Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Treize de Cot 〜灯台が示すその先へ〜
Quatre-vingts-dix-sept 最後のジム戦(惑炎の作戦)
 Sideヘクト



 「ヘクト、お願い! 」
 「ヤライもうあとがないよ! だからぜったいにかって! 」
 「ブースターも! 」
 『おぅ! 』
 『って事はユリンがやられたってことね…。…上等じゃない、やってやるわ! 』
 『うん! …だけどまさか倒されるとは思わなかったね』
 それなら、俺達側もオークスが倒されたという訳か。ボールから勢いよく飛び出した俺は、着地するまでの間に辺りをサッと見渡す。俺がこの一瞬で見た限りでは、ごく普通のバトルフィールドに、ルカリオひとりがぽつんと身構えている。それ以外と言えば、ジムリーダーらしい一人以外に、カナとニドのトレーナーと知らない誰か…。四人で戦うルールだっつぅー事だから、おそらく三人目の挑戦者といったところだろう。
 そして俺とほぼ同じタイミングで飛び出したのは、俺がよく知っている、おそらく進化したニド? と、前のコットの別の進化先であるブースター。ニド喋り方に少し違和感があったが、ブースターの方はパッと見大人しそうな感じ…。ネージュと気が合いそうだな、俺は彼に対してこういう感想を抱いた。
 『…っと、その喋り方すると、お前はヤライだな? 』
 『流石にあんたにはバレるわね。…そうよ、あんたが気づいた通り、アタイはヤライ』
 『やっぱそうだよなぁ? 化けてもお前は変わらずそういう喋り方だからなぁ、知ってれば一発って訳だ』
 『へぇーオネェ系かと思ったけど化けてるんなら納得だよ』
 やっぱりな! 違和感があったニドにある予想をしながら訊いてみると、案の定その正体は化けたゾロアーク、ヤライだった。もしかするとこのブースターは変なニドキングだって思ってたかもしれねぇ―が、ニド本人、それからヤライと面識がある俺の目は欺けねぇー。ずばり言い当てたと言う事もあり、ニドに化けたヤライは完敗よ、とでも言いたそうに手を軽く叩く。そこへブースタが、意外そうに会話に参加してきた。
 『オネェ系ね…。ニドの種族は男しかいないから、分からなくもないわね。…さぁて、ヘクト? 今回もあんたとは敵同士ね』
 『敵同士…、確かにな』
 「確かにそうだけど…、ヘクト、それからヤライさんも、今回はそうも言ってられない状況なんだよ! 」
 『コット、そりゃあ聴き捨てならないわね』
 コット、それはどういう事だよ! ヤライの言う通り、昨日聴いた事が正しければ、俺達は互いに敵として戦うことになる。ヤライとブースターもそのつもりらしいが、そんな俺達にコットが待ったをかける。コットはいつもと違い切羽詰まったような感じだったので、状況はあまり良くない、俺は率直にこう感じる。ヤライも似たような事を思ったのか、俺よりも早くコットの声に食いついていた。
 「ルールは昨日聴いた通りだけど、今僕達は凄く不利な状況なんだよ」
 『不利? サンダース君? それってどういう事? 』
 『…確かに、貴方方にとってはそうと言えますね』
 『ん? 俺達が、か? 』
 戦う相手のルカリオが最初から出ていたが、それと関係があるって事か? ヤライの問いかけにコットが答えていると、そこへ敵のルカリオが割り込んでくる。俺として不利なこの状況は燃えてきて面白れぇーが、普通に考えればそうも言ってられない。本来ならコットが説明するところだと思うが、出しゃばりなのか、相手のルカリオが俺達ひとりひとりに目を向けながら、こう呟いていた。
 「そうなんだよ。…今僕達三人とも最後のひとりしか残って無いのに対して、ジムリーダーのミカンさんはまだふたり残ってる…。おまけに、オークスとユリン、それからオーダイルが三にんで倒し合ってたから、殆どダメージが通ってないんだよ! 」
 『…なるほどな。つまり俺達三にんが手を組まないと、俺達に勝ち筋が無いっつぅー訳か』
 『…だけど四にんで戦うバトルなのに三対一で戦って良いの? 』
