第二十二話 多大な犠牲の下に
「くぅっ……、ああ言っ、たけど……っ」
“半狂化”して暴走し、たリツァを止める、事は出来たけど、思った以上に状況は酷い、と思う。リツァが戦って、た甲型のジャラランガは僕が眠、らせたけど、そもそも僕が動ける状態じゃない。前足は二本とも切り落とされ、て無くなってるし、尻尾も僕の一本、以外は切断されて、どこに行ったか分からなくな、ってる。そして背中から胸部、にかけて大きな穴が開いて、て、心臓二つといくつかの臓器が完、全に潰されてる。出血も池が出来るぐら、い多いから、リツァが乙型の生物兵器、って事を考えても、生きてるのが不思議、だと思う。
「……っ“浮遊”が使え……たら……っくあぁっ……動け……たと思うけど……」
それで体の傷が貫通して真っ赤に染まってる僕、は、全身の激痛に顔を歪めながらも前足、の切断面に目を向ける。毎日実験で体、を切り刻まれてきた、から慣れてるはずだけど、やっぱり痛いものは痛いし、傷口がグロテスク、で吐きそうになる。リツァの体、だから仕方ないと思う、けど、試験機だった僕、はあまり痛みを感じない、ように作られてたのかもし、れない。
「前足……残ってたら……っあぁぁっ……っ歩けた……っんだけど……な――」
けどずっとこうして、倒れてる訳に、もいかないから、僕は何とかし、て後足だけで歩いてみようとする。腰を大きく反ら、しておしりを高く上げて、無事な後足で何とか踏ん張る。けどそれで覗いたら先が見えるぐらいの穴が開いてる体、を動かしちゃった、から、えげつないぐらい、の痛みが何度も襲いかかってくる。おまけに血も一気に吹き出してくるから、その度、に気を失、いそうになってしまう。けど体、と前足の激痛で――
「リツァさ……りっリツァさん! かっ体が……! 」
で今にも息絶え、そうな僕のところに、別で戦っ、てくれてた06が飛んできてく、れる。06の方はどうなった、のか分からない、けど、緑色の目、で見た感じだと、目立った傷、は無いから無事、なんだと思う。彼、はグレイシア、からシャワーズに変えてるから一瞬誰、か分からなかったけど……。けど切羽詰ま、った表情とオレンジ色の目、それから背中の薄橙色の翼、ですぐに分かりはした。僕がこんな状態、だから、06はそれどころじゃない、と思うけど……。
「リツァなら……裏……で眠って……るよ……。心臓は一つ……っだけ残って……るから……くぅっ……大丈夫……っだと思うけど。……前足……二本とも切り落とされて……」
「だっ大丈夫じゃ無いでしょ! ぜっ02、早く治さないと! 」
あまり見慣れてないはず、の06を不安にさせ、ないように小さく笑いかけ、てみたけど、この感じ、だとあまり意味が無かったのかもしれない。寧ろ完全に取り乱し、ちゃってるから、逆効果、になったと思う。こういうときにリツァ、がいてくれたら助かる、んだけど、彼女は今自我が崩壊し、かけて、元に戻るかも分からない状態……。いつも通りに戻ればいいけど……、多分体と心臓を治す、のが先かな……。
「そうだけ、ど……。その前に06、会いたい人がいる……んだけど、いい? 」
僕達は僕達ですぐにでも治療、しないといけない、と思うけど、僕達は後回し、でも問題ない、と思う。それまで意識と血が持つか不安、といえば不安、だけど、01達がリツァの操作端末、を見つけてくれるはず、だから、それを使ったら何もなくても再生、し始めれる。……だけど僕、それから他の騎士団、の人達もこんな状態、だから、01とルミエール君、の安否が凄く気になる。01もSE型の生物兵器、だけど、ルミエール君は普通のピカチュウ、だからね……。
「01の事だよね? だっだけど02、痛くないの? 」
「痛い……よ……。心臓、三つあるけど二つ……潰されてる……からね……。06……、僕を抱えて……、飛んでくれる……? 前足……切り落とされたから……、歩けなくて……」
「うっうん。腰、持てばいい? 」
この感じだともしかすると、06はまだ切断実験をし、た事が無いのかもしれない。僕が解体された時、からの事を考え、ると、06はまだ、作られてから三ヶ月、ぐらいしか経って、無いと思う。だからなのかもしれ、ないけど、大保管庫”から出た時に、自分の性能はまだ、分かってない、って言ってた。けど戦闘実験、はやった、って言ってたから、それで自分の機能は分かってたんだと思う。
