B17 紫離の戦い(超)
[Side Fause]
「…海の藻屑にしてくれるぁっ! 」
「え…」
『やっぱり使ってきたわね…』
そんな気はしてたけど…、ここまで多いと骨が折れそうね。“紫離の祭壇”にたどり着いた私達は、目的の“ビースト”と“月”からの侵入者、それからその他三人と遭遇する。戦闘になることは想定していたけど、私はイレギュラ−の三人の方に戸惑ってしまっていた。後の二人は問題ないけど、残りの一人が、この間喧嘩したばかりの親友。それも出来れば今回の事件には関わってほしくなかったハクリューだったから、尚更…。だから私はすぐにでも逃げてほしかったんだけど、思いに反してまた喧嘩になってしまう。ハクに私の想いが伝わってるのかは分からないけど、あの感じだと多分、伝わってないと思う。原因は私がハクの喉元に“依属の針”を突きつけた、脅迫した、身からだと思う。そもそも話すのも気まずかったって事もあって、自分でも考えられないことを口走ってた、今更後悔しても遅いけど…。
それでこんな事を考えている間に、ターゲットの内の一人、ドククラゲが赤黒い拘束具を作動させる。沢山ある触手全てを目一杯に広げると、どこからか沢山の人達が姿を現す。目が悪くて周りも薄暗いから見えないけど、多分あの人達は、光の灯らない虚ろな目をしていると思う。
「フォス? もしかしてあの鎖て…」
『ええ、この間ジクが使わせてた物と同じだと思うわ』
「やれ! 」
「ガァァァッ! 」
「――っ! 」
「え…エレキボール! 」
やっぱり、悠長に話せる時間なんてなさそうね。呆気にとられてはいたけど、ランターンの姿のミウさんは私に尋ねてくる。彼女はこれで二回目の筈だけど、どんな効果があるのかまでは知らないと思う。一応私は知っているつもりではいるけど、そもそもパラムの時に実際に見た結果論に過ぎない、曖昧な情報。だけどターゲットとの戦闘、ビーストも討伐しないといけないこの状況では、少しでも多く情報が必要なのも確か。だから私は、“ルノウィリア”に潜入し始めた初日の事を話題に出し、知っている限りのことを話そうとした。
だけど相手集団は待ってはくれず、出現したばかりの奴隷達が一斉に動き始める。私に見える限りでは属性が若干偏り気味だから、ここ最近の事件で捕らえられた人達だと思う。沢山いる人達のうち、マグカルゴとジジーロンがなりふり構わず、取り憑かれたように襲いかかってきた。だから私は暗青色の弾丸を、ミウさんは電気を帯びた球体を、驚きながらも同じタイミングで撃ち出した。
「同じてことは…」
『そうよ、“奴属の鎖”で間違いないと思うわ』
「――…! 」
『確証は無いけど、着けられた人の自我を奪って従わせる…』
「シグナルビーム! じ、自我を奪うて…“闇に囚われし者”…」
『野生…。その例えが正しいわ』
この様子だと、ハク達もこの状況を察してきているのかもしれないわね…。発射と同時に前に泳ぎ始めてくれたから、私はミウさんにしがみつく前足に力を込める。さっきの二発の命中を目視で確認してから、私は説明の続きをし始める。左方向に泳ぎ始めてくれた辺りでエネルギーレベルを高め、今度は借り物の装備品で地面タイプになってる目覚めるパワーを発動させる。曖昧な説明しか出来なかったけど、少なくとも“奴属の鎖”の危険性だけは分かってくれた、はず…。光が灯ってる部分に溜めたエネルギーを放ちながら話してくれたけど、少し違ったから、他三人に対しても説明を兼ねて言葉を念じ始めた。
『この人達は元々“エアリシア”と“パラムタウン”の住民だったけど、見ての通り理性というものを完全に奪われてる。毒と水、それから一部の種族以外は放っておいても窒息するけど、野生と思っておいて構わないわ』
「――! 」
