くのごのいち ひとりがダメでもふたりなら
―あらすじ―
協力者のひとりが行方不明だったテトラちゃんって分かったのもつかの間、私達は新手の奇襲を受けてしまう。
アーシアちゃんが守るで防いでくれたけれど、その相手は二人にとって因縁の相手らしい。
テトラちゃんによると“ルノウィリア”の幹部らしく、彼女は彼に敗れて捕まってしまっていたらしい。
それでリベンジをしたいって思ったらしく、私達は彼女に流されるままにその場を託す事にした。
――――
[Side Third]
『……こういう作戦で行こうと思ってるけど、これでいいかしら? 』
「ウチはかまわへんで」
「ぼくもそれでいいと思います」
「俺もそれで構わない、うん」
「ってことは、ぼく達はシルクさんの合図でコレを飛ばせばいいんですよね? 」
『ええ。・・の事だから多分そうなると思うけど――』
「それなら心配せんでもええと思うで? あの暴君は何をしてでもウチを消そうとするはずやから……」
――――
[Side Tetra]
「
何も言わずにまっすぐ走って! フラッシュ! 」
相変わらず相性は最悪だけど、私が倒さないと意味ないよ! まさかのタイミングで因縁の相手と鉢合わせになった私は、シアちゃんとキュリアさん、ランベルさんの三人に先に進んでもらうために光球を作り出す。無理矢理三人を追い払うような感じになっちゃったけど、そうしてでも私はこの相手……、“ルノウィリア”幹部のリフェリスを倒したい。だから私は、三人の反応を待たずに左右のリボンに作った玉を二発同時に打ち出す。目を瞑ってるから見えないけど、今頃球が爆ぜて閃光が放たれてる頃。その隙に、ギルドの方に向かってくれてるはず……。
「ッ! 閃光弾カ……。ダガアルビノ、貴様一人デ俺に敵ウトデモ思ッテルノカ? 」
「当たり前でしょ? あの時は崩壊に巻き込まれて負けたけど、あんたは私一人で――」
正直に言ってギリギリだったけど……、ここで本音を言ったら気持ちで負けるよね? まだ発光させてるから状況は分からないけど、リフェリスは挑発気味に私に攻めてくる。この感じだと絶対に見下してきてるけど、そんな事で怖じ気づく私じゃない。元の時代で仲間に話術を教わったから、それで私も反撃を仕掛ける。ハッタリでも堂々と言えば十分に武器になるから、私は威勢よ――。
「私もいるから、今はひとりじゃないですっ! 」
「……えっ? 」
威勢よく言い放ったけど、それは予想外の一声に遮られてしまう。時間的に収まってるから目を開けたけど、私は横目でその声の主を思わず二度見してしまう。何故ならそこにいたのは……。
「しっ、シアちゃん? 何で……」
グレイシアの姿の親友、アーシアちゃんがそこにいたから……。彼女は後ろ足だけで立ち上がった状態で、まっすぐキリキザンの方を見据える。すぐにでも動けるように身構えていたから、私は想定外すぎて狼狽えてしまった。
「テトちゃんだけじゃなくて、私にとっても倒したい相手……。ほんとの事言うと色んな種族になれて嬉しいけど、この方にこんな姿にされたから……。だから私も、テトちゃんと一緒に戦いますっ! 」
「シアちゃん……」
