絆と魔法の王国〜Encore La Vie〜










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第三・五章 隠密行動の果てに
第十一話 脱出の秘策
 「あっ、あれは……! 」
 何とか改造されていた“第二研究室”を脱走した私……達は、何故か人気の少ない廊下を駆けぬける。その途中でシャサと鉢合わせになったけど、嫌っているらしいトゥワイスが眠らせて人質にする。その“催眠”の方法を教えてもらったけど、申し訳なさで一杯になってしまった。
 それでも更に疾走する私達は、その先で見覚えのある誰かを目撃する。まだ少し距離があるから、走る四肢に更に力を込める。角度で言うと一時間ぐらいはあると思うけど、ここでようやく誰なのか分かった。全部で五人いるけど、一人目は――。
 「ファルツェアさん? 」
 『あれ、リツァの知り合い、なの? 』
 「ええ! 」
 私の潜入を全面的に協力してくれている、元騎士副団長で隻眼のフライゴン。戦闘中なのか、彼にとっては狭い通路の天井スレスレを滑空している。
 二人目は初めて会うけど、多分騎士団員と思われるライチュウ。それから今にも跳びだしそうな感じで身構えている、ライチュウと同じ薄桃色のクリスタルを提げたピカチュウ。一人は隠れて見えないけど、五人目は三人と向かい合い、私に背を向けている――
 『……ってリツァ! マズいよ! あのルカリオ、ここの責任者、だよ! 』
 「せっ、責任者? 」
 トゥワイスから聞いて初めて知ったけど、“ルヴァン”でもかなり地位のある人物らしい。トゥワイスはかなり警戒してるみたいだけど、ルカリオなら、私は属性的に有利。そして何より、彼は私達に背を向けていて全然気づいている様子が無い。だから私は――
 「それなら今のうちに……」
 背を向けている彼に狙いを定め、助走を付ける。
 「ちっ……、01、貴様はこの程度では――」
 『リツァ、まさか……』
 同時に尻尾を硬質化させ――
 「そのまさかよ! アイアンテール! 」
 彼の首筋めがけて跳びかかる。同時に腰の辺りに捻りを利かせ、思いっきり尻尾を振りかざす。
 「――ないだ……っ! 」
 すると私の狙い通りに命中し、尻尾を通して重い衝撃が伝わってくる。いつもより範囲が広い気がするけど、当たり所が良かったらしく、ルカリオを前方向に倒す事が出来た。AB型として攻撃力も強化されているらしく、この一発だけで気絶させる事に成功した。
 『リツァ、本当に……』
 「なっ、何だ? 」
 「尻尾が……、ということはコレも生物兵器だ! 」
 「はっ、はい! 見れば分かります!」
 『あの翼、もしかして……』
 敵対してるルカリオが急に倒れたから、ファルツェアさん達は当然訳が分からない状態になってしまう。……だけど私の姿を見た瞬間、すぐに身構えて戦闘体勢をとる。一応私はファルツェアさんとは知り合いだけど、今の私の見た目だと無理ないのかもしれない。……何しろ今の私は、普通のエーフィじゃなくて乙型の生物兵器。まだ自分で確認できてないけど、少なくとも私の尻尾は二本以上ある。戦闘兵器の特徴はファルツェアさんに伝えてあるから、彼は特に私の事を警戒している。だからって事もあるかもしれないけど、黒紫色の翼のあるブラッキーを抱えている彼は他二人に呼びかける。
 「ならアレも倒すべきだな。……気合いパンチ! 」
 案の定ライチュウは握りこぶしをつくり、シャサを近くに浮かせている私めがけて駆けてくる。あの感じだと多分、私が生物兵器って事もあって手加減なしに攻撃するつもりだと思う。目つきも凄く鋭いから、多分間違いない。その目つきには怒りの感情が含まれてるような気がするけど、よく考えたら怒ったり恨んだりしない方がおかしいと思う。その日私は初めてフロルと会ったけど、“リフェリア”は“ルヴァン”の生物兵器に襲撃されていた。何日か経ってからファルツェアさんから教えてもらったけど、ありとあらゆるものが破壊されて死人も出たらしい。
 「……」
 ファルツェアさん達は街のためにも私を倒そうとしてるけど、私はこの三人……、特にファルツェアさんとは戦いたくない。だから私は意識を活性化させ――。