後の二人が誰なのかは分からないけど、ハクにならこの説明だけで分かってくれるはずよね? ミウさんだけの時よりも少しトーンを落として、私はハク達三人にも言葉を伝える。“エアリシア”とパラムの事件がどんな風に報じられてるかは分からないけど、喧嘩しているとはいえ嘘を伝える気なんて無い…。だから私は、元住民達に囲まれつつある彼女達を横目に、咥えた“依属の針”にシャドーボールのエネルギーを流し込む。潜入して以来発動しっぱなしのサイコキネシスで刃状に形成してか…。
「市民って…、シルク!それってどうい…」
『ハクリューのあなたが知る必要はないわ』
「フォス…、そこまで言わ…」
『ミウさん、今のうちに“ビースト”の方を何とかしましょ! 』
「え…ええ…」
言いたいことは分かるけど、今は…。私が伝えた言葉の意味が分かったらしく、喧嘩中の親友は囲まれながらも私を問いただしてくる。話してあげたいのは山々だけど、私達の方もそんな暇はなさそう。何故ならドククラゲの側で繋がれている“ビースト”が、とうとう沈黙を破って動き始めたから…。空を飛ぶような感じで毒水の中を泳ぎ、私達の方に単騎で迫ってきた。
だから私は、問いただしてきたハクを一言で黙らせる。その方が彼女たちのためにもなるから、心が痛むけどそうしておく…。一部始終を聞いていたミウさんが何か私に訊こうとしていたけど、今はそれどころじゃないから無理矢理話題を変える。言いくるめるようなかたちになってしまったけど、私は改めて作り出した漆黒の刃を口に構え直した。
「ぅがああぁぁっ! 」
『ミウさん! 右に…! 』
「ええ! フラッシュっ! 」
「“―――、――――”…」
あの技、この環境では厄介ね…。左側に刃が来るように構えたタイミングで、紫色の“ビースト”も攻勢に移る。属性だけしか分かってない状態だけど、ソレさえ分かればどんな技を使えるか…、大体は想像できる。案の定そのうちの一つ、私も一時期使っていたから分かるけど、見た感じ“ビースト”はベノムショックを発動させる。口元にエネルギー体を形成し、正面から泳いでくる私達に向けて解き放ってきた。
コレにいち早く気づいた私は、泳いでくれているミウさんに注意を促す。正面に目を向けてるから表情は分からないけど、多分彼女は小さく頷いてくれたと思う。すると彼女は泳ぐ方向を右に修正し、それと同じタイミングで技を発動させる。姿を変えている種族に備わっている発光器官が熱を帯び始めていたから、私は咄嗟に目を閉じる。同時に解除していた“絆の加護”も発動させ、完全な戦闘態勢を整えた。
「っ! かあぁぁっ! 」
「エレキボールっ! 」
「――! 」
『そのまま突っ込んで! 』
「わかったわ! 」
ドラゴンタイプなら、こっちの方が効くかもしれないわね。相手の目が眩んでいる間に、ミウさんは背後に回り込んでくれる。私も“ビースト”の真横になった位置で首を思いっきりふり、勢いが最大になったとことで咥えていた長い針を放す。同時にその針身自体にも超能力の範囲を広げ、真っ直ぐ標的に向かわせる。ミウさんも波紋状に広がる電気の球体を放ってくれたから、その後に続くよう頼みこんでみた。
「ぅがあぁぁ! 」
「――…ケホッ…っ! 」
うそ…、何でこんな時に…! 私達の連撃でダメージは与えられたけど、今のところ“ビースト”に堪えた様子はない。属性相性を考えるといまいちだからかもしれないけど、目が眩んでいても構わず動いている…。おまけに匂いか気配…、視覚以外の五感で探っているらしく、寸分違わず私達の居場所を突き止めてくる。すぐに私達がいる真後ろに振り返り、さっきと同じベノムショックを撃ち出してきた。
