いるー?」
「はい」
 すっと手を上げたガンエにナギサは「はい、ガンエ!」と教師のように呼びかけ言葉を促す。
「ジムの仕掛けですが、不正解のウォータースライダー形式はやめたほうがよいかと」
 その提案を聞いたナギサは驚いたように目を丸くした。
「えー! なんで!」
「いや単純に濡れる必要ないからですよ」
 ガンエのツッコミに一部のジムトレたちがしみじみとした顔で頷いている。というより、せめて先に濡れることを告知してあげろと思っているのだがとりあえずナギサが楽しそうだったのでみな何も言わなかったのだ。
「フウロさんとこのフキヨセジムがオッケーならうちは余裕でしょ!?」
「あれと比較してどうするんですか! ていうかあれよく苦情行きませんよね!」
 仕掛けで強制的にふっ飛ばされる某ジムに比べたらなどとのたまうナギサにガンエは頭を抱える。毎度毎度びしょ濡れになる挑戦者が哀れで仕方ないと。比較対象がまずおかしいことにナギサは気づかない。
「むむむ……だってクイズ形式だけだと地味すぎない? カツラさんところみたいになっちゃうし」
「あれはシンプルでいいジムだと思うのですが」
 そもそも差別化の必要があるのかとガンエは考えるがそこに突っ込んだら野暮だ。
「そもそも、私としては難易度わける必要ないと思うの」
 ラフな格好をした女性が腕を組んで苦言を呈す。話に入ってきた彼女にナギサはショックを受けたように声をあげた。
「えー!? アクアちゃんも導入時は賛成してくれたじゃない!」
「だって私の担当してるところ、誰もこないんだもの!」
 ジムの難易度によってルートが違い、また不正解のトレーナーを待ち構えるジムトレーナーもそれぞれ担当が決まっている。
 古株のガンエの次にジムトレーナーの中でもまとめ役ではあるアクアは深いため息をついて顔を覆う。
「私……まだ一度も挑戦者と戦ったことないのよ……毎日毎日朝砂浜でスナバァやキャモメや野良トレーナーに喧嘩売るしかまともにバトルできないのよっ! ナマコブシ投げすぎて腕の筋肉ついちゃったらどうしてくれるの!?」
「ああ……そういえばアクア、君……むずかしいの最後の問題担当でしたね……」
 ガンエが哀れみすらこもった目でアクアを見つめる。ジムの中でも実力はあるが配置のせいで挑戦者と出会ったことがないのはさすがにかわいそうだ。
「でもアクアちゃん、自分がそこの担当がいいって……」
「そもそも難易度がおかしいわよ! あんな問題、普通のトレーナーがすらすらとけるはずないじゃない! 私はてっきりちょっと応用の問題だと思ってたのにあんな難易度じゃ挑戦者が来るはずないわ!」
「この前のヒロさんは正解してしまったから、せっかく人が来たっていうのに素通りで裏で悔しがってました」
 ナギサに耳打ちし、ガンエがいじけるアクアを見る。配置を変えてあげようと心に決め、ナギサもうーんと悩んだ素振りを見せる。
「そっかぁ……じゃあ色違いはどんな色かとか――」
「ナギサの基準で問題決めてたら難しいの難易度がいつまで経っても受験問題になるって言ってるの!」
「えー」
 問題の難易度を下げることを頑なに認めないナギサにアクアだけでなくガンエも頭痛がしてくる。
「正直かんたんとふつうでクリア者がいますし、むずかしいは廃止でもよいのでは?」
「んー……この件は保留。アクアちゃんは配置変えるとして……問題は据え置きで」
「ナギサちゃん本当にそこは譲りませんよね……」
 呆れつつも、てこでも動かないであろうナギサの方針をこれ以上話しても意味が無いと確信してとりあえず難易度については保留とし、一応の本題である仕掛けの話に戻る。
「もはや子供たちの夏の遊び場みたいになっちゃってますし、一度仕掛けは見直すべきかと」
