Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Treize de Cot 〜灯台が示すその先へ〜
Cent-un 陽下に燃える惑炎の策(次鋒)
 Side ヘクト



 「ヘクト、連敗だけは阻止するよ! 」
 『おぅよ! …っつぅー言う事は、オークスは倒された、って事だな? 』
 「うん。イリュージョンは解除したけど…」
 何しろ相手はあのヤライだからな。メガ進化しても、オークスじゃあ勝てなかったっつぅー訳か。カナが投げるボールから跳び出した俺は、頭から宙返りしてから両足で着地する。足元の砂を派手に巻き上げながら辺りを見渡し、俺は今置かれている状況を大雑把に把握する。まず目に入るのは、ついさっき共闘したゾロアークのヤライ。直前にオークスと戦っていたはずだが、パッと見た感じでは目立った傷はほぼねぇー。足取りもしっかりしているし、何より俺の出場を今か今かと待ちかまえてくれている。もちろん俺も俺もそうだが、ヤライは俺と本気でやり合う事を楽しみにしていたのかもしれねぇー。俺がボールから出た瞬間、物足りなそうな顔から、パッと明るい表情に変わっていた。
 『ヘクト、さっきは助かったわ。アタイも自信があったけど、あそこまでは思いつかなかったわ』
 『…だがあれは咄嗟の作戦だったからなぁ、今思うともっといい戦法があったんじゃねぇーかな』
 『けど、それでも何とかなったじゃない! それだけで十分よ』
 まさか俺もあそこまで上手くいくとは思わなかったが、ここまで褒められると流石に恥ぃな…。俺が相手だと分かったヤライは、待ってましたと言わんばかりに声をあげる。ジム戦でカナ達と合流してからすぐに控えに戻ったって事もあって、あの後俺達は一切話せていなかった。控えにいた時間からしてバトルをしている、そう察していたので、俺は終わってからでも話そう、そう思っていた。んだが話しかけられて早々べた褒めされたから、俺はある意味拍子抜けしてしまった。笑いながら、謙遜なんかをしてみはしたが…。
 『いやヤライこそ、あのギガインパクトは強烈だったよなぁ! 流石に俺でも、あの威力の技はだせねぇーよ。んだから、ヤライ、お前もすげぇーよ! 』
 『あの技はニアロに協力してもらって完成した技だからね、アタイが一番の威力を出せる自信があるわ』
 『あのルギアがどの程度かは知らねぇーが、ギガインパクトは最上級技だしなぁ』
 もし俺のものまねでコピーしても、あそこまでの威力は出ねぇーだろうな。ここまでべた褒めされた気恥ずかしさもあったから、俺も負けじとヤライの事を褒め倒す。ヤライ自身も褒められ慣れてないのか、平生を装うとしているが目が泳いでいる。顔も少し赤くなっているから、案外こういうのに弱いのかもしれねぇー、俺は立て続けに褒めながら、率直にこう思った。
 『それもそうなのかもしれないわね。…さぁ、立ち話もこのぐらいにして、そろろそ始めようかしら? 』
 『そうだな。こうして話していても、何も始まらねぇーからなぁ! 』
 『そうよね! …じゃあヘクト、いくわよ! 』
 『おぅよ! 』
 ヤライ、俺がバトルを断ると思ったか? 照れ隠しなのかもしれねぇーが、ヤライは話題を急にバトルの方に切り替える。そんなヤライが可愛くて俺のタイプでもあったが、今はバトルで敵対している関係…。チラッと湧き出た感情を奥の方に追いやり、頭をバトル一色に切り替える。ヤライが威勢よく言い放ったから、俺大きく頷いてそれに応えた。
 『…ナイトバースト! 』
 『熱風! 』
 やっぱヤライも、最初は牽制か! 俺が顔を上げたのを合図に、俺達のバトルが幕を開けた。ほぼ同時に相手に向けて駆けだし、全く同じタイミングで技を発動させる。俺は三メートルぐらい走ったところでエネルギーを活性化し、一気に解放する事で焼け付く突風を吹かせる。ヤライはヤライで悪の属性を纏わせ、衝撃波として解き放ってきた。
 『影分身! ヘクト、覚悟する事ね! 』
 『それは俺のセリフだぁっ! 』
 俺はヤライの手の内を知っているが、ヤライも俺の戦略を知っている…。お互いに相手の事を知ってるっつぅー訳か。…面白い! 互いの距離が五メートルになったところで、ヤライは一体の分身を作りだす。左右に分かれる様に進路を変えたから、おそらくヤライは俺を挟みこむつもりなんだろう。
 『毒々! ヤライ、流石にこれでは近づけねぇーだろぅ? 』
