Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Une Des Light 〜新たなる大地〜
Dix 疾走のプランB
 Sideティル



 『…じゃあラグナ、ラフ。テトラがいないから、プランBでいくよ』
 『うん』
 『ああ』
 俺は今ここにいないライトの代わりに、ラグナとラフに視線を送る。僕の合図に気付き、頷いてくれたのを確認すると、声を張り上げて、こう言い放った。
 俺の呼びかけに、二匹も威勢よく声をあげる。二つ返事で了承してくれて、すぐに行動を開始した。
 どっちの組織かは分からないけど、目の前でこんな事が起きてるんだ…。どっちにしろ、止めないと! 俺達は、“エクワイル”の一員なんだから!
 『ティル、いつも通り頼んだぞ』
 『うん! ラフもね! サイコキネシス』
 『ティル兄、当たり前でしょ』
 まず初めに、指揮を執る俺が、先陣を切って駆け出す。一人の少女に力ずくで襲いかかる二人の男…、ターゲットまで五メートルの所まで接近する。そこで俺は、後者二人に対して技を発動させる。
 遅れる事数歩、かけ声をあげるラグナは、俺の後を追うように走る。さらにその真上を、ラフが翼を羽ばたかせ、滑空していった。
 「なっ」
 「何だ!? 」
 「きゃっ! 」
 技を発動させた俺は、見えない力、超能力で標的を彼女から引きはがす。当然彼らは無理やり後方に引っ張られ、後ろにのけ反った。彼女の方も、突如として発生した現象に、驚きの声を漏らす。彼女もまた、短く声をあげ、手を放してしまっていた。
 なるほどね。さっきは見えなかったけど、彼女のポケモンは、ワニノコかぁ。っと言う事は、時期的にも今日旅立ったばかりの新人。対処出来なかったってワケだ。
 『ラフ! 』
 『任せて! 』
 手を放してしまった事により、ワニノコは宙に投げ出される。地面が及ぼす重力によって、降下し始めた。そこで俺は、男二人を拘束したまま、声を張り上げる。後ろから追い抜いてくるラフにこう呼びかけ、指示を送った。
 それに彼女も、最低限の返事で答える。羽音から推測すると、羽ばたく翼に力を込め、飛ぶスピードを加速させる。俺の真上を通過した瞬間に、軌道を斜め下に変える。直線距離で三メートルかけて高度を落とし、低空飛行の体勢に入る。翼を後ろに伸ばす事で滑空…。勢いをそのままに、落下しているワニノコの下に滑り込んだ。
 ここで俺は、走りながら拘束している男達にチラッと目を向ける。黒地のシャツにプリントされた文字を確認してから、その縛りを解除した。
 あのロゴの原型は多分アルファベットで、大文字の“P”と、大文字の“T”。っていう事は、おそらく…。

  ラグナ、ラフ! 多分相手は“プロテ―ジ”だ! トレーナーを襲ってるって事は、少なくとも下っ端じゃない。注意して!

