Eighth-Sixth パートナーの後を追って
―あらすじ―
ダンジョン化した実家でシルク達に追いついたウチは、乱入したモンスターハウスでの戦闘を終える。
来ないでほしいって言われとったでそれを訊かれるんかと思っとったけど、ウチの予想に反して親友の彼女に感謝される。
そんでふとしたことがきっかけで、ウチは彼女の本心を知ることになる。
ウチも本音で話せて仲直りできたけど、彼女の状態に言葉を失ってしまった。
――――
[Side Unknown]
……
…………
………………あれ?
真っ白で何も見えないけど、ここはどこなんだろう?
確か私って、“エアリシア”のギルドの前で戦ってたはずだよね?
それで敵の何人かに集中攻撃されて……、それからどうなったんだっけ?
……うーん、全然思い出せ――
『――、――える? 』
……ん、誰?
誰かここにいるの?
『――ん、――えてるよね? 』
うっ、うん。
最初は途切れ途切れだったけど、今は少しずつ聞こえてきてるよ。
『――った。初めて使ったか――配だったけど、――安心し――よ』
はっ、初めてだったの?
じゃあここって、何なの?
きみの声は聞こえるのに、姿は見えないんだけど……。
『私の“チカラ”……“
志半倒断”って言うんだけど、それで何とか繋ぎ止めてる状態だからね』
繋ぎ止めてる?
繋ぎ止めてるって、何と?
『ええっと、凄く言いづらいんだけど……、心して聞いて? 』
うっ、うん。
『・リーさんってギルドの前で戦ってたのは覚えてる? 』
うん。
一斉に攻撃されてピンチになった、ってぐらいしか覚えてないけど……。
『そっか……、やっぱりそこまでしか覚えてないんだね。……ベ・ーさん、・・ーさんはその時に“穢れ”た・イ・・ーにやられて……』
やられて……、どうなったの?
『やられて……、ベ・・さんは……、攻撃を受けた場所が悪くて……、死んじゃって……』
ええっ?
うっ、嘘でしょ?
死んだなんて!
『残念だけど、本当なんだよ……。……だけどまだ完全に死んだんじゃなくて、私の“チカラ”を使ってギリギリでこの世に留めてる状態。だけど死後硬直が始まるまでの短い時間が限界かな』
……。
『それで・リ・さんに聞きたいんだけど、もし生き返る事ができるよ、って言われたら生き返りたい? 』
そっ、そんなことができるの?
『うん。一代で一回だけね。……で、どうする? 』
そんなの決まってるでしょ?
生き返りたいよ!
『なら決まりだね。……だけどいくつか注意してほしいことがあって……。厳密には完全に生き返るんじゃなくて、私と一つの命を共有することになる。言い換えると、倒れかかってる・・−さんを私が全身で支えるみたいな感じかな? 』
きみが、私と……?
『うん。……これだけ強力な“チカラ”だから“代償”も大きいんだけど、私とベ・ーさんの命をつなげる代わりに、私は三つ、ベリーさんは一つの技が十年間封印される。それから私達二人で一つの命を使うことになるから、お互いが六百メートル以上離れると、支えが無くなって二人とも死ぬ。……もう一回訊くけど、それでも生き返りたい? 』
……うん。
『分かったよ。……で、これで最後なんだけど、私達が目覚めるのは今日から十日後。その頃には“ルノウィリア”の事件は全部解決してると思う』
十日も?
ってことは、私と・
・ト・アさんはそれまで眠り続けることになるんだね?
『そういうこと。……じゃあベリーさん、十日後に会おうね』
うん!
