Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Treize de Cot 〜灯台が示すその先へ〜
Cent-quatre 伝承を制する疾雷の信念(大将)
 Sideコット



 「イグリー、ありがとう。…コット、泣いても笑ってもこれで最後。…いけるよね? 」
 「うん、カナ。オークスが倒れて、ヘクトも敗れた。ネージュとイグリーも頑張ってくれたけど、ニドとニアロさんに倒されちゃってる。…だからカナ? 闘えるのは僕しかいないでしょ? 」
 カナ、僕は最初からそのつもりだよ。ニアロさんの専用技でイグリーが倒されたから、カナは無表情で控えに戻してあげている。僕もそうだけど、多分カナは、ルギアの専用技、エアロブラストの威力と派手さにビビってるんだと思う。僕も予想以上の風の強さで畏縮しちゃったけど、何とか持ち直して気持ちを奮い立たせる。カナがこんな状態だから、僕がしっかりしないといけない、そう自分に言い聞かせ、彼女の方に振りかえった。
 「うん」
 「それにニアロさん…、ルギアは僕達が旅立った時に初めてみた種族…。旅の目標になった種族。それにカナ? あの日一緒に話したこと、覚えてる? カナはルギアに会って仲間にして、僕はルギアと仲良くなりたい、って。…ニアロさんは元々エレン君のメンバーだったけど、それでも会えて仲良くなれたでしょ? だからカナ? 折角なんだから、楽しまないと。バトルって、ガチガチになってするものじゃなくて、戦略とか駆け引きとか…、そういうのを楽しんでするものでしょ? 」
 …確かに僕達、逆に追い込まれてるけど、そういう事は関係なしに、楽しまないとね! ずっと目標にしてた事も、ちょっと違うけど叶った訳だし、そもそもバトルは指示する側と戦う側、どっちも楽しいものだからね! 後が無くなって余裕がないパートナーに、僕はやさしく話しかける。旅立った日の事を話す事で、あの日の事を思い出してほしい、僕はそう願いながら彼女に語り続ける。この様子だとエレン君も同じような感じになってるかもしれないけど、バトルの本質っていうものは、色んな組み合わさっていて、それが面白さ、楽しさの一つになっている。戦う側と指示する側、その両方を旅を通して経験してきた僕だからこそ言える事だと思うから、本質を見失ってるパートナーにこう説いてあげた。
 「バトルを…、楽しむ…。…うん、そう、そうだよね? ポケモンバトルって、そういうのだったよね? …コット、ありがとう。お蔭で大切な事を思い出せたよ」
 思い返してみると、僕達の旅って、バトルで楽しむ余裕、殆ど無かったからなぁ…。
 「プライズとプロテージとのバトルばかりで忘れてたけど、バトルって、楽しいものだったよね? 初めてのバトル…、エレン君と戦った時は負けちゃったけど、あの時、凄く楽しかった」
 「いわれてみればそうだよね。…うん。コットくんめがさめたよ」

  確かにその通りですね。自分達もエンジュからは追われてばかりでしたけど、元々そういうものですからね。大変な事ばかりでしたけど、それも“経験”、ですよね。

 「うん! 」
 良かった。何とか、思い出してくれたみたいだね? 僕の想いが伝わったらしく、強張っていたカナとエレン君の表情が一気に緩んでいく。とびっきりの笑顔を見せてくれたから、僕、多分ニアロさんも、ホッと一息つく。その甲斐あって重苦しかった空気が軽くなり、独特な緊張も一気に無くなった。おまけに二人にいつもの元気が戻ったから、僕の気も凄く軽くなったような気がした。
 「エレン君、もうコットとニアロしか残って無いけど、思いっきり楽しもうよ! 」
 「うん! じゃあカナちゃん…」
 二人とも完全に立ち直ったから、パッと弾ける声でこう言い放つ。そして…。


