§4 Hyn ほとりの座談会
Diary of Kizashi
「痺れ粉で動きを封じて」
「凍える風で追い返して! 」
『っあなた、中々やるわね……』
『まぁね。アローラ育ちを嘗めてもらったら困るよ』
『どうりで……くぅぁっ……! 見た事無い種族……な訳ね……』
――――
二番道路 Written by Hynoka
「ごめんごめん。つい話しに夢中になっててね」
とりあえずわたし達は目的の場所に着いて、そこでジョウト地方から来たっていうサンダースのコット君達と出逢った。ジョウトから来てるみたいだからわたしとボーラの種族を知らなかったのは納得なんだけど、それ以前にわたし達はコット君の事に驚かされた。わたし達にはあまり違いが分からないけど、コット君は人間の言葉を喋ってるみたい。絶対にあり得ない事だったから信じられなかったけど、あの後で何回かコット君を通して試しにわたし達の名前をマサキに伝えたら、本当に伝わってた。トレーナーにわたし達の言葉が伝わるって、凄く羨ましいよ……。
それでコット君の事が一段落したところで、気を取り直してマサキはここに来た目的をソニアさん? に話し始めていた。わたし達がコット君と喋ってた間に何話してたのかは分からないけど、年上の人の方がダンデさんの知り合いみたい。
「――それで、君達は推薦状をもらいに来たんだよね? 」
『うん! 本当はブラッシータウンでもらえる事になってたんだけど、研究所に誰もいなくてね』
『寝坊か何かしたんじゃないかって思って、こっちまで来たって訳さ』
正直に言ってぼくとマサキが出逢ったあの時にダンデさんが書いてくれた方が良かった気がするけど、コット君に訊かれたからとりあえずこんな風に答えてみる。何でサングラスとかネックレス? とか着けてるのか分からないけど、それはそれでちょっと憧れる。わたし達ポケモンが道具を持つのは大体バトルのためだから、コット君もそんなような気がするけど……。けど一つしか持てない、って決まってるみたいだから、それも気になるけど……。
「あっ、多分僕達が話してたから――」
「おやソニア、まだいたのかい」
『ぅん? 』
ソニアさんと一緒に出てきたから何となく予想は出来るけど、多分コット君は僕達と話していた……、そう言おうとしてたんだと思う。だけど言ってくれようとしたところで、家の中からまた別の誰かが出てくる。そういえばわたし達、ずっと玄関の前で立ち話してた訳だけど……。で、声的にこの家の家主の方に振り返ると――
「おばあさま。ちょっと話が盛り上がっちゃって」
結構歳がいった女の人と
その気持ち、よく分かるわ。話しに夢中になってつい時間を忘れちゃうのよね。
コット君以上に着飾ったエーフィ……。エーフィの声は頭の中に響いてきたような気がするけど、エーフィも白衣を着てるから、この人のポケモンなのかもしれない。
「えっ……、エーフィも? 」
『……マサキ? もしかしてあんた、このエーフィの声も聞こえたなんて言うんじゃないでしょうね』
するとまた……コット君の時と同じように、マサキがハッとエーフィの方を見る。メガネをかけたエーフィは小さい笑顔を浮かべてるから、さっきの声はこのエーフィで間違いなさそう。だけど振り返った時に見た感じだと、エーフィの口は動いてなかったし喋ってる感じは全然無かった。
ええ。厳密に言うと喋ってはないけど、今のは私ね。
「僕とは違う方法使ってるんだけど、ビックリしたよね? 」
『違う方法? 』
今度は本当に気のせいなんかじゃなくて、はっきりと頭の中に声が響いてきた。コット君は何か当たり前みたいな感じで聞いてきたけど、確かにビックリした。言葉が通じてる、って事はコット君でびっくりしちゃったから半減してるけど、それでもやっぱり、人間と話せるポケモンは滅多にいないと思う。ダンデさんとかリザードンからも一回も聞いた事がないから、多分ふたりも出逢った事はないのかもしれない。なのにわたしはふたり……、それもほんの何分かの間に出逢っちゃってるから、凄く運が良いのかな、わたし達って。……そういえば今思い出したけど、頭の中に声が響くこの感じ、昨日の森で聞こえてきた声みたいな気がするけど……。
そうよ。この子からも訊かれたからついでに話すけど、“テレパシー”って方法を使ってるわ。
『テレーパシー? 』
『初めて聞くねぇ、その……テレ何とか、ってのは』
すぐにエーフィが教えてくれたけど、いまいちピンとこない。ついさっきまで野良だったボーラも首を傾げてるから、教えてくれたモノは凄く珍しい、そんなような気がする。この年配の人と出てきたからそう簡単に出逢えるよう名ものじゃ無いような気もするけど……、うーん、もうコット君のことといい驚きすぎて訳が分かんなくなってきた。ボーラも微妙な評定してるから、多分わたしと同じで、それが何なのか理解してない、そんなような気がする。
「うん。エスパータイプなら練習すれば誰でも出来るようになるみたいなんだけど、伝説の種族も使える方法なんだよ。……丁度ふたりのトレーナーと話し始めちゃったけど、彼女は僕の従姉。僕は野良だった頃のフィフ、って呼んでるけど、みんなからはシルク、って呼ばれてるよ」
『従妹? じゃああのエーフィって、あの人のメンバーじゃなくて、コット君の仲間だったりするんだね? 』
まさかこんなところで伝説なんて聞けるなんて思わなかったけど、使えるって事は、フィフっていうエーフィは結構練習したのかもしれない。そんなコット君はコット君で普通に喋ってるけど、そうなるとコット君が何で人間の言葉で喋れるようになったのかも気になってくる。
それにコット君は凄く楽しそうに、自分の事みたいに教えてくれてるけど、よく考えたらそっちの方があり得そうだよね。最初はあの白衣を着た女の人のメンバーかなって思ったけど、フィフさんがそんなに年取ってるようには見えない。それどころかわたし達よりも一回りぐらい上って言っても良いかもしれないぐらいだし……、何か結構かわいいかもしれない。それに色んなアクセサリー着けてるから、コット君と従妹なんだって事も納得名ような気がする。コット君もそうだけど、遠く離れた地方には着飾ったりしてアピールするコンテスト、っていうのがあるみたいだから、それに出てるのかもしれないね!