「子供たちに人気があるのはいいことじゃない?」
 全く気にした様子がなく言うナギサにガンエは本日何度目かわからない胃痛を抑えながらか細い声で言う。
「ですから……ジムは子供だけでなく老若男女が挑むトレーナーの指針です……から……」
「まあガンエの言うこともわかるわよ」
 アクアも同意し、ほかのジムトレたちにも同意を求めるように視線を向けた。
 が、反応が芳しくない。
「正直、理不尽な仕掛けのジムと比べるとうちってまともな気が……」
「ホウエンのルネジムとかあれ結構危ないしなー」
 ジムトレたちがよそのジムの話をするたびに「よそはよそ! うちはうちです!」と言いたくなるガンエだがそんなことで騒いでいたらこのジムでまとめ役はできない。
「ガンエもこう言ってることだし、ほかのジムも少し参考にしてみたら?」
 アクアがそう指摘すると、ナギサは指示棒を肩に乗せて「んー……」と考える素振りを見せた。
「ケイ兄のジムってどんなだっけ」
「あそこはシンプルに敵を選んでいくシステムですよ。必ずジムトレーナーと戦う仕組みですがジムとしての完成度は高いです。修行の場ですからね」
 元々格闘タイプのジムなので戦闘が多いのはナギサとしてもある程度納得がいく。
 何も考えていないだけでは、と言われたらおしまいではあるが。
「リコリス姉のも面白いよね」
「いやあれただのお化け屋敷――」
 それ以上はいけない、とぼそりと呟いた誰かに視線が集まる。ナギサは聞こえなかったのか、肩に乗せた支持棒をとんとんと上下しながら言う。
「ちょっと午後にでもその辺考えるね。というわけでこの話も一旦保留。参考するにしてもすぐにどうこうできる問題でもないし」
 それでも前向きに検討してくれることにガンエは安堵しつつ、胸をなでおろす。とりあえず却下されなかったことがガンエにとっては救いのようだ。
 ナギサがホワイトボードにジムの仕掛けと書いてその横に保留と書き足し、再びジムトレたちに向き直る。
「じゃあ次の議題ある人ー!」
「はい」
 手を上げた男にちょっと驚いたようにナギサは「お?」と小さく声が出る。
「はい、ミライ!」
 ミライと呼ばれたジムトレは少し控えめな声で話題を振ってくる。
「最近、観光客の増加に伴ってゴミの増加と……治安の悪化が住民の間で懸念されてます。元々ここは人の出入りが激しい町ですが、ナギサちゃんがジムリーダーになってから更に増加してるようで」
「あー。やっぱり?」
 ミライはジム内での業務よりも町での地域支援を主に行っており、住民との接点が他よりも深いのだろう。ジムのことと直接関係はないが、治安に関する問題はジムにとっても見過ごせない課題だった。
「正直、先代の頃は観光客を度外視してたけど市場があるから元々人は多かったんだよね。アクアリウムとか観光向けの整備したらもっと増えるとは思ってたけど……」
「想定より早かったと?」
「というよりゆるやかーに増えると思ってたから明確に増えたっていうのはちょっと予想外。先代さん、観光客に厳しい人だったし」
 先代ジムリーダーは排他的というか、観光よりも外部との輸出入や漁などの経済的な面に重点を置いていた人物で、お世辞にも観光客受けは悪かった。悪い人ではないのだが、ちょっと頑固なところがあったのが問題というか。
「うーん……とりあえずすぐにできるのは町の美化運動とジムトレの配置をちょっと町の巡回多めにするくらいかな。あとは観光所の人と相談しないといけないし。治安については元々警戒レベル引き上げの話もるからこのくらいかな」
 すぐに行動に移すことは簡単だが、町のこととなると安易な動きはできない。熟考し、すぐに結果が出なくとも確実に良い方向に転がるようにとナギサは考えていた。