 「何かと思えば、ポケモンの仕業か。まぁいい。いい土産も出来たという訳だ」
 「お前等、あの三匹も捕獲するぞ! 」
 ほんの一瞬の間に、俺はこう推測する。ラグナから教わった文字を基に分析し、声に出さずに結論を伝えた。そこからさらに俺は念を送り続け、二匹にも注意を促した。
 その間にも、相手は自身のメンバーを出場させる。対象を変更したらしく、二つずつボールを投擲していた。
 『言われなくても! 影分身! どうせお前等は下っ端だろう。下っ端如きが、俺達に勝てるのかぁ? 』
 指示を出している間に、ラグナも俺を追い抜いていく。すれ違い様に技を発動させ、二体の分身を創りだした。すぐに現れた敵の前まで駆け寄り、癪に障る言い回しで罠を仕掛ける。作戦通りなら、彼は分身を含めた全員で、威張るを発動させた。
 背中でワニノコを受けとめたラフはというと、身体を思いっきり逸らす事で急上昇を試みる。でも宙返りはせず、横向きに捻って右に急旋回していた。
 『下っ端だと? …確かに俺らは下っ端だが、その辺のクズとは一緒にするな! 』
 『火炎放射』
 『この任務が成功すれば俺達は戦と…グゥッ』
 第二段階、クリア。ラグナが仕掛けた罠にはまり、俺から見て手前を除く三匹は、彼に対して怒りを顕わにする。そこで俺は、残りの一匹に狙いを定め、口元にエネルギーを凝縮させる。ラグナが通過した後で、俺も次なる技を発動させた。一メートルに満たない距離まで迫ってから、喉に力を込め、エネルギーを一気に解き放つ。それは燃え盛る炎に変換され、その相手めがけてい直線に突き進んでいった。完全に意識がラグナに向いていた手前の一匹を捉え、かなりのダメージを与える事に成功した。
 だけど、俺はまだ、攻撃の手を止めない。結果を見届けずに、俺は右手を懐の体毛中に突っ込む。そこで隠し持ってるステッキを手にし、抜刀する。口を閉じると同時に抜き放ったそれは、空気との摩擦で赤い曲線を描く。すぐに左へと振り、二匹目に切りかかった。
 『クソッ! まだいたのか』
 『トレーナーは近くにいないけど、俺たちの事はナメないでくれるかな』
 『くっ』
 続けて俺は、左下の位置から、右斜め上へと切り上げる。駆け抜けながら次なる標的に叩きつけ、三匹目にそれなりにダメージを与えた。口で忠告する事も忘れずに。
 『雷の牙』
 『もう一発! 』
 先を行くラグナも、相手にダメージを与えていく。種族上鋭い牙にエネルギーを蓄え、それをある属性に変換する。そのままの状態で、四匹目に思いっきり噛みつく。すると、噛みついたそこからは、一筋の雷光が駆け抜ける。そしてその相手を後ろ脚で蹴り、左へと飛び退いた。
 そこへ更に、俺が追撃ちをかける。振り上げていた右手に左手を添え、勢いよく振り下ろす。以前として混乱状態にある相手を、炎と共に一刀両断する。そこで俺は一度両足で踏ん張り、速度を緩める。すぐに左足だけを踏み込み、右斜め前へと跳躍した。
 ここまでにかかった時間は、僅か数秒。当然相手のトレーナーは指示を出す間もなく、この状況を迎える事となった。
 仮に指示を出せても、相手のメンバーは混乱状態。出来たとしても、ちゃんとした思考も働いてないから、ろくに戦えない。手を打つ前に、追い込まれるって感じかな、相手からすると。
 『ラフ! 』
 『おっけー。竜の波動! 』
 退避したラグナは、斜め後ろに振りかえり、大声をあげる。その視線の先で滑空するラフに指示を送り、走るスピードを緩めていった。
 ラグナから呼びかけられる前に、ラフは旋回しながら、高度を確保する。同時に喉元に竜のエネルギーを蓄積させ、ブレスの準備をしていた。その後、合図を貰うと、喉に力を込め、暗青色のブレスを解き放った。それも、ただ吐き続けるのではない。放出しながら、首を左から右へとふる。そうする事で地面を薙ぎ払い、混乱状態にある相手チームを一掃した。
 「くそっ! 何も出来なかった」
 「一体あいつらは何なんだ! 」
 「仕方ない、今回は引き上げるぞ」
 戦えるメンバーがいなくなったのか、彼らは悔しそうにこうはき捨て、ボールに戻す。お決まりのセリフを残してから、一目散に敗走した。
 その間にも、ラフは地上に降り立ち、背中に乗せたままのワニノコを降ろしていた。

 …よし、とりあえず、作戦は成功っと。



  Continue……

■筆者メッセージ
シルク『“絆のささやき”、第二十二回の放送は、ゲストとのトークをお送りするわね。今回のゲストは、マフォクシーのティル君よ! ティル君、今回はよろしくお願いするわね。
ティル『俺のほうこそ、よろしくね。
シルク『早速で申し訳ないんだけど、本編の裏話とか、聴かせてもらってもいいかしら?
ティル『うん。俺もそのつもりだったから。俺からの話しは、多分読者の皆さんも気になってるんじゃないかな? もちろん、シルクもね。
シルク『私も?
ティル『そう。俺達が今回戦った種族は、ベトベトン、ゴロンダ、ハスブレロ、オドシシの四種。今気づいたけど、見かける種族がバラバラだね。
シルク『そうね。見たところ、カントー、ジョウト、ホウエン、カロスってところかしら? 
ティル『そうだね。
シルク『ティル君、よく分かったわ。ありがとね。

今回はこの辺で終了。次回をお楽しみに!
Lien ( 2016/04/14(木) 22:22 )