 『ルール上は問題ない、って野生時代に聴いた事があるわ』
 俺達個人で戦ってもいいが、このままいくと三にん揃って負け…、そう言う事か。それなら、そうも言ってられないな。コットは割り込んできたルカリオにめげずに話し続け、今の状況を簡単に教えてくれる。目線でひとりひとりを示しながら教えてくれたので、残りの一人がどんな種族だったのか、すぐに知ることができた。…だがこの感じだと、俺だけのペースで戦っていられなさそう。何となくヤライにブースターも察してるのか、コットの提案に納得し始めていた。それなら俺は…。
 『問題ないなら、やってやろうじゃねぇーか! 三にんで協力して強敵を倒す、面白いと思わねぇーか? 』
 『三対一で戦うのは卑怯な気もするけど、そうも言ってられないのは確かね。…だけど三にんで協力して強敵を倒す…、そういう頭脳的なバトル、アタイは嫌いじゃないわ。…上等じゃない! その話、アタイは乗るわ! ブースターのあんたも、この追い込まれた状況から脱したい、そう思ってるわね? 』
 『うっうん。いいとお…』
 『なら決まりね。ヘクト、アタイらは言いだしっぺのあんたの指示で動くわ。こう提案したあんたらなら、当然作戦はあるのよね? 』
 作戦か…。あるにはあるが、ブースターのこいつ次第だな。俺は挑戦者側のふたりにこう提案し、同意を求める。ヤライは始めは渋っていたが、この様子だと案外乗り気なのかもしれない。相変わらずの悪戯っぽい笑みを浮かべながら、俺の提案に賛同してくれた。
 そのままヤライは、ほぼ空気になりかけていたブースターに急に話をふる。彼女自身聞いている前提で話しかけたと思うが、当の本人はいきなりの事で一瞬変な声をあげてしまっていた。おそらくは訳の分からないまま頷いたんだとは思うが、それを同意、とヤライは受け取ったらしい。そのまま提案者の俺…、元はと言えばコットだが、俺に対してこう訊ねてきた。
 『その前に俺からも訊きたいが…、ブースターのお前は、当然特性は“貰い火”だよな? 』
 『ううん僕の特性は少数派の“根性”。だか…』
 『それなら願ったり叶ったりの状況ね? エレンから聴いたわ、ヘクト、あんた、毒々を使えるんだってね? 』
 『おぅよ! それなら、尚更好都合だ! それならブースター、もちろん炎タイプの技は使えるよな? 』
 少数派の特性持ちか。そういゃあフルロの仲間にも、少数派の特性持ちの奴がいたなぁ? 一応俺なりに作戦を考えてはいるが、それは俺ひとりで戦うならばの話…。すぐに作戦の一つぐらいは立てる事はできるが、ヤライはともかく、初対面のブースターの戦い方は俺は知らない。だから俺はまず、最低でも彼の特性を尋ねる。すぐに知れたから、そのまま俺は別の質問も彼に投げかけてみた。
 『うん。一番の得意技はフレアドライブだよ。って事はヘルガーの君は“貰い火”なんだよね? 』
 『当ったり前だろぅ? んだが、お蔭でいい案が浮かんだ。ありがとな』
 『作戦立案はあんたに任せたんだから、当然じゃない! 』
 『うん! 』
 『…作戦会議は終わりましたか? 』
 『おぅよ! 待たせてすまんな』
 『作戦会議にしてはかかり過ぎな気もしましたが、いいでしょう。…では、その作戦を披露してもらいましょうか』
 『当然じゃない! もちろん、アタイらが勝たせてもらうけどね』
 『ミヅキの知り合いみたいだから大丈夫だねきっと』
 『当然だぁっ! …じゃあ、いくぜ! 』
 一歩リードしてるからか? 随分と余裕だな? 俺達が話し込んでいる間、ルカリオの彼は一切文句を言わず待ち続けていたらしい。一通り会議が終わると、ここぞとばかりに俺達に話しかけてくる。若干待ちくたびれた様な顔をしている気もするが、そういう状態なら、案外俺達のペースで戦えるかもしれない。
 …兎に角、俺達三にんは互いに視線を送り合い、揃って小さく頷く。そして俺の一声を合図に、カナにとって八か所目の、最後のメンバーによるジム戦が幕を開けた。


 Continue……

Lien ( 2017/08/07(月) 22:48 )