 「……っ! 」
 「なっ……」
 「父さん! 」
 目に力を入れ、向かってきているライチュウの目を凝視する。するとライチュウは糸が切れたように脱力してしまい、顔から派手に転んでしまっていた。
 為す術無く転……眠らされたライチュウを見、ファルツェアさんとピカチュウは騒然としてしまう。特にピカチュウの方はショックを受けたのか、完全に声を荒らげてしまっている。
 『リツァ! やっぱりリツァにもできた、んだね! 』
 「よくも……、よくも父さんを……! 」
 「ルミエール、待ちたまえ! あの生物兵器、今までと訳が違う! 」
 私の頭の中でトゥワイスの嬉しそうな声が響いてるけど、そんな彼とは対照的にピカチュウの彼は私に向かおうとしてくる。だけどそんな彼をファルツェアさんが制し――
 『でっ、でもリツァ? まだ……』
 「ここは私が……。ドラゴンク――」
 私を殺めようと、ファルツェアさんが床スレスレを滑空してくる。両手に紺色のオーラを纏わせてるから、確実に……。このままだと確実に殺られるから――
 「テレキネシス! 」
 「っ! 」
 「えっ? 」
 「ファルツェアさん! 私よ! 」
 見えない力でファルツェアさんを止める。ダメ元で発動させたから賭けだったけど、止められた本人……、それから私も、驚いてしまう。まさか元騎士副団長の彼を止められるなんて夢にも思わなかったけど、私が私って分かってもらうために声を張り上げる。
 『あれ? もしかしてリツァ、知り合い、なの? 』
 「この声、まさか……、リツァか? 」
 「そうよ! 」
 すると流石に気づいてくれたらしく、浮かされた状態のフライゴンはハッと声をあげる。ほぼ同時にトゥワイスもファルツェアさんの事を訊いてきたから、二つの意味を込めて大きく頷く。ひとまず私に気づいてくれたから、ひとまず彼だけを下に降ろしてあげる事にした。
 「……え? 」
 「本当に……、リツァなのか? 」
 「ええ! ……“Rehydle”」
 まだ私って事が信じられないらしく、生物兵器の私に疑いのまなざしを向けてくる。だけどさっきと違って敵意は向けてないから、やり方次第で信じてもらえるかもしれない。だからって事で私は、彼から教えてもらったこと、“魔法”を試してみる。……かといって他の魔法は知らないけど、私は彼から教わった“魔法”の一つ、“リヒドル”を唱えてみる。これはついさっき唱えたばかりだけど、まだ“レコードクリスタル”は出してない。これもファルツェアさんから借りた物だから、今度こそ私だって分かってくれると思う。
 私が唱えるとすぐに、見えない場所に隠していた“レコードクリスタル”が私の首に提がる。すると今度こそ気づいてくれたらしく――。
 「それって……“記録水晶”? だっ、だけど何で? 何で生物兵器が――」
 「私が開発した“レコードクリスタル”だ。……リツァ、疑ってすまない」
 「私こそ、連絡入れれなくて、ごめんなさい」
 「えっ、ってことは……ええっ? もしかして……騎士団? でも尻尾が……」
 確信したような表情で呟く。相変わらずピカチュウの彼は訳が分からない、って感じで取り乱してるけど、ひとまずこれで、安心できると思う。ファルツェアさんは申し訳なさそうにしてるけど、私の方も多分、彼には心配かけてしまってるかもしれない。AB型の製造期間を考えると、一人につき最低でも一ヶ月ぐらいはかかるはず……。そうなると私は、その間音信不通になってた事になる。だから私も、彼にちゃんと頭を下げて謝った。
 「騎士団員じゃなくて……、情報屋ね。潜入中にバレて、生物兵器に改造されたけど……」
 「生物兵器に……。尻尾が三本ということは、戦闘タイプの乙型かね? 」
 「だと思うわ」
 『ええっと、これって……。もしかして、リツァの仲間、ってこと? 』
 私が“ルヴァン”の情報を流してたって事もあって、ファルツェアさんはすぐに私の事を察してくれる。今初めて尻尾が三本生やされてる、って知ったけど、これでやっと確信する事が出来た。……だけどそうなると、戦闘型にしては使える能力が多すぎる気がする。私が知る限りで、AB型では多くても一つ。その一つは“狂化”に使われるはずだから、厳密には私はAB型って言えないんだと思う。
