7-4 隠しごと
―あらすじ―
“肆緑の海域”に突入した僕達は、雑談をしながら海上を突き進む。
ヒュルシラさんは現役の頃に“ゼロの島”に挑戦した事があるみたいだけど、そのときは踏破できなかったらしい。
話してる間に野生が襲いかかってきたけど、潜入一発目の戦闘はヒュルシラさんと利フィナさんが戦う事になる。
二年間のブランクがあるみたいだけど、ヒュルシラさんは難なく水中で戦闘に勝利していた。
――――
[Side Coak]
「…失礼します。初めてお伺いするのですが、ここはアクトアのギルドでよろしいでしょうか? 」
「そうですけど、あなたは…」
「舞台俳優をしているコーク、と申します。突然お伺いして申し訳ないのですが、こちらにシャトレア、というエネコロロはお見えでしょうか? 」
「確か居たと思いますけど…、どういったご用件で」
「でしたらここに呼んでもらえないでしょうか? “太陽”からの使い、と言えば伝わると思いますので」
「“太陽”、ですか…」
――――
[Side Ratwel]
「…スカイアッパー! 」
「ァッ…」
「ラテ! 」
「うん、真空斬り! 」
この二体さえ倒せば抜けれるかな? ライルさんに乗せてもらっている僕達は、ここまで何事も無く進む事ができてる。ライルさんの背中の上だけ、っていう限られた場所での戦闘は大変だけど、リフィナさんの草結びのお陰で多少はマシになってると思う。流石にベリーはライルさんの上から離れないけど、ちょうどいいタイミングで葉っぱの足場を作ってくれてる。すぐに跳び移らないと沈むけど、一応泳げるから何とかなってる…、のかな?
それで今もちょうど戦闘中で、ベリーが真上に跳びながら拳を振り上げる。狙い通りにペリッパーにヒットしたから、そこへ僕がタイミングを合わせて追撃を仕掛ける。右の前足にエネルギーを溜めた状態で、真上に見えるペリッパーをなぞるように振るう。するとその瞬間なぞった場所の空気が圧縮され、斬撃として標的に襲いかかった。
「流石ね。…草結び! 」
「ッ! 」
連携が功を制し、僕達が相手していたペリッパーは緑色の海へと墜ちていく。派手な水しぶきをあげていたけど、耐えられなかったのか浮き上がってくる事は無かった。…これで僕達の方は倒せたから、今ライルさんの背中から跳び出したリフィナさんの方に目を向けてみる。彼女は遅れて飛んできたムクホークに技をかけ、両方の翼を細長い草で縛り上げる。リフィナさんの草は一瞬なら乗れるぐらいしなやかで丈夫だから、僕の予想通りムクホークは翼を広げられなくなる。だから飛ぶ力を失い、僕達の方に向けて斜めに落下してくる。
「アイアンテール! 」
その落下地点で待ち構えていたらしく、尻尾を硬質化させたヒュルシラさんが水面から跳び出す。二メートルぐらいの高さになったところで、シャワーズの彼は体を捻って尻尾を振りかざす。
「カッ…? 」
「リフィナ、後は任せたよ! 」
「ええ! 」
ボールみたいにムクホークを弾き飛ばし、草の上をぴょんぴょん跳び移っているリフィナさんにパスを送る。
「…燕返し! 」
五、六回跳び移ったところで強く踏み込み、草をバネみたいにして大きく跳び上がる。跳び上がりながら前足に技を準備し、すれ違いざまに二回、素早く上下に振りかざす。
「…ァァッ! 」
跳び上がった勢いも乗ってたらしく、ムクホークは耐えきれず意識を手放してしまっていた。
「リフィナさん達も凄いよ。息ぴったりっていうのもそうだけど、草結びをあんな風に使うのって中々できないと思うよ」
「これぐらいできないと、守れるものも守れないから当然よ」
確かにね。相手していたムクホークを倒せたって事で、リフィナさんはさっきと同じように僕達の方に戻ってくる。ここまでそれなりの回数戦ってるけど、見た感じリフィナさんにバテてるような感じは無い。一応僕達も温存はしてるけど、乗せてくれてるライルさんからあまり離れられないって事でエネルギーの消費が結構激しい。特に属性的に不利なベリーはエネルギー切れを起こしそうになってたのか、戻ってきてるリフィナさんに声をかけながらピーピーマックスを一気飲みしていた。