シャトレアさんも、ありがとう。
『ベリーさんもね』
――――
[Side Silius]
「……
ミナヅキさん、まだいけますか? 」
「俺は問題ない。シリウスこそ、バテたりしてねぇーよな? 」
体力がもつか心配でしたけど、案外動けていそうですね。あれからどのぐらい時間が経ったのか分かりませんが、スパーダやライトさん達、他の班の皆さんが駆けつけてくださっても、戦況は全く変わっていません。こちらはウルトラランク以上の十数人に対して、あちらは数で押して来ている状態。何人倒してもすぐに“奴属の鎖”で追加されてしまっているので、膠着状態が続いてしまっています。
それで距離を詰めてきていた二、三人を角で切り裂きながら、自分はミナヅキさんの様子を伺います。自分が見た限りでは息が上がっていますが、身のこなしとかに鈍りは出てないように見えます。戦闘前にミナヅキさんは戦い慣れてない、と言っていましたけど、もしかしたら元の世界で鍛えていたのかもしれないですね。同じ考古学者の、ウォルタ君基準で考えるとですが……。
「
このぐらいで動けなくなる自分ではないですよ。……鎌鼬。ミナヅキさん」
「ん、なんだ? 」
このままだと埒が明かないですね……。当たり所がよかったらしく、自分の一撃で向かってきた二、三人は崩れ落ちる。横目で確認してみると、ミナヅキさんも“爪術”で浅く切り裂いているところでした。なので自分はこのタイミングで、空気の刃を飛ばしてから彼に声をかけてみます。なのでミナヅキさんはおそらく、首を傾げながら聞き返してくれます。
「
このままだと追いつけなくなりますから、強行突破しましょう」
「相手にしないと言うわけだな」
今はこうして“ルノウィリア”の方と交戦していますが、そもそもここには事件の首謀者を捕まえるために来ています。ですので朝計画した内容からは、かなり遅れていることになります。おまけに先に行ったハクは、一人だけで首謀者二人と交戦することになります。ですので一秒でも早く彼女に追いつくに越したことはないでしょう。
「
その通りです! では、いきましょいう」
「ああ」
そういうこともあり、自分は彼に呼びかけてから走り始めます。戦闘の騒音に紛れて足音も聞こえているので、ミナヅキさんは自分の後をついてきてくれているはずです。
「そうはさせるか! 」
「アイツらを逃がすな! 」
ですがタダで通してくださるはずも無く、ハクの実家の門前に何人かが立ちはだかります。
「
止まるわけにはいかないので、ここで倒れていただきます! 悪の波動! 」
なので自分は即効でエネルギーレベルを高め、波紋状にして解き放ちます。
「隊長から聞いてたけど、ミナヅキ、おまえは何をし――」
「目覚めるパワー。あぁ、よく分かってるつもりだ」
ミナヅキさんも銀色の球体を何発か放ち、自分の援護をしてくれました。
「だがシリウス。隊長のお前が離れてよかったのか? 」
彼の援護もあって、自分たちは何とか敵の包囲網を突破します。結果的にこちら側の戦力が減ることになりますが、こちらには実力者がそろっているので心配はしていません。何より同期のスパーダがいますし、ティル君や自分と同じくメガ進化しているライトさんも駆けつけてくれています。
「
それなら心配ないです。スパーダはもちろんですが、ライトさんとティル君……、ラティアスとマフォクシーもかなりの実力者です。なので自分がいなくても、あの場は何とかしてくれます」
「信頼、してるんだな」
それで戦場からハクの実家の庭に抜けることができたので、自分はひとまず一息つきます。しかし依然として的中の真っ只中なので、警戒だけは緩めずに、ですが……。
自分自身ハクの実家に来るのは初めてなのですが、さすが貴族の館といった感じです。豪華な造りで広さもかなりあり、整備されていて見応えがあります。門から玄関までの中間ぐらいには大きな噴水があり、もし稼働していたら盛大な水柱が自分たちを出迎えてくれていたことでしょう。
「
はい。……ミナヅキさん、息を整えたらすぐに向かいましょう」
「ああ。あのハクリューを追うんだよな? 」
「
そうです。ミナヅキさんにはまだ分からないと思いますが、屋敷の中はおそらくダンジョンk化しています。ですので戦い続ける事に変わりないでしょう。ですが屋敷の中でも、相手とは戦わずに奥を目指します」
「予定より遅れているからだよな? 」
「
そうなりますね。……ミナヅキさん」
「休めたか、だよな? 俺のことは心配するな。それより早くあいつに追いつきたいんだろう? だから俺は今すぐに向かって構わない」
「
ありがとうございます。では、行きましょうか」
「あぁ」
つづく……