参肆 今後の予定
あらすじ
“伝下統領会議”が終わっても残った僕は、シロ、“虹”のアークさん、“太陽”のソレイルさんと話し始める。
僕にとっての師匠の事が垣間見えた気がするけど、話が逸れ始めていたから門徒に戻した。
アークさんの提案だけど、ソレイルさんに“陽月の回廊”を通って“月の次元”を見てきてほしいと頼まれる。
僕の事を過大評価してるような気がしたけど、頼まれた以上は成し遂げると心に決めた。
――――
[Side Kinot]
「…シオンちゃん! 」
「うん! やった…、やったよ! 」
シオンちゃん、出来る様になったんだね! 昨日の夕方にトレジャータウンに着いた僕達は、思い思いに時間を過ごしていた。昨日の間…、今もだけど、ししょーは帰ってきてないから、買い物をしたり、ライトさんの仲間で昨日合流したマフォクシーのティルさん達とも話しこんでいた。一緒にセレビィ…、シードさんがいたのには流石にビックリしたけど、シードさんはライトさんに会えて凄くホッとしたような感じだった。
今日のぼくは、久しぶりに遅い時間まで眠っていた。起きた時にはテトラさんだけしか部屋に居なくて、身だしなみを整えてから、一緒に朝ごはんを食べに行った。ぼくが起きるのが遅かったからギリギリだったけど、ティルさんシードさん以外はみんな揃っていた。これは後から聴いた話だけど、その時ティルさん達は早めに食べて探検隊のギルドに行ってたらしい。
そして今ぼく達は町から歩いて行ける場所にある海岸に来てる。シオンちゃんとライトさん、アーシアさんは二回目みたいだけど、そこでシオンちゃんの事を応援しながら過ごしていた。シオンちゃんは朝から空を飛ぶ練習をしてたみたいで、飛び方は違うけどライトさんが直接教えてあげていた。その間にぼくは、アーシアさんからあの本の事を訊いていた。ししょーが関わった事件だからその時に聴いてたけど、やっぱり会いたかった人、異世界から来た人…、シオンちゃんもそうだけど、本には書いてないことまで話してもらえた。
…そしてまだ聴いてる途中だけど、その間に身につける事ができたみたいで、シオンちゃんが凄く嬉しそうに声をあげていた。ふっとそっちの方を見てみると、ライトさんに見てもらいながらだけど、シオンちゃんが一生懸命羽ばたいて、青い空に飛び立った…、ちょうどその瞬間だった。嬉しさのあまり気を抜いちゃって、海に落ちてずぶ濡れになってたけど、パッと明るい表情で声をあげる。ずっと話してたけど、見ていたぼくも思わず駆け寄って、湧き立つシオンちゃんの翼をとって喜びを分かち合った。
「シオンちゃん、よかったですね」
「うん! ライトさん、それにみんなも、ありがとう! 」
「どういたしまして。空中姿勢は安定してるから、もう少し練習すれば完璧に身につけれそうだね」
シオンちゃん、体を動かすのが好き、って言ってたから、明日には完璧に飛べるようになってるかもしれないね。最初から見ていたらしいアーシアさんも、シオンちゃんににっこり笑いかけながらこう言う。アーシアさんはぼくに話してくれながらだったけど、その途中でもシオンちゃんの事を応援し続けていた。そこへ空にいたライトさんが降りてきて、右目でやさしく答える。一番近くでシオンちゃんの事を見ていたから、ぼくには分からないけど、もっといい飛び方についてアドバイスしてあげていた。
「本当に? じゃあもうち…」
「ライトさん、ここにいたんだね〜」
「あっ、ししょー! 」
「ウォルタさん! 」
ししょー、長かったけど“会議”、終わったんですね? ライトさんに対してシオンちゃんが何かを言おうとしてたけど、その途中でどこかから声が聞こえてくる。すぐにししょーだって分かったけど、急だったから少しビックリした。ちょっと疲れてるような顔をしてたけど、いつもどおり大きい翼を羽ばたかせてちゃく…
「ライトさん、久しぶりー! 私の事、誰か分かる? 」
「ワカシャモ…、って事は、ベリーちゃんだね? 」
「そうだよ! 」
「そっか。俺と同い年だから、進化してたんだね」
あれ? この人、誰なんだろう? 砂浜に降りてきたししょーは、誰かを乗せていたらしく背中から降ろしていた。その人は右目を向けているライトさんの言う通り、ワカシャモ、っていう種族だったと思う。その人とライトさん、ティルさんも知り合いらしく、仲良さそうに話しかける。ライトさん達が知ってるって事は、この人も過去の世界の人なのかな、ぼくはそう思った。
「あれ? ライト、この人と知り合いなの? 」
「もしかしてししょー? この人が、ライトさん達がはくれたもう一人の仲間なんですか? 」
「ううん」
ん? テトラさんも知らないの? ししょーが乗せてきたこの人の事は知らないから、ぼくはすぐに訊いてみた。だけどそれはぼくだけじゃなくて、ニンフィアのテトラさんもだったらしい。首を傾げながら、ぼくと同じタイミングでライトさんに訊ねていた。
「ベリーはチーム“悠久の風”の副リーダー。この町の出身で、僕の幼馴染みなんだよ〜」
「えっ、しっ、ししょーのですか? それに“悠久の風”って、“星の停止事件”を解決したチームですよね? 」
「それならわたしも知ってるよ! 未来の世界に行ったり、闇のディアルガと戦ったりしたんだよね? 」