 その後も、いくつか小さな議題をそれぞれ話し合い、一通りホワイトボードが埋まったところでひとまず必要な話し合いは終わった。
「ふむふむ。とりあえずは今日出た議題はあとでまとめておきます。これらの話に関して何かある人は私かガンエに言いに来てね。で、ほとんど終わりなんだけど――」
 ごそごそとホワイトボードの裏に回って何かを持ち出したナギサは会議室のテーブルにそれを置いて全員を見た。

「今朝、これ拾ったんだけどみんな何かわかる?」

 浜辺で拾った青い卵。それを見たジムトレたちは全員首を傾げながら卵とナギサを交互に見る。

 唯一、ガンエは真っ青な顔でひとまとめにしていた書類をばさばさと手から滑らせてナギサの不思議そうな横顔を見ていた。



――――――――


「マナフィの卵かぁ……」
「本物だと思うの?」
 会議後、顔面蒼白のガンエが先代から教えてもらったマナフィの卵の特徴と一致すると言われ、過去の文献をナギサとアクアで探していた。資料庫の奥に、埃をかぶった海の伝説に関する本を探すがなかなか見つからない。
「本物だったらすごくない?」
「すごいはすごいけどもし本物ならどうするの? 幻のポケモンよ」
「…………純粋な知的好奇心なんだけどマナフィって卵から生まれるなら繁殖するよね?」
「あんたはそれ、下心なしに言ってるんだろうけど人によっては誤解を招くから」
 ナギサは苦笑しながら「だって気になるんだもん」と言って本棚の上の方にあるものを引き抜いた。
「あった! これこれ」
「古っ。にしてもガンエ、よくこんなの知ってたわね」
「ガンエは先代さんの頃からいるからね〜」
 日焼けで黄ばんだページをめくりながらマナフィについて書かれたものを探していると海底神殿のことについて記された項目にマナフィのことが書かれていた。
「あ……ほんとだ。蒼玉と呼ばれるマナフィの卵。中央に赤いコアがあり、触れると弾力がある……って」
 資料庫の隅に置いた青い卵をじっと見ると一致した記述に本当に、という気持ちになるがナギサは乾いた笑いで「まさかねー」と本を閉じた。
「とりあえず、浜辺に流れ着いてたし、孵化するまで私が面倒見るよ。万が一本当にマナフィの卵ならそれはそれで素敵だし」
「あんたねぇ……本当に本物なら絶対面倒事に巻き込まれるってのに」
「上等だよ。それくらいの覚悟、ジムリーダーになった時点でとっくにできてるもん」
 卵をそっと抱えて資料庫から出てジムリーダーの部屋へと戻ったナギサは卵が割れたり何かにぶつかったりしないように専用のケースに入れて手持ちであるヌオーに卵を見せる。
「ぬおぬお。今日からしばらくこの子を見ててくれる? 私お仕事あるからずっと見ててあげられないから」
「ぬ〜」
 了解と言いたいのかヌオーは頷いて卵をいれたケースをぎゅっと抱きしめる。
「ありがとう。今日はこれからお出かけするから。何かあったらガンエに言ってね」
 この時、内心ヌオーはガンエこき使いすぎではと思ったのだがまあ実際便利だしと考え何も言わないまま出かけるナギサを見送るのであった。



――――――――



「というわけでケイ兄、よろしくお願いします!」
「何が」
 渋い顔で腕を組んだケイが縁側で茶を飲みながら突然道場を訪れたナギサを見る。
 元々ナギサはケイに護身術等を時々教わったりしていたが今日の来訪は唐突すぎて、ケイも怪訝な顔になっている。
「立派なジムリーダーになるべく! ケイ兄の様子参考にしようかなって」
「お前ジムは?」
「挑戦者きたら連絡くるようになってるしここからならすぐ戻れるから」
 自分が選ばれた理由はそれかとますます渋い顔をするケイ。茶がなくなって手持ち無沙汰のままナギサに呆れた視線を向ける。
「リコリスさんとこでいいだろ。近いし」
「リコ姉は参考にしたらだめってガンエに言われた。せめてケイ兄のところにしとけってアクアちゃんも言ってたし」
「そいつは優秀なジムトレたちだな……」
 本人が聞いたら呪ってきそうなことを呟いたケイは仕方ないとばかりにため息をつく。
「俺は困ったときの便利屋じゃねぇんだぞ……」
「でもケイ兄っていい人だからみんなつい頼っちゃうんだよ」
 嬉しくねぇなぁ……とぼやくケイは奥から茶を持ってきたサワムラーに気づいて少しだけ顔を上げる。
「あ、お茶ありがとー!」
 サワムラーに茶をもらったナギサはほっこりと縁側に座り、完全に見学するまで帰らないことを悟ったケイは面倒そうに頭を掻く。
 するとジムの方から一人道着姿のトレーナーが駆け寄ってきた。
「ケイさん、ジムの方挑戦者が来まし――あ、ナギサちゃん!?」
 ナギサの存在に気づいた男は目の前のケイを無視してナギサの手を取った。
「自分はジムトレーナーのケンガっていいます! ポケッターいつも見てます! 握手してもらっても……」
「ジムトレの自覚を持て馬鹿」
 浮かれたケンガを軽く蹴っ飛ばすと、呆れた顔で頭を掻くケイはジムの方に視線を向ける。
 ナギサはその流れを見て苦笑しながら蹴られたケンガを見ると日常茶飯事であることに気づいてなんとも言えなかった。自分のジムと付き合い方が違うんだなぁと。
「ちょっくら出るか。ケンガ、道場見ててくれ」
「押忍!」
「で、ナギサ。見てぇなら見物してけ。迷惑はかけんなよ」
「やったー! お邪魔しまーす」