そっか……。そういえばシアちゃんも、リフェリスのせいでイーブイに退化させられたんだよね? 何とか彼女に問いかけてみると、シアちゃんは真っ直ぐな……、決心したような声で返事してくれる。答えてくれてハッとしたけど、シアちゃんにとってもリフェリスは因縁の相手。だからシアちゃんも、私と同じで絶対に倒したい、って思ってるんだと思う。
「フッ……、ソコマデシテ貴様モ死ニタイカ。イイダロウ。下等種族の分際デ、二匹マトメテ葬リ去ッテクレル! 」
「テトちゃん! 」
「うっ、うん! 」
本当は私一人で戦うつもりだったけど、こうなったら仕方ないよね? だけどシアちゃんが一緒なら……、いっか。話してる間に視界が回復したのか、リフェリスは荒々しく吐き捨てながらこっちに向かってくる。多分相手の目線からすると、狙いは私……。シアちゃんに言われてやっと我に帰れたから、私はこのタイミングで慌てて気持ちを切り替える。シアちゃんから一歩遅れたけど、このままだと攻撃されるから、私は左に、シアちゃんは右にその場から跳び退いた。
「アルビノ、マズハ貴様カラダ! 」
だけど当然、相手もすぐに軌道を修正してくる。“陽月の穢れ”特有のオーラを纏ってるから、リフェリスは最初から私を殺る気だと思う。手刀をつくってる右手には銀色のオーラを纏わせてるから、ほぼ確実……。
だから私は相手を正面に見据えながら、バックステップで後退……。同時に口元にエネルギーを溜めはじめ――。
「させません! 氷の礫っ! 」
溜めている間に、シアちゃんが即効で援護してくれる。丁度シアちゃんに背中を見せてるような感じだから、そこを狙って氷片を飛ばしてくれる。
「チッ……」
「バブル光線! 」
だけど流石に予想していたらしく、相手は目を向ける事無く左へ跳ぶ。だけど気をそらすつもりで放ってくれたと思うから、多分シアちゃんにとってはこれで成功。この間に私も技の準備ができたから、右斜め後ろに跳び下がってやり過ごしてから、泡の弾幕を張る事に成功した。
「シアちゃん、何でもいいから水タイプの技を使って! 」
「は、はいですっ! 」
今回も使ってくるとは限らないけど、対策しておいて損はないよね? 戦いの真っ只中で暇が無いけど、とりあえず私は親友にこう頼んでみる。私が放った泡の壁が消えるまで殆ど時間が無いけど、シアちゃんなら私の頼みを聞いてくれるはず……。間接的な言い方になっちゃったけど、これだけでシアちゃんはシャワーズに姿を変えてくれると思う。
「悪足掻キノツモリカ? 」
「さぁ、どうだろうね? もう一発バブル光線」
相手のキリキザンは煩わしそうに泡を振り払い始めたから、私は追加で水泡を放出する。“術”を使って防がれてるからダメージは殆ど無いけど、うまくいけばこれで少しは準備ができるはず……。距離をとってるから確認してないけど、多分相手は弾けた飛沫で濡れ始めてると思う。
「水鉄砲っ! 」
「ッ! ダガコノ程度、効カン! 」
「シアちゃん、これで大丈夫です? 」
「うん! ありがとう」
第一段階は成功、かな? 私がバブル光線を発動させてる間に、シアちゃんはちゃんと水タイプの姿に変えてくれてた。多分時間的にあまり溜めれてないと思うけど、丁度相手の真後ろから水のブレスを放ってくれる。流石にここまでは予想してなかったのか、敵幹部は背中にまともにブレスを食らう。相性は良くも悪くも無いけど、そのお陰で相手をずぶ濡れにする事ができた。その状態にしたかったらから、私にとっては十分過ぎる結果になった、かな?