「それもそうだねー」
「ヒュルシラさんも、実はダンジョンとかにも潜入し続けてたんじゃないですか? 」
「流石にそこまではしてないけど、体が覚えてた、って言った方が正しいかなー? 」
ここまでの戦いを見てきたけど、ヒュルシラさんも問題なく戦えてるよね。ヒュルシラさんもこの間に泳いで戻ってきていて、僕の言葉にも応えてくれる。最初は二年間のブランクがあるって事で心配だったけど、そんな風に感じさせないぐらいちゃんと戦えてると思う。寧ろ余裕そうな感じもあるから、もしかすると温存しながら戦っているのかもしれない。そうなると現役の隊員じゃないかなって思えてくるけど、一応シャワーズの彼は公務員って事になってる。だから普段からダンジョンに潜っていてもおかしくなさそうだから、僕はこんな風に声をかけてみる事にした。
「身に染みついている、っていう感じですね。僕も昔は技も使――」
「ゥガァァッ」
「守る! …っく! 」
えっ…、まさかまだ残って…。僕も昔は技も使えた、ライルさんは多分こう言おうとしてたんだと思うけど、それは後ろの方から響いてきた唸り声に遮られてしまう。普段なら気づけたはずだけど、何故か今回だけは声が聞こえるまで全然気づけなかった。…僕だけなら注意不足だったかな、って思うけど、この感じだとベリーとヒュルシラさん、それからリフィナさんの三人もなのかもしれない。防いだのがベノムショックだったから一発で破られたけど、僕が張ったシールドでやっと気づいたみたいだった。
「ラテ! 」
「助かったわ」
「…だけどこれだけいて気づけな…ん? 」
「あれってもしかして…」
見間違いかもしれないけど、多分そうだよね? シールドを破られた影響で少しクラクラするけど、僕はせめて目線だけでも攻撃が飛んできた方向に向けてみる。するとその場所…、僕から見て左斜め後ろの方にドラミドロが一体…。だけどこのドラミドロに対して、僕はふと言いようのない違和感を感じてしまう。ライルさんの背中に上がってきているヒュルシラさんも首をかしげてるから、多分気のせいじゃないと思う。何故ならそのドラミドロは…。
「“陽月の穢れ”…? 」
ここ最近何回も見てきた、オレンジ色のオーラを纏っていたから…。そのオーラのことは昨日の夜シリウス達から聞いていたから、僕はその名前をふと口にする。
「“陽月の穢れ”って、昨日ハク達が言ってた事だよね? 」
「そうだよ」
「よっ、陽月の何…」
「ガアァッ! 」
「アイアンテール! 初めて聞いたけど、その“陽月の穢れ”って何? 」
昨日シリウス達から聞いた時リフィナさん達は居なかったから、当然二人とも僕達を問いただしてくる。僕達も“穢れ”の状態の野生自体は何回も見てきたけど、その状態に名前があった事は知らなかった。…だから今まで見てきた事も合わせて話そうとしたけど、例の“穢れ”たドラミドロが許してはくれない。六、七メートルぐらい離れた高い位置から、紫色の物体をもう一度撃ち出してきていた。今度はヒュルシラさんが、硬質化させた尻尾で弾き飛ばしていたから何とかなったけど…。
「話し始めると長くなるんですけど、他の野生よりも強力な個体、って思ってください」
「ってことは、大物前の中ボスって訳ね」
「多分それでいいと思うよ! 」
「ゥガァッ! 」
「オウム返し…、竜の波動! 」
っと、話してる暇も無さそうだね。説明している間にも続けて攻撃を仕掛けてきたから、僕達はそれぞれですぐに対処する。今は向こうが青黒いブレスを放出してきているけど、これにいち早くベリーが反応する。ドラミドロから見て正面…、僕達三人の前に出るような場所に移動し、相手の動きを注意深く観察する。いつも通りならエネルギーを活性化させながら相手に干渉させ、流れ込んできたイメージ通りに技を発動させる。すると彼女も一歩遅れて、空中の敵と同じブレスを解き放った。
「…これは中々苦戦しそうだね」
「流石中ボスと言ったところね」