 「めとめがあったら…」


 「ポケモン勝負! 」


 『コット君、いきますよ! 』
 『もちろん! 』
 お決まりのセリフと共に、真打によるバトルが幕を開けた。
 「ニアロさん、最初から飛ばしていきますよ! チャージビーム! 」
 『そう来ないと、自分も思いっきり戦えないですよ! ウェザーボール! 』
 相手はニアロさんだけど、いつも通り戦えば、いけるね! 僕は威勢よく言い放ち、同時に喉元にエネルギーを溜めていく。牽制、強化、両方を兼ねた技を準備し、正面から電気のブレスとして吹き出す。対してニアロさんは、大きな翼を羽ばたかせて浮上し、僕に向けて滑空しながら白い球体を撃ちだしてくる。今の天気は晴れだから、この白い弾の属性はノーマルタイプのはず。炎タイプでも同じだったと思うけど、ちょうど僕から七メートルぐらいの位置で、二つの技がぶつかり合った。
 『もう一発ウェザーボール! 』
 「牽制ですね? 」
 こっちに滑空してきてるから、次はあの技で攻めてくるつもりかな? 六メートルぐらいの高さを滑空しながら、ニアロさんはもう一度同じ技を発動させてくる。ニアロさんの進路からして、多分彼は僕の真上か、少し斜め前を陣取るつもりなんだと思う。だから僕は、ブレスを放ったまま徐々に上を向き、滑空するニアロさんを追うように軌道を逸らしていった。
 『いいえ、本気の攻撃ですよ! ドラゴンダイブ! 』
 「見切り! …っく! 」
 この戦法、さっきイグリーの時に使ってたよね? 僕はちょっと前に観戦していた時の事を思い出しながら、ニアロさんの次の行動を予想する。このままいくと物理攻撃を仕掛けてくるはずだから、僕はこのタイミング…、ニアロさんが五メートルぐらい先に来たところで技を中断する。そのまま僕は二アロさんの出方を伺い、同時に前足と後ろ足、両方の筋力を活性化させていく。僕の予想通り、竜の属性を纏って急降下してきたから、スレスレのところで力を解放し、体を時計回りに捻りながらそれを回避…。一応技自体はかわせたけど、ニアロさんが長い尻尾を振りかざしてきたから、それにはたき飛ばされてしまった。
 「ニアロさん、流石に尻尾までは予想できませんでしたよ! 」
 『自分も、まさかギリギリでかわされるとは思いませんでしたからね』
 そういう意味では、お互い様かな? 尻尾の一撃をまともに食らったけど、幸い技じゃなかったから、あまりダメージは無かった。砂で衝撃が和らいだって事もあって、僕はすぐに起き上がる事が出来た。すぐに向き直り、僕は凄いよ、っていう感じでこう話しかける。それにニアロさんも、僕につられるように明るい声で返してくれた。
 「…だけど、次はそうはいきませんよ! 」
 『それは自分も同じです! 』
 「アシストパワー! 」
 やっぱりバトルはこうでなくちゃね! 僕は威勢よくこう言い放ってから、足に力を込めて一気に駆け出す。ニアロさんも地面スレスレを滑空し始めたから、僕は別の技を準備する。潜在的な何かに意識を向け、そのエネルギーレベルを高めていく。ニアロさんが通り過ぎる予定の砂浜にエネルギー体を出現させ…。
 『っく! 』
 死角から遠隔射撃を試みた。僕の思い描いたように空気をかき分け、薄紫色の球体はその位置から真上に空気をかき分ける。その甲斐あって気付かれなかったから、ニアロさんに不意の一撃を与える事に成功した。
 『…神通力! 』
 「くぅっ…! …チャージビーム! 」
 『っあぁっ…! 』
 だけどニアロさんも負けじと、見えない力で反撃を仕掛けてくる。サイコキネシスとは違って、僕の頭に直接痛みが襲いかかってきた。
 予想外の反撃を食らったけど、僕だって負けてない。痛みに耐えながらもエネルギーを溜め、電気を纏わせてから喉に力を込める。正面から向かってきているから、伏せるような感じで光線を照射していく。イメージを膨らませていたって事もあって、ニアロさんのお腹の辺りから尻尾にかけて命中させることが出来た。
 『…コット君、さっきよりも威力…、上がってませんか…? 』
 「あれ、…今気づきましたか? 」
 すぐにバレるかと思ったけど、ずっと気づかなかったんだね? ニアロさんはそいうえばっていう感じで、僕に尋ねてくる。だけど僕は既に気づかれてるって思い込んでたから、思わず拍子抜けした声をあげてしまった。
 「エレン君から聴いてて…、知ってるかと思ったけど、…今気づいたんですね」
 『バトルに夢中でしたからね…、…エアロブラスト! 』
 ニアロさん、やっと使ってきましたね。エレン君から訊いてなかったみたいだから、僕は適当に返事する。一応会話している状態だけど、いつ仕掛けてくるか分からないから、すぐに技を発動できるようにエネルギーレベルを高めておく。そのお陰で僕は、ルギア専用の技、エアロブラストにすぐ対応する事が出来た。
 ニアロさんまで六メートルぐらいの距離があるから、その間に僕は四肢の筋力を最大…、いやそれ以上にまで活性化させる。この技は何回も波が襲ってくるから、僕はそのうちの第一波が来るまで、体勢を低くしてその瞬間を待つ…。