「次は……」
アレを使う番かな? 彼女に短く感謝を伝えながら、私は相手の方に向けて一気に駆け出す。技とかは何も発動させず、代わりにリボンで鞄の中を探る。頭の中で考えた作戦をもう一度確認しながら、目的の物を探り出す。
「マサカ血迷ッタカ? 」
「シルク、早速使わせてもらうよ! 」
今までと違って急接近してる事になるから、相手はここぞとばかりに手刀で斬りかかってくる。間隔があと六メートルぐらいしかないから、このままだと私は最悪の場合体のどこかを切り落とされる事になると思う。……だけどこれも私の作戦。さっき探り出した青白い種を右のリボンに持ち替え……。
「くっ……! 」
敵の目の前で右に跳び退く。同時にリボンで掴んでいた種……、シルクのオリジナルの“氷結の種”をその場に置き去りにする。タイミングが少しズレて左目の下が浅く切れたけど……。
「ッナッ? 」
だけど無事じゃないのは、相手も同じ。私が置き去りにした種を一刀両断することになったから、その衝撃で種の効果が発揮する。シルクが説明してくれた効果によると、潰れたり裂けたりすると、その部分の温度が急激に下がるらしい。だからさっきのシアちゃんの攻撃で濡れてるから、その部分が凍りつき始める。狙いの右手じゃないから狙いは外れたけど、左腕の自由は利かなくなったはず……。もしそうじゃなくても、ずぶ濡れになってるから“パラムタウン”でシアちゃんに盛った毒も洗い流されてると思う。
「電光石火……からのアイアンテールっ! 」
更に私と入れ替わるように、シアちゃんが追撃を仕掛けてくれる。元々どれくらい距離があったかは分からないけど、素早い動きで距離を一気に詰める。助走をつけて跳び上がり、シャワーズ特有の長い尻尾で思いっきり相手の頭を叩き落としてくれた。
「ッアァッ! 無駄ナ小細ヲ……」
「エレキボール! その小細工に翻弄されてるのはどこの誰? 」
「グゥッ……ッ! 」
浅いって思ったけど、案外深くいってるかも……。ここで私はシアちゃんが退く時間を稼ぐために、左右のリボンに電気の球体をつくり出す。左、右の順番に撃ち出し、シアちゃんに叩かれた関係で前のめりになってる相手に命中させる。悪、鋼タイプに電気技だけど、そもそも相手……、だけじゃなくて私達も濡れてるから電気が通りやすくなってる。だから流石にこの攻撃はかなり効いたらしい。シアちゃんは特性の効果で、濡れたときに回復してると思うけど……。
「て、テトちゃん! 血が――」
「このぐらい平気。それよりもシアちゃん、ブースターの姿になって」
「で、ですけど――」
「ここから一気に……攻めるよ! 」
「は、はいです」
シルクから借りてるコレが使えるから、シアちゃんに丁度いいよね? 切れたところがヒリヒリしてきたけど、構わず私は次の作戦に移る。シアちゃんが心配そうに話しかけくれてるけど、できれば敵が怯んでるこのチャンスを生かしたい。だから彼女の言葉を遮る事になっちゃったけど、次の作戦を彼女に伝える。多分半信半疑だと思うけど姿を変えてくれたから……。
「目覚める……パワー! 」
左右のリボン、それから口元にも赤い球体をつくり出す。元々の私の属性は分からないけど、今はシルクから借りてる“変色のブレスレット”で炎タイプになってる。だから狙うのは有利なキリキザンじゃなくて、味方のブースター。確かブースターの時はニトロチャージを使ってたと思うから、これが命中すればシアちゃんの技を強化することができる。
「っ? 」
ちゃんと当たった見届けずに、私は相手をシアちゃんとの間で挟むような位置を陣取る。
「シアちゃん、これで決めるよ! 」
「てことは……」
短い言葉で指示し……。
「目を瞑って! フラッシュ! 」
念のため相手の視界を奪う。目を瞑ったまま真っ直ぐ走り……。
「……ギガインパクト! 」
ありったけの力を込めて相手に突っ込む。
「ニトロチャージっ! 」
反対側のシアちゃんも、全く同じタイミングで炎を纏って走ってくれてるはず……。そう信じて四肢で地面を蹴り……。
「これで」
「最後ですっ! 」
視界を奪われている相手を技で挟み込む。
「うぅっ……」
「くぅっ……」
技と技が敵を挟んでぶつかり合ってる事になるから、私達自身にも物凄い衝撃が襲いかかてっくる。だけどそれ以上に、真ん中で挟まれたキリキザンは……。
「ッァァッ……! 」
私達とは比べものにならないぐらいのダメージが入ってると思う。
「……コノ俺ガ……下等……種……族、アルビノ……如キ……ニ――」
反動で私達も派手に弾かれたけど、その間にも敵幹部は耐えきれずに崩れ落ちたらしい。
「……テトちゃん……これって……」
「倒せた……みたいだね……」
出血と衝撃でクラクラしてきたけど、そのせいで私は因縁の相手に勝ったって知るのに時間がかかってしまった。
つづく