弐伍 大所帯で
あらすじ
船でラムルタウンを発った僕達は、船内で雑談に華を咲かせいた。
キノトとシオンさんに一度席を外してもらってから、僕はライトさんの身にあった事を聴いていた。
ある程度話し終えたところで、ライトさんは船酔いしていたらしく、彼女だけ一人で甲板へと出ていった。
独り残された僕も、“心”でシロと話しながら船首の方へ…。
そこで僕は、別の諸島で活動していた時に知り合ったアーシアと再会した。
――――
[Side Kinot]
「…やっと着いたー! 」
「だけどライト? 大丈夫? 」
「うん、何とかね…」
そういえば草の大陸、初めてだったっけ? ラムルタウンから船にのったぼく達は、一度ワイワイタウンで船に乗りかえた。そこでぼく達は行き先を知らされたんだけど、ライトさんとアーシアさん達がいなくても、草の大陸のトレジャータウンに行くつもりだったらしい。ししょーの故郷っていう事は知ってたけど、まさかシオンちゃんも知ってるなんて夢にも思っていなかった。
それでワイワイタウンで船を乗り換えて、三時間ぐらいかけて草の大陸へ…。トレジャータウンにから船は出てないから、そこから近いカピンタウンで降りて歩いていくつもり。ライトさんは船酔いして気分が悪そうだったけど、乗り継ぎの時に酔い止めの薬を買ってたみたいで、今は大丈夫そう。ニンフィアのテトラさんが心配そうに訊いてたけど、それに作ったような笑いで答えていた。
「ゲームで見た事があったけど、こんな感じだったんだね」
「ゲーム…? と言う事は、シオンちゃんもこの世界の住民じゃないのです? 」
「うっ、うん」
「そういえば言ってなかったね〜」
だって会った時、結構バタバタしちゃってたし、その後も結局タイミング逃してたからね…。船旅を終え、カピンタウンの船着き場から出たぼく達は、思い思いの感想を呟く。シオンちゃんは元々いた世界で見た事があるらしく、へぇー、っていう感じで周りの様子に見入っていた。その様子に首を傾げたのは、ぼくがずっと会ってみたかったブラッキーのアーシアさん。ぼくにはそのゲーム、っていうのが何か分からなかったけど、アーシアさんは知っていたらしい。その事でピンと来たみたいで、シオンちゃんの事を言い当てていた。
「アーシアちゃんとはちょっと違うみたいだけど、同じ世界から導かれたんじゃないかな? 」
「そうなの? …って事は、シオンちゃんも人間だったんだね? 」
「うん。まだ二日目で、慣れれてないけど…」
「その気持ち、わかります。人間とポケモンて、結構違いますからね。私も耳とか尻尾を動かせるようになるのになるまで、少しかかりましたから」
ぼくは見た事無いけど、全然違うみたいだからね。テトラさんはアーシアさん…、それからライトさんの仲間だから知ってるみたいだけど、ライトさんが言った事にこう返す。そのままシオンちゃんに、興味ありそうな感じで尋ねる。胸元のヒラヒラでシオンちゃんを指しなら、アーシアさんにも視線を送っていた。
「僕も彼女達からそう聴いてるよ〜。…ええっと、それじゃあ…。ライトさん、後は頼んでもいいかな〜? 」
「そういう話だったしね。いいよ」
「あれ、ししょー? トレジャータウン以外にもどこかに行くんですか? 」
「うん。…臨時で“会議”が招集されてね」
「かっ、“会議”が? ですけどししょー、“会議”ってまだ終わったばかりですよね? 」
四か月に一回って言ってたのに、もうあるんですか? ししょーはライトさんに何かを頼んでいたみたいだけど、それはもしかすると、ぼくとシオンちゃんが甲板にいる時に話していた事なのかもしれない。ししょーはこれだけしか言って無かったから、多分そう。それからししょーはみんなに軽く右の前足を上げて会釈して、そのまま右の方に歩き始める。右の方はトレジャータウンがある方向じゃないと思うから、ぼくは歩き始めたししょーを大声で呼び止める。言ってた事としていることが違うから、ぼくは訳が分からなかった。呼び止めたらすぐに答えてくれたけど…。
「そうだけど、僕も二時間ぐらい前にシロから聴いたばかりで…。ごめん、僕も分からないよ〜。だから…、先に行ってて〜! 」
結構焦ってるみたいで、話しながらウォーグルの姿に変身する。テトラさんは凄くビックリしてたけど、気付かなかったのか、それとも気にしてる時間が無かったのか…。どっちかは分からないけど、全く気にせず大きな翼を広げて飛び立ってしまった。
「何か凄く焦ってたけど…、ウォルタ君って、何かの高い役職だったりするの? 」
「んーと、ウォルタさん、シルクさんと同じ伝説に関わってる、て前に言っていたような気がします」
「シルクと? って事はシアちゃん、ウォルタ君も伝説の当事者ってことだよね? 」
「そうなんです! ぼくは一回しか会った事が無いんですけど、ししょーはレシラムと“心”が重なってるんです」
「れっ、レシラムって、伝説のポケモンだよね? 」
ぼくも初めて聴いた時はビックリしたからなぁー。まだ驚きから立ち直ってないみたいだけど、テトラさんはししょーが飛んで行った方を見上げてから聴いてくる。それにすぐ答えようとしたけど、その前にアーシアさんに先を越されてしまう。向こうの諸島にいた時に聴いたんだと思うけど、アーシアさんは思い出すように話してあげている。話しに出てたシルク、っていう人はししょーのししょーだと思うけど、ぼくは今度こそ、テトラさんの質問に答えてあげるげる事が出来た。勢いよく言ったからびっくりさせちゃったかもしれないけど、ししょーが関わってる伝説の事を知ってるみたいだから、直接この事を教えてあげる。話すタイミングを逃しちゃってたから、シオンちゃんは凄い声を出して驚いてたけど…。
「うん。確か十七代目、って言ってたかな…? ウォルタ君は十七代目の“真実の英雄”でね。その関係で姿を変えられるんだよ」
「って事は…」
「そういう事だよ」
「ゲームと同じかな、って思ったけど、違う事もあるんだね」
「そうみたいです」
それならシオンちゃんの世界では、どんな風に知られてるんだろう? ライトさんは大分略していたけど、それだけでししょーの事が分かったらしい。こうなるとこの時代に来る前から聴いてたのか、それか学校とかで習ってたのか、どっちかは分からないけど納得したような感じで声をあげる。ぼく達の世界だとおとぎ話で小さい時に聴く事だけど、この感じだと違うのかもしれない。シオンちゃんも知っていそうだから、世界が違うとどんな風に知られているんだろう、ぼくは率直にそう思った。
続く