さんのご 戦いの結果
―あらすじ―
参碧の氷原を突破した私達は、最奥部で氷でできた祠を発見する。
その上部の白い渦の様なものにも気づいたけれど、それを確認する間もなく、何者かの奇襲をうけてしまう。
その生き物は私、シリウスさんも一切見た事が無く、筋肉を体現したような出で立ちだった。
襲いかかってきたので応戦したけれど、私達は為す術無く倒されてしまった。
――――
[Side Kyulia]
「・・・・」
……。
「・・・ア」
………っく…。
「キ・・アさ…」
…うぅ…。
「だい――で―? 」
…わたしって…。
「シ―スさん――あてをし―、―じょう――」
どうなったのかしら…?
「そう、で―。…っ―、自分は――のでわかり――」
確か筋肉隆々な怪物と戦っ…。
「…っくぅ…」
「――、キュリア! よかった、無事だったんだね」
そうだ、私達、あの怪物と戦っていて、やられたのよね? それにこの声は…、ランベル? 気を失っていた私は、ふとした事で意識を取り戻す。最初はろくに耳が聞こえなかったけれど、それは徐々に改善されていく。頭でも段々考えられるまで回復してきたという事もあって、感じていなかった痛みが急に襲いかかってきた。痛みで急に意識が覚醒したから分かるようになったけれど、肋とか胸部の辺りを刺されているような感じがしている。すぅー、って息を吸った時が一番痛み、思わず声をあげてしまいそうになる。医者に診てもらわないと分からないけれど、肋の骨が何本か折れてしまっていると思う多分折れた骨が肺には刺さっていないとは思うけれど、折れているから少し吐き気がするような気もしている。まだ目を開けてないから分からないけれど、多分私は少し高い場所に頭を置いて、横向きに寝かされているのだと思う。この頃には耳も完全に聞こえるようになっていて、右耳でだけれど真上からランベルが呼びかけてくれているような気がした。
「…っぅっ…、ええ…。息がしにくいけれど…、何とか…」
やっぱり、息を吸うと痛むわね…。それなら…。ダメ元でもう一度息を吸ってみたけれど、結果は同じ…。肺に空気が入って、膨らむたびに刺すような激痛が襲いかかってくる。それならと言う事で、私は極力肋の骨を動かさなくて済む呼吸方法、腹式呼吸に切り替える。深く長く、お腹の辺りに空気を溜めるようなイメージで息を吸う事で、未だにぼんやりとしている頭にも酸素を送り込む…。その甲斐あって、まだ少し痛むけれど、少しはマシになってきた。だから私は、ここでようやく、ランベルの問いかけに答える事だができた。そのまま私は、ゆっくりと目を開け…。
「えっ、らっ…、ランベル? 痛っ…! 」
えっ、ちょっ、ちょっとランベル? なっ、何してるの? 横に寝されているから右…、上を向いてみると、その先には心配そうに私を見下ろすランベルの顔が…。それも私はランベルに膝枕をしてもらっていたらしく、彼の温もり? が直に伝わってきた。…いやもしかすると、嬉しさと気恥ずかしさで顔が火照ってきているから、かもしれないけれど…。ランベルの顔を見る時にチラッと見えたけれど、腰を下ろしているシリウスさんが、微笑ましそうに私達の様子を見守っていた。急に声をあげたから、肺がチクリと痛んだけれど…。
「きゅっ、キュリア? 大丈夫? 」
「多分、肋を何本かやらかしているわね…」
「キュリアさんはそこ、でしたか…。あれだけ強い技でしたからね…。自分は右の前足が折れてますね」
シリウスさんは、脚を痛めたのね? …そういえば、シリウスさんは前足を殴られていたわね…。私が苦痛で顔を歪めたから、ランベルは切羽詰まったような感じで話しかけてくる。この時にな何とか体も捻って、お腹を上にするような無防備な体勢にしていたので、私自身の重さで圧迫された痛みも抑えられていたけれど…。だから私は、一瞬の痛みがひいてから、ランベルに自分が思っている状況を伝えてあげる。そこへシリウスさんも参加してきたから、目線だけを彼の方に向ける。シリウスさんは私の目が覚める前に手当てしてもらっていたらしく、右の前足には応急用の包帯が巻かれている。硬く巻かれているので分からないけれど、多分その足は鉄の棘とか木の枝みたいな丈夫な物で固定されていると思う。普通なら両足を揃えて座るような姿勢だけれど、右の前足だけは下ろしていなかった。
「…そう、なのね? …そう、そうだ。ランベル? あの怪物はどうなっ…」
「あの筋肉の生き物? それなら、ハクさんとシルクさんが戦ってるよ」
「シルクさん達が? 」
「はい。自分は始めから見てた訳ではないですけど、キュリアさんが倒された直後に着いたみたいです」
…そういえばランベル、素の話し方になってるわね。今気づいたけれど、私が気を失っている間の事を話してくれているランベルは、私と二人でいる時の、いつもの話し方に戻っていた。無意識だったのかどうだったのかは分からないけれど、シルクさんと会ったあたりから、ランベルはずっと私の前でも敬語を使っていた。だから流石にもう、敬語ではなすのは疲れてきたのかもしれない。今も戦闘が起きているらしい向こうの方に目を向けながら、緩い感じで語り通していた。
ランベル、それとシリウスさんに言われるまま目を向けてみると、彼らの言う通り、まだあの化け物は戦い続けていたらしい。何を話しているのかまでは分からないけれど、相当の規模のエネルギーを費やしているらしく、電気技特有の黄色い閃光が遠い一点を照らしていた。ハクさんとシルクさんの十万ボルトだと思うけれど、八十メートルぐらい離れたここでも、毛が逆立ちそうな強さの電気が流れているのが見えているのが分かる気がする。ハクさんとシルクさんの二人で挟み撃ちにしているらしく、一気に攻めている、そんな様に見えた気がした。
――――
[Side Minaduki]
「…ミナヅキ、無事なのはお前だけか」
「…そのようです。辛うじて生きているようですが、軍隊長二人が殺られてしまうとは、俺は思いませんでしたね」
・・ー・様には成り行きで着いて来ちまったけど、まさか奇襲されるとは思わなかったからなぁ…。
「ただ気がかりなのが、“陽月の回廊”で襲撃してきたあの種族、俺はあんな種族は見た事がありません」
ドククラゲの様な気がしなくもねぇーが、あんな透き通ってない筈だしなぁ…。…生物学をやっとけば良かったかもしれねぇーが、生憎俺は史学しか身につけてねぇーからなぁ。
「アレは…」
「グルルル…」
「てっ、敵襲? ・ナー・様、ここは俺…」
「っ…」
「っ! 軍隊長、気付…」
「っああぁぁぁーっ! 」
「なっ、何を…」
「ガァッ? 」
「・ナー・様、これは一体…」
まさか蘇って…。…いや違う。なら何なんだ? 軍隊長の意思で戦ってるようには見えねぇーけど…。
つづく