だから私は、それに対応するために別の技を発動させる。“依属の針”は刺さったままだから、私は溜めているエネルギーを電気の属性に変換する。それを瞬時に最大まで高め、ベノムショックが通過するであろう地点を強くイメージする。すると狙い通りの場所にとてつもない電圧の電気が発生…、する予定だったけど、そうはならなかった。何故なら私は急に咳き込み、集中が途切れてしまったから…。それだけじゃなくて、一瞬眩暈もして気を失いそうにもなった。そのせいで命の綱とも言える気泡も潰れてしまい、容赦なく私に猛毒の海水が襲いかかってくる…。無意識に少し飲んでしまったこともあって意識を取り戻せたけど…。
「え…シルクちゃん! くぅっ…! 」
『ミウ…さん! 』
「――…! 」
「…電撃破! 」
今までこんな事なかったのに…。…やっぱり、薬の効果が切れて…。私の設置技…、雷が失敗したせいで、ミウさんに“ビースト”のベノムショックが命中してしまう。私の“抗毒薬”が効いてるはずだから大丈夫だとは思うけど、彼女は苦痛で表情を歪めてしまう。…私自身もこのままだと窒息、それと水圧で押しつぶされてしまうから、慌てて超能力を発動させ直す。気を失う一歩手前までいったから安定しないけど、間一髪呼吸できるだけの気泡は作ることはできた。
「フォス、ほんとに大丈夫? 」
『ちょっと咳き込んだだけだから…平気…』
「ぐるるるぅ…」
「――――っ! 」
大丈夫じゃないけど…、こんな時にミウさんを心配させる訳には…いかない! 流石に私の異常に気づいたらしく、体勢を立て直したミウさんは私に声をかけてくれる。一応こう言葉を伝えはしたけど、潜入するする前にも同じ事があったから、もしかすると通用しないかもしれない。…そもそもミウさんは、このこの世界の“原初”を司っているひと。詳しく聞いた訳じゃないけど、その気になれば他の“チカラ”も使えるはずだし、心を読むことだって出来る。現に今日も、“白坎の祭壇”に向かってくれているクアラ…、テトラちゃんに、一時的に全ての弾丸系の技を使える、っていう“チカラ”を授けてる。ケベッカ…、ルカリオのリオリナさんの怪我も、アルタイルさんと一緒に治していたりもした。
…だけどそんなことを考えるまもなく、“ビースト”はここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくる。今の私達は完全に隙だらけだから、八メートル離れた位置から技を発動させる。暗青色のエネルギーが口元に集まり始めたから、私のあてにならない目で見た限りでは龍の波動だと思う。案の定ブレス状にして吹き出してきたから、私も咄嗟に同じ系統の技で対応する。水中で冷凍ビームを発動させたから、途中で凍り付いて固まり状になるけど…。
『…マズい、けど…、ここで負けてられないわ! 』
相性は良いはずだけど…、このままだと…、負ける…。…あまり頼りたくはなかったけど…、この状況では…、やむを得ないわね…。…フィリア、あなたの力、
借りさせてもらうわね! 「――…っ」
「がぁっ? ぅがあぁぁぁっ! 」
「フォス? 今何をし…」
『朝の日差しで回復。…ミウさん、その姿なら電磁波、使えるわね? 』
「えっええ…」
これでしばらくは…。なら次は…。窮地に立たされた私は、ふと思うことがあって別の親友の姿を強く思い浮かべる。今はラスカに来てるみたいだけど、私は彼女の一部とも言えそうな右耳のイヤリングを通じ、フィリアの事を強く意識する。すると何故か彼女がすぐ側にいてくれているような感覚に包まれ、同時に何とも言えない力が湧き出てくる。冷たくも暖かい彼女の力に身を委ね、毒状態で消耗した体力を回復すべく、遙か会場の空に祈りを捧げた。
