Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Deux De Cot 〜帰する郷里〜
Seize 駆ける
 Sideコット



 『くぅっ…』
 爆風に巻き込まれたぼくは、急に現れた別の敵に吹き飛ばされてしまう。そのせいで、塔の天守閣…、ビルで言うと五階ぐらいの高さから投げ出されてしまった。当然、普通のイーブイのぼくは、何の対処も出来ない。為す術なく、最期の時まで身を委ねるしかなかった。
―――ぼく、このままどうなっちゃうんだろう…。この高さだと、絶対に、助からないよね…。…あぁ…、あの時は、楽しかったなぁ…。初めて行ったエンジュで、いろんなものを買ってもらったっけ? あの時はまだカナもぼくも小さかったから、カナ、駄々をこねてたっけ…? たぶん、この事はカナは覚えてないんだろうなぁー。…エンジュといえば、鈴の塔にも登ったっけ? ちょうど秋だったから、紅葉、きれいだったよね…。十三年っていう短い人生だったけど、あそこが一番だった…。もう一回、見たかった…。あと、スクールの卒業研修で行ったヤマブキ。コガネも結構な街だと思うけど、ヤマブキの方が凄かったよなー。何て言うか…、ビルの数が多くて高かった。上ばっかり見て歩いてたから、首が痛くなったっけ? 今思うと、懐かしいなぁ―――
 いつしかぼくの頭の中では、たくさんの走馬灯が駆け抜け始める。浮かんでは消え、浮かんでは消え…を繰り返して、短い人生を振り返っていた。
 『…』
 いつの間にかぼくの小さな体は、飛ばされた勢いを失う。そのまま下向きに弧を描くように、行く先を変える。重力、っていう逆らえない力に引かれて、落ちていく。係数がマイナスの二次関数みたいな軌跡を描いていく。ヒュウヒュウと耳元を駆けていく風が、ぼくに最期を知らせているように感じられた。
 『…お父さん、ごめん…、守れなくて…。カナ、イグリーも、ぼくがいなくても、元気でね…』
 三メートルぐらい落ちたところで、ぼくは固く目を閉じる。この世に残される事になるふたりに、ここからだと聞こえないけど、最期の言葉をかけ始めた。
 硬い地面が、刻一刻と迫る…。目を閉じてるから見えないけど、たぶん、ぼくの高さは塔の二階と三階の間ぐらい。でもぼくは、不思議と落ち着いていた。この後どうなるか分かってるから、地面に叩き付けられることが、怖くはなかった。
―――死んだ後って、どうなるんだろう? 天国とか…、そういう所に行くのかなぁ? ん、でも、ぼくってまだ十三年しか生きてないし、やりたかったこともたくさんあるから、幽霊になるのかな。ゴーストタイプと被るけど、たぶん、違うよね。でも、どのみち同じかな。幽霊は見えないけど、触れないのは同じだし…。…あっ、落ちてるじかんからすると、そろそろ地面かな。きっと即死だから、痛みはないのかも…―――
 遂にぼくは、アスファルトの地面に叩き付けられる。今まで感じた事ないような衝撃が、容赦なく襲いかかる。とうとう耐え切れなくなり、ぼくのありとあらゆ骨が軋み(きしみ)、砕けてゆく…。