だけど距離があったって事もあって、ベリーのブレスは簡単に防がれてしまう。ドラミドロはベリーのそれに合わせて放つ位置を微調整し、正面から対抗する。ベリーはベリーで若干圧され始めてたから、送り込むエネルギーを増やして対処していた。
「ラツェル君」
「はい! ベリー、ヒュルシラさんも、いきますよ! 」
「うん、ここからが正念場だねー」
この間に僕は二人にも声をかけ、必要は無いと思うけど注意を促す。“祭壇”まであと少しだから温存したかったけど、こうなったら戦わないといけない。だからって事で、僕は声をかけてからエネルギーを活性化させ始めた。
――――
[Side Haku]
「…それではハクさん、先日の“リヴァナビレッジ”の件についてお伺いしてもよろしいでしょうか? 」
「事件の事自体はウチはあまり詳しくないんやけど、その後の事なら構わへんで」
「でしたらハクさん、事前に村民、他町の住民を避難させていたとお伺いしましたが、何故わかったのでしょうか? 」
「うーん、これと言ってした事も無いんやけど、パラムの事件のことから考えて、念のため避難させたって感じやな」
「念のため、と言いますと…」
「パラムが街規模の事件やったから、遠い村でも近いうちに起こるかもしれへん、って思ったからやな」
「ありがとうございます。でしたら次に、避難後の体制の方をお伺いしてもよろしいでしょうか? 」
「それなら沢山語れるで。ウチらのギルドに避難させとる、って聞いとると思うけど、地下の演習場を避難所として一般開放しとるんよ。そんで人数が人数って事で、物資の方は探検隊連盟と水島商工会の援助で支給してもらっとる感じやな」
――――
[Side Ratwel]
「着いた着いた。もう少し内陸の方にあるんだけど、ここか目的地、“肆緑の祭壇”だよー」
「ここがそうなんだね? 」
話では聞いてたけど、結構きれいなところだね。“陽月の穢れ”って事で苦戦はしたけど、僕達は何とかドラミドロを倒す事ができた。戦ったのは僕とリフィナさんの二人で、初めて組んで戦ったけど何とかなった。これが潜入最初のバトルだったら上手くは行かなかったと思うけど、流石に何時間も経ってるから、ね…。
それで無事にダンジョン地帯自体も突破できて、ちょうど今小さな無人島、目的地の“緑巽の祭壇”がある島に上陸したところ。乗せてきてもらったライルさんには待っててもらう事になるけど、ひとまず僕達は順番に彼の背中から降りる。連戦であまり休めてはいないけど、交代しながら戦ってたらいつもよりはマシだと思う。
「らしいわね。…にしても綺麗なところね。ダンジョンさえなければリシルもつれてきたいぐらいね」
「息子さんですよね? 見通しも良くて…」
リフィナさんも言ったけど、確かにここは子供が来ても良さそうなぐらい穏やかだと思う。岸から十メートルぐらいは砂浜になっていて、そこから先は草原が広がっている。そういう季節だからなのかは分からないけど、若草色の芝みたいな植物が茂ってる。視界を遮るものがほとんど無くて、ダンジョン化もしてないから、“ゼロの島”の潜入拠て…。
「うわっ! じっ、地震? 」
「…おさまった…ね」
「そうみたいね。三人とも、平気? 」
「はい。結構大きい地震でしたけど、何ともないです」
ダメージとかが無いから…、自然に起きた地震? 見応えのある景色に圧倒されてたけど、そんな穏やかな気分が一瞬で吹き飛んでしまう。何故なら結構な強さの揺れが僕達に襲いかかってきて、短い時間だったけど危うく足を取られそうになってしまった。建物の中とかじゃなかったからその必要は無いけど、一応僕達はお互いの無事を確認する。念のためって事でヒュルシラさんが聞いてきたから、僕は心配ないですよ、っていう意味も込めて大きく頷いた。
「平気だけ…、あれ? ラテ…? 」
「やっりそうよね? 」
って事は、気のせいじゃない…? ベリーもこの流れで何かを言おうとしてたけど、何かに気づいたのか、ふと声を上げる。僕も今感じたけど、些細な事だから最初は思い違いかと思った。だけどリフィナさんも確かめるように頷いていたから、気のせいなんかじゃ無いと思う。
「リフィナ達も? って事はやっぱり…」