「ううん。僕達のチームはまだ一枠空いてるけど、フィフは違うよ。フィフもトレーナー就きだけど、今フィフのトレーナーはカントーにいるよ」
『カントーって、あのカントーだよね? ほら、もうすぐやるバトルの特番の! 』
わたしはほぼ確信しながらコット君に訊いてみたけど、彼はすぐに首を横に振る。ならソニアさんのメンバーかな、って思ったけど、聞く前にわたしの予想は外れてしまう。就きならトレーナーの近くに一緒にいるのが普通だけど、……正直に言ってあり得ない事が大すぎて、もうそのぐらいじゃあ驚かなくなっちゃってきてる。それにカントーと言えば、この時期毎年放送してる生放送の特番を収録してるスタジアムがある場所。バトル好きなダンデさんも毎年視てる、ってリザードンが言ってたから、わたしも名前ぐらいは聞いた事はあった。リザードンが凄く楽しそうに話すから、凄く気になってるんだよね……。
「うん、そのカントーだよ。最初は僕達、ガラルじゃなくてカントーのジム巡りする予定だったんだけどね。……で、フィフは特番に出てるトレーナーのメンバーでね。フィフも出て戦ってるんだよ」
『そっ、そうなの? 』
『それは気になるねぇ。アタイにはさっぱり分からないけど、選ばれてんなら強いんだろうねぇ』
「僕はまだジョウトとアローラしか旅した事ないけど、フィフ以上に強いひとは見た事無いよ。それに僕もつい昨日知ったばかりなんだけど、本戦前のエキシビションマッチに出るんだって」
コット君は従姉のエーフィのことを得意げに話してくれていて、聞いてるわたしから見ても凄くうれしそうにしてる。耳もピコピコと上下に動いてるし、目もキラキラと輝いてる。それに番組とかジムチャレンジのことを全然知らないボーラも、コット君の従姉のに結構興味を持ってるみたい。マサキ達と話してるエーフィはそんなに強そうには見えないけど、特番とかエキシビションマッチに出るぐらいだから、ジムリーダーぐらいには強いのかもしれないね、きっと。
『そうなんだ! それならコット君? 』
「ぅん? 」
『コット君って、従姉のチームのメンバーには会った事あるの? 』
「ひとによって違うんだけど、何回かあるよ。四にんはイッシュの出身みたいなんだけど、もうひとりは先にガラルに来てる、って言ってたよ」
『ココにかい? 』
こんなに得意げに話してくれてると、わたしもそのひとの仲間の事が気になってきた。トレーナーから離れて行動してるって言うのもそうだけど、ガラル以外の地方は出身の地方がバラバラになる事が多い、こうも思えてきてる。さっきパッと見た感じでのイメージもそうだけど、コット君の従姉、意外とああ見えて色んな所に行ってるのかもしれない。白衣着て色々着飾ってるから、人間っぽいけど……。
「うん。フライゴンなんだけど、もしかしたら旅の途中に会えるかもしれないね」
『フライゴン? フライゴンならガラルにもいる、って噂で聞いたから、見分けが付かないってアタイは思うけど――』
「それなら大丈夫だよ。フライさん、赤い結晶のネックレス着けてるから」
『へぇー。じゃあコット君のと色違いなんだね? 』
コット君が教えてくれたフライゴンなら、この辺では見てないけど野良でいる、って聞いた事がある。それにダンデさんの知り合いのジムリーダー……、その人のメンバーにもフライゴンがいたような気がする。……だからボーラの言うとおり見分けがつかなそうだったけど、それなら問題ないのかもしれない。コット君が右の前足で着けてるネックレス触りながら教えてくれたから、色違いかもしれないよね。コット君のは薄い茶色をしてるからね。
「うん。一緒に着けてる羽根は違うんだけど、フィフに作ってもらってね。……あっ、そうそう。フィフはエーフィだけど、大学で勉強教えてるんだよ」
『って……、人間に? 』
「さっきも知ったと思うけど、フィフはテレパシーで話せるからね。研究とか教える事が好き、ってのもあるけど」
『……何かエーフィとは思えないねぇ』
「それがフィフだからね」
To be Continued……