その間にも私の氷が功を制したらしく、“ビースト”が初めて苦悶の声をあげる。その間に私も体制を立て直し、同時に攻略する手立てを考える。真っ先に思いついたのは、ミウさんに協力してもらう、って言うこと。これは彼女だから出来ることの筈だから、戸惑ってはいるけどダメ元で頼んでみることにした。
『なら“ビースト”を麻痺状態にして、その間にあのドククラゲの方に向かって! 私が何とかするから…! 』
「わ、分かったわ」
対処するなら…、元をどうにかする方が早いかもしれないわね。“ビースト”が私と親友の氷で取り乱している間に、私はミウさんに作戦を伝える。作戦の意図はあえて伝えなかったけど、これだけしてもらえば私だけで何とか出来る。彼女が頷いてくれるのを確認してから、私はさっきとは別の針…、カチオン性の“誘雷針”を見えない力で取り出す。それのラバーが巻かれた柄の部分を咥え…。
「――、―――! 」
私とミウさんのスレスレ…、丁度“誘雷針”の鋭利な先端が通る位置に雷を落とす。…でもそれだけだと導体の毒水で放電してしまうから、先端にもサイコキネシスで気泡を作る。私が掴まった状態で泳いでくれてるミウさんのスピード、発動から狙った地点に電気が落ちるタイミング、私が作り出した気泡の導電性を考えると、これがベストなはず…。
「…っ…え? 今何し…」
『私に構わず泳ぎ続けて! スピードが大事だから! 』
私の狙い通りに、超高圧の電気が気泡の中に落ちる。空気をかき分けることなく纏わり付いたから衝撃で咥える顎が持ってかれそうになったけど、そこは意地でもこらえる。その衝撃、音も掴まる私を通して伝わったのか、一瞬ミウさんは驚きで声を荒らげる。だけど私は出かかった彼女のセリフを遮り、空気を震わせない声で短く伝えた。
「え…でもそう思うと無ぼ…」
『いいから! 』
「――! 」
ランターンの姿の彼女には耳を貸さず、ただまっすぐにターゲットのドククラゲを見据える。メガネ越しでもろくに働かない私の目算だと、ハク達を襲わせている奴隷達を操るドククラゲまで、あと四十五メートルぐらい。その間に私は、咥えてる針と同じように三種類目の長針を探り出し、気泡に包んで私を追わせる。一瞬だけ針と針を空気の層で繋ぎ、アニオン性の“誘雷針”にも雷を纏わせる。そして…。
『次はあなたの番よ! 』
「なっ…フォス! 異界の魔物を…。貴様何をしたのか分かっているのか! 」
『当然よ! そもそも私達はあなた達の仲間になった覚えなんてない。住む時代が違うとはいえ、同じ“太陽の次元”の侵略に手を貸すだなんて…、死んでもごめんだわ! 』
ターゲットに直接テレパシーで言葉を伝え、注意を私に向けさせる。
「たかが“太陽”のクセに…、魔術で魔物を倒したからといって、図に乗るんじゃねぇっ! 」
「“太陽”“太陽”って…、あなた達“月”は相当に私達を見下しているようね! “空現”の番号が一つ若いからだと思うけど、そのぐらいで私達の事を見下さないでほしいわ! 」
あのミウさんも相当頭にきているらしく抑えながらも思っていることを相手にぶつける。流石にこれに反応しない訳もなく、ドククラゲも私達の方に向かってくる…。
「そうだその通りだ! …なら大人しく死ねぃっ! 」
『臨むところよ! 』
こうなれば、あとは雌雄を決するだけ。“月”を捕らえるのも目的の一つだから、私とミウさんは正面から迎え撃つ。“月”の事を考えると遠距離から雷で攻めるのが良いけど、生憎ここは水中で毒タイプの補正がかかる、もの凄く変則的な環境。ドククラゲ自身も“穢れ”ているから、そもそも特殊技が普通に通るとも限らない。…だからって事で私は、追わせている帯電針を刃物状に変質させ、威勢良く言の葉を連ねる。ミウさんも泳ぐ速度を緩めずに突っ込んでくれているから、私達はターゲットの触手に正面から立ち向かう。
「なっ…」