それで僕が01の所に連れ、ていって欲しいって頼んだから、06はあたふた、しながらも頷いてくれる。すぐに僕の真上に飛び上がり、前足でボロボロの僕……、リツァの体を抱えてくれる。羽ばたいた時に吹いた風で背中の傷がズキズキ痛、んだけど、今度は何とか、声をあげずに我慢することは出来た。多分凄い表情、になってると思うけど……。
ひとまず前足と尻尾が欠けた僕、を抱えた状態で、06は環状、になってる通路を飛び始めてくれる。お腹の傷口がむき出しになってるから、赤い液体がボタボタ、と床に流れ落ちて、るけど、さっきよりは勢いは収まってきて、ると思う。
「……そういえば06? 」
「ぅん? 」
「さっき聞きそびれ……たけど、あのランクルス、どうなった? 」
それでやっとまともに話せるぐらい余裕、が出てきたから、06にさっきの戦闘の事を訊いてみる。僕達は“催眠”で無理矢理終わらせ、たけど、僕達の所に来てくれたから、少なくとも洗脳ぐらいは解け、たのかもしれない。抱えられ、てるから06の表情は見えないけど――
「倒せたのは倒せたんだけど、追い詰めたら何か変な生き物が出てきて……。“気爪”で切り裂いて倒せたのは倒せたんだけど、何なの、あの種族。ねぇ02? 研究所の外にいるの? あんな種族」
06は06で、気になる事が、あったらしい。多分06が言ってるのは、あの透明でドククラゲみたいな種族、だと思う。だから僕は――
「その種族なら、僕達、も戦ったよ。……っだけど“ラクシア”の街に、はいなかったし、リツァも知らない、って言ってた、よ」
研究区画に入る前のことを伝えて、みる。本当はリツァ、が話してくれ、るのが一番早い、けど、僕も戦って、るから、少しぐらいなら話す事は、できる。それに短い間、だけど、研究所の外、の世界も知ってるから、06よりは教える事が出来る。けど誰かに乗り移って洗脳、するって事ぐらいしか分からない、から、僕はこれだけ、しか説明できなかった。
「えっ、02達でも知らないの? 」
「うっ、うん……。だけど多分、あの種族、が取り憑いて、研究、員達を操って、たんだと思う」
だけど06は僕達、が知らないなんて思って、もいなかったみたい、で、思わず変な声、を出しちゃってる。だからちょっとだけ飛ぶ、姿勢が乱れ、たから、床に滴り落ちてるリツァ、の血は蛇行して、ると思う。……相変わらず切り落とされ、た前足の断面と、大きな穴が開いた体、は痛いけど……。
「操ってた……? ねぇ02、それってどうい――ぜっ02! 」
「っ! 」
それで僕達は、抱えて飛んでく、れてる先にあったとんでもない光、景を目の当たりにしてしまう。それまでに06は何、かを言おうとしてたけど、驚きすぎて僕達、抱えてくれてる前足の力、を緩めそう、になってた。もちろん僕、もビックリした……というより信じられ、ないけど、その先では――
「っ! くぁぁぁっぁあぁぁっ! 」
「マリー! マリーに何を――」
実験中に見た事、がある小さくて青紫色の誰、かに、首元から大量の血、を流したグレイシア……、声的に01が、体を貫かれていたから……。見た感じだ、と01は翼を切断され、てるみたいだけど、今まそんな、気にしてる場合、じゃなさそう。今まで破壊、してきた生物、兵器が最期にあげてきた声、ぐらいの大きさで呻いてる……。
「特別にSE01を“停止”するだけにしてあげるよ。悔しかったらぼくを殺してでも、コレを奪ってみる事だね」
「嘘……嘘でしょ……! 01! よくも……、よくも01を……! ぐぅっ……! 」
「うわっ……ぜっ02、落ち着いて! 」
確かベベ、って言ったような気がし、たけど、多分01は、彼に殺された……。頭を大きく振ってぐっ、たりした01を振り落とす……。殺された01、は乱暴に床、にたたきつけられ、赤い液体が体から大量に流れ、でて水たまりを作っ、てしまってる……。だからそんな01に僕は我慢、できなくなり、なけなしの力、をかき集めて尻尾に“気刃”を作り出す。折角会えた01、を殺したアイツを生かして、はおけない……。01の仇をとらないと、いけない……。だから尻尾、を思いっきり前に振りかざし、て、三つ叉で緑色の刃を解き放つ。
「ん? 誰かと思えば、反逆者のエーフィ。ええっと名前なんだったかな? まぁいいや。不良品の生ゴミに名前なんて、ニャースに小判だもんね」
「りっ、リツァさん! 」
けど僕の刃は、ベベのほんの少し前、で消滅されてしまう。でベベはそれでやっと、僕達に気づいたみたい、だけど、実験中でもリツァの記憶、でも見た事が無い、ような冷ややかな視線を向け、てくる。正直に言っ、て同じ人、かも分からないぐらい冷たい視線、を向けてきてるけど、このしゃべり方、た確かにあのベベノムそのもの……。この間に、ルミエール君は、投げ捨てられた01、の死体に駆け寄ってたけど。