 「……それからファルツェアさん。ファルツェアさんもマリーと合流できたのね? 」
 『ってことはやっぱり、リツァの仲間みたい、だね。なら……』
 「まっ、マリー? どっ、どこに? どこにマリー――」
 それにファルツェアさんが抱えてる有翼のブラッキーは、騎士団員のマリーで間違いない。その証拠に彼女の翼は、彼女の象徴とも言える黒紫色をしてる。何で気を失ってるのかは分からないけど、ここの責任者もいたって事は、もしかするとファルツェアさんと戦わされてたのかもしれない。とい――
 「グルルルァァッ! 」
 「っ? 」
 「なっ、何? 」
 話の途中だったけどこの場に急に咆哮が聞こえてくる。あまりに急だったからビックリしたけど、尋常じゃ無い声に、私達三人は騒然としてしまう。私とファルツェアさん、ピカチュウの彼も、声がした方にハッと目を向ける。するとそこには――。
 「ガルルル……」
 血走った目つきの獣……、“狂化”されて本当の意味での生物兵器が、うなり声を上げていた。
 『マズい……。リツァ、速く逃げ、ないと! 」
 「分かってる。ファルツェアさん、ピカチュウのあなたも」
 「えっ、うん! 」
 「そのようだな」
 声の大きさからすると、まだ少し距離がある。だから今から走り始めれば、あわよくば戦わなくても脱出できるかもしれない。だから私は、私の事で気を取られていた二人に声をかける。ライチュウの彼はまだ――
 「テレキネシス。だから私に着いてきて! 出口まで案内するから! 」
 ライチュウの彼はまだ眠らせたままだから、すぐに見えない力で浮かせる。それからすぐに二人の前に躍り出て、真っ先に駆けだす。
 「あぁ、頼んだ」
 「まっ、待ってください! 今行きます! 」
 するとすぐに羽ばたく音が聞こえたから、更に走る足に力を込めた。
 「……そういえばトゥワイス? 」
 『ん? どうかした? 』
 「眠らせた時って、どうやって起こせば……」
 走り始めた今気づいたけど、眠らせる事は出来ても起こし方は分からない。トゥワイスによると好きな時に起こせるみたいだけど、生憎まだ教わってない。だからって事で、私は走りながらトゥワイスに訊いてみる事にした。
 『簡単だよ。起こしたい人を思い浮かべて、意識を鎮める。そうすれば、起こせるよ』
 「……やってみるわ」
 「リツァ。さっきから君は誰と話しているのかね? 」
 「ごめんなさい、後で話すわ」
 ……そういえば今気づいたけど、トゥワイスの声は私以外誰にも聞こえていない。よく考えたら普通の事だけど、私の一部になっている彼の声は、聞こうと思っても他の人には聞く事が出来ない。だからだと思うけど、ファルツェアさんが不思議そうに私に問いかけてきた。長くなりそうだから、断ってしまったけど……。
 それで私は、彼が教えてくれたとおりに意識を鎮めてみる。いまいちパッとしなかったけど、要は眠らせる時の逆をすれば良いんだと思う。そういう事で私は、私が眠らせたライチュウだけを思い浮かべてみる。すると――。
 「……っ、俺は一体……」
 私……じゃなくてトゥワイスの能力から解放されたらしく、寝息を立てていたライチュウが目を覚ました。
 「父さん! よかった……」
 「リツァ、君は一体何を……」
 「後で話すけど、眠らせていたライチュウさんを……! 」
 すぐに何をしたのか話そうとしたけど、環状の通路から直線の方に曲がろうとした時、見たくない物が目に入ってしまう。丁度六時の位置……、三課の出口の方に向かおうとしたけど、そこには見たくなかったもの……、沢山の人たちで溢れかえっている。おまけにどの人も見覚えのある人たちだから――。
 『最悪だよ……。何で、ここまで来て……』
 「本当にね……」
 本当に出逢いたくは無かった。なぜならそこにいたのは、私が配属された“研究三課”のメンバー……、それも、私とシフトが同じ人たちだったから……。それだけでなくて――。
 「グルルゥッ……」