十メートルの距離で残っている奴隷を向かわせてきたけど、私は何事もなく空気の層でコーティングした雷の刃で切り裂く。囚われているシードラの彼には申し訳ないけど、アニオン種一本分を費やして払いのける。
『“太陽”の意地を…、甘く見ないで! 』
一瞬ターゲットは驚いていたけど、すぐ我に返り、今度は自身の触手を向かわせてくる。五メートルに満たない距離になったところで、ターゲットは一斉に私達を絞め殺そうと全ての触手を向かわせてくる。
…だけど、私がそうはさせない。
「っ
ぐあっぁぁぁ…! うっ腕がぁっ…足が…っ!あぁぁぁぁっ…! 」
『ゴーストにはゴーストを、ドラゴンにはドラゴンを…。“太陽”の諺通りに、“月”のあなた達と同じ事をしただけよ…』
従属させている十本の“誘雷針”を一斉に操り、
蠢く触手の群れを斬る…。“月”の軍人は敵を負傷させて戦力を削ぐことは、パラムの件で調査済。その負傷の程度も、腕を斬り落としたり目を潰したり…、そのぐらいに及ぶことも分かってる。実際に私がパラムの副親方を保護した時、彼女のありとあらゆる骨が粉々に砕かれていた…。そんな獰猛な“月”に惨さを分からせるため…、じゃなくて、そうでもしないと私達が殺られるから、咥えている一本を合わせた計十一本で、ドククラゲの触手を切断していった。
「…っく! フォス…、貴様…! 」
『言った筈よね? 私達の邪魔をするなら…容赦しない、って』
…だけを私は敢えて二本だけを残し、辺りの海水を真っ赤に染めるターゲットの元を通り過ぎる。
『…だけど私も…鬼じゃないわ。“奴属の鎖”の使い方を私に教えて…今すぐそこの“空現の穴”から“月の次元”に帰るか…、私達に捕まって事の全てを話す…。好きな方を選ばせてあげるわ』
ミウさんがどんな反応をしてるかは分からないけど、泳いでくれている彼女はターゲットに向き直る。その間に私は、触手を二本にされたターゲットに、こう交渉を持ちかける。奴隷…、いえ囚われた市民達を解放するためにも、“月”の“奴属の鎖”の扱い方を知るのは必要不可欠。そのためになんとしてでも、敵方のドククラゲから情報を引き出す必要がある。一応ケベッカとクアラ…、それから他の協力者達も同じように動いてくれているけど、自分ですることに越したことはない。
「だからってフォス…、ここまでしなくても…」
『…何も言わないで。私だって…、こんな事はしたくなかったから…』
だけど出来ることなら、敵とはいえ身体の一部を切断するようなことはしたくはなかった。だけど“月”を相手に戦う以上は、同じ方法で対抗しないと
“太陽”が一方的にやられてしまう。私も直接見たから嫌という程分かるけど、あの探検隊ギルドの老舗の“パラムタウン”でさえも刃が立たなかった…。結局親方は保護出来なかったけど、デアナの殺し屋もいたとはいえ、いわゆる戦闘のプロでも…。…その結果が、“パラムタウン”の壊滅…。…だから最初から、“月”のドククラゲを相手する私に、これ以外の対処法はなかった…。
「…“月”が“太陽”に屈しろと言…っ! 」
『残念ね』
「――っ! 」
満身創痍のターゲットが何か言ったけど、私はあまりその内容を聞かな…、聞けなかった。でも交渉決裂って事だけは分かったから、喉元に突きつけている電気の刃を、海面方向に振り上げる。真っ二つに切り裂かないように注意したけど、私はこの結果を確認することなく見えない力で拘束する。すぐに弾くような光景をイメージし、遠く離れた場所に漂う白い渦に向けてターゲットを飛ばす…。
「――、――…っ! 」
「っ? 」
それから自分でも驚くほど淡々と、ミウさんの電磁波で動けない“ビースト”を始末する…。何も考えずに雷と冷凍ビームを発動させ、殲滅対象にトドメを刺した…。
続く……