Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Treize de Cot 〜灯台が示すその先へ〜
Cent-trois 潮風に乗る吹翔の翼(次将)
 Sideイグリー



 「イグリー、このまま圧しきるよ! 」
 『うん! ニド、まさか君と戦うことになるなんて思わなかったよ』
 『…僕もだよ』
 何気に何回か会ってるけど、結局戦った事は無いからなぁー。自分のボールから飛び出した俺は、すぐに正面にいるニドに話しかける。ここまでのバトルはヤライとヘクトのをチラッと見ただけだから分からなけど、ニドが出てるって事は終盤に差し掛かっている、そんな気がしている。それに俺がパッと見た感じだと、ニドの体の所々に氷がへばりついているから、ネージュがある程度削ってくれているんだと思う。…となると命中させたのは吹雪のはずだから、少しは楽に闘えるかもしれない、って率直に思った。…手を抜くつもりなんて、全然ないけど。
 『…ヘクトとコットとは戦った事があるけど、よく考えたらイグリーとは無かったからなぁー。…じゃあ、早速始めよっか』
 『そうだね』
 ニドはエレン君のパートナーだからね、手負いだけど気を抜けないね。ニドは思い出したかのようにこう呟くと、相変わらずな調子で話題を切り替える。俺としても長々と話されると、ニドに回復される、そう思っていたから都合がいい。ニドはやる気みたいだから、当然俺はすぐに頷く。もちろん俺も戦いたかったから、威勢よく声をあげ…。
 『…さっきは先を越されたから、今度は僕からいくよ』
 『だけど、俺が空に行ってはそうはいかないよね? 追い風! 』
 溜めたエネルギーを解放しながら前に羽ばたかせることで、後ろの方から強めの風を吹かせた。ほぼ同じタイミングでニドも走りだし、多分右の拳にエネルギーを送り込んでいると思う。どんな技を使うのかは分からないけど、あの感じだと、打撃系の何か…。ニドキングっていう種族は色んな属性の技を使える、そう聴いた事があるから、多分電気タイプか氷タイプの技だと思う。だから俺はすぐに浮上し、ニドの真上を陣取るように旋回する。そしてその状態で翼を硬質化させ…。
 『…それなら、降りて来た時に一泡吹かせるだけだよ。…冷凍パンチ! 』
 『鋼の翼! 』
 真上から急降下し、浮上し始めるタイミングで右の翼を打ちつける。ニドもこれに合わせて氷の拳を振り上げてきたけど、鋼の属性を纏っている俺の翼には大したダメージは通らない。降下するスピードも上乗せしているから、そういう事もあって俺の翼が拳を押し返す。タンバでのプライズ戦でフライさんから教わった応用方法の一つだから、例え種族上守りが弱くても耐え抜く自信はある。…だけどこのままだと無防備な背中を狙われるから…。
 『追い風! 』
 『…やっぱり、イグリーは早いね』
 浜辺の潮風を味方につけて、攻撃が届きにくい空中に退避した。
 『…だけど、僕が物理技だけだって思わないでほしいね。…ベノムショック! 』
 『狙撃も出来る、って訳だね? 鋼の翼! 』
 遠距離技が毒タイプなら、鋼の翼で完全に打ち消せるね。四メートル上空にいる俺を狙い、ニドは俺を撃ち落とすべく紫色の塊を飛ばしてくる。だけど俺は構わず急降下し、さっきと同じ要領で翼に鋼の属性を纏わせる。
 『防いじゃえばどうって事無いよ! 』
 『…えっ、っく…! 』
 半分ぐらいまで降下したところで、俺は身体を時計回りに捻り、翼でも捻りをアシストする。そうする事で俺は横方向に高速回転し、飛んできた毒塊を跳ね除ける。そのままの勢いでニドに突っ込み、今度は確実にダメージを与える事に成功した。
 『…けど、一発当てたからって、…いい気にならないでほしいなー。…冷凍パンチ! 』
 『…っ! 鋼の翼…! っく…! 』
 よっ、予備動作無しで…? ぶつかった反動で後退し、俺は後ろ向きで飛んで距離をとろうとする。だけど俺の攻撃を耐えたニドが逃がす訳が無く、氷を纏った拳で反撃してきた。一メートルにも満たない距離しか開いてなかったから、俺は慌てて技を発動させ直し、前にかざすことでそれを防ごうとする。…だけどあと少しの所で間に合わず、堅くなりかけている左の翼にヒットし、その部分が凍りついてしまった。
 『…どう? これで飛べなく…、なったでしょ? 』
 『確かにね…。…だけど、飛ばなくても戦う方法は…、沢山あるよ! …燕返し! 』
 凍らされたなら、逆にそれを利用するだけだね。左の翼の自由を奪われてしまい、俺は後方に飛ばされながら砂浜に墜落してしまう。羽と羽の間に砂が入り込んで鬱陶しいけど、今はバトル中だからそうも言ってられない。俺は広げた状態のまま凍りついた左の翼を庇いながら、自分の足で砂浜を駆け抜ける。無事な右の翼で空気を強く叩き、同時に即行性のある技を発動させることで、九メートルある距離を一気に詰めた。そして…。
