くのさんのさん 制限無き戦い
―あらすじ―
遭遇した“ルノウィリア”の方と対峙する私達は、急に発動された熱風で分断されてしまう。
私はフードを深く被った人と一緒に戦う事になったのですけど、どうしてもその方と行方不明になっている友達と被ってしまいます。
それにその方は技を四種類以上使っていたので、彼女も“導かれし者”かもしれない、て思ってしまいます。
ですけどその考えは良い意味で裏切られ、私は引き続き二千年代の友達、ニンフィアのテトちゃんと戦い始めました。
――――
[Side Hyulshira]
『えっ、A1のシリウスです』
「B1のヒュルシラ。シリウス君、凄く焦ってるみたいだけど、何かあったー? 」
『はい…。今“リナリテア邸”の前にいるんですけど…』
「サーチしてモニタリングしてるから知ってるよ? …だけどハクちゃ…」
『大至急救援をお願いします! 』
「きゅっ、救援? 」
『はい! 手の空いてるG班だけでなくて、S班も何組かお願いします! 』
「…話は聞いたわ。そう思うとシリウスさん、“奴属の鎖”を着けられた市民もいるのね」
『それだけでなくて、“ルノウィリア”の幹部と、他何十人もいます』
「結構深刻みたいだねー…。分かったよ。じゃあすぐに知らせておくよ」
『お願いします! 』
――――
[Side Archia]
「…テトちゃん」
「…うん! シアちゃん」
「いくよ! 」
「はいですっ! 」
凄くビックリしたけど、テトちゃんと一緒なら…! 一緒に戦っていた方が行方不明になってたニンフィア…、シアちゃんて分かったから、私は凄く驚いた。本当はお話ししたり聞きたい事があるのですけど、今はそうも言ってられなさそう。声を掛け合って気持ちを切り替えながら、敵の二人の方に目を向ける。
「作戦会議は済んだようね? 燕返し! 」
「あんた達もそうみたいだね。…っ氷の礫! 」
「アイアンテールっ! 」
バルジーナさんの方は、普通に戦えば良さそうですね。相手の方も行動し始めたので、私達もそれに合わせて動き始める。高いところから急降下してくるあの構えは、多分必中技の燕返し…。私は先にエネルギーを溜めて尻尾を硬質化させ始めちゃったのですけど、その代わりに私の前に跳び出したシアちゃんが迎え撃ってくれる。何故に使えるのかは訊けてないのですけど、テトちゃんは即行で口元にエネルギーを溜め、先制技の氷塊を飛ばしてくれる。私もグレイシアの時はこの技を使うのですけど、溜めから撃ち出すまでの間隔が短いから、私は結構使いやすいです。…だけど流石にそれでも限界があるみたいで、ほんの少しの差で翼の攻撃を受けてしまっていた。咄嗟に私が尻尾で弾いて、追撃されないようには出来ましたけど…。
「おおっと、まさか俺を忘れた訳じゃねぇよな? 」
「敵を忘れるだなんて、雇われの兵士じゃないんだからする訳ないでしょ? 目覚めるパワー! 」
技を使わない、てことは…、アギルダーさんは“月の次元”の方ですね? 私は体を捻ってバルジーナさんを弾き飛ばしたのですけど、その間にアギルダーさんに距離を詰められてしまった。…けれどその代わりにテトちゃんが迎え撃ってくれて、いつの間にかパーカーから出していたリボンの先に赤い球体を作り出す。それを放たずに、手刀で斬りかかってきたアギルダーさんにそのまま叩きつける。
「ちっ…。っお前は少々厄か…」
「ニトロチャージっ! 」
「ぐぁっ…っつぅっ! 」
「厄介でも何でも、私達は負ける訳にはいかないんですっ! 」
今度は入れ替わるようにして私が前に出て、テトちゃんと相打ちになっているアギルダーさんを狙う。回り込むように走りながらエネルギーを溜め、炎の属性に変換してから体に纏わせる。自分の技だから熱くはないのですけど、加減しなかったから…、結構熱かったかもしれません。
「ブースターに突っ込んでくなんて…、あんたは相当頭が…おめでたいようね? ブレイブ…バード! 」
「それはあんたも同じじゃない? エレキボール! 」
「くぅっ…! 」
「シアちゃん! 」
「はいっ! 」
素早さが強化されてるはずだから…。
「アシストパワーっ! 」
これでいけそうですね? 攻められて投げやりになったのかもしれないですけど、バルジーナさんは捨て身でシアちゃんに向けて急降下…。だけどそれに対して狙われた彼女は、全然慌てずに電気の球体を作り出す。これも私がニトロチャージで攻撃している間に溜めていたみたいで、私の効果が切れたタイミングで撃ち出していた。これが不意を突いたみたいで打ち落とされていたから、テトちゃんはその隙に私に合図を送ってくれる。一瞬どの技で攻撃しようか迷ったのですけど、私は敢えて…、強く念じた気をバルジーナさんの真下に送り込み、気柱として思いっきり突き上げる。
「…あんた達…、一体…何なのよ…。ニンフィアなのに…エレキボールだなんて…」 「さぁ、何でだろうね? 」
何回か発動していたてこともあって、バルジーナさんはこれで意識を手放してし…。
「エレキだか何だかしらねぇが背中がガラ空きだぜ? 」
「ま、守る! っくぅっ…! 」
「フラッシュ! 」
「っ! 」
やっぱり物理攻撃は…、相性が悪いですね…。また私は相手に背中をとられてしまったのですけど、今度は何とか対応する事が出来ました。咄嗟にエネルギーを活性化させ、緑のシールドとして周りに張り巡らせる。…けれどアギルダーさんが手刀で斬りかかってきたてこともあって、私の特殊技に特化した障壁は音をあげて簡単に崩れ落ちてしまう。破られた反動でのけ反ってしまったのですけど、テトちゃんが眩しい閃光放ってくれたので、追撃される事だけは避けられました。