「どこかで、誰かが戦ってますよね? 」
「わたしもそう思ったよ! でっ、でもそれって…」
「ハクちゃん達が昨日言ってた…“ビースト”? 」
これしか考えられないですよね? いろんな可能性を考えたけど、場所が場所って事で、これしかあり得なさそう。リフィナさん達もこのことは昨日聞いてるはずだから、多分状況は理解できてると思う。そもそも僕達はそのためにここまで来たけど、すでにこうなってるって事は、何も知らない誰か…、“ゼロの島”に挑戦するために来てる人が“ビースト”と戦ってる事になる。
「そうなるよねー? …リフィナ、ラツェル君達も、先に行ってて。後で追いつくから! 」
「うん! 」
「はい! 」
「わかったわ! 」
“ゼロの島”に挑戦するぐらいだから大丈夫だとは思うけど、それでも何も知らないと危険すぎるよね? 嫌でもどこかで起きてる戦闘の状況が分かったから、最年長のヒュルシラさんが僕達三人に呼びかける。僕はすぐにでもその方に行って戦闘に参加するつもりだったから、彼の言葉に首を大きく縦に振る。ヒュルシラさんは多分左の後ろ足のことを言ったつもりだと思うけど…、先に助太刀しに行って、っていう意味って思ってもいいよね? だからって事で、僕、ベリー、リフィナさんの三人は一足先に駆けだした。
「っ…! 」
だけど走り始めて少しして、正面から目を覆うぐらいの閃光が正面から放たれる。この光は光の玉か何かだと思うけど…。
「二人とも大丈夫ですか? 」
走る足を緩めずに、僕は二人に問いかけてみる。
「私は平気よ」
「ちょっとまぶしかったけど、問題ないよ」
すると彼女たちはすぐに、平気だって堪えてくれた。
「だけどなるはやで言った方が良さげね」
「ですよね。…って、ええっ? 」
「ちょっ、ちょっと待って!あれって…」
なっ、なんでこんな所にいるの? リフィナさんの言うとおり急いだ方が良さそうだから、僕達は走る速度を更に速める。だからすぐに誰かが
そこに居た人に対して僕は目を疑ってしまう。全員で僕達と同じで四人いるんだけど、そのうちの二人は知らない種族の誰か…。そんな事より僕…、僕とベリーは…。
「フライ? 何でフライがこんな所に? 」
思わずその人達…、それもよく知った人の名前を声に出してしまう。一人は五千年前の世界から来てくれている、フライゴンのフライ。そしてもう一人は…。
「そっ、そのエーフィって、シルクだよね? 」
何日も前から行方不明になっている、エーフィのシルク。シルクは見た感じ気を失っているらしく、フライさんに膝の上で抱えられてるような感じになってる。これは僕の想像でしか無いけど、さっきまで戦闘しているような気配があったから、もしかするとそのときにやられてしまったのかもしれない。それがシルクだから、全然信じれないけど…。
「らっ、ラテ君?ベリーちゃんも! 二人こそ何で…」
「フライさん、もしかして知り合…」
フライも訳が分からないって感じで声を上げてるから、多分僕達と同じだと思う。一応フライは昨日から出かけてる、ってティルさんから聞いてたけど、まさか“緑巽の祭壇”で会うなんて思わなかった。それも行方不明になっている、シルクと一緒に…。
「ラツェル君、あの四人は…」
「そんな事よりフライ? まさかシルクの事を知って…」
あれだけ探しても見つからなかったから、もしかするとシルクって、何者かにここまでさらわれて…、フライ達に今保護されたところなのかな? リフィナさんの事を無視することになったけど、僕はそれよりもシルクの事が気になってしまう。…よく考えたらフライはフライで今回はずっと別で行動していて、いつもとは違って僕は何をしてるのかほとんど聞いてない。知ってる事と言えば、予定には無かったけどシードさんに呼ばれて、急遽来てくれている、ってことぐらい…。だから僕は、それとシルクのことを聞く意味も込めて、フライゴンの彼を問いた…。
「ごめん。ラテ君達でも、シルクに口止めされてて今は話せないよ」
くっ、口止め? って事はもしかして、フライは少し前からシルクの居場所を知っていた…?
