Eight-Fourth 門前の戦場に集いし者達
―あらすじ―
ハクの後を追う自分は、その道中でミナヅキさんに目覚めるパワーを伝授します。
身につけてもらえたので、自分達はいつしか雑談を始めてしまっていました。
彼と話し込んでいるうちにハクの実家の前に着いたのですが、例の“ルノウィリア”の方が待ち構えていました。
その人はミナヅキさんの知り合いらしいのですが、彼が呼び出した軍勢に自分は呆然としてしまいました。
――――
[Side Quevecca]
「はぁ…はぁ…神速! 」
「っくぅっ! 」
クアラには悪い事したけど…。
「火炎ほ…」
「ボーンラッシュ! 」
何でこんな時に…。
「っぐあぁ…っ! 」
「威力でダメなら数で…」
「あんた達の相手してる暇なんて…ないのよ! 神速! 」
作戦内容に反してるのは分かってる。…分かってるけどそうでもしないとハクが…シリウスが…!
「っあぁっ! 」
一分でも…一秒でも…早く…!
――――
[Side Silius]
「影分身…。悪の波動! 」
「ッ! 」
「覚悟はしていたがこの数…キリがねぇな…」
「ッガァッ? 」
救援依頼は出しましたけど…、来るまで持ちこたえられるでしょうか…? ミナヅキさんの知り合いと対峙しているのですが、自分達は開始早々危機的な状況に陥ってしまいます。どこに隠れていたのかは全く分かりませんが、今の自分達は前後左右…、全方向を大勢の敵に囲まれてしまっています。パッと目につくだけでその数、およそ五十以上…。“ルノウィリア”の組員もいるようですが、自我の無い…、赤黒い鎖で繋がれた方が殆どなので、見境無く攻撃されている状態が続いてしまっています。
その中で自分は、分身に戦わせている間に本部への救援要請。G班だけでなくS班の方にも頼んだので、こちらもそれなりの数が揃うはずです。…ですがどちらもこことは反対方向に向かう事になっているので、早くても二、三十分後ぐらいになってしまうかも知れません。今はミナヅキさんと背中合わせになっていて、自分は分身を三体追加して敵の包囲網に向かわせる。残っている二体の分身には黒い波紋を発生させ、気休めにしかなりませんが囚われの兵士にダメージを与える…。ミナヅキさんも両手の爪を振りかざし、自分の死角の敵に迎え撃ってくれました。
「ですね…。あれから少し時間が経っていますが…、鎌鼬! 援軍が来るまでの辛抱です! 」
「当然だ。…目覚めるパワー」
救援が来るのが先か、エネルギーが尽きるのが先か…。五分五分かもしれませんね…。正面の七人に目を向けながら、自分は辺りの空気を渦巻かせる。殆ど溜めル事が出来ていませんが、丁度分身が二体消され攻撃が止んでしまったので、やむなく風を刃に変化させる。角を介して思いっきり縦に振り抜き、正面のガマゲロゲを一発で気絶させました。
おそらくミナヅキさんも、正面の敵に攻撃を仕掛けているはずです。耳で聞いているだけなので分かりませんが、おそらく手元にエネルギーを蓄えているのでしょう。手元に作り出した銀の球体を撃ち出し、一人にダメージを与えたと思います。
「グルルゥッ…! 」
「っ? …あなたに恨みはありませんが…」
これだけ多いと、そうも言ってられなさそうですね…。空気の刃を放っている間に別の敵の接近を許してしまったので、自分はやむを得ず近距離での対策をとる事にする。いつもの自分ならギガインパクトを発動させるのですが、四メートルまで接近された今では溜めの時間が全然足りません。だからという事で自分は、戦友の彼から教わったばかりの手段を講じることにします。まず始めに一切の考えを振り払い、同時に首元に力を溜める。するとミナヅキさんの話では、自分の角に黒いオーラが纏わり付きます。
「少し大人しくしてもらいます! 」
この間に一メートル半近くなったハッサムを狙い、左下から右上に向けて思いっきり振り上げる。