 そしてぼくは、その痛みを感じる間もなく、あっちの世界へと…



































 『…あれ? 』
 ぼくはふと、何か違う事に気付く。叩きつけられたはずの地面が、何故か柔らかい…。フワフワしていて、気持ちいい。吹き抜ける風も、顔から尻尾に向けていたのが、急に横向きになっている。それどころか、ぼくにかかる力も、下向きから横に入れ替わっていた。
 ここでぼくは、閉じていた目を開ける。するとそこには、辺り一面に広がるお花畑…、じゃなくて、空と雲を思い出させるような水色と白。後者の白に埋もれるかたちで、ぼくはどこかへと運ばれているようだった。そこから何とか這い出してみると、そこは見慣れた光景、キキョウシティ。地面スレスレの位置を、誰かの背中に乗せられて滑空していた。
―――えっ、もっ、もしかしてぼく、助かったの? じゃないと、今頃ぼくって、あの世に逝ってるよね? でも見た感じ、キキョウシティ。誰かの背中みたいだから、そうなるよね、たぶん―――
 『良かった! ギリギリ間に合った! コット君、大丈夫?
 『えっ、だっ、誰? 』
 運よく助かった、って言うのもそうだけど、ぼくは知らない誰かにまさか当てられるとは思ってなかったから、変な声をあげてしまう。マイクに拾われた声みたいに響く声に、ぼくは驚きながらもこう訊き返した。
―――こんなに響いてなかったと思うけど、どこかで聞いたような…。気のせい、かな、きっと―――
 『会った時とは姿が違うから分からないと思うけど、私だよ! さっき、センターで会った
 『センターで? 』
 『うん
 声的にぼくを乗せてる彼女は、溌剌(はつらつ)な声で呼びかける。まるでぼくのことを知っているかのように、話しかけてきていた。
―――センターで逢った、といえば、ニンフィアのテトラさんと、チルタリスっていう種族のラフさん…。声と見た目? が何となくラフさんに似てるような気がするけど―――
 彼女が弧を描いて浮上し始めたタイミングで、ぼくはその時の事を思い出そうとする。少し引っかかる事があったけど、その答えを出す事は出来なかった。
 『会ったような気がするけど…』
 『ううん、ちゃんと逢ってるよ。私の種族はチルタリス、って言ったらわかる?
 『えっ、ちっ、チルタリスって…』
 彼女が自分の種族名を言ったその時、ぼくの頭の中を、電気にも似た何かが凄い速さで駆け抜ける。同時に引っかかっていたほころびが解け、モヤモヤがどこかへと旅立っていく…、そんな錯覚をぼくは感じた。そしてぼくは、彼女によって得た確信を基に口を開き…
 『ラフ、さん? 』
確かめるように訊ねる。
 『そうだよ!
 それに彼女は、嬉しそうに声をあげた。更に、彼女は話しを続ける。
 『メガ進化してるから気づかなかったと思うけど、私はチルタリスのラフ…
 『めが、しんか? 何なの、メガ進化って』
―――ほっ、本当にラフさんだったんだ。…でも、何なんだろう、メガ進化って。そんなの、初めて聞いたよ―――
 彼女は今更だけど…、って感じで、もう一回名乗る。でもぼくは、初めて聴く言葉が気になり、彼女の自己紹介? を遮る。頭の上にハテナを浮かべながら、こう聞き返した。
 『そっか。メガ進化って、ホウエンとカロス以外では殆ど知られてないんだっけ? ええっと、一言で言うと、一時的な進化、みたいな感じかな
 『一時的な、進化? 』
 『うん。強さと姿だけじゃなくて、種族によっては属性も変わっちゃうんだよ。で、ある程度時間が経つと、元に戻る。…そもそも、メガ進化できる種族は限られてるんだけどね
―――へぇ…。って事は、ちょっとしたパワーアップ、みたいな感じなのかな? それに、ホウエンとカロス以外、って事は、こことカントーではそうって事になるよね。…初めて聴いたし―――
 彼女の説明を、ぼくは何となく聞き入っていた。自分なりに理解しながら、彼女の言葉に頷いていた。
 『…っと、私の事なんかより、コット君、あの塔で何があったのか、教えてくれる?
 『えっ、うん。ええっと…』
 彼女はブンブン、と顔を横にふり、何かを頭の片隅に追いやる。と、急に話題を変えて、僕に迫ってきた。
 キキョウに来て、何回目になるだろう…。ぼくは何回目か分からない驚きの声をあげ、頷く。そのままぼくは、訳が分からないまま、塔の天守閣であった事を話し始めた。

■筆者メッセージ
フライ『“絆のささやき”第三十四回は、シルクの代わりに、ボクがお伝えするよ。今回は、本編について話すよ。

ライト編の方も読んでくれてる人は知ってるかもしれないなけど、この展開は、主人公のコット君の都合のいいように出来てる訳じゃないんだよ。軽く補足をすると、技の調整をしていたラフちゃん達が、偶々塔の黒煙…、ドガースの自爆に気づいて駆けつけた。その時にラフちゃんは先にコット君を助けに向かい、こうなった。こんな感じだね。

前の放送で聴いてるかもしれないけど、このストーリー構成は@の思惑通りみたいなんだよ。一人視点では解らない点が残るけど、もう一人の方を合わせると、それがハッキリする。二人の話が複雑に絡み合って、一つの物語になっていく…。こういう意図が隠されてるんだって。時系列順に更新してるのも、このためなんじゃないかな?

ええっと、今回はここで終了かな。次回、また会いましょう!
Lien ( 2016/04/15(金) 23:36 )