 「…見切った…! 」
 同時に目にも意識を集中させ、ほんの一瞬の逃げ道を見極める。先頭が六十センチ手前に来たところで、僕は右斜め前に跳ぶ。この一歩で勢いをつけ、今度は踏み切るのと同時に左に重心を移動させる。溜めた足の力を解放し、砂を思いっきり押すことでその方向へと跳躍する…。これを二、三回繰り返しながら前進し、見切りの効果時間が終わる前に衝撃波の嵐を駆け抜ける。最後の一派をやり過ごしたところで喉元にエネルギーを蓄積させ…。
 「目覚めるパワー…、連射! 」
 衝撃波を追うように距離を詰めてきていたニアロさんを狙い、水色の弾丸を連続で解き放った。何もしない状態だとあまり威力は高くないけど、チャージビームでそこそこ長めの時間強化しているから、ニアロさんでもタダでは済まないはず…。
 『…! ウェザーボールぅっ…っく! …もしかして…、氷タイプ…、ですか…? 』
 「そうです…! …チャージビーム…! 」
 『…くぅっ! 』
 …うん、ちゃんとダメージ、通ってるね! ニアロさんは咄嗟に白い弾丸で防ごうとしてたけど、一発放っただけで間に合っていなかった。その一発は先頭の水色に命中したけど、まだ六発残ってるから、そのうちの五発をまともに食らってしまっていた。慌てて浮上していたから最後の一発はかわせていたけど、ニアロさんにとっては出来れば食らいたくない氷タイプ…。相当堪えているらしく、高い位置から見下ろす顔が苦痛で歪んでいた。
 だけどここで攻撃の手を緩めたら、勝てるものも勝てなくなるかもしれない。僕は技の属性相性では有利だけど、ニアロさんは高威力の技を二つも使う事が出来る。エアロブラストはもちろんだけど、五メートルはある体でのドラゴンダイブは、四足で立った時の身長が八十四センチにとっては致命傷になりかねない。…最悪の場合骨折だけでは済まないかもしれないから、この二つの直撃だけは避けないといけない。その二つを使わせないためにも、僕は強化された電気の光線を問答無用で吹き出した。
 『…コット君、流石…、ですね…』
 「ニアロさんも…」
 ここまで来たら、あと一歩、かな? 僕の光線が直撃したニアロさんは、そのダメージのせいで砂上に墜落する。倒せたかな、僕は一瞬そう思ったけど、その考えはすぐに対戦相手によって掻き消されてしまう。ニアロさんはふらついていたけど、両方の翼を支えにして何とか立ち上がる。
 『…ですけど、…本当は使うつもりは…、ありませんでしたけど…、コット君…、自分をここまで…、追い込んだ…、あなたに…、敬意を表して…。…“無常なる事象よ…、我が身の…、力となれ”…。…“候象(こうしょう)の加護”を…、発動させて…、いただきます!
 「くっ…! 」
 なっ、なに、この風…! 強すぎない? 技じゃないみたいだけど…、もしかしてこれが、ニアロさんの能力…? 限界が近いらしく、ニアロさんは絞り出すように声を出す。それでもニアロさんは、切れ切れになりなりながらも、呪文めいた何かを唱える。何をするつもりなんだろう、首を傾げながらこう思っていると、ニアロさんの方から、急に強い風が吹いてきた。…いや、ただ強いっていうレベルじゃなくて、重心を落として踏ん張ってないと飛ばされる…、気を抜くとすぐに吹き飛ばされてしまいそうな、台風並みの強さ…。吹き飛ばしとか追い風…、技じゃない、ってすぐに分かったけど、僕は飛ばされないように踏ん張るのが精一杯になってしまった。
 『…コット君…、自分は…、今日ほど楽しい…、バトルは…、したことがありません…。…ですから、そのお礼として…、…自分の全力以上の…、力を…、受け取ってください…! ウェザーボール…!
 フラフラの状態だけど、ニアロさんは残った力をふり絞って翼を広げる。能力で起こした風に乗り、十二メートル先にいる僕の方に滑空してくる。もちろんそれだけじゃなくて、口元に球体を作り出し、僕の方に撃ちだしてくる…。
 「ぅあぁぁっ…、くぅっ…! 」
 頭ではわかってたけど、強すぎる風のせいで、体が言う事を聞いてくれない。何もすることが出来ず、僕はその弾丸を食らってしまう。直撃してから分かった事だけど、この透明な弾丸は飛行タイプを帯びていたような気がする。…確かエレン君は天気に関する伝説に関わってるから、ニアロさんの能力も天気関係。それにウェザーボールは、天気によって属性が変わる技。能力で風を起こしているから、その関係で飛行タイプになってるんだと思う。
 「…ニアロさん…、僕も…、そう言ってもらえて…、嬉しい…、ですよ…。ここまで…、何回も何十回も…、戦ってきたけど…、僕だって…、こんなに…、凄いバトルは…、初めてですよ…。…だから、ニアロさん…、お互いに…、こんな状態だから…、次の一発で…、決着を…、つけませんか…? 」
 『そう…、ですね…。自分も…、お世辞にも…、戦える状態では…、ないです…。ですから…、そうしましょう…! 』
 「…はい! 」
 僕もそうだから、本当に次で最後だね…。っていう事は、ニアロさんはあの技を発動させてくるよね…? それなら…。