 『うぅっ…! 』
 『技を発動させなくても、…原始的な方法で攻撃すればいからね! 』
 ニドの五十センチ手前で砂を思いっきり蹴り、跳び上がるように進路を変える。その時に左の翼も同時に振り上げ、ニドの下顎に思いっきり叩きつける。ニドの特性は“毒の棘”だけど、叩きつけた翼が凍ってたからなのか、刺されたような感覚は全く無い。…むしろその衝撃で氷が砕けたから、両方の翼を羽ばたかせることが出来るようになった。
 『…原始的な方法…、かぁ…』
 『俺も教わるまで気付かなかったけど…、それならエネルギーを消費しなくても…、攻撃できるでしょ…? …鋼の翼! 』
 翼も自由になったし、そろそろ一気に攻めても良さそうだね? 二メートルぐらいの高さを維持して飛び下がっている俺は、こんな風に種明かしをしながら作戦を練る。ネージュとの戦闘、それから俺の攻撃でそこそこ削れているはずだから、そろそろ勝負を仕掛ける時、俺はこういう結論に至る。だから俺は前傾姿勢になって地面スレスレを滑空し、六メートルぐらい開けた距離を一気に詰める。けど今度は正面から攻めず…。
 『…それも、原始的な方法…? 』
 一度進路を右に変え、すぐに体勢を左に傾ける。もちろんただ旋回するのではなくて、ニドの周りを飛び回るように…。更に硬質化させた左の翼を砂浜に接触させ、その部分に線を描いていく。それを右の翼で速度を上げながら続けることで、ニドの周りを囲うように砂を巻き上げていく…。四、五周したところで急浮上し…。
 『いいや、…技の準備を効率的にするための…、作戦だよ。鎌鼬…! 』
 『えっ…、…ベノム…』
 『燕返し…! 』
 意図的に作り出した空気の渦にエネルギーを干渉させ、その状態で両翼に凝縮する。すぐにニドがいる方に体勢を戻し、解放しながら両翼を思いっきり前に叩きつける。そうする事で空気の刃を二つ創り出し、ニドがいる場所で重なるように解き放った。
 これにニドは遠距離技で対抗しようとしていたけど、俺が追い風を発動させているっていう事もあって、間に合っていなかった。俺は二つの刃を追うように急降下し、同時に右の翼に力を溜めていく。
 『…っぁぁッ…! 』
 前者がヒットしたところで両翼を後ろ方向に伸ばし、空気の抵抗を極限まで減らす。
 『これで最後…! 』
 一メートルの距離になったところで思いっきり振り抜き、スピードを乗せた翼で頭に思いっきり振りかざした。
 『っぐぅ…! 』
 俺に真上から殴られたって事もあって、ニドは頭から倒れ、砂に突っ込んでしまっていた。
 「…ニドありがとう…ニアロもうあとがないよ! だからなにがなんでもたおしてかつよ! 」
 『うん! …だけど、まさかここまで追い込まれるなんて思いませんでしたね』
 やっぱり最後のメンバー、ニアロさんだったね。俺の連撃を耐えられなかったらしく、ニドはエレンにボールに戻してもらっていた。…となると残りは、俺の予想が正しければルギアのニアロさんのはず…。本音を言うともう一回ユリンと戦いたかったけど、ニドが出ていたって事は、もう戦闘済み…。だから俺の予想通り、エレンは伝説の種族の彼を出場させていた。
 「えっ、エレン君? 今度も、特性か何かで化け…」
 「ううんこんどはほんもののルギアだよ」
 「でっ、でも、伝説のポ…」
 「わたしもよく分からないけど、何かカントとジョウトの伝承? 伝説? に関わってるんだって」
 『あはは…。驚くのも、無理ないですよね。自分みたいな種族は、普通に生活していたら決して会えないですからね』
 『確かにね』
 色んなことがあり過ぎて俺も忘れそうになるけど、普通はそうだからね。エレン君がニアロさんを出場させたから、カナの友達のミヅキさんはあまりの事に声を荒らげてしまっていた。この反応が普通だと思うけど、…この旅で慣れてるからなのか…、それとも俺達の感覚が狂ってるからなのかな…? どっちかは分からないけど、カナは何事も無かったかのようにエレンの事を話してあげていた。
 それにニアロさんも、慣れているのか若干の苦笑いを浮かべている。この旅で五種類の伝説の種族と逢っている俺も、つられるように軽い笑いを浮かべた。
 『それにこれは自分の独り言なんですけど、伝説の種族だし体も大きいからですかね…。実年齢よりも結構上に見られるんですよね…』
 『伝説の種族も大変なんだね…? …ってことは、案外俺達と…、歳が近かったり…』
 『近いというより、ほぼ同じですね。自分はエレンの二つ上の、十五歳ですから…』
 『へぇー、…それはちょっと意外だね』