 “狂化”されている五人が、先頭に立って待ち構えていたから……。
 「うっ、嘘だよね? まさか先回りされて……」
 「どっ、どうなってるんだ! ファルツェア、一体何が……」
 「話は後だ! フィナル、行けるな? 」
 だから騎士団の三人は、いつでも戦えるように身構えていた。
 「なっ……リツ! 何でリツが……! 」
 「そっ、それにシャサさん? 何でリツとシャサが……」
 もちろん私も驚いたけど、それは向こうも同じ。シャサの話によると、私は病気で休みを取ってる事になっているらしい。そんな私が研究エリア……、それも眠っているシャサを浮かせているから、何も知らない課員達が騒然とするのも無理ないかもしれない。正直に言うと私に起きた事を話したかったけど……。
 「リツ……? そんな名前、知らないわね。私は“AB588”。邪魔するなら容赦しないわ! 」
 話はしたいけど、この状況ではそうも言ってられない。私は最初からそうだけど、この三人は侵入者で、私はいわゆるスパイみたいなもの。“ルヴァン”にとっては敵って事になるから、脱出するなら戦闘なしでは成功しない。やむを得ないけど、私が課員が知る私じゃないって事を分からせるためにも、こう声を張り上げる。
 「それに……まさかその三人、例の侵入者? 」
 「それとあれはSE01か? 」
 刻一刻と迫る私達に、向こうも徐々に状況を理解し始める。こうなることはある意味予想できたから、一応即興だけど考えはある。眠らせているシャサを走っている私の前に移動させ――
 「あら、そんなことしてもいいのかしら? このエネコロロがどうなっても知らないわよ? 」
 トゥワイスの提案通り、シャサを人質として利用する。言葉だけだと本気度が低そうだから、少し後の方に移動させ、三本ある尻尾の全てを彼女の首元にかざす。
 「人質というわけだな。ファルツェア、ルミエール! 」
 これがかなり効いたらしく、課員達は思わずうろたえる。逆にライチュウは私に浮かされた状態のまま、騎士団の二人に呼びかけていた。
 「すまん、私はブラ……マリーで手が離せない。すまんがルミエール、いけ――」
 「やむを得ん、かかれ! 」
 狼狽えてはいたけど、唯一平常心を保っている一人、私が一番会いたくなかったランクルスが声を張り上げる。かと思うと手に持っている小型の機械を作動させ……。
 「ッガァァァァッ! 」
 五体の生物兵器を向かわせてきた。
 『りっ、リツァ! どうするの、この状況』
 向こうの型は何なのかは分からないけど、少なくとも私の上位互換のAA型ではないと思う。だけどこの状況は、正直に言ってマズいかもしれない。向こうで戦えるのは最低五人……五機に対し、私達は三人。ファルツェアさんが一番強いと思うけど、生憎気を失っているマリーを抱えていて戦えない。多分ライチュウの彼も実力者だと思うけど、流石に生物兵器相手……、それも五機もいたら勝てないかもしれない。ピカチュウの彼に至っては戦ってるのを見た事が無いから、私は最初から戦力には入れてない。そうなると……
 「任せて。考えがあるから」
 まともに戦えるのは、私しかいない。私だけだけど、正直言ってどこまで戦えるか分からない。分からないけど、この状況では私がやるしかない。だからって事で私は、短い時間で考えを巡らせる。もう十メートルぐらいまで迫ってきてるから、急いで……。……するとふと、私はある事を思い出す。それをするとどうなるか分からないけど、今は手段を選んではいられない。だから私は――。
 「トゥワイス! トゥワイスは手当たり次第に眠らせて! 」
 『わっ、分かった! 』
 「……」
 私の一部になっているエーフィにこう頼んでみる。“思念”だけでも能力を使えるのは分かってるから、多分これで結構な数の戦力は削げると思う。
 これで沢山いる課員はなんとかなるから、私は走り続けたまま、意識を最大まで高める。上手くいくかどうか分からないけど、私も生物兵器なら、アレが使えるはず……。だから治まっていたアレ……、暴れ出したい衝動を思い切って解放する。
 「っウゥ……! 」
 『リツァ、まさか……』