シオンちゃん、この事件の事、知ってるの? ししょーはすぐに、ワカシャモさんの事を教えてくれる。ぼくはライトさん達の方の知り合いかな、って思ってたから、ししょーから言われたことにまたビックリしてしまった。“悠久の風”って言われたら、多分この世界では知らない人がいないぐらい有名なチーム。全部の探検隊のチームの中でも上位一割ぐらいに入るウルトラランクで、草の大陸でを拠点に活動している。ぼくは砂の大陸の出身だけど、それでも知っているぐらい有名。だからぼくは、そんな凄いチームとししょーが知り合い…、それも幼なじみだなんて全然想像できなかった。シオンちゃんが知ってた事にも驚いたけど、ぼくは衝撃が強すぎて何が何だか分からなくなってしまった。
「そうそう。スバメの君が言った事であってるよ」
「ということはウォルタさん? この人がそうなのです? 」
「そういえばアーシアには向こうの諸島で話した子事あったね〜。そうだよ〜」
「って事は、ブラッキーの君が、アーシアちゃんなんだね? 」
「はいですっ! 」
「やっぱりそうだと思ったよ! 私のパートナーも元人間のブラッキーでね、一度会ってみたい、って思ってたんだよ! 」
「そっそうなのですか? 」
「そうなんだよ〜。…あっ、そうだ。キノト? 」
「はっ、はい? 」
なっ、なに? シオンちゃんの一言をきっかけに、ワカシャモのベリーさん、アーシアさん、ししょーの三人が、お互いの事を話し始める。ぼく、テトラさん、ティルさんの三人は話しに乗り遅れちゃってるけど、初めて会うとは思えないぐらい自然な流れで話が進んでいた。そのまま自己紹介とかするのかなー、って思ってたけど、何かを思い出したらしく、ししょーは急にぼくに話しかけてくる。まさか話をふられるなんて思ってなかったから、ぼくは思わず変な声を出してしまった。
「明日の朝、早く出るから〜」
「あっ、朝ですか? 」
「そうだよ〜」
「何か最近の事で呼ばれてるんだよね? 」
「うん。多分キノトも行けると思うから、よろしくね〜」
ぼっ、ぼくも? 何をする予定なのかは話してなかったけど、ししょーは明日の予定を少しだけ教えてくれる。詳しい内容は話してくれなかったけど、いつもこうだからもう慣れてる。だけどぼくが関係してる、そういうのは初めてだから、そこだけはちょっとわからない。遺跡かどこかの調査だとは思うけど、ぼくには全く心当たりがなかった。
「そういう事だけど、シオンさんはどうする〜? 」
「わたし? うーん…、わたしはもう少しここに残ってるよ。完璧に空を飛べるようになりたいしね」
「空、を…? スバメは元々飛べる種族だと思うんだけ…」
「シオンちゃんは私と一緒で、元人間なんです」
「だから、さっきまで飛ぶ練習をしてた、って感じかな? 」
朝からやってたみたいだからね。ししょーはそのままの流れで、シオンちゃんにこの後の事を訊いていた。赤兌の祭壇で会ってからずっと一緒だったけど、シオンちゃんはししょーの弟子じゃあない。だからどうするのか分からないけど、多分シオンちゃんは、もっとうまく飛べるようになりたいんだと思う。だからシオンちゃんは、右の翼でライトさんを示しながらこう言っていた。
それにベリーさんが、不思議そうに首をかしげて呟く。今初めて会うから仕方ないけど、ベリーさんが思った事が、この世界の常識。けどシオンちゃんには言えないから、アーシアさん、ライトさんが揃って教えてあげていた。
「あっ、だからなんだね? 」
「うん。ベリーちゃんはどうするの? 俺達はしばらくトレジャータウンにいるつもりだけど…」
「私? 私はこれからフラットさんの所に行ってから、昼過ぎぐらいにはアクトアタウンでラテ達と合流するつもりだよ」
「アクトアタウンに? …じゃあベリーさん、だったっけ? 私もついて行っていい? 」
「いいけど、きみは…」
「あっ、ごめん。自己紹介がまだだったね。色違いだけど、ニンフィアのテトラ。ライトとティルのチームの一員だよ」
そういえばそんな事、言ってたっけ?
「テトちゃんが行くのなら、私もお願いしてもいいです? ブラッキーのラテさん? にも会ってお話してみたいですから」
「それも良いかもしれないね。わたしも会った事があるけど、ラテ君とアーシアちゃん、話が合うと思うしね。…けど、わたしはここに残るよ。シオンちゃんもだけど、入れ違いになるかもしれないからね」
「ライトが残るんなら、俺もここに居るよ」
って事は、ちょっとしたら分かれる事になるのかな? 何かすんなりと話が進んじゃったけど、みんながこの流れでこれからの事を話し始める。ぼくとししょーは明日の朝、どこかへ行くことになってて、アーシアさん、テトラさん、ベリーさんの三人は今日中にアクトアタウンへ…。残りのシオンちゃん、ライトさん、ティルさんの三人は、トレジャータウンに残ってこのまま過ごすらしい。そこで何をするつもりなのかは分からないけど、ひとまずぼく達は、これから行く場所の事を共有し合った。
――――
[Side Minaduki]
…一時はどうなるかと思ったが、何とかなったな。しかし…、部隊長達は一体どうしたって言うんだ…。“太陽の次元”は野蛮人ばかりじゃないみてぇーだが、これじゃあ襲撃してきたアイツ等と同じじゃねぇーかよ…。
「いいぞ…、いいぞ…! これだ、この力だ! ミナヅキ、爪術師範のお前も…」
いや、いくら・ナー・様でも、ああなるのはゴメンだ。あれじゃあまるでどう猛な獣…。戦力的には飛躍してるみてぇーだが、あれは人とは言えねぇーだろぅ、絶対に…。
「…はい、俺も機会があれば」
…だが俺の身分じゃあ、・ナー・様に意見できねぇよな…。もしそうなったら、俺は…。
続く