 …ごめん、俺も大分上かと思ってたよ。ニアロさん…、ニアロ…君? は割とこの事を気にしているらしく、ボソッと呟く。ちょっとニアロ君には申し訳ないけど、俺もてっきり年上かと思っていた。…だけどよく考えてみたら、どこか幼さ? あどけなさ? もあるし、シルクさんは普通に“君”付けしてた気がする。俺と二つしか変わらないって事には流石に驚いたけど、伝説の種族の二アロ君に、結構親近感が湧いてきたような気がした。
 『世代交代する伝説にとっては、よくある事かもしれませんけど…。…と、気を取り直して、バトルに移りましょうか』
 『あっ、うん。そうだね』
 『確かに自分は伝説の種族ですけど、“チカラ”があるだけで、他の方とは変わりません。…ですから、イグリー君、正々堂々戦いましょう! 』
 『うん! その方が、俺も戦いやすいよ』
 コルドさんもそうだったけど、伝説の種族って、礼儀正しいひとが多いのかもしれないね。ライトさんも、堅くなくて結構話しやすいし…。仕切り直して、っていう感じで、ニアロ君は話題をバトルの方に戻す。伝説の種族って言われると流石に畏縮してしまうけど、こう言ってくれてるから、結構ありがたい。気さくに話してくれているって事もあって、俺は少し、今までの事もあって、伝説の種族に対する考え方が変わったような気がする。だから…。
 『その方が、戦い甲斐がありますからね。…ですので、三十七代目としてではなく、一ポケモンとして、全力でいくので、覚悟してください! 』
 『最初からそのつもりだよ! 追い風! 』
 『ウェザーボール! 』
 ニアロ君の一声をきっかけに、中断していたバトルが再開した。
 真っ先に俺は、効果が切れている風を吹かせる。その流れに乗って、十メートルぐらいある距離を滑空する。対してニアロ君も、口元にエネルギーを集中させ、それを丸く形成する。白くなったそれで俺の接近を阻むべく、正面から撃ちだしてきた。
 『牽制のつもりかもしれないけど、そうはいかないよ! 燕返し! 』
 『そうとは限りませんよ? ドラゴンダイブ! 』
 ニドみたいな特性じゃないから、戦いやすいね。ニアロ君は撃ちだすと同時に羽ばたき、真上に向けて浮上する。対して俺も、右の翼に力を溜めながらニアロ君の後を追う。両翼を広げる事で急浮上し、真下から攻撃をしか…。
 『…っ! 』
 …ける事が出来なかった。俺の追撃を予想していたのか、ニアロ君は向き合うように大きな翼を広げる。かと思うと両翼を後方に伸ばし、俺に向かって急降下してくる。そのまま俺は力を溜めた右の翼を叩きつけたかったけど、何しろ相手は五メートル以上の身長がある大型の種族…。同じ飛行タイプとはいえ、体格が違いすぎるから、まともにぶつかると俺が圧し負けてしまう。咄嗟にそう判断した俺は、高度差が十メートルぐらいになったところで左の翼を広げ、左上方向に急旋回する。…けどギリギリのタイミングだったから、尾羽を両足をニアロ君の翼に接触させてしまった。
 『…鎌鼬! 』
 『ギリギリでかわしたみたいですけど、…っく! そうはいきませんよ! …エアロブラスト! 』
 エアロブラスト…、専用技に相応しいよ…。旋回した事でニアロ君の背後をとったから俺は即行で溜め技の準備に入る。発動までに結構なラグがあるけど、接近し始める前には何とか準備をする事が出来た。弧を描く様に浮上してきたタイミングで、俺は多めのエネルギーをつぎ込んだ空気の刃を二つ解き放つ。かわされるかと思ったけど、二アロ君も技の準備中だったらしく、かわし切る事が出来ていなかった。
 予想に反して命中したって事もあって、俺は一瞬気を抜いてしまう。すぐに警戒のレベルを高めたけど、その一瞬でニアロ君の攻撃を許してしまった。かなりの量のエネルギーを変換していたらしく、浮上しながら前に叩きつけると、無数の衝撃波が俺めがけて飛んでくる。しかも俺の視界一杯に広がるぐらい広範囲だから…。
 『はっ…、鋼の翼ぁっ…っくぅっ…! 』
 どう考えても回避が間に合いそうにない。だから俺は、咄嗟に両翼にエネルギを送り込んで硬質化させ、それを防ごうとする。一応発動させる事はできたけど、耐え切る事が出来ず、まともにそれを食らってしまう。それもルギア専用の技に相応しく、もの凄い衝撃が俺に襲いかかってくる。
 『…っく! 』
 為す術無く吹き飛ばされ、砂浜めがけて真っ逆さまに堕ちていくしかなかった。この重撃、そしてニドとのバトルの疲労も合わさって、俺の視界は暗転してしまった。


 …コット。残りはコットだけ…。俺はコットなら倒せる、って信じてる…。…だから、後は頼んだよ…。



 Continue……

Lien ( 2017/08/15(火) 15:36 )