「シアちゃん、無事? 」
「うん。テトちゃんも、ありがと」
「どういたしまして。…じゃあシアちゃん、何か降ってきたけど、気を取り直していくよ! 」
「うんっ! 」
雪が降ってきたて事は…、キュリアさんが氷タイプになったのかな? 私の隙をカバーしてくれたテトちゃんは、こんな風に声をかけてくれる。私は咄嗟に目をつむったので何とかなったのですけど、見た感じアギルダーさんはフェアリータイプの閃光を直視してしまったのかも知れない。この間に私は体勢を立て直し、テトちゃんにお礼を一言…。言った後で何か冷たいものが当たったのですけど、テトちゃんは気にせず声をあげる。なので私はテトちゃんに対して大きく頷きながら…。
「……」
「…シアちゃん? 」
左腕に着けているブレスレットにエネルギーを流し込む。集中するために目を閉じているのですけど、それでもシアちゃんがビックリしているのが分かる気がする。テトちゃんは初めて見るはずですけど、リアンさんに作ってもらった“変色のブレスレット”の効果で私は光に包まれる。同時に炎タイプとして高かった体温が急に下がり、属性そのものも変化する…。
「テトちゃん! 」
「えっ…、うっ、うん! 」
「氷の礫っ! 」
「氷の礫! 」
私がエネルギーを送り込んだのは、氷の属性の“氷華の純石”。だから私の姿も、ブースターからグレイシアに変わる。アギルダーさんが相手ならブースターのままでも良かったのですけど、ブラッキー以外ならこっちの方がしっくりくる気がします。それとこれは前にフィリアさんから聞いたのですけど、グレイシアていう種族は雪の中だと攻撃をかわしやすなるらしいです。…と、とにかく私はすぐに二足で立った手元に氷の塊を作り出し、すぐにそれをアギルダーさんに向けて撃ち出しました。
「…閃光弾。まさかそんな物を…隠し持っていたとはな…」
「切り札じゃなくても、使える手段はすぐに出す物じゃないでしょ? 」
目が完全に眩んでいたらしく、私とテトちゃん、合わせて五つの氷塊全てが命中。効果は抜群なので、これまでにこうできていたという事もあって倒す事が出来ました。
「…だけどシアちゃ? もしかして姿変えれるのも、“導かれし者”の“チカラ”だったりするの? 」
「ううん。リアンさん、という方に作ってもらったのですけど、このブレスレットで変えれるんです。そういえばテトちゃんも、何で氷の礫とか…、色んな技を使えるのです? 」
「一時的に“チカラ”を授けてもらった、って感じかな? ミウさんってい…」
「クアラ! 何か凄く光ってたけど何かあった? 」
え…今ミウさんて言って…。テトちゃんに訊かれたからブレスレットの事を教えたのですけど、私も訊きたい事があったから逆質問する。テトちゃんの種族は使えないはずなのに氷の礫とか…、他にも合わせて四つ以上の技を使っていたので、そのことを訊いてみました。けれど返ってきた答えは、私が予想していた以上の事でした。まさか“DM事件”の時にお世話になった方の名ま…。
「私の技だから、大丈夫だよ。ケベッカの方は? 」
「アタイも問題なし。若干左手が痺れてるけどこのぐらいならどうって事ないわ」
痺れてるて…、麻痺状態か何かになってしまったのでしょうか…? テトちゃんも話してくれはいたけれど、別の所で戦っていたルカリオさんに遮られてしまう。多分テトちゃんのフラッシュが目に入って駆けつけてくれたのだと思いますけど、無問題で終わったかもしれませんね…。それでそのことをテトちゃんが答えたら、ルカリオさんは一瞬ホッとした表情を見せてくれる。それからルカリオさん自身の事も話してくれたのですけど、私が聞いた感じでは…、無傷ではなさそうですね…。
「それって本当に大丈夫な…」
『B1のヒュルシラ。S班に緊急通達だけど、A1から救援要請が入った…。だからギルドから遠くにいるS2、S3はA1がいる“リナリテア邸”に向かってくれるかなー? 』
「きゅっ、救援ですか? 」
A1て…、シリウスさん達の班ですよね? 救援て事は、何かあったのでしょうか…?
「…シアちゃん、何かあったの? “リナリテア邸”が何とか、って聞こえたけど…」
「そ…そです。私達の本部経由で連絡が入ったのですけど、シリウスさん達に何かあったみたいでして…」
「しっシリウスに? グレイシアのあんたそれ本当? 」
「はいです…。まだ何があったのかは分からないのですけど…」
「シリウスさん達が助けてほしいって…、ただ事じゃないよね? 」
「そっそうよ! ハクとシリウスに限ってやられるなんて事ないと思うけど本当にその通りよ! けどアタイ達の任務は捕らわれた市民の解放だから…」
「ケベッカ、行ってあげて? ハクさんとシリウスさんは大切な人なんでしょ? 」
「だけどそれだとクアラだけで…」
「私はこの三人と行動するするつもりだから大丈夫。だから、ねっ? 」
「クアラ…恩に着るわ」
「こう言う時だからこそ、でしょ。だからケベッカ、シリウスさん達に私も無事、って言っておいて。私もサードさん達に伝えるから」
「ええ! クアラも…頼んだわ」
「うん! 」
これってもしかして…、ルカリオさんはシリウスさん達の知り合い? それも結構近い関係なのかもしれませんね…。シリウスさん達、無事だと良いですけど…。
つづく