「それにその翼、06かな? ついでだからきみにも言っておくけど、きみ達“自由進退化モデル”は廃版になったから。有能な“SE03”は“AAS型”に改変させたけど、そのゴミクズに就くっていうんなら、用無しだね。“退化”のデータをくれたきみはぼくがこの手で殺してあげてもいいんだけど、今のぼくは機嫌が悪いからね。役者も揃った事だし――」
それで顔を01の血で真っ赤に染め、たベベは薄耳悪い笑顔を浮かべながら、今度は06に何かを言い始める。今のうちにベベを“気刃”で切り刻みたいところ、だけど、さっきの一発で、僕のエネルギーが底を尽きた……。跳びついて喰い殺してもいいん、だけど、06に抱えられ、てるし、そもそも前足が二本とも無いから走る事も出来ない……。
けど01を目の前で殺された僕、の事を気にもとめてない、ベベ、は、フッと小さく笑うと目を閉じ、て何かをし始める。かと思うと彼から膨大な気みたいな、紺色のナニカが溢れ始め、すぐにそれに包まれる。この感じは多分……、01と06が姿を変える時と同じ。ベベは紺色のオーラごと形を変え――
「――失敗作のテメェ等に出来っこないだろうけど、ちょっとしたゲームで遊ぼうかぁ! 」
それがすぐに消える。……けど気が晴れたベベの姿、はついさっき、までとは全然違う。スピアーにも似、たような形をしていて、サイズも凄く大、きくなってる。もしさっきの、が01達と同じ、なら、僕達三人、の目の前で“進化”した、んだと思う。しゃべり方が荒っぽく、なったベベ、は僕達を見下しながら、声を荒らげてくる。かと思うと手に持ってる小さな機械……、多分操作端末、か何かだと思う、けど、それを一口で飲み込んでしまう。
「そこの生ゴミの命は、保っても数十分。“停止”させてあげたから、三ヶ月は生きてるだろうね。けどそれまでに“修復”しないと、ゴミは兵器のエサにしかならないね。そうなったら、ちゃんと食べてあげたらいいんじゃないかな? ……で、君達は三ヶ月以内に、“SE01”の操作端末をぼくから奪う。……なぁに、簡単な話だよ。生きる価値なんてエサ以下の君達が、僕を殺して抉り取ればいいだけなんだからね。……けど“リフェリア”如きが、“ドータ帝国”の女王様お気に入りのぼくを殺せるかな? まぁたどり着く前に、“帝国”の生物兵器共に国ごと滅ぼされるのがオチだろうけどね。せいぜい食い殺されずに、ぼくを楽しませてくれるのを期待してるよ」
かと思うとベベ、だった何かは、僕達を腫れ物に触る、ような目つきであざ笑って、くる。本当にどういうつもり、かは分からないけど、ルミエール君でさえも普通の人として見て、ない……。おまけに実験、中もそうだった、けど、今は特に命を何とも、思ってさえいない。例える、なら……、足下に転がってる、壊れかけ、のおもちゃ……、そんなとこ、ろだと思う。だからなのかもしれ、ないけど、相当自信、があるみたいで、自分が死ぬ前提、で話を進めてる。……僕達“SE型”の五……、じゃなくて六、人が作られ時からそう、だけど、正気の沙汰じゃない……。
「前から思って、たけど……、本当にどうかして、るよ。そっちがその気、なら、僕達、だって容赦しないよ」
「ハッ、壊れかけのAB型が何を言ってるのかな? 大破したきみに何が出来るの? そこのSE06のエサになるのがオチだろうね。まぁきみ達には腐った生ゴミしか食べさせてなかったか――」
「そんなのやってみないと分からないよ! ピカチュウの君もそうだよね? 」
「えっ? うっ、うん! 俺だって……、普通のピカチュウだけど、マリーのパートナーなんだ。マリーを……、リツァさん達と騎士団のみんなもこんな目に遭わされたら、黙ってなんていられないよ! 」
「その悪あがき、僕は嫌いじゃないよ。……じゃあね、生きる価値のないゴミクズ君。きみ達と“リフェリア王国”に死肉の山が出来るのを、“ドータ”で楽しみに待ってるよ」
「あっ、待――」
「“ウツロイド”! 」
ベベは僕達の反、応なんか全然気にする事、なく、大きな声をあげ始める。すると突然彼の後の、空中に、白い渦みたい、ななにかが出現する。その中か、らさっきの、半透明の種族、が一体飛び出してくる。
「――っ! 」
「さぁ、ゲームスタートだよ」
すると彼は例の生、物に掴まり、そのまま渦の中に吸い込まれ、ていく。ベベごと
吸い込、んだ渦は、何事もなく消滅、してしまった。
続く