 『そうね。流石にアタイも毒状態にはなりたくない。…けど、最強を名乗ってる以上、何とかしてみせるわ! 』
 『やっぱそう来ねぇーとなぁ! 俺も戦い甲斐がねぇーよ! 』
 ヤライ、期待してるぜ! ふたりのヤライが迂回して俺を挟みこんできたので、俺は走っていた足を止め、迎撃態勢に無いる。前足で強く踏ん張りながらエネルギーを溜め、完全に止まったタイミングで毒の属性に変換する。片方の距離が三メートルになったところでそれを解放し、俺の周り一メートルぐらいを囲うように紫色で染め上げる。しかしヤライは咄嗟にそれに気づき、慌てて反時計回りに跳び退いていた。
 『影分身! これで…』
 『ものまね…、影分身! ヤライ、早速使わせてもらうぜ? 』
 俺の技とのバランスを考えると、やっぱこれが一番だな! すぐに対策を思いついたのか、ヤライは一体の分身を作りだし、そいつに手助けをさせる。両手でヤライ本人の両脚を掴み、リフトアップするように持ち上げさせる。ヤライ自身はタイミングを見計らい、最高点に達したところで分身の両手を強く踏み込む。そうする事で大ジャンプし、俺の毒のラインを跳び越そうとしていた。
 …だがこの行動は、俺の想定内。そうさせる様に仕向けたから、すぐに前足に強めに力を入れ、バックステップで跳び退く。毒線の外周ギリギリに前足が降り立ち、その瞬間からヤライを強く意識する。俺が持っているエネルギーも干渉させ、ヤライが発動させた変化技をコピー。すぐに発動させ、ヤライと同じように一体の分身を作りだした。
 『影分身をコピーするとはね…。いいじゃない、敵ながら天晴(あっぱれ)って言いたいわ! …辻切り! 』
 『ゴーストにはゴーストを、ドラゴンにはドラゴンを、っつぅー言葉があるだろぅ? それを実践しただけだなぁ! 影分身! 』
 相手に策を講じられたなら、それ相応の作戦で対処する…、基本だろぅ? 俺の咄嗟の判断で失敗していたが、ヤライは負けじと追撃を仕掛けてくる。助走をつけて俺の毒を跳び越し、前傾姿勢で俺の方へ駆けてくる。しかもそれだけではなく両手を体の前でクロスさせ、爪に黒いオーラを纏わせながら…。だから俺は、もう一体の分身を作りだしてそれを迎え撃つ事にした。
 『袋叩き! 』
 『やっぱりそれで来たわね! 』
 一発目は外れたか…。三メートルに迫ったところで、俺は二体の分身をヤライの方へ走らせる。斜め右、斜め左から跳びかからせたが、大きく跳躍する事でそれはかわされてしまう。ならばと言う事で、俺は立て続けに十八番の技を発動させる。真っ先に頭を下げ、角を向けてヤライに突っ込んだ。
 『甘いわ! 』
 「ヤライさん、流石ですね! ネージュ! 」
 着地点にコットがまわり込んで、そのまま頭突きを食らわそうとする。だがこの行動を読まれていたらしく、ヤライは体を時計回りに捻り、スレスレでそれを回避する。
 『うん! 』
 『くっ…』
 『っく! イグリー君、今だよ! 』
 だが、立て続けに攻撃すれば、流石にかわせねぇーだろぅ? コットに腰を向けるように着地し、ヤライはその方向を向いたままバックステップで距離をする。だがその先にネージュが待ち構えていて、不意の一撃を右の前鰭で与えようとする。だがヤライは咄嗟に反応し、維持していた右手の爪をかざし、それに対処する。そのため直撃を避けられたが、少しはダメージを与える事が出来た。
 『任せて! 』
 『しまっ…、くぅっ…! 』
 だが流石にイグリーの出現位置までは予想出来なかったらしく、右の翼の一撃を回避できていなかった。不意の一撃だったらしく、俺がいる方向にまともに飛ばされてしまっていた。
 『イグリー、ナイスだ! 毒々! 』
 『ぅっ…。まさか…、アタイを毒状態にするために…? 』
 『当ったり前だろぅ? 正面から発動させては、ヤライ相手では命中させれねぇーからなぁ! 熱風! 』
 『くぅっ…! 』
 これで形勢が傾いたな。コット達が攻撃を仕掛けている間、俺は次の作戦のための準備に入っていた。イグリーが飛ばしてくれる地点に先回りし、さっき発動させた毒タイプの技のイメージを膨らませる。すると丁度ヤライが飛ばされてきたので、俺は目の前の砂地に大量の毒塊を設置し、通過するタイミングでそれを上方向に爆ぜさせる。すると俺の思い通りに、ヤライがその地点を通過してくれた。なので俺は、立て続けに焼け付く疾風を、超至近距離で吹かせた。