 「竜にハ竜を……、霊には霊ヲ……ってネ……。ガルルルゥッ……」
 するとどこからか、抑えきれないぐらいに力溢レ出しテクる。私ト一心同体の彼はすぐに気づイタけど、向こうがソノつもりなら、私も“狂化”して迎え撃テバいい……。私自身いつまで私デいられるか分からないケド、この力なら……、行ける気ガシテキタ。とにかく今は戦いタクテ仕方ないから、私は一ツ、唸り声をあげる……。
 「ガァァァッ! 」
 「四十五パーセントノ失敗作だからカシラね、グルルルゥッ……、何とか私デいられるミタイネ」
 暴れて殺めたい気持ちが溢れてるけど、残りノ五十五パーセントが、何とカ歯止めを利かせてくれている。自分の感覚を確かめメナがら、先頭の元シザリガーを見据え……。
 「ダカラ……、トゥワイス! 」
 『わっ、わかった! 』
 シザリガーを直視する。するとチャント能力が発動してくれたらしく、鋏が四つあるシザリガーは為ス術無く眠りに落ちてくれタ。
 「何っ……! だが……! 」
 「ガァァァッ! 」
 「……アイアンテール! 」
 一機は行動不能に出来たけど、それでもまだ四機いる。敵のランクルス……、私を捕らえたホムクスは一瞬狼狽えたけど、すぐに気を持ち直して迎え撃ってくる。どういう仕組みなのかまでは調べられてないけど、手元の機械を触り、残った四機に指令を飛ばす。すると羽が四枚あるハッサムが向カッテキタカラ、私も三本ある尻尾デ応戦した。
 その間にも、トゥワイスハ次々に能力ヲ使ってくれている。私が意識して目ヲ合わせた訳じゃ無いケど、私の視界に入った課員達が、次々に眠りに墜ちていく……。まさかこんなに上手く浮くなんて思わなかったけど、私が三機目を尻尾で叩き飛バシテイル間に、課員の半分が眠っている。
 「グルルルァァッ! 」
 ダケド四機目、頭の葉っぱが二枚アルベイリーフ――
 「うっ、嘘ヨネ? 」
 “AC612”が、血走った目で私に襲いかかってきた。こんな状況で見分けがツイタ私も驚いてるけど、このベイリーフは、私がズット気にかけテいタフロルで間違いない。この様子だと完全に“狂化”サレテシマッテいるけど、それでも私ガ見間違えるはずが無い。
 「ガァァッ! 」
 「ッテレキネシス! 」
 “狂化”されてしまっているから、フロルは私の事を分かっていないらしい。そもそも自我ガ有るのカモ怪しいけど、この状態だと……、モウ残っていル望みは物凄く薄イと思う。……ダケド私は、彼が元騎士団員って知っているから、鋭い葉っぱを振りかざしてきた彼女を、見エナイ力で拘束する。偶々私の目の前で止まってくれたカラ――
 「……! 」
 目に力を入れ、自力で彼女を眠らせる。……本当は彼女の自我ガあるうちにしタカッタけど、せめてココからだけは逃がしてあげたい。“リフェリア”に連れ帰って……、私もどうなるか分からないけど、眠らせておけば、彼女が暴れ出す事も無いと思う。
 「ちっ……。改造せず解体しておけば良かったか……」
 『リツァ、大体眠らせ、たよ! 』
 「リツァ、君は一体……」
 「助かっタワ。……アイアンテール! 言ったでショ? 私は“AB588”。生物兵器だ、って」
 トゥワイスが言うとおり、起きているのはホムクスだけになっていた。こんなに立て続けに能力をと使わせる事になって凄く不安ニナッテクルけど、声を聞いた限りでは何ともないのかもしれない。横目で三人を見てみると唖然とした様子で追いかけてくれてくれているけど、ファルツェアさんだけが、何とか私に問いかけてきていた。だからって事で私ハ、五体目を倒してから三人に向けて言い放つ。……ここだけの話、今やっと私が生物兵器だ、って受け入れられたンダケド……。
 「……残りはアナタだけよ? 」
 「っ、リツ何――」
 『ふぅ。これで全部、かな』
 私ハホムクスに勝利宣言をシヨウトしてたけど、偶々目を見て喋っテタカラ、彼もトゥワイスの能力に墜ちる。眠らされたから何を言おうとシタノカ分らないけど、正直に言ってどうだっていい。ひとまず退路は確保出来タカラ、私ハ着いてきてくれている三人を確認シナガラ、出口を目指す。最初“第二研究室”で出したままだったけど、それを例の端末にかざす。