「ッガァァッ…」
すると自分の鎌状の角は正確に相手を捉え、甲殻に当たっても更に切り裂いていく…。自分でも怖くて直視できませんが、赤い液体と鉄臭い匂いが辺りに漂い始めました。
「シリウス、“角術”を使ったか」
「この状況ではやむを得ないです」
「グオォォオオッ! 」
「っシリウス! 」
「しまっ…」
いっ、いつの間に…。横目で自分の事を見ていたのか、ミナヅキさんは自分が使った“術”の名前を口にします。ですが慣れない事をしたという事もあって、左側の敵の接近を許してし…。
「放電! 」
「サイコキネシス! シリウスさん! 」
「無事なのだ? ワイルドボルト! 」
「ァツ? 」
「ゥッ! 」
接近を許してしまったのですが、どこからか毛が逆立つぐらいの電撃が放たれる。それも無差別に広がるのでは無く、見えない力で的確に相手五体を捉えている…。救世主とも言える電撃を放ってくれたのは…。
「スパーダ! ティル君! 助かりました! 」
「この様子だと無事みたいなのだな」
「だけど何ともなくて安心しましたよ」
見習い時代の同期のゼブライカと、二千年代出身のまフォクシー。電気を纏ったスパーダに騎乗したティル君が、敵を蹴散らして駆けつけてきてくれていました。
「ギリギリの状態でしたけ…」
「ガァッ! …カッ? 」
『見えないと思うけど、私もいるよ! 』
「その声は…、ライトさんですね! 」
更にどこからか冷気の光線が放たれ、離れた場所にいるラランテスを凍りつかせる。直後に聞き覚えのある声が響いたので、それだけで誰がいるのか気づく事が出来ました。
「G1の全員か。まさかここまで早いとは思わなかったが、助かる! 」
「火炎放射、サイコキネシス! 」
「だけど安心するのはまだ早いのだ! シリウス! 」
「はい! 」
言われなくてもそのつもりです! 敵の軍勢を跳び越したスパーダは、自分のすぐ側に着地する。そのタイミングに合わせてティル君も跳び降り、ステッキの先に作り出した炎の剣でハガネールに斬りかかってくれる。その間に自分とミナヅキさんはスパーダと言葉を交わし、互いの無事を確認する。そして彼の一言で気持ちを切り替え、自分は改めて周りの敵集団に目を向けました。
「でしたらスパーダ」
「ん? どうしたのだ? 」
スパーダがいるなら…。
「自分に強く意識を向けてください! 」
あの方法が使えますね。十分はふと思いついた事があり、駆け出そうとしていたスパーダを呼び止めます。当然スパーダは首を傾げているのですが、自分は構わず声を上げます。
「シリウスに? だけどどうし…」
「見れば分かるので、すぐお願いします! 」
「…わかったのだ」
敵に囲まれている今は時間が無いので、自分はすぐに目を閉じる。意識レベルを最大まで高め、同時に首から提げている虹色の事も強く意識する。すると…。
「この光…。シリウス、もしかして…」
「ご想像の通りです! 」
自分は七色の光に包まれる。その光は自分諸共形を変え、同時に体の奥底から力を湧き出させてくれます。
「だけどダンジョンでもないのに何でメガ進化を…」
「
…あるダンジョンで見つけた宝物…、いえ、“覚醒の原石”を使ってます! 」
ガラスが割れたような音と共に雲散する頃には、自分は背中に白い翼を得…、メガ進化した状態で姿を現しました。
「シリウス、この姿はパラムであった時のものだよな? 」
「
そうです! …スパーダ、ミナヅキさん、ティル君にライトさんも、ここからが正念場です! 」
「はい! 」
「なっ、なのだな」
「あぁ」
『うん! ならティル。私達も…』
「いくよ! 」
「メガ進化だね? もちろんだよ! 」
そういえば、ライトさんのメガ進化を見るのは初めてですね。…まだ自分達が不利な事に変わりないですが、流れはこちらに傾きそうですね。…ですからスパーダ、ミナヅキさん。ティル君にライトさんも、
いきますよ! つづく……