 挑戦者は少し時間はかかったものの、ケイまでたどり着いて――負けた。時間にしておよそ10分ほどで全滅。
 ケイが極端に手を抜いたわけでも、挑戦者が強かったわけでもない。ただケイが挑戦者に合わせただけだ。が、ケイも別に負けるつもりはないのか、最終的には挑戦者が成長する気配がないと悟って終わらせにいっていた。
「論外だ。出直してこい。」
 厳しいものの、ケイの戦いは挑戦者のためになるものだったとナギサは思う。これを乗り越えることができる者は強くなれるだろう。逆に、これで挫折したらそれまででしかない。それくらい、ケイの戦いは新人育成に長けている。
(ケイ兄はやっぱり優しいなー)
 面倒だ、などと言いつつも次代を育てることを何よりも重視しているからか、ワコブジムはジムトレーナーたちもストイックな面々が多い。
 自分とは違う。けれど、ナギサにとっても目指す方向が似ている故に憧れた。

 どうしたらあんなに強くなれるんだろう。

 ナギサは、ジムリーダであるにも関わらず、自分の壁を越えられないことに気づきながら先輩であるケイを観察し続けていた。



――――――――


 ワコブジムでケイの見学を終え、夕方になり戻ってきたナギサはジムに戻るなりちょっとばたついた様子のジムトレたちを不思議に思ってアクアに声をかける。
「アクアちゃん、何かあった?」
「あ、おかえりナギサ」
 出迎えたアクアになぜか困ったような顔をされ、ますますわからないと首を傾げる。
「またきたけどあの弟」
「えっ」
 あの弟、と聞いてナギサは顰め面を浮かべて隣の部屋への扉を勢い良くあけるとランタに絡まれているミライの姿が目に入る。それどころか他のジムトレも2人ほど床に倒れている。

「おい、お前。ナギサをジロジロ見てただろ」
「いえ、そのようなことは……」
「しらばっくれてんじゃねーぞ! おら、ネタはあがってんだよぉ!」
 ――カツアゲ現場か何か?
 ナギサは青筋を隠せない引きつった顔でまだこちらの存在に気づかないランタの背を睨む。
「あんたも大変ね」
 アクアが同情しつつも少し笑いながら言う横でナギサは虚無の目で弟を見ていた。
 音もなくランタたちに近寄ったかと思うと関節技を決めてランタの動きを封じた。
「ごめんね〜。ちょっとシメるから片付けお願い〜」
「ナギサ!? いつもどっ」
 ミシミシと危険な音を立てながらランタを絞め上げるナギサ。

 ――私に彼氏ができないのはランタが悪い。

 責任転嫁のようにも聞こえる言い分はこの場においては間違いない事実であり、このランタへの制裁もまた、ナギサに色恋を縁遠くさせるものだとはまだ本人は気づけない。
「彼氏は作りたいけどジムトレの人にまで声かけるほど節操なしじゃないわよ! この馬鹿弟!」
 といっても、今ちょっと気になる相手がいると口にするとまた面倒なことになるのでそこは口にしないでおくナギサである。
「姉貴、折れる、その関節は向きがおかしいやばい無理無理折れ――」



 不吉なゴキッという音がアクアリウムに響き渡り、ナギサのいつも通りの一日を締めくくるのであった。



とぅりりりり ( 2017/12/04(月) 23:23 )