 『エアロブラスト!



 「目覚めるパワー!



 残りのエネルギー、全部を注ぎ込んだこの一発で決着をつける! とっくに限界を超えてる僕達は、全く同じタイミングで最大威力の技を発動させる。地に足をついているニアロさんは、多分残っている全部のエネルギーを翼に集め、一片も残さずに飛行属性のエネルギーに変える。
 僕は喉元に氷属性のエネルギーを集中させ、上を見上げた状態で丸く形成する。いつもなら何個にも分けて撃ちだすところだけど、今回は分けず、巨大な球体、一つだけを創りだす。試した事が無いから全く見当がつかなかったけど、エネルギーが枯れるまで注ぎ込んだら、半径で一メートルぐらいの大きさまで膨れ上がった。
 

 『これで…


 「最後です…!


 全く同じタイミングで、ニアロさんは全てを凝縮した透明な一波を、僕は水色の巨弾を、互いに認めた対戦相手めがけて解き放った。その結果は…。






 「ぅっ…っ! 」


 『…っくぅっ…っ! 』



 中間地点で二弾はぶつかり、互いに威力を減退させ合う。だけど両者ともに削りきることが出来ず、半分ぐらいの規模になったところですれ違う。進路は全く逸れず、真っすぐ対戦相手の方へ…、飛んで…、いく…。

 全く同じタイミングで…、命中し…。


 『コット…、君…、楽し…、かった…、よ…』



 「ニアロ…、君…、僕も…、だよ…」



 完全に…


             両者の…


     …体力を

                     削り…


         きっ…



            た…。


   結果を…


          見届けようと…




 したけど



               僕の


     意識は



           ここで




  途切れた。





 Chapitre




                Treize



               de



    Cot 




 〜灯台が




              示す



         その ・ ‥  …

Lien ( 2017/08/15(火) 21:33 )