 『これは…、一本取られたわね…。…影…、分身…』
 『なっ…』
 なっ、何なんだ、この数は…! 大ダメージを与え、俺はヤライを一気に追い込む事が出来…、たかと思った。確かに大ダメージを与える事はできたが、ヤライは負けじと分身を作りだす。しかもそれは、三体とか四体とかじゃなく、無数に…。一瞬うちに大量の分身に囲まれ、俺自身が逆に追い込まれてしまった。
 『…ヘクト、流石にこの数…、だと、あんたでも…、タダでは済まない…、でしょうね…』
 『…だろうな』
 って事は、ヤライは次で決着をつける気だな? …となると、発動させてくる技は、アレだな? 俺の熱風、そして毒を食らったヤライは、切れ切れにこう言ってくる。フラフラの状態だが、流石にこの規模では俺もタダでは済まない、俺は率直にこう感じる。予想外の事で俺は圧倒されてしまったが、ヤライはここから一気に仕掛けてくる、彼女の青ざめた目つきで察する事が出来た。
 それならと言う事で、俺は頭をフルに回転させてヤライの行動を予想する。パッと見限界が近そう、そしてあと度の技が残っているか…、色んなことを考慮しながら、戦略を組み上げていく。すぐに思いつき、俺はその対処のためにエネルギーを活性化させていく。そして…。
 『…影分身』
 『…だから…、これで決めさせて…、もらうわ! ギガインパクト! 』
 『臨むところだぁっ! 熱風! 』
 威力、範囲を底上げするために一体の分身を作りだし、すぐにエネルギーに炎の属性を纏わせる。その瞬間フラフラなヤライ軍団が一斉に動き出し、俺を倒すために圧し迫ってくる。ありったけの力、そして捨て身で突っ込んできたから、ふたりの俺も、超高温の突風で応戦する。その結果…。
 『ぐぁっ…! 』
 『…っくぅっ! 』
 『どう…、だ…? 』
 『……』
 中心から広がるように吹き抜け、次々に分身達を消滅させていく。んだが完全に一掃する事はできず、本人と合わせた三体が残ってしまった。その三にんが俺とまともにぶつかり、うち二体が消滅した。
 大ダメージを覚悟し、俺は予め重心を落として身構えていた。一瞬意識が飛びそうになったが、その甲斐あって辛うじて耐えきることが出来た。そして霞んだ視界で正面を確認すると、既に意識を手放し倒れたヤライがそこにいた。
 「ヤライおつかれさま。…ユリンむきずでヘクトくんをたおすよ! 」
 『うん! …何かもう倒れる寸前みたいだけど、それでも手を抜く気なんて無いんだからね! 』
 『…だろうな…。それが…、バトルっつぅー…、もんだからなぁ…』
 …何とかヤライは倒せたが…、流石にこれはヤベェーな…。俺とヤライとの決着はついたが、バトル自体はまだ終わらない。エレンはヤライを控えに戻すと、すぐに小さなパチリス…、ユリンを出場させる。俺は顔を合わせるのは初めてだが、イグリーから彼女の事は聴いていて知っている。向こうもヤライ、そしてニドから聴いているだろうから、俺自身の事もダダ洩れだろう。完全な状態の俺なら難なく倒せるとは思うが、正直言って俺の勝機は薄いだろう。ヤライの重撃を食らったばかりと言う事もあって、節々が痛むし、視界と意識もハッキリしない…。それならせめて、後に控えているコット、ネージュ、イグリーの三にんのためにも、少しでも体力を削っておこう、俺はそう、心に強く言い聞かせた。
 『やっぱりそうだよね? …じゃあ、遠慮なくいくんだから! エレキネット! 』
 『影…、分身…』
 速いッ! 俺は限界間近だが、バトルのルール上情けはかけていらてない。ユリンは即行で俺に向けて走りだし、問答無用で攻撃を仕掛けてくる。電気のエネルギーを具現化させ、塊状にして正面に飛ばす。このタイミングで俺は、なけなしのエネルギーで分身を作り、かわそうとした。だがその黄色い球体が弾け、広範囲に網目状の電線が広がったため…。
 『毒どくぅっ…! 』
 体の重さも合わさって、回避する事が出来なかった。一応俺も毒々で応戦しようとしたが、完全に発動させる前に、黄色い網に捉えられてしまった。
 『きみとは初めて戦うけど、私が勝つからね! …雷! 』
 『ぐぁぁっ…っくぅっ…』
 全身が痺れ、俺は身動きが執れなくなってしまう。そこへ超高電圧の電気が襲いかかり、何とか繋ぎ止めていた俺の意識が、それによって断ち切られてしまった。


 Continue……

Lien ( 2017/08/13(日) 23:33 )