 「かっ、壁じゃなかったのか? 」
 すると行き止まりだった場所が手前に開き、その先に上り階段が現れる。私も最初はこうなったけど、ライチュウさん、それからファルツェアさん達も、驚きで声を荒らげる。内心懐かしさに満たされながら、螺旋状に続く薄暗い階段を駆け上がっていく。物凄く久しぶりに上がるフリースペースを通り抜け――。
 「ふぅ。何とか……抜け出セタわネ……」
 日差し差し込む屋外へと飛び出す。長い間地下にいて感覚が狂ってるけど、雨が降って無くて地面が乾いてるから、もしかすると乾期なのかもしれない。“ルヴァン”の門を無理矢理こじ開けてから、私ハずっと浮かせていたライチュウさんを技から解放する。
 「そのようだな」
 「でっ、ですね」
 「……だがリツァ? 君は大丈夫なのかね? 右目が緑色になっているが……」
 「緑……」
 『そうなの? ……あっそっか。僕が機能使ってるから、そうなってるのかも、しれないね』
 「多分、私ガ生物兵器としての能力ヲ使ってるからだと思うわ」
 脱出できて一安心したのか、三人とも気が抜けて座り込んでしまう。ファルツェアさんはこれ以上の修羅場をくぐり抜けていそうだけど、久しぶリダカラナノカかなり着かれて見える気がスル。だけど彼は私の何かに気づいたのか、まっすぐ目を見てこう教えてくれる。自分で見れないから分からなかったけど、すぐにトゥワイスが教えてくれて気づく事が出来た。
 「能力……? ええっと、さっきの……? 」
 「催眠術のように見えたが……」
 「そうよ。本当はこの尻尾の元の持ち主の能力だけど……」
 それでつい能力の事を話しちゃったけど、そのせいでピカチュウの彼が興味を持ってしマッタラシイ。だからって事で私ハ、説明する意味も含メテシャサに意識を向ける。
 「――ぅぅっ……」
 「技の催眠術と違って、好きなタイミングで起こせるらしいわ」
 そうする事で、試しに眠らセテイタ……、人質にしていたシャサを起こシテミル。彼女はまだボーットシテイルラシク、キョロキョロと辺りを見渡していた。
 「ということは、フィナルもそれかね? 」
 「そ――」
 「リツ……そっ、そうよ! リツ! って、ええっ、なっ、何で外に……」
 「シャサ、見ての通りよ」
 「それは見れば分かるわ。だけどリツ? 病気で寝込んでるはずよね? 」
 私に起こされた彼女は、私を見ると完全に目覚めたらしい。ハッと短く声をあげ、矢継ぎ早に私を問いただしてくる。コノ様子ダトファルツェアさん達に気づいてなさそうダケド、ひとまず私ハ、彼女とファルツェアさん達に私に起きた事を話してみる事にする。
 「まず謝らせて欲しいインダケド、私ハ学生じゃなくて、“リフェリア王国”の情報屋。マリー……、いえ、そこで気を失ってるSE01の事を調べるために潜入してたのよ」
 「せっ、潜入……」
 「そう。それに私の本当の名前ハ、リツじゃなくてリツァ。就業時間外に、色々調べさせてモラッタワ。……だけどホムクス、さっきのランクルスに見つカッテ捕まった。その後は……、エーフィを辞めさせられた。“AB588”、ソレカラ私の尻尾を見たら、何が起きたか分カルは――」
 まずはじめに私ハ、シャサに嘘をついていた事を謝る。彼女は親切に教えてくれたから、潜入中とはいえ凄く助カッテタ。だけどその反面、騙していた事が申し訳なくもあった。私ガした事を許シテクレルナンテ思ってないけど……。
 次に大分端折ったけど、今の自分の事。シャサニダケハ話せていないから、私ハ三本になった尻尾を彼女に見せてみる。ソレカラコード番号さえ言えば、ベテラン社員の彼女なら、私ガ生物兵器……、戦闘乙型ニ改造された事を分かってくれると思う。だ――
 「――……くぅっ……! 」
 「りっ、リツァ! 」
 「なっ、何が・・んで・・」
 「だっ、――」
 そう信じて見せてみたけど、その瞬間急に激しいな頭痛が襲いかかってくる。同時に強烈な目眩も……してきて……、私ハソノマ……ま気を……失っ……――




  続……――

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