「はっ、話せないって、何…」
「ミウさん! いっ、今すぐにテレポートを! 」
すぐに聞いてみたけど、フライの口から出たのは予想外すぎる返事…。あの言い方だと多分、少なくともシルクが気を失う前から彼女の事を知ってる事になる。それも口止めされてるって言ってるから、行方が分からなくなってる間のシルクの事をよく知ってることになる。そうなるとフライはずっと隠し事をしてたことになるけど、僕が問い詰めるよりも先に、フライは薄ピンク色の彼女に、凄く焦ったような感じで頼み込…。
「わ、分かったわ。キノト君! 」
「はっ、はい! 」
「まっ、待って! 口止めってどういう事なの! 」
「…テレポート! 」
ベリーもフライに問いかけようとしていたけど、それさえもできそうに無い…。ふわふわ浮いてる彼女は一瞬戸惑っていたけど、すぐに頷いてもう一人に呼びかける。かと思うと急に激しい光を放ち、気づくとその場から四人とも姿を消してしまっていた。
「フライ…」
「ええとベリーさん? さっきのは…」
「何から話したらいいかわからないんだけど…」
「やっと追いついた。さっき凄い声あげてたけど、何かあった? 」
「シラ、私もいまいちよく分かってなくて」
リフィナさん達は知らないはずだから、最初から話さないといけないよね? …だけど、どこから話せばいいんだろう…? フライ達が消えて静寂だけが残ったけど、ここでリフィナさんがぽつりとつぶやく。事情を知らないリフィナさんにはちゃんと話さないといけないとは思ってるけど、正直言って僕自身もいろんな事がありすぎてよく分からなくなってる。ベリーも何とか言葉を探してるみたいだけど、その間に声が一つ、おくれて入ってくる。不思議そうに首を傾げるヒュルシラさんが、嵐が去ったこの場にいる僕達に問いかけてきた。
「色々あって整理できてないんですけど…、“ビースト”もいないから戻りながら話します」
「だよね。多分フライ達が倒したんだと思うけど」
「って事は、空振り? 」
「先を越されていた、て言った方が正しいかもしれないわ」
だよね…。あの白い渦も無いし…。頭の中が凄くモヤモヤするけど、今はこのぐらいしかできないような気がする。もちろんシルクのこともそうだけど、着いた時には“ビースト”らしい生き物の姿は無かった。だからべりーの言うとおり、僕達が着く前にフライ達が倒したのかもしれない。そう考えると戦闘の気配、それから光と揺れの説明もできるから、この予想は間違ってないとは思う。
「ですね。来たばかりでヒュルシラさんには申し訳ないんですけど…、戻りましょうか」
だけど倒されてた以上はもう何もできる事が無いから、僕は三人にこう提案する。
「そうね」
分からない事が沢山できたけど、僕達は早々にこの場を立ち去る事にした。
続く……